096 買い出しへ
『カナ、カナ、ごほうびパンちょーだーい!』
『ごほうびパンですよー!』
「うわぁー! リトくん、今朝は一段と元気いっぱいだー」
かなえはリトくんの元気な声に飛び起きる。
小鳥らしく、可愛く鳴いて朝を知らせて欲しいんですけど……食いしん坊なリトくんには無理だろうな。
かなえはベットから出ると、居間まで歩いて行く。
『カナ、カナ、ごほうびパン!』ともう、リトくんは夢中だ。
ポーチからパンを取り出すと、
「はい、どうぞ、どれがいい?」と、聞くと、
『わぁー! 大きいパン』と、驚いたのか部屋をパタパタと一周飛んで、かなえの肩の上にとまる。
「リトくん、最初はこれくらい大きいんだよ。さっ、どれがいいか選んで?」
『うーんとねー、ぼく茶色いパンがイイ!』と、リトくんが言うので、幾つかある茶色いパンの中から、真ん中に近いパンを指さすと、
『うん、それだよー』と、言うのでくり抜いて渡す。
『ヤッター! ごほうびパンだー!』と、リトくんは夢中で食べ始める。
パンでこんなに喜んでくれるリトくんの毎日は、喜びであふれているんだろうな……と、嬉しそうに食べている姿を見て思う。
食べ終わるとリトくんは、窓の隙間からサーッと飛んで行った。
かなえも支度をすると、牧場へ向かう。
「おはようございます」と、ジジさんババさんに挨拶する。
『ああ、おはよう』『いつもありがとうね』と、言われ、みんなでアニマルドームの砂浜に向かう。
「では、今日も行ってらっしゃい」と、ジジさん、ババさんを見送ると、ジミーさんの庭へ移動する。
「おはようございます」と、庭の椅子に坐っているジミーさんに挨拶をする。
リリララ姉妹は子猫達の所に居るそうなので、迎えに行く。
「おはよう、朝ご飯にするよー」と、ドームの中の子猫達を見ているリリララ姉妹に声を掛けると、
「おはようございます」「うん、おなかすいたー」と、近寄って来るリリララ姉妹。
ジミーさんの所へ戻り、朝食を並べる。
今日の朝食は、ほうれん草とポテトのソテー。シナモンレーズンベーグルのクリームチーズサンド。ニンジンとひよこ豆のスープ。フルーツグラノラに、マンゴジュースとハーブティ、ジミーさんの飲み物はジュースとコーヒーだ。
「いただきまーす」と、食べ始める。
「ララねー、お祭りでねー」と、ララちゃんは昨夜の夕食の時はもう眠そうだったけど、一晩寝て快復したようで、昨日のお祭りの話をしている。
ララちゃんは最初の頃よりも野菜を食べるようになって来た。
みんなが普通に食べているので、良い影響を受けているのかもしれない。
今日の皆の予定を聞くと、ジミーさんは仕事で、リリララ姉妹は午前中は教室で、午後からは温泉に行くそうだ。
食べ終わり片付けると、
「じゃあー、また後でねー」と、かなえは牧場に移動して行く。
牛舎の中に入って行くと、ミルクタンクのある部屋からウオッシュを掛けて行く。
隣の部屋に移って行き、ウオッシュを掛け、一番奥の部屋に移る。何処の部屋にも問題の無いことを確認すると、牛舎を出る。
メラニーさんの事が頭をよぎったが、昨夜は長旅で帰宅も遅かっただろうから、今日行くのは止めておく。
インビジブルにしてスクーターに乗り、牧場にウオッシュを掛けて行く。元気を無くしていた、牧草もたちまち青々とした緑色に変わる。
牧場の掃除が終わると、アニマルドームへ移動し小屋の掃除を順番にして行く。
もう、最近はモモちゃんもルークスも小屋にセットしている餌やミルクを、ほとんど食べて居ないようだ。
シロンが心配無いって言うけど、やっぱり気になる。
寿命も成長の速度が普通の動物と違うって言われても……。
前に聞いたら、フルーツをたまに食べてるって言っていたっけ。
あんなに元気そうだから、今はこのままでいいのよね……。
かなえは自分に言い聞かす。
次は山の温泉にウオッシュを掛けて行く。
1合目が終わり、3合目の温泉に行くと、マリーとリキさんが泡風呂に入っていた。
「マリー、リキさんおはよー」
『かなえじゃない。昨日は出掛けてたんでしょ?』と、マリー。
「うん、みんなでお祭りに行って来たよ。そういえばお祭りはリキさんの住んでるドームだったよ」
『やはり、そうか。この時期になるといつも人が集まって何かやっているからな』
「そういえば、リンジーにも会いましたよ」
かなえはリキさんに、リンジーが忙しく手伝っていた事、リキさんの事を心配していた事と、1週間後には連れて行く事になったと伝えると、
『そうか、ここの生活もあと1週間か。温泉に毎日入れなくなるのは残念だな』と、リキさん。
「それなら、またいつでも来てください。私が迎えて行きますから」
『そうだな、リンジーとは兄弟の様に育ったが、時々うるさいんだ』とリキさん。
フフッ、リキさん、そう言いながらも、家に帰るのが嬉しいんだろうな。
「リキさんの足、大分良くなってきましたね。その調子で帰るまでにもっと治してリンジーをビックリさせてやりましょう!」
『ハハッ、それはいいな。あいつはわしの足の怪我が自分の責任だと思っているからな』
かなえはウオッシュを一通り掛けると、山の頂上へ移動して行く。
マリーはリキさんが家に戻って行ったら寂しいだろうな……。
最近はいつも一緒にいたようだし。リキさんの方が一回り大きいが、同じ大型犬どうしで一緒に行動もしやすかったんだろうな。
マリーはまだ若いがしっかりしているから、話も合っただろうし。
かなえはマリーの為にも、たまにリキさんをこのアニマルドームへ連れて来ようと思った。
頂上と雲の温泉にウオッシュを掛けると、シャワードームに移動して行く。
わぁー! 今日もみんな飛んでいるなぁー。
キングス達もジジさん達も、もうトランポリンの達人の様な見事な跳躍をしている。
ルークス達は早過ぎて何をやっているのか良くわからない。
ジジさん達はお腹のタプタプしたお肉が、無くなってきているような気がする。
キングスと、クイーンはもともと引き締まった体をしていたが、ますます贅肉が無くなって来ている。
かなえも、たまにシャワードームで運動したほうがいいのかもしれない。
今度、リリララ姉妹と一緒にやろうかな……。
かなえは気になる所だけウオッシュを掛けると、砂浜に移動して来る。
一番優先してやるべきことは何かな……。
少し、食べる物が減って来たから補充したいな。
それに、ドームシティーの4か所の温泉も気になる。
ふと、空を見上げると小鳥が2羽山の方へ飛んで行くのが見えた。
あっ! リトくんとピーちゃんね。ちゃんと、ジャンプミラーを活用してくれているみたいね。
昨日もずっと森のドームを飛び回っていただろうに……リトくん達も元気だな。
かなえは、食料の買い出しに行く事にする。
ジャンプで惣菜屋、イタ飯屋、ラウンドカフェ、ジャングルフード、スープ屋へ行き、注文を済ます。
そして、まかない亭を思い出したので行く事にする。
まかない亭はまだ、お昼前なので準備中の様だが中に入って行く。
いつもの大柄なシェフが包丁で大量の野菜を切っている。
「こんにちは、テイクアウトを注文したいんですけどー」と言うと、
「おう、嬢ちゃんか。今日のまかないは天丼とプロの実ハンバーグ丼のセットだがどうする?」と聞かれたので。
「はい、美味しそうですね。それを10人前お願いできますか?」
「まだ準備中だから、30分後でいいか?」
「はい、わかりました。それでお願いします」と、かなえはお金を払いお店を出る。
そして、最初に注文した総菜屋から順番に、出来上がったテイクアウトを取りに行く。
スープ屋まで行くと、ダンさんが最後のスープを袋に詰め終わった所だった。
かなえはお礼をいい、お店を出て行こうとすると、
「えーと、実は診てもらいたい動物がいてな……」と、ダンさん。
「そうなんですか? 動物の種類は何ですか?」と、聞くと、
「ウサギなんだが、耳が聞こえていないようなんだ」
ダンさんが言うには一月位前に、ウサギの子供をもらったそうだが、近くで音を立てても何も反応が無いので、出来る事なら治してやりたいそうだ。
……一月前ならもうかなえはこのお店に来ていた頃だから、もっと早く言ってくれてもいいのに。
まぁー、事情があるんだろう。
結局、今日お店が閉まる夕方に、ダンさんの店で待ち合わせる事になった。
かなえは店を出ると、丁度いい時間なので、まかない亭に注文したテイクアウトを取りに行く。
まかない亭の料理は大盛りなので、かなえが大きな袋に入れて全て持ち上げたのを見たシェフが、目を丸くしていた。
もちろん、すべてフォルダに仕舞った後だ。かなえは重そうに大きな空のカバンを抱え、外に出て行く。
そうだ、ここまで来たら家具職人のジョーさんの所へ行ってみようかな。
「シロン、ジョーさんはお店にいるの?」
「はい、奥の仕事場で作業をしています」
よーし、それなら行こう。
かなえはお店の前に着くと、まかない亭の料理を一つとアイスコーヒーがあったので出すと、中に入って行く。
「こんにちはー、ジョーさんいますか?」
「はーい」と、低い声がしてジョーさんがゆっくり仕事場から出て来た。
「おおー、あんたか」と、ジョーさん。木屑が髪の毛まで付いている。
「近くまで来たので……はい、差し入れです」
「助かるよ。いつもすまないな」
「体の調子はどうですか?」
「ああ、あまり無理はしない様にしてるよ」
かなえは昨日の森のドームのコンテストで、ジョーさんの家具が1等だった話をすると、
「へぇー、あんたあの祭りに行ったんだ。家具を出品しろとうるさいから出したんだが……」
「確か1等の賞品はオクタゴンの木工の授業で教える資格だったかな……」
「おれがそんな……人に教えるなんて無理だろう」
「でも腕があるのに、誰にも技術を教えないなんてもったいないですね」
「うーん、まぁーそのうち考えるさ」
ジョーさんは忙しそうなので、シロンに出してもらった飴を渡すとお店を出る。
あっ、もうお昼かー。
12時の鐘の音が聞こえてくる。
かなえはジャンプでジミーさんの庭まで移動すると、仕事場にいるジミーさんに「もうお昼ですけど、どうしますかー?」と聞くと、
「そうかい。それなら頂くとするか」と、片付け始める。
かなえはジミーさんに、今日行ったお店の名前を言い、何を食べたいか聞くと、
「それなら、まかない亭が良いな。私はあそこの料理が好きでな」と、ジミーさん。
家から歩いて行ける距離なので、たまに食べに行っていたそうだ。
かなえも同じ、まかない亭のランチにする。それとサラダに飲み物はマンゴジュースでジミーさんには、アイスジンジャーティーだ。
かなえはジミーさんに、ジョーさんに差し入れをして来たことを話す。
「確かにあれだけの腕があるのに、誰にも教えないのはもったいないな」と、ジミーさん。
「ただ、物を作るのと人に教えるのは別の才能が必要だな」
なるほど、腕がいい職人さんが必ず良い先生になれるとは限らないか……。
うーん、そうね。ジョーさんには向いてないかも。
あー、美味しいけどもうお腹いっぱいだな。
ジミーさんも全部食べるのが苦しそうだ。
かなえは自分の食べかけを仕舞っておく。
「そういえば、今日は夕方から用事が出来たので……」と、スープ屋のダンさんのウサギの話をする。
なので、みんなの食事をコンテナに入れておく事にした。
ジミーさんの夕食はジミーさんのコンテナの中に入れ、もう一つリリララ姉妹用のコンテナ「小」を出して、まかない亭のランチを二つとサラダに飲み物を入れておく。
食べきらなくても、またこのコンテナに入れておけばいいので便利だ。
「お仕事頑張ってくださいねー」と、ジミーさんに言うと、かなえは砂浜へ移動して行く。




