068 パーティ―が始まる
かなえはアニマルドームから部屋に戻ると、一旦呼吸を整える。
そして、紙に書いておいたパーティーの段取りを頭に入れて行く。
リリララ姉妹や手伝いの人が来るのは17時頃だから……あと4時間近く準備する時間があるな。
でも、リトくん達とジジさん達を迎えに行くのも忘れない様にしないと。
「シロン、16時になったら、アニマルドームに行くから教えてくれる?」
「はい、分かりました」
「シロン、何かパーティーの準備で気が付いたことはある?」
「そうですね……」
シロンは色々アドバイスをくれたが、全部は間に合いそうにないので出来そうなところだけやっておく。
まずは、氷の製造機があるそうなので、ドリンクカウンターの下に設置してもらう。
それに……パーティーは夜なので、灯りをパーティー仕様にする。
買っておいた玄関の植木にも使用した電飾を、壁に付ける。
……なるほど、もう少しパーティーっぽい雰囲気になった。
他にシロンに言われたのは、花を飾る事だ。シロン曰く、
「豪華にする必要はありませんが、花があるとその場が華やかになります」だそうだ。
前に、市場でリリララ姉妹に選んでもらった花の植木鉢はあるが、それでは足りないようだ。
かなえはジャンプで市場に行くと、花屋さんに直行する。
「こんにちはー」
かなえは以前玄関の植木を購入したガーデニングの店まで来ると、お店の人に声を掛ける。
「あー、あなたは前にも買ってくれた……ギルドの人だったね」
「そうです。あの植木を届けてもらい、ありがとうございます。玄関にピッタリでとても気に入っています」
かなえはお店の人に、パーティー用の花を幾つか欲しいと言うと、お花売り場に案内される。
どれも素敵だが、ちょっと派手だったり、小さすぎたりとしっくり来ない。
「それならこっちにあるのはどうだい?」
お店の人に案内されたのは、前に植木を見つけた辺りだ。
そこには、壁掛けに植木が小さく飾られていたり、天井から丸い植木に小人が乗ってぶら下がっていたりと一つ一つ細かい装飾がされている。
「あー! これって私が購入し植木と同じ人が作ったんですか?」
「ああ、そうだよ。面白いだろ? 最近結構人気が出て来ているんだよ」
欲しいな……でもパーティーの為と言うより普段から飾っておきたい感じだな。
「あのー気に入ったんですけど、この植木にパーティっぽく花を追加したりしてもらえますか?」
「そうだなー。あっ……もうすぐその植木装飾を作った芸術家が来るから頼んで見ようか?」
「はい、是非お願いします」
結局、そのお店ではかなえが気に入った植木装飾と切り花を購入し、パーティーが始まるまでに届けてもらう事になった。
「あのー、良かったら今晩パーティーにも参加してください。お店をしている職人さんが主な、気取らないパーティーですし、飲み物も食べ物も用意していますから」
かなえはパーティーの招待状を渡しながら、
「良ければご家族やお友達と、いらしてくださいね」と、言うとお店を出て部屋に戻って来る。
動物ギルドに降りて行き、パーティー準備の続きを始める。
外の扉にウェルカムサインを付けて、まだ明るいが忘れないよう、植木の電飾も点けておく。
家の外や道の周辺もウオッシュを掛ける。
大体こんな感じでいいだろう。
「シロン、これぐらいやればいいでしょ?」
「はい、そうですね。ではかなえのドレスを、今のうちに決めておきましょうか」
「えー!? そうか。ドレスの事はすっかり忘れてたー! シロンどうしよー」
なんで自分のドレスの事は忘れていたんだろう……。
「かなえ、フォルダにドレスのリストもありますから問題ありません」
あっ、そうだった。でももう少し前に教えてくれればいいのに……。
きっとシロンにとっては、毎日の服選びと同じ感覚なんだろうな。
まぁー、知らせてくれただけでも感謝しておこう。
かなえは一旦部屋に戻ると、フォルダのドレスの中から動物ギルドのパーティー用を開けると、幾つかドレスや靴、アクセサリーのセットが表示される。
「どれにしよう……」
かなえは鏡の前まで来ると、「パッ」と順にドレスを替えて行き、今日のパーティーの趣旨に合ったものに決める。
かなえが選んだのは、光沢のあるタフタの生地で出来たクリーム色のドレスだ。
上半身はレースで、スカートの部分がタフタに薄くチュールがフワッと重なっている。
アクセサリーは白い光沢のある石のネックレスとピアスで良いところの娘さん風だ。
髪をアップにすると、16才ではなく18才ぐらいに見える。自動的にメイクもされているようで、唇がピンク色になっている。
靴は5センチぐらいのヒールで、ドレスにピッタリな薄いレモン色だ。
ポーチはドレスと共布でウエストポーチに変わっている。
うん、これでいいな。これなら普段着で来る人にも、着飾って来る人にも失礼では無いだろう。
「かなえ、そろそろアニマルドームに行く時間です」
「えー!? もう!」
どうしよう、いいかこの格好で……。
かなえはジャンプで山の雲の温泉に移動すると……。
みんな思いっきりくつろいだ体勢で眠っている。
フフッ、きっとここの温泉を堪能してくれたんだろう。
かなえはジジさん、ババさんを牧場へ移動させ、キングスとクイーンも小屋へ連れて行き、マリーも小屋へ移動させると……、
子猫達は、どこかな?
小屋には居ないので、先程設置した大きな丘の中を覗いてみると……、
3匹揃って一番下のクッションで仲良く眠っている。
可愛いなー。
きっと、この丘で走り回っていたんだろうな。
このままでもいいが、マリーが起きた時、子猫達が居ないと心配すると思い、子猫達を小屋へ移動させる。
あとは―、リトくん達ね。
「シロン、リトくん達はどこかしら?」
「今は、上空のルークス達の所に居ます」
「へー、珍しいな」
かなえは、スクーターを出すと、ルークス達の居る上空まで移動する。
ハハッ! モモちゃんはルークスの背に乗り、リトくんとピーちゃんはモモちゃんの背にとまっている。
「どうしたの? みんなで何してるの?」
『あーっ! カナカナ。ぼくねーみんな乗せてるよー』とルークス。
『カナ、カナ、おもしろいよー』と、リトくん。
『キャハ、キャハ』と、モモちゃん。
『ルークいっぱいうごくよー』と、ピーちゃん。
ルークスは1メートルの高さをピョンピョン飛びながら移動するが、その上のに乗るモモちゃんがクッションになり、リトくんとピーちゃんには丁度いい揺れに緩和されているようで、乗っているのが面白いみたいだ。
……まぁー、楽しいならいいか。
「リトくん、ピーちゃん、迎えに来たからかえろー」
『えー? もう帰っちゃうのー』とルークス。
こんなに、体の大きさも身体能力も違うのに一緒に遊べるんだなー……。
「うん、またリトくん達を連れて来るから一緒に遊んでね」
『うん! ぼく、なかよくできるよー!』と、ルークスはピョンピョン跳ねて階段を上って行き、モモちゃんはルークスの上でロデオでもしているように揺れ始める。
うーん、モモちゃんも全く問題無さそうだからいいか……。
かなえは、リトくんとピーちゃんを連れてジャンプで部屋へ戻って来る。
リトくん達が窓から飛んで行こうとするので、
今日はパーティーがある事、リアちゃん達も参加するので、夜居なくても心配しないようにと伝えておく。
『わかったー』と、リトくんは言うとピーちゃんと一緒に外へ飛び立って行く。
「あれ? 何だろう」
……いつもと外の様子が違うような気がする。
飛んで行くリトくん達を見送り、窓から離れようとしたら、目の前の公園の様子が少し違っている気がした。
かなえはじっくり眺めていると、
「あーっ! 木がなーい!」
そんなはずあるわけない、と思うがどう考えても木の配置が違っている。
それに、玄関の正面にあるはずの公園の大きな木が無くなっている。
「いつの間に木を抜いたんだろう……」
かなえは気になったが、それよりパーティーの準備だと思、動物ギルドに降りて行く。
「シロン、この建物だけ防音に出来る?」
「はい、小さなドームでこの建物を覆えば防音機能も付けられます」
そうなんだ。それは便利だな。
もしお隣さんがパーティーに参加しないで家に居たら、うるさくて迷惑になるだろう。
「シロン、それじゃー防音機能をお願い」
「はい、分かりました」
これで少しぐらい大きい声を出しても、近所迷惑にならないな。
そろそろ食事も準備しよう。
そう思っていると、
「カンカン」と、扉を鳴らす音がする。
誰だろう? まだ時間には早いけど……。
かなえは扉を開けると、かなえのドレスをもっと派手にしたような、薄い水色のロングドレスの綺麗なお姉さんが居た。
「えーと……どちら様ですか?」
「フフっ、わからない? わ、た、し、よ!」
「はっ? いいえ、お会いしたことは無いと思いますが」
「もーっ、じれったいわねー。メグよ。メグ!」
「もしかして、女神様ですかー?!」
でも、女神さまにしては、ゴージャス感が大分薄れている。
「あらっ、やっとわかったの。ちょっと地味にしてみたわ。あなたが招待状をくれたから来てあげたわよ」
「私は招待状を送っていませんが……」
「やーね。かなえったら! 隣のポストに入っていたわよ」
「エーっ! 女神さま、隣に住んで居たんですか?」
「まぁーそう言う事にしておいて。隣が空いていたから丁度いいと思ってキープしておいたの」
そうか、だから何度訪ねても不在だったんだな……。
「そうよ、それより準備が出来たから見に来て!」と、女神さまはかなえと一緒にジャンプで移動して行く」
「あーっ、凄ーい! 綺麗!」
女神様に連れて来られたのは、外のパーティー会場の様な所だ。
大きな木に電飾が巻かれていてまるでクリスマスのようだ。
沢山の丸いテーブルにテーブルクロスが豪華な感じを引き立てている。
まるで披露宴かガーデンパーティー会場みたい……。
それも200人は収容できそうな。
お料理コーナーにはご馳走が並んでいる。
その隣にはバーカウンターと見覚えのある切り株のカウンターもあり……。
「あれ?! ここはどこですか?」
「やーねー。ここはあなたの家の向かいの公園じゃない。あそこじゃ狭いからここでやりましょう!」
「はー!? でも公共の場で勝手にパーティーなんてダメなんじゃ……」
「いいのよ。ちゃんと報告すれば……面倒な事は全て私がしておいたから大丈夫よ」
「それに、ここじゃー近所迷惑なんじゃー?」
「何言っているの、あなただってやったでしょ。防音効果を付ければ問題無いじゃない」
あっそーか。でも……。
かなえがいろんな疑問を投げかける度に、女神さまがその都度問題無いことを説明して行く。
確かにこんなに広くて豪華な空間でパーティーが出来たら、来てくれた人達も喜んでくれるだろ。
年配の人もゆっくり出来そうな椅子や、女の子たちがお絵かきをして楽しめる、コーナーもちゃんと造ってある。
入口の横にコート掛けと荷物置き場まであるよ……。
こうなったら仕方が無い。覚悟を決めよう。急な会場の変更だが、なぜかダメな理由を全部否定されて、ここでやるしか無くなってしまった。
「あなたの準備した料理はちょっと色を付けて並べてあるわよ」
それはどういう意味だろう……。
料理が置いてあるカウンターに見に行くと、かなえの準備した料理が倍の量になって並び、温熱や冷却機能のある台の上に乗せられている。
凄い……なんだかわからないけど、何もかもバージョンアップしている。
「とりあえずこれぐらいで、足りなくなったらまた出せばいいわ」
女神さま、何だか楽しそうだけどパーティーの準備をこんなに積極的にやるタイプだとは思わなかった……。
「かなえ、また変な事考えてないで、パーティー会場がここに変更になったって、張り紙して来なさい」
「あっ!」
そうだ、もうすぐ配達の人達も来てしまう。急がなきゃ。
かなえは入口の所に女神様が設置した、真っ白でデコレーションケーキみたいに装飾された、受け付けのテーブルの所で、張り紙を作り始める。
そういえば……。
「女神様、まだこれからデザートとスープに花が届きますから……その人達もパーティーに参加しますし」
「大丈夫よ、私に任せておいて」
女神様が来てくれて……良かったのかな? 気持ちが楽になったような、困るような複雑な気分だ。
でも今は、出来る事をやろう。




