066 空中階段
かなえは眠っている子猫達を連れてジャンプで部屋に行き、動物ギルドに降りて行く。
子猫達をクッションに寝かせると、まだ時間が早いので、パーティーの準備の続きを始める。食器やグラスを一旦テーブルに乗せ、使う分をまとめておく。
何杯も飲んだり食べたりする人もいるだろうから、倍の数を用意しておこう。
かなえは60セットづつ、準備しておく。
そうだ! 動物ギルドの手提げ袋も壁に飾っておこう。それと手提げ袋のデザイン画も飾ってと……。
まだ飾りつけの材料は残っているが、あまりやり過ぎるとくどいので、このくらいでやめておく。
ジョーさんの切り株のカウンターで飲み物を作ってもらおうかな……。
すると、下から足音がして、リリララ姉妹が中に入って来る。
「わー、綺麗! パーティ―の準備ですね」とリリちゃん。
「いっぱい飾りがある―」とララちゃん。
「うん、そうよ。今のうちに出来ることはやっておいたの」
「私にも何かやれることはありますか?」とリリちゃん。
うーん、そうだなー……。
「それなら……」
かなえは一旦奥に行き、名前を書いたネームプレートを持って来て、リリララ姉妹に見せる。
「これはネームプレートなんだけど、来たお客さんに渡して付けてもらって欲しいの。わかっている人には名前を書いておいたんだけど、わからない人には明日、来た時に書いてもらってくれる?」
かなえはペンとネームプレート、取り付けるクリップをリリララ姉妹に見せる。
「はい、分かりました」とリリちゃん。
「ララわかったよー」とララちゃん。
「前にも言ったけど、明日は13時からでは無くて17時からここに来てね。パーティーは18時からだから少し前から二人で受付にいてもらって、19時にはもう食べたり飲んだりしてね」
そして、リアちゃんとルルちゃんのネームプレートを見せながら、仲良くお話をしたり絵を書いたり楽しむように伝える。
あと、シロンに用意してもらった、薄い水色の飴を4つリリちゃんに渡し、
「この飴はスーッとしていて頭が冴えるから眠気が治まるの。まだ起きて居たいのに眠くなったら舐めてね。リアちゃんとルルちゃんにもあげてもいいし。でももう寝たくなったらいつでも部屋に戻って寝ていいから」
渡した飴には「眠気スッキリ飴、ミント味女の子用」と表示されている。
かなえも眠くなったら困るのですぐに舐められるように、準備しておく。
今のうちにお絵かきセットもリリちゃんに渡しておく。
「今日もお絵かきしても良いよ」と言うと、
「ララお絵かきすきー」とララちゃんが嬉しそう。
「それじゃー、宜しくね。明日届けるランチは扉の外に掛けておくからゆっくり眠ってね」
とリリララ姉妹に言うと、話し終えたので、アニマルドームの砂浜に移動して来る。
さー、次は切り替えてと……。
シロン、階段落下機能だけど、ジジさん達向けの機能はあるの?」
「はい、先ほどルークスには段差を1メートルに設定しましたが、もっと狭めることも段差を無くしてスロープにすることも可能です」
なるほど、ジジさん達にはスロープの方がいいのかな……。
「それに、ルークスには付けていませんが本人だけに体の向きに合わせて階段を薄く表示することができます」
「へー、自分専用の階段が見えるってことね。もしかして階段落下じゃなくて階段を上る機能もあるの?」
「はい、階段上昇機能もあります」
そうか、ならその機能も付けた方が便利よね。
よし、大体わかった。
かなえはジャンプでまず5合目のマリーの所へ行く。
マリーはトンネルシャワーを浴びていたので、かなえは簡単にルークス達の事、階段の事を話し、今からジジさん達にも試してもらうと話すと、
『また何か新しい事をするのね。もちろんあたしも行くわ』と、マリーも興味津々だ。
「お待たせしましたー」
かなえはマリーと一緒に3合目の温泉に行き、階段落下と上昇の機能を説明すると、
みんな、乗り気な様で、ジジさんが湯船から上がってかなえの所へやって来る。
『おお、それはいいな。頼むよ』とジジさん。
『私もお願いね』と、ババさんもジジさんの隣に来る。
キングスとクイーンも、その後に続いて来る。
「それでは、まず私がやってみますので見ていてください」
ぞろぞろとみんな揃って3合目の広場に出て来て、ジーッとかなえの動きに注目している。
いきなり山から空中に歩いて行くのは勇気がいるので、かなえはまず1メートル位上の山肌の、平らな所にジャンプする。
そして、シロンに付けてもらった階段上昇機能を使って、みんなのいる方向へ、空中に1歩づつ登り始める。
かなえには、薄く階段が見えているので思ったほど怖くない。
「こうやって、階段を上るように空中を登って行くことができます」
そして、次はみんなの横へ階段落下機能を使って地面まで降りて来た。
それを見たみんなは、
『おお』『なるほど』『凄いわ!』『あたしに出来るかな?』と感想を述べる。
「では、ジジさんから行きますか?」
『おお、そうだな。やってみよう』
「もうジジさんにも、階段落下と上昇機能は付けましたので、どうぞ試して見て下さい。まず、ジジさんはその場から私が居た1メートル上の山肌まで行ってみてもらえますか?」
『よし! わしはやるぞー』
ジジさんは重い体を1歩づつ進めて、空中を登って行く。
『わぁージジが登ってくー!』『凄い凄い』『いいぞー』と周りもジジさんを応援する。
ジジさんは無事登れたので、
「ジジさん、ではまたここまで降りて来てください」と、かなえが言うと、
『よし、わかった』と、ジジさんはまた空中を降りて来てババさんの横へ戻って来た。
「はーい、ジジさんはうまく出来ましたね。それでは他の皆さんも順番にやって見て下さい」
すると、まずキングスが登り始め、次にババさんそしてクイーンとマリーともみんなうまく出来た。
「次はここから地上に降りて行ってみましょう。私がまずやってみますので、皆さんも出来そうなら後に着いて来てください」
かなえは身体を山の下の方向に向けると、降りる階段が現れたので、1歩づつ降りて行く。
暫らく進んだので、後ろを振り返るとジジさんも後に着いて来て、その後をキングス、そして他の皆も後に続いている。
かなえは地上まであと半分の所まで来て、引き返し山の方へ登って行く。
すぐ後ろまで来ていたジジさんに、
「じゃー、今度は上へ登ってみましょう」と言い、後から来ていたみんなも方向転換をして登り始める。
体の方向を行きたい方へ向けると階段もそれに合わせて移動するので、とても便利だ。階段から落ちる心配も無い。
でも動物達がみんな宙を歩いている姿は、他の人に見せられないなぁー。
ルークスの安全の為と思って始めたけれど、常識からはどんどん離れて行く気がする……。みんなには外で使わない様に釘を刺しておかなきゃ。
次々と、かなえの後に着いて、3合目の広場に戻って来る。最後のマリーも辿り着いたので、
「皆さん、どうでしたか? 階段の高さは微調整出来ますので言ってくださいね」
『わしは、暫らくこれで試したいの』とジジさん。
『私はもう少し低くしてもらえる?』とババさん。
キングスとクイーンはもう少し高く、マリーはそのままでいいそうだ。
「では、これからはどうぞ好きな所へ移動して見て下さい。ただ、この機能はこのアニマルドームだけで使用してくださいね」
『ああ、そうだな』『いいぞ』『わかったわ』と、みんな返事をし、また空中へ歩き出して行く。
楽しそうに、空中を歩いて行くみんな。
……温泉でもいいけど、これならいい運動になりそうね。
かなえは3合目の広場でみんなの様子を眺めていると、下からモモちゃんの上に乗ってルークスが近づいてくる。
「ルークス、モモちゃん。楽しんでる?」
『カナカナ、なに? パパもみんなかいだん?』
ああ、ルークスはみんなも階段機能を使っているから驚いているみたい。
「そうよ。ルークスとモモちゃんの事を話したら、みんなも『やりたい』って言うから、今練習しているのよ」
『ぼくパパの所いってくる! いこーモモちゃん』
ルークスはキングスの居る所へモモちゃんに乗って移動して行く。
「かなえ、ルークスの階段は落下機能だけで、1メートルの高さがあり表示されていませんが変更しますか?」
「そうか、そうね……」
どうしよう……階段の高さを低くすると歩きやすくなるけど、元気なルークスにはそんなに苦では無いだろうな。却っていい運動になるだろう。
そうだ! 高さはそのままで、階段は表示させて上昇機能も付けよう。
「シロン、ルークスの階段に上昇機能も付けて表示してくれる? 階段の高さはそのままでいいわ」
「はい、わかりました」
ルークスはキングスと話しているので、今その機能を付けてもらう。
すると、
『ぼくの階段、見えるよー!』とルークスが叫ぶのが聞こえる。
そして、ドンドン降りて行き、上の方にいるキングスの方へ振り返ると、上に登る階段も表示されたようで、
『あー、ぼくの階段、上にものぼれるのー?』とルークスはキングスの側までポンポン飛んで登って来る。
凄いなー。ルークスは1メートルの階段を簡単に登れるんだな。
ハハッ、今度はモモちゃんがルークスの上に乗っているよ。
そうね。今度は交代して乗せてもらえばいいよ……。
もしかしたら、この機能があればもう道も橋もいらなくなるのね。
階段の高さを無くせばほとんど平にも出来るだろうし。
「シロン、空中に温泉を造ることも出来るの?」
「はい、可能です。温泉や小屋、牧草地等、この地上にあるものと同じように設置出来ますので、空間を有効活用出来ます」
それって凄いことだなー。
ただ、上には自力で登らなければいけないから、あまり上の方だとお年寄りにはきついな。でもまた何か考えてみよう。ルークスとモモちゃんも暫らくは退屈しないだろう。
かなえは暫らく、みんなの様子を眺めていた。
もうそろそろ帰る時間なので、自分の部屋にジャンプすると、子猫達を迎えに行く。
「はーい、ご苦労様―」
かなえが部屋に入って行くと、いつもの様に子猫達が走り回りリリララ姉妹が後を追っている。
「みんなー、帰るよー」
かなえがケージを開けると、我先にと中に入って来る。
子猫達はリリララ姉妹に鳴いて挨拶をする。
「それじゃー、明日は17時からお願いね。ドレスを着て、準備して来てね」
「はい、分かりました」とリリちゃん。
「ララねー、ドレス今日も着たんだよー」とララちゃん。
「そう。それなら明日もちゃんと着れるね」
かなえは明日の注意事項を伝えると、部屋に戻りアニマルドームの小屋へ移動して来る。
「はい、出ていいよー」
かなえは子猫達をケージから出し、庭を走り回っている様子を眺める。
「シロン、子猫達にも階段落下機能を付けておきたいんだけど」
「はい、高さはどれくらいにしますか?」
「安全の為だから、1メートルで表示もしなくていいわ」
「はいわかりました……はい、出来ました」
「ありがとう」
これで、子猫達もどこから落ちても怪我は防げるだろう。
もっと大きくなったら高さは変更しなきゃな……。
「マリーは後で戻って来るから、仲良く遊んでいてね」
『いいよー』『ハーイ』『わかったー』
子猫達は返事はするが、遊ぶのに夢中の様だ。
「シロン、他のみんなはどうしてる?」
「ルークス達以外は、温泉で湯船に浸かったり、シャワーを浴びています」
そうか、ならまだ時間が掛かるわね。
かなえはジャンプで山の頂上へ行き、夕食を食べることにする。
何を食べようかなー。かなえはポーチの食事のリストを眺めながら、
イタ飯屋のバジルソースのパスタとトマトとひよこ豆ののチーズグラタン、グリーンサラダ。それに、チョコムースとオレンジアイスティーを選んで食べ始める。
「ああー美味しいー!」
この体になってから、食べるとお腹が膨れるけど朝起きると、ペッタンコなのよね……。
以前の32才、ポッチャリなかなえが、これだけ毎日高カロリーの物を食べて居たらもっと贅肉が付いていただろう……。
体は16才だから代謝がいいのかな。
だんだん、夕日が濃くなって行くのを眺めていると、上空にルークス達が行ったり来たりしているのが見える。
ルークスとモモちゃんは、人からは見えない設定にしているので、見られる心配は無いな。
だから問題無いだろう……たぶん。
上の方に、休憩場でも造ってあげようかな。
「シロン、みんなどんな感じ?」
「良く、眠っているようです」
よし、それじゃー行こうかな。
かなえは3合目に着くと、ジジさん、ババさんを農場へ、キングスとクイーンも島の小屋へ、5合目にいるマリーも小屋へ連れて行き、寝かせる。
かなえも部屋へジャンプで戻ると、寝る準備をして布団に入る。
今日もいろいろあったなー。
空中階段が出来るようになって、みんなの行動範囲は変わるのかな。
明日はいよいよパーティーだ……。
かなえは遠足の前の様な、ワクワクした気分で眠りに着く。
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<かなえのIDカード>
変更のあった場合表示
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ポイント
プラス 4000 眠気スッキリ飴、女の子用
マイナス
残り 207万8100
パワー 498
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パーティーの準備 合計 26万5000
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立て替え 8万(地下の家具、リリララ姉妹を雇えばギルド科からの補助金で賄われるので保留)




