084 ジャングルフード
かなえはオクタゴンの学校の2階に着くと、ララちゃんのお絵描きクラスを覗いてみる。
あっ! いたいた。ララちゃんはフルーツ盛り合わせを見ながら真剣にクレヨンで絵を描いている所だ。
授業が終わった隣のクラスからは、次々と生徒さん達が廊下に出て来る。
すると、リリちゃんも授業が終わったようで、お絵描き教室の前に居るかなえの所に歩いて来た。
「どうだった? 料理教室は」
「はい、楽しかったです。全然知らない事ばかりで勉強になりました」と、リリちゃん。
リリララ姉妹が居た救済ドームでは一般常識を勉強したが、料理はほとんど習っていなかったそうだ。
このオクタゴンの学校は、いつでも好きな時に好きな授業を受ける事が出来、先生の許可があれば上のレベルに進めるそうだ。
リリちゃんの受けた料理教室は、だんだんレベルが高くなるにつれ難しくなり、がんばればプロのコースの授業まで受けられるらしい。
「私、みんなにおいしい食事を、食べさせてあげたいです!」と、リリちゃんはやる気満々だ。
暫らくすると、ララちゃんが教室から出て来る。
「ララちゃん、お絵描きはどうだった?」
「ララ、面白かったよー。ほらー」と、見せてくれたのは、なんとなくフルーツらしき物がいくつか描かれている絵だ。
「ララちゃん、がんばって描いたねー」
「うん!」と、ララちゃんは嬉しそうだ。
「じゃー、もうお昼だからどこかで食べようか。何か食べたいものはある?」と、かなえがリリララ姉妹に聞くと、
「ララねー、ケーキが食べたい」と、ララちゃん。
「私は、いつも美味しいものを食べているので、何でもいいです」と、リリちゃん。
「そう? なら私に任せてね」と、かなえは言うと階段の陰に二人を連れて行き、ジャンプでレストランの側に移動する。
お店の前には大きなバナナの木が植わっている。
かなえはいつかリリララ姉妹を連れて来ようと思っていた「レストラン、ジャングルフード」にやって来た。
「はい、着いたよー。今日はここに入ろうね」
かなえ達はお店の中に入って行くと、いつもの南国風のお姉さんが迎えてくれる。
リリララ姉妹はお店の中のムワッとした空気と、南国のような雰囲気に興味を持ったのか、辺りを見回している。
「可愛いお嬢さん達、ようこそ! こちらへどうぞー」
かなえ達が案内されたのは、ジャングルの木が茂っている店内の、切り株の椅子の席だ。
何処からか水の流れる音もして、本当にジャングルにいるような気分になって来る。
「かなえさん、このお店、中なのに外に居るみたいですね」と、リリちゃん。
「おもしろいねぇー」と、キョロキョロしているララちゃん。
子供受けするのか、家族連れが多い。
テーブルに来たのは、ウエイターの南国の雰囲気のお兄さん。
「やー、皆さん良くいらっしゃいました。こちらがメニューですよー。おいしい料理が沢山ありますから、ゆっくり選んでくださいね」と、言い、戻って行った。
「はい、メニュー、好きなのを選んでね」
「あっ、これあの大きな葉っぱで包まれた料理ですね?!」
リリちゃんは、かなえがたまに買って行くランチを、メニューの絵を見て思い出したようだ。
「そうそう。ここの料理はもう食べたことがあったよね。でもお店で食べるのは私も初めてなんだー」
ララちゃんは、メニューの絵が色とりどりできれいなので、絵本を見るように眺めている。
かなえは、ララちゃんに色々入っているトロピカルランチを勧めると、
「ララねー、これがいい!」と、指をさしたのは、ジャングルランチセットだ。
フルーツやプロの実が入ったカレー風味のピラフとクリームスープに、チョコレートパフェが付いてるようだ。
「私はこれにします」とリリちゃんが決めたのは、
「スープの森のランチセット」だ。
幾つも違う種類のスープと野菜たっぷりサンドウィッチに、選べるデザートの中からマンゴーシャーベットを選んだ。
そして、かなえはジャングルハンバーガーセットにした。
ハンバーグにはかなえの好きなプロの実にアボガドとチーズが挟まれてている。それにフライドオレンジポテトとサラダに、デザートはココナッツパパイヤタルトだ。
飲み物はみんなパッションフルーツソーダにして、決まったので、テーブルについている呼び鈴を鳴らす。
「はぁーい、みなさんお決まりですか?」と、先ほどのお兄さんがやって来る。
次々と自分達の食事を注文すると。
「わかりましたぁー。では、暫らくお待ちくださいね」と、戻って行く。
隣とのテーブルの間隔は、少し離れていて植木が置かれているので、適度にプライバシーが保たれる。
暫らくするとランチが次々と運ばれて来る。
「ワァー、いっぱい!」とララちゃんが自分のランチを見て嬉しそうだ。
料理はテイクアウトと違いラッピングでは無く、バナナの葉のお皿の上に並べられている。野菜で出来た木が飾られて、可愛らしい。
リリちゃんも目をキラキラさせている。
「それじゃー、頂きまーす」と、みんなで食べ始める。
食べながら、聞きそびれていた学校の事をもう少し聞くことにした。
リリちゃんによると、授業料はタダだし材料費やエプロンなどの衣類も用意しなくていいそうだ。
ララちゃんのクラスの絵を描く紙や絵の具などの材料も、教室に置いてあるものを使用するので持って行く必要は無いそう。
だから、オクタゴンの学校はお金を掛けずに学ぶことが出来、趣味としても、仕事として真剣に学ぶ人にも、勉強しやすい環境の様だ。
ララちゃんの様な小さい子から、引退したようなシニアの人も学べるのがいい。
年齢も性別も能力も様々で、お互いに刺激になるのだろうな……。
「ララ、お腹一杯だったら、無理して食べなくていいよ」と、リリちゃんが言う。
「ララちゃん、残してもお家に持って帰って後で食べていいからね。デザートも来るからその辺にしておけば?」
「うん、ララ、チョコパフェ食べるからもういい」と、ララちゃんは、残すことに決めたようだ。まだ半分ほど食べかけだが、ララちゃんにしては良く食べた方だ。
リリちゃんも、かなえも全部は食べられなかったので、やはりテイクアウトする事にした。
お爺さんの事を思い出したので、一人分の本日のお勧めランチと、いつかみんなで食べようと、トロピカルランチを4つ注文しておく。
最後のデザートが来たので食べ始める。
「ララのチョコパフェ、甘くて冷たーい!」と、アイスクリームを頬張るララちゃん。
リリちゃんのマンゴーシャーベットは一つ一つがマンゴーの形をしていて、一口サイズになっている。
かなえのココナッツパパイヤタルトも、下の台の部分がクッキーの様にサクサクで、新鮮なパパイヤとココナッツクリームが、マッチしていて、おいしい。
食べ終わり、リリちゃんが支払うと言ってくれたけれど、学校の入学祝いだと言って、かなえがご馳走する。
「あー、ララお腹いっぱい!」と、ランチの残りの小さなバナナの葉の包みを持ったララちゃんは、とても満足したような顔をしている。
「かなえさん、ご馳走さまでした。いつか私も美味しい料理が作れるようになったら、ご馳走しますから待っていてくださいね」と、リリちゃん。
「うん、楽しみに待ってるね」と、かなえは答えるが、いつかリリちゃんが手料理を作ってくれると思うと、本当に楽しみだ。
かなえが、二人に「午後はどこか行きたいところある?」と、聞くと、
「用事が無ければ温泉に行って働きたい」と、リリちゃんが言うので、二人をジャンプで送って行く。
「時間はあるから、ゆっくり温泉にも入ってくればいいじゃない? それじゃー、また夕方迎えに来るねー」と、二人と別れると、かなえはアニマルドームの砂浜に戻って来る。
ひと息付くと、島にある動物達の小屋の掃除を始める。クイーンのとこから順番に、モモちゃん、キングス達、ジジババさん、そして最後がリキさんの小屋だ。
「シロン、皆の様子はどう?」
「いつものメーンバーは雲の温泉に居ます。ルークス達はおよそ750メートル地点で行ったり来たりしながら遊んでいるようでし、子猫達は起きて庭の中を散策しているようです。そして、リトくん達はジャンプミラーを通って、ドームシティーに戻ったようです」
ふーん、リトくん達、ジャンプミラーの使い方が分かったみたいね……。
ルークス達はまた上空に行っちゃったんだなぁー。
と、考えながら砂浜まで歩いて来ると、眠くなって来たので、
「シロン、ちょっと一休みするから、30分後に起こしてね」と、いつもの様にかなえは砂浜に寝転がる。
「かなえ、起きて下さい。30分経ちましたよ」
「はっ!?」
かなえは一瞬で眠りから覚める。
ありがとう、シロン。
かなえは起き上がると、リリララ姉妹の家の周辺やお爺さんの家の周りにもウオッシュを掛けに行く。お爺さんの家はリビングに子猫達やリリララ姉妹も集まるので、リビングにもウオッシュを掛けておく。
そして、その隣の子猫達の小屋も。庭の中心の子猫達の丘もウオッシュを掛ける。
子猫達は3匹重なるように、丘の中のクッションの上で眠っている。この庭ならお爺さんの家の庭とつながっているし、広いから子猫達3匹だけでも楽しく遊べているようだ。
子猫達と、クッションにもウオッシュを掛けておく。
次は……キングス達が行く牧草地の辺りね。
かなえは普段、皆が食事をしている場所も回り、ウオッシュを掛けて行く。マリー達の行く、プロの実の木の周辺も。
後は……1合目の温泉、3合目と順番にウオッシュを掛け、山の頂上もきれいにする。
最後に雲の温泉に移動して行くと、動物達は休憩場でもうぐっすり眠っている。
かなえはウオッシュを全体と、みんなにも掛けて行く。
良く眠っているリキさんには、ウオッシュを掛けて濡れた毛を乾かし、薬を出して怪我をしている足に塗り込んで行く。
まだ時間が早いが、起きそうにないので、ジジさん達から移動を開始する。次にキングスとクイーン、そしてマリーとリキさんを小屋へ連れて行き、一段落だ。
「シロン、お爺さんはどうしてる?」
「かなえと別れた倉庫街の一角で待ちながら、誰かと話しているようです」
そう、それならもう行こうかな。
かなえは、ジャンプでお爺さんのいるすぐ側に移動し、ビジブルにして歩いて行く。
「お待たせしましたー」
「あー、かなえさん済まないね……この隣に居るのはわしの古い友人でジャックって言うんだが、色々うるさくてなぁー」と、お爺さん。
お爺さんの横には、職人の様な雰囲気の年配の人が立っていた。
「そうですか。ジャックさん、初めまして」
「へーっ、ジミーの言っていたのは本当だったのかい。最近体の調子を悪くしてたから心配してたら、いきなり家が貸し出されていたからよー」
そうだ! お爺さんの名前は、ジミーさんだった……。不動産の書類に名前が記入してあったっけ。
「そうなんです。ジミーさんは、今、動物ギルドの部屋に住んで居らっしゃいます」
「ふーん、そうか。まぁージミーが元気ならそれでいいんだ。またオレの所にも顔を出せよー」と、言いながらジャックさんは、去って行った。
「かなえさん、すまないねぇー。あいつは悪い奴じゃー無いんだが……」
「いいえ。きっと心配されていたんですね。それよりいつも「お爺さん」って呼んですみません。ちゃんとジミーさんってお名前で呼ぶべきでした」
「ハハハっ、いいんだよ。わしみたいな老いぼれは爺さんで丁度いい」
「それで、買い物した荷物はどこにあるんですか?」
「ちょっと、重いのでなぁー、そのまま置かせてもらっているんだ」
「そうですか」
かなえはジミーさんに連れられて、倉庫街を歩いて行くと、ある倉庫の中に入って行く。
すると入口のすぐ左側に、いっぱい詰まっていて膨れている大きな布袋と、中くらいの袋が置いてあった。
「これがわしの荷物なんだ。重いんだが大丈夫かね?」と言われる。
かなえは周りを見渡して、誰も見ていないようなので、ポーチの中にジミーさんのフォルダを作り収納する。
「はい、これで荷物はしまいました。では行きますか?」
「ほーっ、あんな大きなものも入るんだな」と、ジミーさんは、関心している。
「はい、まだまだ入りますから、また買い物があったら言ってくださいね」
ジミーさんの用事は終わったので、リリララ姉妹の所へ二人で移動して行く。




