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アニマルレスキュー  作者: コトリコトリ
72/229

072 かなえの計画 


「かなえ、起きて下さい。時間ですよ」

「うーん、はい」

 かなえは目を覚ますと、サッと砂浜から起き上がり砂だらけの自分にウオッシュを掛ける。

 少し寝ただけで頭はスッキリだ。


 かなえはジャンプで放牧地に移動すると、キングス達が馬達と居るのが見えて来る。

「シロン、アンディーは今、どの辺に居るの?」

 家から出て、こちらに向かっている所です。

 本当は休みで、ゆっくり寝て居られるのに悪いことしたかな……。


「あー、来た来た」

 アンディーが駆け足で、かなえの方へやって来るのが見える。

「かなえさーん、すみません。お待たせしましたー」

 アンディーは一度家へ戻ったのか、着替えていて髪が少し湿っている。


「お休みなのにごめんなさいねー」

「いえ……あんなに飲むつもりじゃ、でもシモンズさんが……」

 アンディーは二日酔いで走ったからか、顔色が良くない。


「シロン、お願い」

「はいどうぞ」

 かなえがポーチを開けると、茶色い飴が出て来て「二日酔いの胃のもたれ、人疲れに、チョコレート味」と、表示されている。

 は? 人疲れって……?

 

 かなえをアンディーにすぐ舐めるように飴を渡すと、アンディーは口に入れる。

「あー! 美味しい飴ですねー。胃のむかむかが消えて行く気がします」

 アンディーの好きな味だったようだ。顔色もだんだん良くなって来る。


「それで、聞いたと思うけど、キングス達を連れて来たから、会ってあげて欲しいの」

「はい、分かりました」

 

 かなえとアンディーはキングス達の居る側の柵まで歩いて行くと、

「キングス、クイーン」とかなえが呼ぶと、2頭が側まで近づいて来る。

「わぁー、キングス、元気そうだな。クイーンもきれいな毛並みだ」

 アンディーは2頭の首を撫でて、懐かしそうにしている。


「それで、クイーンは私が連れて行って6日目なんだけど、このままキングスと一緒に暮らさせてもいいか、アンディーに聞きに来たのよ」

「こんなに元気そうな、キングスとクイーンを見たら、戻れとは言えませんよ」

「そう、良かった」

 キングス達も雰囲気でわかったのか、


『そうだ、わし達はもう向こうで暮らすぞ、なぁークイーン』とキングスが言い、

『ええ、そうね。たまにみんなに会いに来れたら、それで良いわ』と、クイーン。

 

 そんな2頭の様子を見たアンディーは、

「まるで何だか、話しているみたいですよね。きっと、ここには戻って来ないとか、たまには顔を出すとか言っているんだろうな」と、話す。

 

 凄い! アンディー、当たっているよ。長年馬達を世話していると、考えていることが分かるようになるのかな……。

 なのでかなえは、

「うん、そうかもしれないね。きっと馬達はそう言っていると、私も思う」と、答えておく。


 話が終わったので、

「それじゃー、私達はもう行くね。飲み過ぎには気を付けて!」

 クイーンに乗るのをアンディーに手伝ってもらうと、キングスに隣を歩いてもらい綱を持つと、ゆっくり歩き出すようにクイーンに頼む。


 あー、馬の上は怖いなー。毎回ほんの数分しか乗らないので、かなえの乗馬の技術は全く向上していない。この分だとすぐに、リリララ姉妹に先を越されてしまうだろう。


「もう、アンディーが見えないところまで来たら教えてね」と、かなえは、キングス達に頼む。

 馬達は目の位置が人間と違うので、振り返らなくても後ろの様子が見えるそうだ。


『もういいぞ』と言われたところで、かなえみんなを連れて砂浜にジャンプして来る。

 そして、クイーンからジャンプで降りると、鞍を外す作業をする。


「久しぶりに放牧場の馬達に会ってどうだったの?」と、かなえが聞くと、

『色々、聞かれたわよー、その毛並みのツヤはどうしたんだとか、何を食べているんだとか、キングスとはどうなったとか、しつこいのよ』と、クイーン。


『それで、温泉のことは簡単に話したんだ。何も言わないわけにはいかなくてな』と、キングス。

「うーん、そうか……」


『ねぇー、かなえ。みんなが温泉に興味を持っちゃって……温泉に入って見たいって言うのよ。どうにかできないかしら?』

『かなえに聞いて見てくれと、頼まれてな』とキングス。

「えーっ……」どうしたらいいだろう。

 

 思い付く方法は2つか。アニマルドームの温泉に来てもらうか、あの放牧地に温泉を造るか……。でも温泉を造ると、放牧地が狭くなっちゃうな。

 どうしよう……。


「いい方法が無いか、ちょっと考えてみるね。少し時間をちょうだい?」

『そうか。助かるよ』『よろしくね』

 かなえが、鞍を外し終わると、2頭は空中階段をゆっくり山に向かって登って行く。

  

「シロン、どうしたら良いと思う?」

「馬達をこのアニマルドームに連れて来るのは、周りの人の目もあるのでお勧めしません。それよりもドームシティーに温泉を設置する方が無理がありません」

 

「うーん。そうか……」



「でも、放牧地に温泉を設置するには狭いし、工事もしないでいきなり温泉が出来たら、周りの人が驚くと思うの」

「その辺りは女神さまに相談すれば良いでしょう」

「相談? でもどうやって?」


「隣の家のポストに手紙を書いて出せば、いずれ返事が来るでしょう」

 なるほど……。

「わかったわ」


 かなえは砂浜のテーブルで紙とペンを出すと、手紙を書き始める。

 まずは昨日のパーティーの御礼ね。

 実際、パーティー会場をあのまま動物ギルドにしていたら、混雑していただろう。


 公園でのパーティーは雰囲気も良く、みんなもくつろげた。

 演奏も素晴らしかったし、最後の後片付けまでしてもらった。

 

 その辺りを感謝の気持ちにして書き終えると、アニマルドームでの出来事、ルークスとモモちゃんがすくすくと育っている事等を知らせておく。

 

 そして、最後に放牧場の馬達が温泉に入りたがっている事。出来れば他の馬達の為にもドームシティーかその近辺に温泉を造りたい事を書き、ペンを置く。

 

 うーん、これでいいかな。かなえは封筒に入れると、かなえの家の隣にジャンプで移動し、玄関の横のポストに書いた手紙を投函する。

 

 よし、終わった。あとはもうゆっくりしよう。かなえはアニマルドームに戻ろうとすると、

「かなえ、動物ギルドのポストに何か投函されました」


「はっ? まさかもう返事が!」

 いやいや、だって今出したばかりだし、まだ読んでも居ないのに返事を書いて出すなんて……。

 とにかく見てみよう。


 かなえは動物ギルドに入ると、玄関横のポストを開けて……。

 なにやら薄っすら光っている封筒が出て来た。宛先は「かなえ」になっている。


 これはもう間違いなさそうだ。

 かなえは封筒を開けると中から少し光っているいい匂いの紙が出て来て、


「かなえ、昨夜はご苦労様。あなたは良くやっていたと思うわ。 

 ドームシティーに温泉なんて、私には思いつかなかったわ。ドームの壁を広げておいたから、好きにやってちょうだい。

 どうせやるなら人間用の温泉も作ったらいいんじゃないかしら。何ヶ所か造ればいいんじゃない? 細かいところは任せるわ。今日一日人からは見えない様にしておくから宜しくね。メグより」


 と、紙の文字と一緒に女神さまの声がして来て、最後に読み終わると紙と封筒が消滅した。


「はっ? 消えた!? 消えたよね、シロン」

「はい、消えました。女神さまからの返事でしたね」

 色々と不思議で……女神さまにはいつも驚かされる。


「シロン、女神さまはもうドームシティーの壁を広げたから今日中に温泉を造れって言ったのであってる?」

「はい、その通りです。馬用と人間用の温泉をこのドームシティーに造るようにとの事です」


 やっぱりそうか。

「シロン、どーしよう……」

「とりあえず、ドームシティーの壁がどれくらい広くなったのかを確認したらいかがでしょう」


「あっ、そうね。わかったわ」

 かなえはスクーターを出すと、インビジブルにしてドームシティーの上空に移動して行く。

 だんだん高度を上げて行くとドームシティーの丸い町の様子が見えてくるが……、


「あーっ! ホントだ。広がってる!」

 もともとあった壁が消えて、一回り大きくなっているのがわかる。

 なのにその周辺に居る人や動物達は、壁が移動した事には全く気が付いていないようだ。


「どこから手を付けたらいいんだろう……」

「大きな円と考えず、一通り設備の整ったものを1か所造り、あとはリピートして行けば良いでしょう」

 そうか、大きいと思わず、スーパー銭湯みたいなものを一つ作って、同じものを何ヶ所も設置すればいいのね。


 かなえは、キングス達がいた放牧地の上まで移動すると、何を何処に設置するか考え始める。

 ……ここは西門から直ぐだから、長距離を移動して来た馬や御者さんにも利用しやすい様にした方がいいな。放牧地ももっと広くして。

 うーんでもなー。


「シロン、西門の入口の所に馬車を停める駐車場を増やそうと思うんだけど、何に気を付ければいいの?」

「それでは実際働いている人達に聞いて見たらどうでしょう?」

 なるほど。生の意見を聞くのが一番か。


「そうね。わかったわ」

 かなえはジャンプで西門の側まで移動すると、馬車を停めている御者さんに聞いて見ることにした。


「すみません、ちょっとお聞きしたいんですが……あのー私『町の暮らし』について勉強しているんです。この西門の周辺で不便な事とか改善して欲しいことはありますか?」


「お嬢さん、そんなことを勉強しているのか。偉いねー」

 その年配の優しそうな御者さんは、ドームとドームの間の中距離の荷物を配達をしているそうだ。


 ……宅配サービスの様な仕事かな。

 丁度仕事が終わったところで馬を休ませていたそう。

 

 その御者さんが言うのは、この西門だけでなくどの門の側も、時間帯によっては混雑して待たされる事、やっとドームシティーに入って来ても馬達に飲ませる水飲み場が少ない事。放牧地が込み合う事。


 この周辺にちょっと昼寝が出来る場所が欲しい事等、結構具体的に話してくれた。

 その御者さんは腰をさすっていたので、シロンに腰痛の緩和飴を舐めてもらう。


 次は誰に聞こう……。

 西門の所へ近づいて行くと、出て行く側は空いているが、ドームシティーに入って来る方には列が出来ているようだ。暫らく様子を見ていると、守衛の人が交代なのか一人、詰め所に入り椅子に坐るのが見えた。



 かなえは近寄って行くと、

「こんにちは、お忙しいところすみません、ちょっとお話を聞かせてもらえませんか?」

「何だね、君は? こんな所まで来たらいかんよ」

 40代位の守衛さん、ご機嫌がよろしくないみたい。


「はい、実は『町のくらし』について調べているんですが、この西門について改善して欲しい点などがあれば教えてもらえませんか?」


「不便な点かね? あんたのようなお嬢さんに言っても仕方が無いが……」と、言いながら出て来る、出て来る、ほとんど愚痴を聞かされたような感じだ。

 

 かなえはお礼にシロンから飴を出してもらうと「精神的肉体的な疲れの緩和飴」と表示された飴を渡す。

「色々、お話を聞かせてもらい、ありがとうございました」と言い、かなえは守衛の詰め所から出て来る。


 かなえはもう一度、スクーターに乗り上空まで上がると、守衛さんに言われた愚痴の中から「渋滞を何とかして欲しい」という言葉を思い出し、西門周辺を眺める。

「どうすれば渋滞したくなるんだろう……」



「かなえ、門の事も大切ですが、今日は温泉の設置を先にするべきではありませんか?」と、シロン。

「あっ、そうだった」

 女神さまは、今日中にやるように言っていたものね。



「よーし!」

 動物達も、人間も喜ぶような温泉を造るぞー!

 かなえは地図を開けて、どんな温泉を設置するか考え始める。


 


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