088 新しいドーム
『カナ、カナ、パンですよー、アサですよー』
「うーん……」
『はやくおきてー、おはよー』
「……はい、起きるよー」
かなえはのろのろと、ベットから抜け出すと居間まで歩いて来る。
小さくなったリトくんのご褒美パンを取り出すと、
「はい、リトくんどれにする?」と、聞く。
『ぼくねー、白いパンがイイ』と、リトくん。
かなえはリトくんに、白いココナッツが細かく練り込まれているパンを選ぶと、
「はい、どうぞ」と、渡す。
それを見て、アニマルドームの島に生えているヤシの木に実が生っていたのを思い出す。
あの実もそろそろ収穫できるのかな……あとでどんな具合か見てみよう。
かなえは出掛ける支度を終えると、ジャンプで牧場に向かう。
「おはようございます、ジジさん、ババさん」
『ああ、おはよう』と、ジジさん。
『かなえさん、おはよう。今日もありがとうね』と、ババさん。
どちらもいつもの様に元気そうだ。
かなえはジャンプで皆を島の砂浜に連れて行くと、
「それでは今日も、楽しい一日を」と、エスカで山の方角へ向かっていくジジさんババさんを見送る。
次は……朝食ね。
かなえはジミーさんの家の庭にジャンプして行くと、みんな勢ぞろいで子猫達と遊んでいる。
「皆さん、おはようございます」
かなえは挨拶して、テーブルに料理を出そうとしていると、
「かなえさん、私とララのは、昨日のお昼の食べかけにしてもらえませんか?」と、リリちゃん。
そうね、ララちゃんのはトマトのドリアで、ララちゃんのはパンケーキだから朝食にもなるな……。
「私も昨夜もらったのが、半分残っているからそれを食べる事にするよ」と、ジミーさん。
「そうですか。わかりました」
かなえはリリララ姉妹の食事と、自分様にミネストローネ、パンとチーズたっぷりのパンを選び、お爺さんも自分の食事をコンテナから出して来たので、食べ始める。
「それにしても、この入れ物はすごいね。食べ物が暖かいものはそのままだし、冷たい物も冷たいままだ。いったいどうなっているのか……」
「私も仕組みは良くわからないんですけど、このコンテナの中に入れておくと、最初の状態のまま保存できるそうです。ですから、昨日の様なときに便利なので利用してくださいね」
その後は、ララちゃんが昨日パイをメラニーさんから貰って食べたことや、リリちゃんが、ルルちゃんといい友達になれそうな事などを嬉しそうに話してくれる。
かなえも、ドームシティーに入る時に温泉ポイントがもらえるようになったことを話す。
「そうか、温泉は人気があるんだなー」と、ジミーさん。
「ジーミーちゃんも、温泉に入ればいいよー」と、ララちゃん。
「そうだな。私も行ってみようかのう」と、ジミーさん。
みんなの今日の予定を聞いてみると、ジミーさんは昨日の続きで仕事をするそうで、リリララ姉妹もオクタゴンの教室に行くそうだ。
「ララねー、リアちゃんと同じクラスになれるようにがんばるよー」と、今日は教室に行くらしい。
食事が終わったので、ジミーさん用のコンテナにまた食事と飲み物を補充しておく。
「ジミーさん、まだ無理はしないでちゃんと食事を取るようにしてくださいね」
「いつもすまないね」と、ジミーさん。
ララちゃんは子猫達と遊び出したので、後はリリちゃんに任せて、かなえは牧場へ向かう。
よーし、きれいにするぞー!
かなえは牛舎の中を、ウオッシュを掛けてキレイにして行く。ホコリが飛んでいる所にサッとウオッシュを掛けると一瞬で澄んだ空気に変わる。
牛舎の中が終わると、外の牛達の様子を見ながら牧場の中にウオッシュを掛けて行く。
のんびりと歩いている牛や、休んでいる牛達を見ていると平和だなぁーと思う。
今日も問題無さそうなので、アニマルドームの砂浜に戻って来る。
よーし、次は動物達の小屋の掃除ね。
かなえは、クイーンの小屋からリキさんの小屋までウオッシュを掛けてキレイにする。
小屋の掃除が終わり、砂浜に戻って来る。
「シロン、みんなの様子を教えてくれる?」
「はい。キングスとクイーンは牧草地に居ます。ジジとババは雲の上の温泉に。マリーはリキと一緒に3合目の温泉に居ます。そして、ルークスとモモちゃんは700メートル上空に居ます」
もー! ルークス達はもっと高いところに行ってるのね。
「シロン、ルークス達に上に行かないでもらう方法は無いかな?」
「それでしたら、興味の対象が下にあれば良いのではありませんか?」
それがわからないから聞いているんだけどな。
……うーん。浮かばないから掃除の続きをしよう。
かなえはジャンプで1合目の温泉をウオッシュを掛け3合目に来ると、マリーと、リキさんが泡風呂に入っていた。
「マリー、リキさん、今日の調子はどうですか?」
『あら、かなえ。あたしは問題無いわ』
『わしも、足が大分楽になって来た。ここまで治るなんて想像もしていたかったよ』
「リキさん、まだまだこれからです。暫らくは毎日温泉に入って下さいね。私も毎晩薬を塗りますから」
『ああ、世話になるな。いつの間にか寝てしまって、薬の事は覚えていないんだが』
「いいんですよ。寝ている間も足が治って行きますから。そういえば昨日の温泉の様子を、まだ聞いていませんでしたね」
『そうね。あの温泉は、あれでいいんじゃない? 始めて温泉に入った子達がちょっと戸惑っていたから教えてあげたわ』
『そうだな。わしも始めての時は、何をどうしていいかわからなかったが、とりあえず湯に浸かっていたら、かなえに会ったな』
へー、そうだったんだ。リキさん、堂々としていて、温泉の主の様に見えてたけど……。
「マリー達が居てくれて、助かった動物達が居たのね。ねー、マリー。これからも気が向いた時にドームシティーの温泉に行って様子を見て来てくれない?」
『……うーん、いいけど』
『そうだな。あの場所に慣れた動物が居れば、他の者も助かるだろう』と、リキさん。
マリーは、そんなに嫌がっていないみたいだから、また頼んで見よう。
かなえは3合目の温泉を出ると、頂上にウオッシュを掛け、雲の上の温泉に移動する。
「みなさん、調子はどうですか?」
『温泉は良い気分だぞー』と、ご機嫌なキングス。
『そうね、ここは何といっても眺めが良いもの―』と、クイーン。
ジジさん達も仲良く並んで泡風呂に入り、頷いている。
かなえはウオッシュを掛けながら、
「昨日のドームシティーの温泉の様子を教えてくれますか?」と、言うと、
『評判は良い様だぞ。体調が良くなったと言っていたしな。久しぶりに知り合いに会って、話せたから良かった』と、キングス。
『始めての馬に、偉そうに話したりしてたけど……』と、クイーンはキングスをチラッと見る。
『わしらの、行った温泉は結構混んでいたなー。もう少し広くても良いかもしれないな』と、ジジさん。
『そうねー、休憩場も混んでいたわねー』と、ババさん。
なるほど……温泉が体に良い事が分かればみんな通ってくれるんだろうな。
でも、ジジささん達の行った所はそんなに混んでいたんだ……。
でも、ここの広々とした温泉に比べたら、何処も狭く感じるだろう。
大きさを変えるかどうかは、もう少し様子を見てからかな。
「皆さん、参考になりました。また、これからも気が向いたら、ドームシティーの温泉に行って様子を知らせて下さいね」
『ああ、たまにならいいぞ。いろいろ最近の情報を仕入れるには丁度いいからな」と、キングス。
『そうね、ここに居たら知れなかった事とか、教えてもらえるからいいわ』と、クイーン。
「わかりました。じゃあー、また近いうちに頼みに来ますので宜しくお願いしまーす」
かなえは、ウオッシュを全てかけ終わると、砂浜にジャンプして来る。
突然、ルークス達の事で閃いたので、シロンに聞くことにした。
「ねぇ、シロン。今、思ったんだけど、ルークス達の為に空中で遊びながら、体を洗えるものを何か作れるかな?」
「はい、それは可能です。例えば小さなドームを空中に設置し、その中にいつもシャワーを降らせていれば、遊んでいるだけで汚れが落せるでしょう」
そうか……出来そうだな。でもただ水を降らせているだけだと、すぐに飽きられそうだな。
「シロン、そのドームの素材をトランポリンみたいにバウンドさせられるかな?」
「はい、ゴムの様な跳ねる素材にすることは可能です」
それなら、ルークス達も面白がるかな。
よし、とりあえず造ってみよう。
かなえは地図を取り出すと、雲の上の温泉より少し高い、250メートル位の地点に球状の直径50メートルのドームを設置し、柔らかくてぶつかるとバウンドするような素材にする。
その後に、勢いよくシャワーがドーム全面から中心に向かって飛び出すようにして……うーん、どうしよう。見てみないと分からないな。
かなえはスクーターを出すと、設置したドームの所へ移動する。
すると、大きな丸い半透明なドームの中が温室の様に曇っていて、勢いよくシャワーの流れる音がしている。
入口はどうしよう……。
そうだ、ドームシティーの温泉の様にトンネルシャワー、と温風シャワーを設置しよう。
かなえは丸いドームの横に大きく休憩場を設置して、そこから入口用のトンネルシャワー、そして出口に温風シャワーを設置する。
これでいいかな。
でも……中にも入って感じを確かめたいな。
「シロン、私用のに水着みたいな服はある?」と、聞くと、
「はい、色々ありますので選んでください」と、言われて出て来たのが、フォルダの中の、水着のリストだ。
かなえはその中から上がタンクトップで下がショートパンツの水着を選んで、パッと着替えると、トンネルシャワーに入って行く。
「ワァー!」全身に一気に当たるシャワーに一瞬声を上げるが、マッサージ効果もあり気持ちが良い。
マリーが、トンネルシャワーが好きなのもわかるな……。
そうして、球体のドームに入って行くと「あー!!」と、言っている間に底まで一気に滑り落ちてしまう。
シャワーが一気にかなえに降り注ぎ、結構苦しい。
そのまま飛んでみるが、思った程弾まない。
「シロン、ちょっとシャワーを停めてくれる?」
「はい、わかりました」と、一瞬で水の流れが止まる。
かなえはその場でドームの素材をもっと弾むようにして、底は球体だと不便なので平らにし、弾む強さを上げておく。
お湯は循環型、ドーム全体を自動浄化機能付きにしてと……。
でもシャワーを停めると、空間がガランとしていて物足りない。
そうだ、ボールを入れてみよう。
かなえは両手を広げた位のおおきなボールから片手で持てるぐらいのボールまで色々なサイズの良く弾むボールを床一面に敷き詰めてみる。
ちょっと試して見よう。
もう一度シャワーを全面から出すと、ボールを軽くしたので一気に跳ね上がりドームの中をグルグルと回ったり弾んだりし始める。
端に居たかなえも中心に行き一緒に跳ねると、無重力の中に居るように体が浮いたり、ぶつかって跳ね返ったりと不思議な気分になる。
これ、結構クセになるかも。試して見ると思ったより面白いので、ルークス達も喜んでくれるかもしれないな……。
かなえは一旦外に出ると、シャワーのドームの外の休憩場に出て来て、細かい調整をする。
景観を損ねない様に、シャワーのドームは透明にして、横の休憩場も透明にし、雲を薄く設置する。これで下から見ても雲の上で飛んでいたり、寝転がっているように見えるだろう。
「かなえ、シャワーのドームの中は空中階段やエスカ機能は使えない様にしないと、旨く弾みません」
「あっ、そうね。シロン、そのように設定してくれる?」
「はい、出来ました」
よーし、それじゃールークス達を呼んで来て試してもらおう!
かなえはジャンプしようとすると、
「かなえ、もうお昼の時間ですよ」と、シロンに言われる。
そうか……なら続きは後にして、先にランチにしよう。
かなえはジャンプで仕事場に行きジミーさんにどうするか聞いて見ると、
「私は、もう少しキリが良いところまでやってからにするよ」との事なので、コンテナに、ランチをや飲み物を入れておく。
「シロン、リリララ姉妹は大丈夫そう?」
「はい、授業が終わり二人でセンターパークに向かっています」
そうか、センターパークのカフェでランチにするのかな……。
かなえはジャンプで砂浜に移動し、ランチにする事にした。




