076 アニマルドームへの引っ越し
「シロン、引っ越し届の書き方を教えてくれる?」
「はい、特に決まった書式はありません。いつ誰が何処に引っ越しするかと、本人のサインと受け付けたギルドのサインがあれば完了です」
そうか、それなら今のうちに出来る所まで書いておこう。
かなえは砂浜でランチを食べ終えると、先に引っ越し届の書類を書いておくことにする。紙とペンを出して……。
よし、これでいいな。
後は、お爺さんのサインをもらえば、ポストに投函出来る。
封筒の宛先にはオクタゴン、引っ越し届在中と書いておく。
書類が出来たので、子猫達を迎えに行く。
小屋まで来ると、子猫達はまだ丘の中のクッションで気持ち良さそうに眠っていた。
かなえは子猫達を静かにケージの中に移動させると、自分の部屋へジャンプで移動する。
そして、動物ギルドに入って行き準備をしていると、リリララ姉妹が元気やって来た。
まだケージに入っている子猫達を見ながら、
「あー、みんな寝てるんだー」と、リリちゃん。
「ひさしぶりー!」と、ララちゃん。
パーティーや、休みがあったので、子猫達にリリララ姉妹が会うのは3日ぶりだ。
子猫達のクッション周りをウオッシュできれいにし、後はリリララ姉妹に任せて部屋に戻って来る。
さてと、じゃー家を造りに行こう!
かなえはアニマルドームの砂浜へ移動する。
地図を広げると、何処にお爺さんの家を設置しようかと考える。
ドームシティーのお爺さんの家は、かなえの部屋と同じ位で手前に居間、奥に2部屋と、キッチンにバストイレだ。それにお店兼作業場があるな。
少なくとも同じぐらいの大きさにはしたい。
それにここにお爺さんを連れて来たとして、今の状態では看病が必要だ。かなえ一人で面倒を見るのは正直大変だ。
「シロン、リリララ姉妹にここで、お爺さんの面倒を見てもらうのはどうかな?」
「はい、明日でリリララ姉妹が動物ギルドで働き出して30日になります。もしこのまま動物ギルドで働いてもらうなら、このアニマルドームの存在やかなえのしていることも、簡単に説明しておく方がいいでしょう。そうすればここへ来てもらい、お爺さんの世話も手伝ってもらえて、子猫達と会う事も出来ます」
そうか……それだと子猫達とリリララ姉妹がいつでも会えるようになるんだ。でも、ドームシティーに行く用事も出て来るだろうし、ジャンプの存在は話しておきたい。
どうしよう……。
「それでは女神さまに聞いてみたらいかがでしょう?」
「そうか。その手があった!」
かなえは紙とペンを出すと、女神さま宛てに手紙を書き始める。
まず、マリーのお爺さんの事。体調が悪いのでアニマルドームに来てもらい看病したい事。それと、リリララ姉妹にもここに来て看病を手伝ってもらいたい事。かなえの腕輪の機能のうち、どこまでをリリララ姉妹やお爺さんに話していいかも教えて欲しいと書いていると……、
「かなえ、上から何か落ちて来ます」と、シロン。
「はぁー? また動物?」
かなえは上を見上げていると、暫らくしてひらひらと、何か砂浜に落ちて来た。
「あっ! 封筒だ」
もう、間違いなく女神様だろう。
かなえは薄く光っている封筒を拾って開けてみると、いつものように女神さまからの手紙が入っていて、
「かなえへ、いいわよ。何処まで話すかはあなたに、任せるわ。温泉はサイズの小さい動物用のも造って、レストランも出来たわよ。見に来てね。メグより」
そして女神さまの手紙は一瞬で燃えてしまった。
「……あー、消えちゃった」
かなえに任せてくれるのは良かった。それに温泉や、レストランも造ったんだー。後で見に行かなきゃな。
よし、それならお爺さんの家と、リリララ姉妹の家も造っちゃおう!
かなえは地図を見ながら何処に家を造ろうかと考える。
やっぱり島の中に造った方がいいな。
かなえは橋やマリー達の小屋からも近い、湖の畔にリリララ姉妹の家と、少し離してお爺さんの家と作業場を造ることにした。
一旦、その辺りに設置した木をすべて片付けると、家「中」を設置し庭を広く取って、芝生を植え周りにフルーツやナッツの生る木を設置する。
リリララ姉妹の家の玄関には犬と猫の扉を付けておく。
庭にパラソル付きのテーブルセットやベンチ、バーベキューセットを設置する。庭の端の所に畑を設置し、野菜やハーブ、根野菜の苗を植える。家の前に花壇も造り、色とりどりの花を植える。家具や食器類は備え付けなので、このままでいいだろう。
お爺さんの家も大体同じだが、庭先でも昼寝が出来るように、アウトドア用の長椅子を置き、離れに焼き釜付の作業場を造った。一人では広いだろうが、マリーや子猫達も出入りするだろうからな。家中の扉に猫と犬の出入り口を付けておく。
家具はどうしようか……ここにあるものは一旦片付けて、お爺さんの家具を配置してみようかな。その方が過ごし易いかもしれない。なので、家具は全て取り除いておく。
大体受け入れ準備が終わったので、お爺さんを迎えに行く事にする。
「かなえ、お爺さんに書類のサインをもらったら、ポストに投函するのを忘れないでください」
「あっ、そうね」
かなえは家造りに夢中で、書類をの事は忘れていた。
お爺さんが起きて居たら先にサインしてもらおう。
さぁー、それじゃーお爺さんを迎えに行こう。
かなえはお爺さんの家の中にジャンプで移動して来ると、ゆっくり部屋に向かい歩いて行く。
お爺さんはまだ眠っているようだ。
マリーもお爺さんの寝ているベットの横で寝ていたようだが、かなえの気配に気づいて目を開けた。
「マリー、お待たせ。何か変わったことは無かった?」
『お爺さん、あれからずっと寝ているのよ、ちょっと心配してたの』
「シロン、お爺さんの具合はどう?」
「はい、先程よりは少し回復しているようです。起きたら何か消化にいいものをあげて下さい」
そう、良かった。
「マリー、お爺さんはさっきより回復しているみたいよ。安心して」
『そうなの……』と、マリーは安心したようだ。
「じゃー私は、家の家具を先に移動させて来るから、準備が終わったらまた来るわね」
『ええ、おねがい』と、マリー。
かなえはお爺さんの寝室以外の全ての物をポーチのお爺さんの私物フォルダに移動させて行く。あっという間に空になったので部屋全体にウオッシュを掛けてキレイにする。ギシギシと鳴っていた床にも、ウオッシュを重ねて掛け修理もしておく。
全て終わったので、寝室に戻ると、
「マリー、お爺さんのベット以外は移動させるね」と、寝室にあったタンスやクローゼットに小さなテーブルと椅子に、置物等もフォルダに移動する。
マリーは次々と消えて行く家具に、目を丸くしている。
そして、寝室にもウオッシュを掛けてキレイにすると、お爺さんのベット以外の物は全て無くなって、ガランとした空間になった。
「マリー、全て片付いたからもう島に移動するよ」と、かなえが言うと、
『ええ、よろしくね』と、マリーが答える。
そして、かなえとマリーはベットに寝ているお爺さんと一緒にアニマルドームの新しいお爺さんの家へジャンプで移動する。
着いたのは新しい部屋の一つだ。タンスやクローゼットに小さなテーブルと椅子をポーチから出して設置して行く。
まだ部屋の空間に余裕があるので、どっしりとした一人用のカウチも設置しておく。
「マリー、他の部屋も準備して来るね」
かなえは寝室を出ると、居間やキッチンにもお爺さんの家具や雑貨を設置する。
居間も前より広くなったので、空いたところにソファーや、テーブル等を足して行くと、居心地の良い部屋が出来上がった。
リビングの窓はテラスになっていてそのまま庭に通じている。
前方には広い空や砂浜に湖が広がっていて気分が良い。
他の空いている2部屋は、お爺さんに何を置きたいか聞いてからにしよう……。
離れの作業場にも、家具や仕事道具を設置する。前面がガラス張りでこの部屋からも湖が良く見える。
「かなえ、そろそろ子猫達を迎えに行く時間です」
もうそんな時間か……。
かなえはお爺さんの所にいるマリーに「子猫達を迎えに行って来るね」と、言って部屋を出て行く。
……もうリリララ姉妹も連れて来ちゃおう!
かなえは部屋へジャンプで移動すると、動物ギルドへ降りて行く。
今日も子猫達が元気に走り回っている。
「みんな、楽しそうねー」
「うん、ララ、猫ちゃん大好きー」と、ララちゃんは楽しそうに猫を追いかける。
「うん、私もー」と、リリちゃんはタイガを捕まえて抱っこしている。
「それで、急なんだけど二人に手伝ってもらいたいことがあるから、一緒に来てくれる?」
「はい、いいですけど……何か持って行くものはありますか?」
「そうね、今日は泊まってもらうから、パジャマと明日の着替え位は持って来てもらおうかな」
「えーっ? お泊りするの?」と、ララちゃん。
「ええそうよ、ララちゃんにも仕事を頼むから宜しくね」
「いいよー、ララお手伝いするー」
「リリちゃんも宜しくね」
「はい、それじゃー、準備して来ます。ララ、行くよ」
リリちゃんはララちゃんを連れて、自分達の部屋に降りて行く。
暫らくすると、大きなカバンを持って、戻って来た。
「そんなに沢山、何を入れて来たの?」と、かなえが聞くと、
「ララが一緒に寝ているぬいぐるみを持って行くって言って……」とリリちゃん。
「フフッ、そうなんだ。いいよ。じゃー出発するからこっちに来て」
かなえはリリララ姉妹を呼ぶと、子猫達の入ったケージを持って島の子猫達の小屋へジャンプする。
「ハーイ、お待たせー」
かなえは何時もの調子で、ケージから出すと、元気に駆け出して行く子猫達。
リリララ姉妹はいきなり動物ギルドから全く違う、島の子猫達の小屋に着きビックリしたようで辺りを見回していしている。
「急に移動したから驚いたと思うけど、ここが普段子猫達が暮らしている島の小屋なの。今はいないけど、犬のマリーと一緒に住んで居るのよ」
「わーララも遊ぶ―」と、ララちゃんは柵をまたいで猫たちの居る庭に入って行く。ジャンプでいきなり移動して来たのに、ララちゃんはあまり気にならないようだ。
「リリちゃん大丈夫? 驚いたでしょう?」
いつまでも言葉を発しないリリちゃんに、かなえは心配になって声を掛けると、
「あのー……どうして急に移動出来たんですか?」と、緊張した様子で質問するリリちゃん。
「そうよねー。驚かせてごめんね。でも心配しないで。何も怖がる事は無いの。私はある人から、頼まれて動物や人を助けているんだけど、今移動して来たジャンプや、他にもいくつかの機能を使わせてもらっているの」
「そうですか……」とまだ、緊張の解けないリリちゃん。
「それで今日ここに来てもらったのは、ある人の面倒を見ることになったんだけど、あなた達に手伝ってもらえないかと思って、来てもらったの」
「はい」
その後も、このアニマルドームの事、どれくらいドームシティーから離れているかや、他にも何頭か動物達が住んで居る事を説明し、
「それで、あなた達が動物ギルドに来てもうすぐ一月になるし、これからも一緒に働いてくれるかどうか、このアニマルドームも見てもらってから決めて欲しいって思ったの。あなたたちの家と、世話をして欲しい、お爺さんの家もあるから着いて来てくれる?」
一通り見てもらってから先の事は決めてもらおう。
かなえは子猫達の小屋から歩いてすぐの、リリララ姉妹用に設置した家に案内する。




