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半端なアミーと傲慢な秘術  作者: 川端 由里
3/6

期待



星空の下の求婚の後、ラルフの行動は早かった。直後にアミーの祖父ダノンに結婚の許しを請いに行き、翌日にはラルフの家族に報告をした。

ラルフは父を亡くしており、母メリサと兄ジェド、弟カイルの四人家族で暮らしていた。

もちろんアミーも彼等のことはよく知っている。特に息子しか持たないメリサはラルフかアミーと結ばれることを喜んでくれた。

ジェドは何やら複雑そうに祝福してくれ、まだ幼いカイルも戸惑いながらも嫌がってはいないようだった。


「しかしなあ、アミーはダノンの跡を継ぐんではなかったか?」


不穏な空気が流れたのは、村長に挨拶に行った時だった。

村長のその言葉にアミーは身体を硬くする。その肩をさり気なく抱き寄せながら、ラルフは村長と対峙した。


「これは俺達の意思です。ダノンも賛成してくれました。

アミーはもうダノンの弟子ではなく、ただの孫娘になります」

「しかし、アミーは才能があったじゃないか。村人達も随分と助けられた。なんと勿体無い」


それを聞いてアミーは更に心が冷える。それ程村人に惜しまれるとは思わなかった。

だが狩人の妻ならば村には珍しい存在でもなかった。しかし祖父の跡を継げる者など、アミー以外には村には居ない。

いや、おそらくこの世すべてを探したとしても、見つけるのは難しいだろう。村人には秘されているが、祖父の業はそれ程の秘儀だった。村人達から見れば、アミーはラルフの妻で居るより祖父の後継であるほうが有益で、そう期待されていたのだろう。

今まではそうはっきりと示される事はなかったが、アミーとラルフが結婚の意思を見せた今では村人たちは損害を被ったような気がするのだろうか。


村から結婚を祝福されないかも知れない。それはこの小さな世界では酷な事だった。

その事に思い至ったアミーは、胸を痛めた。


「諦めないでアミー、必ず道はある。俺達は大丈夫だ。

それに俺達の意思が硬いと知った上でそれでも反対するのなら、村は俺とアミーを失う事になる。それでは村も損失だろう?

俺を信じて任せてくれ。やれるさ。俺はアミーに選ばれた男なんだろう?」


ラルフは力強くそう言って笑い、ダノンや家族、村役員達と粘り強く話し合った。

結果、アミーは他の妻達が集って行う女達の手仕事には参加せず、その代わりに薬草師のような仕事をする事になった。

一人立ちの試練を受けていないアミーはダノンの後継を名乗る資格を持たないが、祖父は秘術以外であればアミーが用いる許しまで出してくれた。

それはかつての彼女の志からすれば、なんとも半端なものであったが、それでも彼女は嬉しかった。

人の生とは不思議だ。志が変容しても、そこに生きている感慨と喜びがあるなんて。父母は志に殉じたと聞いた。しかしその父母さえもアミーには望むように生きろと願うと祖父は言う。


“とう様かあ様、私は一番の望みを選びます”


もうこの世にはない父母は、今の自分を見てどう思うだろうかと、アミーは空を見上げた。


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