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半端なアミーと傲慢な秘術  作者: 川端 由里
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訣別


アミーはそれから半月程も懊悩した。

その間なるべく普段通りに過ごすように努めたが、祖父のことをじいとも師とも呼べず夜も眠れず日に日にやつれ、周囲の者を大いに心配させた。


その日も、アミーを気遣うラルフは仕事上がりに彼女の元へ訪れていた。

ラルフを見たアミーは彼に近付き、その両手を取る。


「アミー?」

「ラルフ、今から裏の丘に行きましょう?」


ラルフは自分の手を取る華奢な冷えた手を包み込む。

「アミー、外は冷えるよ。風がとても冷たいんだ」

「お願い。あなたとあの丘の星空が見たいの」


二人は手を繋ぎながら日没後の丘へと歩いていた。乾いた冬の空には次々と星が姿を現してくる。冷たい風に洗い流されたように空は澄んで、星々が手に取れる程に近く感じる。

アミーはまっすぐ前を見て風にパタパタと揺れる三つ編みを片手で押さえていたが、もう片方の手でラルフの手をしっかりと握っている。そこには強い意志が感じられた。

やがて彼女は立ち止まると、無言で星空を見ていた。ラルフはどう振る舞うべきかも分からず、ただアミーに寄り添い彼女を見つめた。

闇夜のような黒髪に星空のような瞳の、可憐で愛しい少女を。


「…ラルフ」

「なんだい?」


やがてアミーはラルフに向き直り口を開いた。気の毒な程張り詰め震える彼女に、ラルフはなるべく優しく返事をした。


「あのね、お願いがあるの。 …私をラルフのお嫁さんにして欲しいの」


そのかぼそい声に、ラルフは息を飲んだ。強い風が聞かせた幻聴かもしれないと一瞬思った程だった。だが抑えきれない衝動に、ラルフは彼女を抱きしめた。


「アミー、今君はなんと言った?」

「私と結婚して欲しいって、あなたに」


信じられないような言葉だった。ラルフはアミーを抱きしめる腕に力を込めた。

ずっと、彼女を見てきた。小さな頃からずっと。その間彼女が何を励んできていたのかを、ラルフは知っていた。

彼女はそれよりも、自分を選んでくれたのだった。


「私、私ね。じい様の弟子になって、後を継ごうと思っていたの。

だけどそれよりも、ラルフのお嫁さんになって、ラルフと一緒に年をとっていきたいの。そう思ったの」


腕の中のアミーは、尚も言葉を重ねる。ラルフは夢のような心地で、彼女の艶やかな黒髪に頬ずりした。


「アミー、俺もずっとそうなりたいと思っていたよ。 …君に言わせてしまうなんて、俺は情けない男だ」

「そんな事ない! ラルフは私のことを考えてくれた。私はそれに甘えてた。

だけど、じい様が望むように生きろって…」


涙するアミーの目元を親指で拭って、ラルフは屈み込んで彼女と額を合わせた。


「そうか、アミーのじい様がすごいんだな」

「うん、うん…」


すすり泣き始めた彼女の涙を止めようと、その小作りな顎をすくいあげてラルフはアミーに深く接吻した。



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