表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

ホラーシリーズ

和のオカシ~或るタクシーの凶行~


 小説家になろう『夏のホラー2018~和ホラーvs.洋ホラー~』企画参加作品。




 まったく、不思議というものは。

 或る作家の嘆きであった。げほ。咳払いひとつ。

 さて、マンジュウの話をしよう、饅頭、と書く。

 茶饅頭、薯蕷饅頭じょうよまんじゅう、酒饅頭、塩饅頭、焼饅頭、栗饅頭、水饅頭、麩饅頭、味噌饅頭、最中饅頭。

 揚げ饅頭、あんパン、中華まんじゅう、月寒あんぱん、くまたぱん、焼きまんじゅう、人形焼、片原饅頭、今川焼き(回転焼き・大判焼き・おやきなど)、おやき、ぱんじゅう(ばんじゅう・ぱんぢゅう)、鬼饅頭、赤飯饅頭、娘娘万頭にゃあにゃあまんじゅう、ぶと饅頭、奥飛騨一本焼、くるみ焼饅頭、金長まんじゅう、本ノ字饅頭、もみじ饅頭、エチオピア饅頭、よもぎまんじゅう、都まん(都まんじゅう)、労研饅頭、成金饅頭、千鳥饅頭、ひよ子、博多通りもん、じゃがいも饅頭、松露饅頭、蜂楽饅頭ほうらくまんじゅう、千両饅頭、慶徳饅頭、長者饅頭、にしめ万十、チーズ饅頭、加治木饅頭、伊集院饅頭、鶴饅頭、バナナ饅頭、かりんとう饅頭、梁越饅頭はりこしまんじゅう

 落語の「まんじゅうこわい」や、アイスまんじゅう、イナまんじゅう、毒まんじゅう。

 炎の毒まんじゅう、ハブの毒まんじゅう、因島毒饅頭事件。

 小麦粉などを練って作った皮(生地)で小豆餡などの具を包み、蒸した菓子。中国の饅頭マントウが変化してできた和菓子の一種である。

 3世紀の中国三国時代、蜀の宰相、諸葛亮が南征の帰途に、川の氾濫を沈めるための人身御供として生きた人間の首を切り落として川に沈めるという風習を改めさせようと、小麦粉で練った皮に羊や豚の肉を詰め、それを人間の頭に見立てて川に投げ込んだら川の氾濫が静まったという。これが饅頭の起源とされている。

 日本伝来当時は現在の饅頭につながる甘い饅頭と、主として野菜を餡とした菜饅頭の2種類が存在していた。後者は現在の肉まんに近い物と考えられているが、仏教の影響もあって、近在以前の日本ではもっぱら野菜が餡として用いられていたらしい。直接的な饅頭の由来ではないが、江戸時代以降に南蛮菓子や中国菓子の製法として焼き菓子の製造技術が日本に伝播した、この技術が饅頭にも応用され、焼き饅頭と呼ばれる日本独特のジャンルが生まれる。日本に定着した後は、餡や皮の製法にさまざまな工夫が凝らされ、種々の饅頭が作られるようになった。肉まんや餡まんなど、従来の饅頭マントウを起源とした厚めでふわっとした皮の中華風の饅頭(包子、パオズ)は甘いものであっても一般的に中華まんとして区別され、中にはカレーまん、ピザまん、バナナまんなど、中国には存在しない中華まんもあり、日本風の焼いて作る饅頭は台湾でも「日式饅頭」「日本饅頭」と称して製造されている。Wikipediaからの引用。


 饅頭よ、何処へ行く。

 饅頭の話、ここまで。


 さて、或る若者達の話をしよう。饅頭の事は忘れていざ行かん。




挿絵(By みてみん)



 小学校の教諭になって2年のまだ新米、保田持ぼたもちは、生徒の居なくなったであろう校舎を後にし、帰路にいた。

 夕日がそろそろと姿を見せなくなり始めた時、農道を歩いていると、遠方から一台の車が近づいてきた。

 背後から迫ってきて距離を縮めていくと、車はタクシーで、保田持の手前で一旦、停止した。道は車が一台しか通れない土砂道で、しかし車はクラクションを鳴らす事はなく、また保田持も振り向いては避ける事もなく、互いに見合って笑顔になっていた。

「よお、山伏じゃないか」

「おう、保田持か。元気しよったか。半年ぶりやのう」

 互いは高校時の同級生であった。同市に住んでいるらしい。

「今、帰りか、学校の先生。華子が言うとった。よう生徒におちょくられてるでって。あんなんじゃ可哀想、ゆうてな」

「そうか。たった8人のクラスだが、手一杯じゃき」

「ま、乗ってけや。家まで送たる」

「すまんき」

 同乗し、畦道あぜみちを走るタクシー。ふと、お前こそ客を送った帰りかと保田持は尋ねた。

「ああそうじゃ。まれにみる変な客でよー、金ならあるじゃきー、面白い面白くない話を何でもいいから聞かせてくれんかーちゅうて。アンタ、タクシーの運転手やさかい、なんぼでも話聞くやろ、お客さんから、て。そんなんあるかいなーって思たけど、一向に行き先も言わんし何やニヤニヤニヤニヤしてわろてて気持ち悪かってん」

 運転席の鏡越しに山伏の嫌そうな顔の目が見えた。「触らぬカミに」

「タタリなし」

「だな。それで?」

「市内ドライブじゃ」

 山伏が考えて話し出したのは怪談であった。理由は、夏だから。蝉や蛙の大合唱はとてもうるさい。何故蛙は虫と書く? 頭が大きくてグロテスクなマムシの象形である。どうでもいいが煩い。

 怪談――

 例えばきつねたぬき。妖怪怪異の報告書をみると、狐は東日本、狸は西日本に多いらしい。狸の怪異は、近畿の一部と四国に非常に多いそうだ、特に四国では狐が少なく狸が多い傾向があり著しく、昔、日本に密教を伝え真言宗を開いた弘法大師(空海)が四国から狐を追い出し狸を大変可愛がったという。

「明治の話になるが、開通して間もない鉄道でよ、雨の夜、同じ線路の上を向こうから走ってくる電車がいてよ、慌てて運転手が急ブレーキをかけたんじゃが、降りてみても何もなく、そんな事が多発したそうだ。で、或る日、ひとりの運転手が構わず突進したみたいでよ……どうなったかと思えば電車は消え去っていて、自分らも無事みたいじゃったけど、翌朝、線路沿いに一匹の大きな狸が死んでいたそうじゃ。くわばら」

「怖いっていうか、気味が悪い」

 後部座席で保田持は舌を出しながらウエッ、と胸を押さえる。それから両腕をさすった。

「時々、犬や猫や鳥が車道でかれてるのを見かけるけどな。山道じゃ鹿、猿なんかも飛び出すけど! 結局、悪いのはいつも人間。嗚呼、人間。かの弘法大師様だって、結構各地で酷い事してる。知ってるか?」

「どんな、だ? さすが先生、よう知ってそうじゃ」

「芋の接待を要求して断られて、その地域の芋を全て食べられなくしてしまったり、秋田の方じゃ飲み水を断られて水源を全て枯らしたとかで」

「何だそりゃあ。ガキか!」

 得意そうに保田持は続けた。

「こんな話もある。長者の衛門三郎に布施を断られた大師は、彼の子ども8人全員を一日ずつ死に至らしめた」

「ひでえなぁ」

「だろうー?」

「そういう裏の話もある訳だ」

「だいたい、江戸時代中期頃からかつて恐れられ怖がられた妖怪も、娯楽の対象となって、怪異現象ともに楽しみの産物となってったって訳だ」

「先生っぽい」

「どうも」

 娯楽であった。

 現代の、例えば、学校の怪談を幾つか挙げるとすれば、こうである。


 音楽室に飾られている絵のベートーベンが歌い出す。それを「下手くそ」と一瞥いちべつし女生徒は美しいソプラノの声で歌ってみせた。かの有名な音楽楽団の一員、両親は世界的にも有名な音楽家であったという。

 理科室の骸骨がいこつが勝手に踊り出す。「負けねえぜ!」小学三年生のユーチューバーは誰も真似などできない鮮やかなステップとパフォーマンスで完璧なダンスを披露した。動画再生回数2万超え。骨抜きにされる。ぐしゃ。

 美術室のモナリザの絵の目が動く。しかし相手が悪かった。「何見てんだよ」ガン見したのは中学二年のヤンキー。老眼なので見えませんとモナリザは苦しい言い訳をした。

 二宮金次郎の銅像がよくグラウンドを走っていたが、現在は撤去されたので違うモノが走っている。

 プールの四コースで泳ぐと足を引っ張られるらしいが、それにより潜水時間最高記録が出たのでギネスに載る。

 誰も居ないはずの体育館でバスケットボールをドリブルする音がする。実は気になるアイツが特訓していた恋の始まりであった。映画化する。

 放課後に鏡の前を一人で通ると中から女生徒が呼び掛けてくる。「もっと怖がってぇ~」化けハラ。

 ひとりでにピアノが鳴るのは最新型自動式ピアノを学校が購入し五時になると演奏する様に設定したからである。サブちゃんが流れる。朝は、ゆず。

 階段の段数が変わっても現代っ子は「気のせいかぁ」と気にしない。深く考えない。

 トイレの個室に入っていると「赤いちゃんちゃんこ着せましょかぁ?」と声がしても「それって何ですか?」と真顔で聞いてくる。説明が面倒くさいので今度は「赤い紙と青い紙、どちらがいいですかぁ?」と聞く。赤なら血まみれ、青なら血を抜いてやろうと目論んでいたが「うーん、オレンジで!」とイレギュラーな答えに動揺し、仕方なく果物のオレンジを便器からそっと出してみると「この手は……お母さーん!!」と幼い頃に自分を捨てた母親だと勘違いする。また映画化する。




挿絵(By みてみん)




 ある意味現代っ子は脅威であり恐怖でもある。怖いモノ知らず。トイレの三番目の個室のドアを叩いて「遊びましょ」と言えば「ハーイ」と返事をするのはイ〇ラちゃんである事を知っているし、トイレといえば花子さんだがウォシュレットの使い方が分からず困り自動で蓋が開閉するのでビビッている。ちなみに花子は現代ならHANAKOハナコ、もしくは破七虎ハナコである。

 娯楽すぎる。

「神をも恐れぬ、いや、恐れた事があったか? って言う奴もいる」

「平和だな」「ああ」「ところでさ」「ん?」

 山伏は突如、聞いてきた。

「今、このタクシー、何処向かってると思う?」


 話し込んでいる間に、夕日は見えなくなってしまっている。車のライトを点けずに、山道を走っていた。

「え、おい。何処行くんだ?」

 保田持を――お客を乗せたタクシーは、目的地へ……。

「家まで送ってやるって言ったろ……」

 ミラーに映っている旧友の目が笑っていないが、口元が笑っていた。山道をひたすら上っていく。

 さあ選択である。車は――


 一、崖から落ちた。友人は彼を道連れにした。

 二、崖から落ちたが、実は友人からの誕生日サプライズ。崖下の彼の家へ着地、祝いで迎えられた。

 三、崖から落ちたが、実は友人からの誕生日サプライズで、崖下の彼の家へ……合掌。

 四、全ては夢だった。棚から保田持。




挿絵(By みてみん)




 笑顔の裏が怖い。


<END>




 怖くないなぁ、っと、ご読了ありがとうございました。

 洋菓子バージョンあります。

 https://ncode.syosetu.com/n9255ex/


 合わせてどうぞ。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

ブログ あゆまんじゅう。 こちら


― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ