090 リリララ姉妹の牧場見学
『カナ、カナ、パンですよー。起きて―』
「はぁーあー、リトくんか……」
かなえは大きくあくびをする。
『カナカナ、パンちょうだい!』
「ハイハイ、わかったよー」
ゆっくりベットから起き上がると、居間まで歩いて来る。
パンを取り出すと、
「はい、リトくん、どっちがいい?」と、残り2つになったご褒美パンを見せる。
『うーん、ぼくオレンジのパンがイイ』
リトくんが選んだのはドライのアプリコット入りのパンだ。
「ハイどーぞ」
リトくんはあっという間に足で抑えながら、パンを食べ始める。
『おいしい、おいしい黄色いパン!』
リトくんの口に合ったようで、羽をパタパタさせながら喜びの踊りを披露してくれる。
「またね。リトーくん!」
窓から飛び立って行くリトくんを見送る。
さっ、私も出発しよう。
かなえは出掛ける準備が出来ると、牧場にジャンプして行く。
「おはようございます」と、かなえはジジさん、ババさんに挨拶する。
『ああ、おはよう、昨日は楽しかった』と、ジジさんが恥ずかしそうに言う。
『かなえさん、おはよう。昨日のシャワーは凄かったわー。私、年甲斐も無く興奮したわよ!』と、ババさん。
まだしゃべりたそうだったが、ジジさんに止められるので我慢したようだ。
「それでは、移動しまーす」
かなえは2頭を連れて、アニマルドームの砂浜にジャンプして行く。
「それでは今日も一日楽しんで下さいねー」と、かなえはシャワードームの方向へ、エスカで昇って行くジジさん、ババさんを見送る。
ジミーさんの庭に移動して行くと、まだ少し早かったのか誰も居ないが、子猫達の声がするので隣に歩いて行く。
「マリー、おはよう」
マリーが座って、子猫達が丘で遊んでいるのを眺めている。
『あら、かなえ。昨日は楽しかったわー』と、マリー。
「そう? 良かった。ジジさん達は何も言っていなかったけど、マリーの体調はどう?」
『あたしはそんなに長い時間入っていなかったから、体の調子はいつもと同じよ』と、マリー。
……運動しても、筋肉痛にはなっていないみたいね。
「そういえばマリー、明日なんだけどお祭りがあって出掛けるけど、マリーも一緒に行く? リリララ姉妹とジミーさんも一緒よ」
『ふーん、お祭りか……でも人が沢山いるんでしょ? あたし達動物にとってはあまり居心地が良くないわね』
それもそうか……。
「そうね。わかった。いつか混んでいないところへ、みんなでピクニックに行きましょう!」
『そう! それなら行きたいわ』と、マリー。
すると、リリララ姉妹の声がジミーさんの庭の方から聞こえたので、かなえは歩いて行く。
「皆さん、おはようございます!」と、声を掛けると、
「かなえさん、おはようございます」と、リリちゃん。
「おはようございです」と、ちょっとおしいララちゃん。
「やあ、おはよう」と、ベンチに座っているジミーさん。
かなえはテーブルにみんなの朝食を並べると、
「さぁー食べましょう!」と、食事を始める。
今朝のメニューは、トマトとブロッコリーのキッシュとプロの実ソーセージ、コーンブレッドとコンソメスープ。フルーツグラノラヨーグルトに、マンゴジュースと、ジミーさんにはコーヒー、かなえ達にはモーニングティーにした。
かなえはみんなに、明日は朝食を食べてかなえが牧場と、アニマルドームの掃除を終えた、10時ぐらいにお祭りに出発すると伝える。
「はい、わかりました」と、リリちゃん。
「ヤッター、お祭りだー!」とララちゃん。
喜ぶララちゃんを見て、微笑むジミーさん。
みんなの今日の予定を聞くと、
「私とララのクラスは土日は休みなので、今日はドームシティーの温泉に行こうかと思っていました」と、リリちゃん。
「私は、今日のうちにやっておきたい仕事があるからな……」と、ジミーさん。
かなえは食事の終わったテーブルを片付けると、
「それじゃー、一緒に牧場に行く?」と、リリララ姉妹に聞く。
「ぼくじょー、行きたい! ケーキ!」と、ララちゃん。
「でもメラニーさんはお祭りが今日からだから、もう出発してるはずよ?」と、言うと、
「私、牧場に行ってみたいです」と、リリちゃん。
「そうね、リリちゃんはまだ連れて行っていなかったから行こうか? じゃあーララちゃんも一緒ね」
リリララ姉妹が出かける準備をして、また戻って来たのでジミーさんに挨拶をすると、
「行ってらっしゃい」と、見送ってくれる。
ララちゃんはメラニーさんのケーキが無いので、牧場には興味が無いようだったが、一人にしておけないので一緒に連れて行く。
牛舎の中に入ると、リリちゃんが大きなミルクタンクを眺めている。
かなえは隙を見てウオッシュを掛けて行く。
隣の部屋に入って行くと、
「こんなに広いのに牛が全然いないし、臭いもしないんですねー」と、リリちゃん。
かなえが毎日ウオッシュを掛けているので、臭いは全くないしどこも磨かれたようにきれいだ。
「牛達はどこにいるんですか?」と、リリちゃんに聞かれたので、
「みんな牧場の好きな場所で暮らしているの。餌も水もあるから、ここまでくる必要が無いのよ」と、説明する。
「そうなんですかー」と、リリちゃんは感心している。
ララちゃんは退屈なようで、鼻歌を歌いながら後から付いて来る。
牛舎の掃除と、リリちゃんの見学が終わったので、外に出て来ると、ララちゃんがメラニーさんの家の方へ行こうとする。
「ララちゃん、メラニーさん達は、いないみたいよ。また今度来ようね」と、かなえは言い聞かす。
「シロン、3人で牧場を周るのに、お勧めの乗り物は何?」と聞くと、
「カーペット『小』で良いでしょう」と、言われ、地図にカーペットが表示される。
オプションで、座席を付けられるようなので、かなえの座る運転席の他に、後ろに2つ座席を付ける。
かなえは目の前にカーペットを出すと、
「ワァー、乗り物?」と、ララちゃん。
「馬車の荷台ですか?」と、リリちゃん。
カーペットに低めのソファーが置いてある感じで何だかよくわからないようだ。
「乗り物よ。二人とも後ろの席に座ってくれる?」と、言うと、
「はぁーい!」と、元気に乗り込むララちゃん。リリちゃんもララちゃんの隣に座る。
かなえも運転席に乗り込むと、カーペットと座席を透過させて行き、景色が良く見えるようにする。
「あれー、無くなっちゃった!」と、驚くララちゃん。
「フフッ、大丈夫よ。そのまま座っていてね」と、かなえは全体にシールドをしてからインビジブルにして、カーペットを浮上させる。
「あー、浮いたー!」と、興奮してに叫ぶリリララ姉妹。
「それじゃー、動かすねー」と、かなえは地面から5メートル位の所を走らせながら、いつもの様にウオッシュを掛けて行く。
「スゴーイ! 木よりも高いよー」と、ララちゃん。
「あっ、牛がいるー!」と、リリちゃん。
少しリリララ姉妹がカーペットの乗車に慣れて来たので「あそこの池に子牛が落ちていたのよ」とか、「あそこで、牝牛がお腹いっぱいで動けなくなっていたのよ」とか、「そこの丘でいつもアニマルドームに通っているジジさん、ババさんと待ち合わせなの」と、話す。
その度に「へー」とか、「そうなんですか」と、かなえの話を聞いているリリララ姉妹。
一通り案内したので、
「このまま、ドームシティーに行くならこのまま乗って行く?」と聞くと、
「えっ!? いつものジャンプではなくて、運転して行ってくれるんですか?」と、リリちゃん。
そうか……空を飛んで行きたいんだな。
「いいよ、このまま飛んで行こうか?」
「ヤッター! ララ、飛んで行きたい!」と、大きな声で元気なララちゃん。
「はい、私も飛んで行きたいです!」と、遠慮がちなリリちゃん。
「じゃぁー、このまま飛んで行きまーす」
かなえは高度を上げて行き、ミルクドーム全体が見える位置まで浮上すると、ドームシティーに向かってスピードを上げて行く。
「わぁー、はやーい!」ララちゃんは、もう楽しくて仕方が無いといった感じだ。
「わぁー、家が小さい!」と、リリちゃんも、嬉しそう。
良かった……喜んでくれてる。
暫らく走らせて行くと、ドームシティーが見えて来る。
「見て―、ドームシティーだよー」
「えー? スゴーイ」と、ララちゃん。
「上から見ると、全く違うんですねー」と、リリちゃん。
西門の温泉が見えて来たので、高度を下げて行き放牧地のはずれの木の陰に、カーペットを停める。
「ハーイ、着きましたー」
かなえはシールドとインビジブルを解くと、
「ありがとうございました。凄く楽しかったです」と、リリちゃん。
「うん、面白かったー!」と、ララちゃん。
「それじゃー行ってらっしゃい」と、温泉に向かっていく二人を見送り、かなえはカーペットをしまうと、アニマルドームの砂浜に移動して来る。
さぁ―、やることを済ませよう!
かなえは順番に、クイーンの小屋からウオッシュを掛けて行く。次にモモちゃん、キングス達、ジジさん達、そしてリキさんの小屋まで終わらせる。
次に、みんなが良くいる牧草やプロの実が生えている辺りも重点的にウオッシュを掛ける。
山の1合目の温泉から順番にウオッシュを掛けて行き、頂上もきれいにすると、雲の上の温泉に移動する。
「あれ? 誰も居ない……」
かなえはウオッシュを掛けると、昨日造ったばかりのシャワードームの休憩場に移動して来る。
そこでは……4つのシャワードームがフル稼働していた。
ルークス達は昨日よりもスピードを上げているし、マリーとリキさんもいいコンビでダンスでもしているみたいだ。
ジジさん、ババさんは気持ち良さそうに浮かびながら体を動かしていて、キングスとクイーンも良いタイミングで浮かんだり、ドームの壁にバウンドしたりしている。
まさか、みんな全員ここに集まっているとは思わなかったな……。
かなえは暫らく見学していたが、問題無さそうなので子猫達の様子を見に行く。
丘の中で気持ち良さそうに、眠っている子猫達を見ると心が和む。
大人の動物達はあんなに楽しんでいるんだから、この子達にも何か作ってあげたいな……。
うーん……何か無いかな。
「シロン、子猫達に何か遊べるもの作るとしたら、どんなものが良いかな?」
「いろいろありますが、この庭ででしたら、もう一つ丘を造って橋を渡すとか、小さなドームを造ってその中で遊ばせるとかはどうでしょう?」
なるほど、もう一つ丘を作るよりドームを作る方がいろいろ変化を楽しめそうだな。
ちょっと造ってみよう……。
かなえは一旦、子猫達を移して小屋に寝かせると、丘をポーチにしまう。
広い何も無い芝生の庭に、高さ2メートルのドームを出して底を平らにする。その中をトランポリンの様に弾む素材にして、ピンポン玉位の軽くて柔らかいボールを床一面に敷き詰める。
壁は登れるように突起物を付けて、登って行くと天井の部分に子猫達が寝られる位の屋根裏の様な空間を造る。ドームの出入り口はマリーも入れるぐらい、大き目にする。
素材は透明では無く薄く何かわかるぐらいにしておく。
こんな感じかな。
猫は水が苦手って聞くけど、一様シャワードームも造っておこうかな。
かなえは出来上がった、トランポリンのドームの横に、シャワードームも設置する。
大きさはやはり、直径2メートルにして素材は柔らかくし、シャワーの量は小雨ぐらいの勢いで、少しづつ水に慣れさせて行けばいいだろう。重力は少しだけ軽くしておく。
ボールも色々なサイズで床に並べて、空中階段機能もドームの中では解除しておく。
子猫が入れる位のボールも3つ作り、雨宿り用にする。
入口は弱めのトンネルシャワーと、出口に温風シャワーもマリーが入れるサイズにする。
ドームの間に休憩場を造り、フカフカな素材にしておく。
こんな感じかな……。
早く試して欲しいなー。
子猫達はまだ起きそうに無い。
「かなえ、もうすぐお昼です」
あっそうか。それなら先にお昼にしよう。
「シロン、リリララ姉妹は温泉でちゃんと食べているかな?」
「今は2人で売店で食べ物を選んでいるようです」
そう。ちゃんと食べるなら安心ね。
ジミーさんのいる仕事場に行くと、まだ作業をしている様だ。
「ジミーさん、もうお昼ですけどどうしますか?」と、声を掛けると、
「もう、そんな時間か。ちょっと休憩しよう」とジミーさんが仕事場から出て来る。
かなえは、ジミーさんにドームを見てもらいたくなったので、
「ジミーさん、見て下さい。今、子猫達用に造ってみたんです」と、出来上がったドームの方向を指すと、
「おっ! なんだね! 変わった物があるなぁー」と、近付いて行く。
かなえは一緒に近寄って行くと、ドームの説明をする。
「ハハッ! それはおもしろいなぁ。私も試して見たいくらいだ」と、なかなか好評だ。
説明をしながら、ジミーさんの庭のテーブルまで行くと、ランチを出して食べ始める。
かなえはさっき、リリララ姉妹を牧場まで連れて行き、その後ドームシティーまで送って行ったことを話す。
ジミーさんは、静かにかなえの話を聞いてくれる。
また、昨日は大きなシャワードームを造り、動物達に好評な事も話す。
「ハハハッ! そうかい。マリーも他の動物達と仲良く出来ているんだな」と、ジミーさんは嬉しそう。
どうやらジミーさんは、マリー達がシャワードームの中で飛び跳ねている所を見てみたいようだ。
フフっ、あの動物達の姿を見たら、ジミーさん驚くだろうな……。
かなえは最後の一口を食べ終わると、
「じゃぁー、今から行ってみましょうか?」と、ジミーさんを誘う。




