092 収穫祭の前に
『カナ、カナ、パンですよー』
「うーん……」
『カナ、カナ、パンちょうだい、おはよー』
「はーい……リトくん、おはよう」
かなえは居間まで歩いて行くと、一緒に飛んで来たリトくんに最後のご褒美パンを渡す。
「はい、リトくん、これが最後のご褒美パンだよ」
リトくんが受け取ったパンは紫色の実が入った、ブルーベリーのパンだ。
あっという間に食べ終わったリトくんは、
『ご褒美パン、おいしいなぁー、もうないよー!』と、歌っている。
かなえはリトくんの為にもうご褒美パンを用意していたが……どうやって渡すのが自然かな?
そうだ!
「リトくん、もうご褒美パン無いけど、今日一日私の仕事を手伝ってくれない? そうしたら新しいご褒美パンあげるよ」
『うーん。いいよー! お仕事する―!』と、リトくん。
「あのね、今日お祭りがあって他のドームに行くんだけど、リトくんも一緒に来てくれない? そこで困っている動物が居ないか見ていて欲しいの。どうかな?」
『いいよー。どうぶつ探すよー』と、リトくん。
「そう? ありがとう。でもずっとじゃなくて、木の実を食べたり休憩しながらでいいのよ?」
『うん、わかったー。ピーちゃん呼んで来るねー』と、リトくんはもう、待ちきれないのか窓の隙間から、ピーちゃんの家に向かって飛んで行った。
あーあ、リトくんもう行っちゃった。10時出発予定だから、そんなに慌てて呼びに行かなくてもいいのに……。
かなえが出かける支度をしている間に、リトくんがピーちゃんを連れて飛んで来た。
「ピーちゃん、おはよう。久しぶりね。元気だった?」
『うん、あたし、げんきだよー』と、ピーちゃん。
毎日楽しいからか、ピーちゃんはとても元気そうだ。
支度が終わったので、
「それでは出発しまーす」と、リトくん達を連れて牧場へ移動して行く。
『おお? 今日はみんな一緒か?』と、ジジさんが珍しそうにリトくん達を見ると、
『ジジ、ババおはよう!』と、ジジさんの背中へ飛び移って行くリトくんと、ピーちゃん。
『おチビさん達は、元気ねー』と、ババさん。
挨拶が済んだので、
「皆さん、移動しますよー」と、かなえは皆を連れてアニマルドームの砂浜へジャンプする。
『じゃー、行って来るよ』『今日もお世話になりますね』と、ジジさんババさんがエスカ機能で出発して行く。
「おまつりいくのー?」と、リトくんが聞いて来るので、
「まだすぐには行けないの。ご飯を食べてお仕事してから行くのよ。リトくんとピーちゃんは、山で遊んでてくれる? 後で迎えに行くから」と、かなえが言うと、
『いいよー、ピーちゃんいこ―』と、2羽はあっという間に飛び立ちジジさん達を追い越して山に向かって飛んで行く。
かなえはジミーさんの庭に移動して行くと、子猫達の庭の方から声がして来る。
隣かな?……と、かなえが近寄って行くと、
リリララ姉妹と、ジミーさん、それにマリーが、ドームの周りに居て子猫達が中で遊んでいるのを観察していた。
「皆さん、おはようございます」と、声を掛けると、
「ああ、かなえさん、おはよう。子猫達が夢中で遊んでいるので見ていたんだよ」と、ジミーさん。
「かなえさん、おはようございます。みんな凄くて! あんなに元気に飛んでいます!」と、リリちゃん。
「ララも、中に入ってい良い?」と、ララちゃん。
子猫達はいつの間にかシャワードームにも慣れて、中でビショビショになりながら飛んだり跳ねたりしている。
『キャハッハッハ!』『高いよー!』『あーッ』と、シャワードームの方は重力を弱くしているので、子猫達は浮く感覚が面白い様だ。
子猫達は濡れることに抵抗が無いようなので良かった……。
『かなえ、子猫達ったらこのドームに喜んじゃって、朝から大変よ!』と、マリー。
「フフッ、楽しそうに遊んでるからいいでしょ?」
『そうね。いい運動になっているみたい』
マリーも温かい目で見守って居る。
暫らく子猫達の様子を眺めていたが、出発が遅くなるので、
「みなさーん、そろそろ食事にしましょー」と、みんなに声を掛けるとジミーさんの庭に行き、テーブルに料理を並べる。
今日の朝食は、ピザトーストに、ミックス野菜とトーフのソテー。かぼちゃのポタージュスープ、タピオカヨーグルト。飲み物はパパイヤジュースと、ハーブティー。ジミーさんにはジュースとコーヒーだ。
かなえは、テーブルに集まって来たみんなと一緒に、
「いただきまーす」と、朝食を始める。
話題はもちろん子猫達のドームの事だ。
リリララ姉妹に色々聞かれたが、かなえ自身も良くわからないことが多いので、適当に答えておく。
「ララも、中に入りたい!」と、ララちゃんはすぐにでも遊びたい様だが、
「ララちゃん、今日はこれからみんなでお出掛けだから、また今度にしようね?」
「うーん、今度って明日?」
「そうね、時間がある時にね」と、言っておく。
食事が終わり片付けると、
「では、ちょっと行って来るので、出掛ける用意をしておいてくださいね」とかなえは言い、牧場の牛舎に向かう。
中に入って行き、ミルクタンクやその周辺にウオッシュをかけて、隣の部屋に行く。全体にウオッシュを掛けて行きその隣に移動する。餌や水を交換し、ウオッシュを掛ければ牛舎の掃除は終了だ。
「そうだ、メラニーさんの家の周辺も掃除しておこう」
今は収穫祭で誰も居ないので今のうちに掃除しておこう……。
かなえはスクーターに乗ると屋根の上から順番にウオッシュを掛けて行く。窓や窓枠にも丁寧にウオッシュを掛ける。
これで、当分修理の心配は無いだろう……。
ジョンさんの作業場までウオッシュを掛けると、牧場に移動して行く。
端から順番にウオッシュを掛けて行く。池や小川にも毎日ウオッシュを掛けているので、透明感がある澄んだ水の色をしている。
掃除を終えて、牛達も元気そうなので、アニマルドームに移動する。
よし、次は小屋の掃除ね。
かなえは動物達の小屋の掃除を端から始める。
小屋の掃除が終わると、牧草地やプロの実の木が植わっている辺りもウオッシュを掛けて行く。
よし、じゃー温泉に行こう。
かなえは牧草地周辺の掃除が終わると、山の1合目の温泉と、外の広場、その上の3合目の温泉と外の広場に順番にウオッシュを掛けて行く。
頂上まで来ると、全体にウオッシュを掛け、雲の温泉に移動する。
あら、今日も誰も居ないのね。
フフッ、どうやらみんな、シャワードームに夢中な様だ。
まぁー、喜んでくれているなら良かったな。
かなえは、雲の温泉もきれいにすると、シャワードームに移動して行く。
「ハハッ! やっぱりみんな飛んでいるんだー」
今日も、4つのシャワードームがフル稼働している。
ルークス達は一段とスピーディーに飛んだり跳ねたりしている。
でも、キングス達やマリー達も中々の跳躍力を見せている。
キングスはいい歳なのに、がんばるなぁー。
ジジさん達はゆったりとした動きだが、足だけでなく背中やおしりでバウンドしては上手に跳ねているので、全身運動になって健康にも良さそうだ。
かなえは順番に外側からウオッシュを掛け、広い休憩場もきれいにして掃除を終える。
ウオッシュ機能を使えるから全然楽な筈だが、集中して一気に掃除をしたので自分にもウオッシュを掛けておく。
「シロン、リトくん達は山に居るの?」
「はい、頂上近くの木にとまっています」
そうなんだ、それなら……。
かなえは山の頂上へ移動して行くと、
「リトくーん、ピーちゃーん!」と、声を掛ける。
すると、すぐ近くに居たようで、
『カナ、カナ、もう行くのー?』と、リトくんとピーちゃんが飛んで来てかなえの肩にとまる。
「そうだよー。リリララ姉妹とジミーさんも一緒だから、これから迎えに行くからね」
かなえはそう言うと、リトくん達と一緒にジミーさんの家の庭に移動して行く。
まだ10時には少し時間があるが、リリララ姉妹もジミーさんも庭の椅子に坐ってかなえを待っていた。
「お待たせ―。みんな早いねー」と、かなえが言うと、
「あれから、子猫達が寝るまでずっと様子を見てたから……」と、リリちゃん。
「ララもねー、今度中に入るよー」と、ララちゃん。
「大した支度も無いからな」と、ジミーさん。
かなえは昨日も使用した、カーペットを出すとかなえの隣の助手席にジミーさんの椅子を設置する。
「これが、乗り物なのかい?」と、リリララ姉妹にさんざん話は聞いているようだが、初めて見るジミーさん。
「そうだよー、空飛ぶんだよー!」と、ララちゃん。
「リトくん、ピーちゃん!」と、声を掛けると、近くの木の枝に移動していた2羽がかなえの肩にとまる。
「ジミーさんは前の左側の席に座って下さい。あなた達は昨日と一緒ね」
「ハーイ」と、リリララ姉妹は嬉しそうに、乗車する。かなえとジミーさんも腰かけると、シールドを掛けインビジブルにする。
「それでは出発しまーす」
かなえは高度を上げて行くと、カーペットと椅子を透過させて行く。
「あーっ、消えて行く!」と、驚くジミーさん。
「キャァー!」と、昨日も経験したのに声を上げてしまうリリララ姉妹。
「安心してくださいねー。地上の景色が見やすい様に消しただけですよー」と、説明する。
そうだ、いい機会だから見せておこう。
かなえは少し高度を上げて行きアニマルドーム全体が見える所まで移動して来ると、
「ここが皆さんの住んで居る、アニマルドームです。真ん中に島がありますねー」
「あー、ララのお家があったー」と、ララちゃん。他の二人もその辺りをジーッと見ている。
島の周りに湖があり、川が一番外側の水路に向かって向かっている事などを説明する。
「あー、お花が咲いてる!」とララちゃん。
かなえは高度を下げて行き、
「ここまでは島からも近いので、散歩するのにお勧めよ」と、話す。
そこから山に向かって行き、1合目の入口までカーペットで飛んでくると、
「ここには温泉があるの。初めの頃は良く動物達も入りに来てたわ」
「へー、ここには温泉があるんだ」と、ジミーさんは興味がありそう。
かなえは3合目まで移動して来ると、
「ここも温泉ですが、1合目と違う種類のお湯なので、比べるのも良いかもしれません」と、伝える。
次は一気に頂上に向かう。
「ここは前にみんなで、食事をしましたね」
「はい、良い眺めで驚きましたー」と、リリちゃん。
「じゃー上に行こう」と、雲の上の温泉まで移動して行く。
「ワァー! お風呂が雲の上に浮いてるよー」と、ララちゃん。
「ほーっ、凄い眺めだな」と、ジミーさん。
「きれいねー」とリリちゃん。
「ここも、つい最近まで動物達に人気の場所だったんですけど……」
かなえは、最後にシャワードームへ移動して行く。
「わぁー大きいドームがいっぱい!」と、ララちゃん。
「動物達が子猫みたいに、飛んでる!」と、リリちゃん。
上からだとドームの様子が良くわかる。
「ルークとモモちゃんすごいねー」と、ララちゃん。
あっ、モモちゃんが私たちに気が付いたみたい。こっちをジーッと見ながら飛んでいる。
インビジブルにしてもモモちゃんには関係ないみたい。
「牛も、馬もいるよー!」と、ララちゃん。
あんな、大きな動物が飛んだり跳ねたりしている姿は他では見られないだろう。
「色々、温泉を造りましたが、動物達の今のお気に入りは、このシャワードームです。今度みんなで遊びに来ようね」と、リリララ姉妹に向かって話すと、
「ヤッター! ララあの大きなドームで遊びたい!」と、ララちゃん。
「はい、これでアニマルドームはおわりです。では、収穫祭に出発しまーす」と、かなえはハンドルを切り高度を上げて行く。




