062 ルークスとモモちゃんのおでかけ
かなえは、子猫達をリリララ姉妹に任せると、アニマルドームの砂浜に戻って来る。
椅子に坐ると、3日後に控えたパーティーの段取りを考えることにする。
前の日の金曜には、家具を動かしパーティー用に並べ替えよう。隅に、パーティーに来る人達の為の、ジャケットや荷物置き場も作った方がいいな……。
基本、立食にするつもりだが、年配の人もいるので、2階やリリララ姉妹の椅子も借りて、端に並べよう。
使用する食器や飲み物もまとめておこう。
かなえは、考えているうちに眠くなったので、
「シロン、30分経ったら起こして」と、砂浜に横になる。
湖の波の音が耳に心地良い……。
「かなえ、起きてください」
「……」
「かなえ、起きて下さい。ルークスとモモちゃんが外へ出て行きます」
「は? 今なんて」
「ルークスとモモちゃんが、アニマルドームから出て行きました」
「えー!? 大変! 現在地を教えて」
かなえは驚いて飛び起きると、
「南門から南の方向へ、向かっています」
かなえは急いで、スクータを取り出しジャンプでルークス達の所へ移動する。
あー! いたいた。ルークスは軽快に走りながら、モモちゃんはその横を飛びながら、普通に道を進んで行く。
「ちょっと、あなた達どこへ行こうとしているの?」
『あー! カナカナー』とールークス。
『カナカナだー』と、モモちゃん。
全く悪びれた感じは無い。
「ドームから出たら、ダメでしょ! 誰かに見られたら大変よ!」
『そうなの?』とルークス。
『何でダメなの?』と、モモちゃん。
そうか、ちゃんと説明はしていなかったかな。何て言おう……。
「あなた達は、ここには居ない動物だから、いきなり姿を見せると人が驚くの。私がちゃんと説明していなかったのが悪かったね」
『ふーん』と、ルークス。
モモちゃんはあんまり、気にしていない感じ。
「それで、あなた達はどこへ行こうとしてたの?」
『モモちゃんが、外もいっぱい建物があるって言ったから、ぼく見たかったんだ』と、ルークス。
うーん、どうしよう。もうアニマルドームだけでは物足りなくなったのかな。
「シロン、何かいい方法は無い?」
「それでは、ルークスとモモちゃんを、人から見えない様にしたらどうでしょう」
「えっ? 人からだけ見えない様にも出来るの?」
「はい、出来ます。人から見えなければ問題無いでしょう」
それはそうね。
「シロン、お願い」
「はい、もう大丈夫です。かなえには見えるようにしてあります」
そうね。私も見えないと大変だもの。
かなえが何やらやっているので、飽きてしまったモモちゃんは、スーっと飛び始め、ルークスが『待ってー』と、後を追う。
何か心配だなー。
「シロン、ルークスも空から景色を見せる事は出来るのかな?」
「はい、乗り物はスクーターの他にも色々用意してあります。ルークスやモモちゃんを乗せるのでしたら、カーペット『小』がいいでしょう」
「は? カーペットって乗り物じゃ無いでしょ?」
「出しますので、見て下さい」
目の前に「パッ」と、ダブルベット位の大きさの水色のカーッペットが現れ、角に1つ座椅子の様なものとハンドルが付いている。
うーん、もしかしなくても、これにルークス達を乗せて私が運転するのよね……。
「シロン、運転は難しくないの? それにルークスが動いたら危なくない?」
「運転は、スクーターと同じですし、シールドを掛ければ危険はありません」
そうか……。それなら大丈夫かな。
かなえはスクーターをしまい、カーペットの操縦席と言うには簡単な椅子に腰かけると、やはり人には見えない様にシロンに設定してもらう。
かなえはスクーターと同じように、上昇し前に進み始める。
大きいからぶつからない様にしないとな……。
しばらく進むと、ルークス達が見えて来る。かなえは少し前まで進み、カーペットを着地させる。
それを見て、近寄って来るルークス達。
『カナカナ、なにこれー!』とルークスが驚く。
『あー!』とカーペットの上を飛びながら見ているモモちゃん。
「うーんと、これに乗れば空からドームの様子が見られるよ」
『ヤッター! ぼくも空を飛べるのー?』と、ルークスが言うと、
『ヤッター!』と、モモちゃんも一緒に喜んでいる。
「そうだよ。みんな、カーペットに乗ったらおとなしくしててね」
『いいよー』と、ルークス。
『ハーイ』と、返事だけはいいモモちゃん。
ルークス達がカーペットの上に乗ったのを確認すると、シールドを掛け、温度を調節する。そして、カーペットを上昇させ、前に進み始める。
『飛んでるよー!』ルークスは身体を乗り出して下の景色を見ている。
「シロン、カーペットの一部を窓にして、下を覗けるように出来る?」
「それでしたら、カーペットを透過するのが良いでしょう」
なるほど、カーペットを透明にすれば下が見えやすいね。
かなえはシロンに言われたように、透過させて行くとカーぺットがドンドン薄くなり、消えた。
『ヤッター、良く見えるよー』と、ルークスは喜んでいるが、かなえは地面が丸見えで体を支える物が見えないので、不安定な感じでちょっと怖い。
モモちゃんは、カーペットが見えなくなると体を浮かせてルークスの様子を見ている。
操縦に少し慣れて来たので、スピードを上げて、中心のドームシティーへ向かう。
途中、幾つも建物や、草原、畑、川や湖を越え、だんだん人が増えて来るのが見える。
始めて見る景色に、ルークスは目を大きくして眺めている。
モモちゃんは、前にも見ているので、ルークスを見ている方が面白い様だ。
「そろそろ、ジジさんが住んでいる農場だよ」
かなえはミルクドームまで来て、牧場が見えてくるとルークスに説明する。
中にはかなえ達に気が付いて、上を見上げている牛もいる。
『へー、ジジはここに住んでるんだー』
ルークスには面白いようで、牛や、建物の様子を眺めている。
ミルクドームを離れてドンドン中心に進んで行く。すると馬車を引いている馬達が、立ち止まりかなえ達を見上げ、突然止まった馬に、原因が分からず御者が困っている。
そうか、町中は他の動物達からも見えない様にしないと、迷惑が掛かるな……。
かなえは他の動物からも見えない様にインビジブルしておく。
そのままカーペットを進ませて、中心のドームシティーに入って行く。
「ここは、私が住んでいるところだよ」
かなえはルークスに説明する。
『馬がいっぱい! 人がいっぱい! 建物いっぱい!』と、興奮したルークスの声が、大きく響く。
かなえも、初めてこのドームシティーを見たときは驚いたのを思い出す。他の世界から来たルークスは、もっと驚いただろう。
オクタゴンのセンターパークが見えて来たので、かなえはカーペットの高度を下げて行き、地面に着地する。
「ここの公園の中なら遊んで来ていいよ。他の人や動物にぶつからない様に気を付けてね」
かなえはシールドを解除し、他の動物達にルークスとモモちゃんの姿が見えるようにすると、
『うん、わかったー』と嬉しそうに駆け出して行くルークスと、
『ハーイ!』と、後に着いてフワフワと飛んで行くモモちゃん。
ルークス達はどんどん駆けて行き、木にとまっている鳥たちに話しかけたり、人が連れている犬に近寄ったりと、目が離せない。
でも今の所、迷惑をかけて居ないようなので、大丈夫だろう。
かなえは近くのベンチに座る。
そこへ……、
「ディンドーン、ディンドーン、ディンドーン」
ベルハウスの時を知らせる鐘の音が、響き出す。
いつ聞いても心が和む音色だ。
フフッ、ルークス達は初めて聞く鐘の音に驚いて、飛び跳ねている。
暫らく遠目に、様子を見ていたが、
そろそろ帰る時間だな……。
かなえはルークス達の側にジャンプで移動すると、
「はーい、そろそろ帰ろうね。みんなが心配するよ」と言うと、
『ねーあの音なに? きれいな音』とルークス。
「えっ? あー、鐘の音の事? あれは時間を知らせる音なの。朝から夜まで1日に6回鳴るのよ」
『ふーん』
ルークスは返事をしたけどわかったかな?
かなえはカーペットを取り出し、
「ハーイ、乗って下さーい。出発しますよー」と、ルークス達を乗るように促す。
モモちゃんは、ルークスの後にピッタリくっ付きながら浮いている。
かなえはシールドを掛け温度調節をすると、
「それじゃー、出発しまーす」と、カーペットを、動かして行く。
カーペットを再び透過させ町の様子が見やすく、ぶつからない程度に低空飛行を続ける。
『うゎー、食べ物がいっぱーい』と、ルークスは市場のフルーツ屋さんを眺めている。
モモちゃんもルークスが驚く度に、真似をして『うゎー』と、声を上げている。
ドームの端まで来ると、キングス達が住んでいた放牧地が見えて来る。
「ここにキングスとクイーンが住んでいたんだよ」と速度を落として説明すると、
『へー、パパ、ここにいたんだー』と、ルークスが興味深そうに放牧地の馬達を眺めている。
そろそろいいな。
かなえはカーペットの高度を上げて行き、ドームシティー全体が見える所まで登ると、
『わー、まる―い!』と、下に見える丸い形のドームシティーを見て驚いている。
隣のモモちゃんも『まるーい』とルークスのまねをしている。
かなえはもっと、高度を上げて行き、周辺のドームが全て見える所まで何キロも上昇すると、
『わー! ドンドン小さくなる……まるがいっぱーい!』
ドームシティーを取り囲む、大小様々な49個のドームを見て興奮するルークス。
「ルークス達の住むアニマルドームはどこにあるかわかる?」
『うーん』ルークスが悩んでいると、
『モモちゃんわかるよー』と、勢いよく飛び出そうとしたモモちゃんは『ゴン』と、シールドにぶつかり跳ね返って来る。
「モモちゃん、急に出たら危ないって言ったでしょ?」
『ハーイ』と、返事だけは良いモモちゃん。
「シロン、ここでシールドを解いても大丈夫?」
「まず、カーペットを停止させて、モモちゃんが出たらすぐシールドを戻してください。この辺りは酸素も薄く気温も低いので気を付けて下さい」
「うん、わかった」
「モモちゃん、外は寒いから気を付けてね。いいよって言ってから外に出て」
『うん』
かなえは、シールドを解くと、一気に冷気が流れ込む。
「いいよー!」
モモちゃんが飛んで行ったので、もう一度シールドを掛けて温度調節をする。
「ああー、寒かったー」
室内が暖かくなって来てホッとする。
ルークスはそれより、ドンドン遠ざかって行くモモちゃんが気になるようだ。
『あー! モモちゃんが行っちゃう』と寂しそうな声を出すルークス。
「わかった。今、追いかけるから」
かなえはモモちゃんの後を追いスピードを上げて行くと、前方を飛んでいるモモちゃんが見えて来た。
『あー! モモちゃーん』ルークスはモモちゃんが飛んでいる後姿を見つけて、声を上げる。
「モモちゃんを追いかけるよー!」
かなえはカーペットのスピードを上げて行き、モモちゃんを追いかけるがなかなか追い付けない。
ちょっと、モモちゃん前より早くなってない……?
モモちゃんは飛行機みたいに高速で飛んでいる。
かなえは、ジャンプでモモちゃんの横に来ると、気が付いたモモちゃんが速度を緩める。
『モモちゃーん! 早いねー!』ルークスは隣を飛んでいるモモちゃんに話しかける。
『うん、モモちゃん早く飛べるよー』調子に乗ったのか、モモちゃんはグルグル回ったり上に行ったり落ちて来たりと、曲芸の様な飛行を始める。
『ワァー! モモちゃん、凄ーい!』
ルークスはモモちゃんが飛んでいるのを喜んで見ている。
確かに、モモちゃんは飛ぶ能力が飛躍的に伸びている。
かなえが気が付かないうちにメキメキと上達したようだ。
いつまでもここには居られないので、
「そろそろ、帰るよー」と、かなえがモモちゃんに向かって声を掛けると、
『いいよー、行こ―』と、モモちゃんはアニマルドームに向かってまた高速飛行を始める。
『あー! モモちゃーん』とまた、悲しそうな声を出すルークス。
かなえは面倒なのでモモちゃんの飛ぶ少し先にジャンプすると、凄い速さでモモちゃんに追い越される。
そんなことを繰り返しながら暫らくすると、見慣れた山が見えて来る。
『アーッ! 山だ―』
ルークスもアニマルドームが見えたようで声を上げる。
「ルークス、どこに降りる?」
『ぼくねーモモちゃんの居る、山の上がいい』
へっ? モモちゃん山の上に降りたんだ。良く見えるね。あー、ルークスだって驚異的な身体能力だから視力もいいんだろうな……」
「うん分かった」
かなえはカーペットを山まで近づけて行き、頂上まで行くと地面に着地させる。
シールドを解いて、
「ルークス、もう降りていいよー」とかなえが言うと、ルークスは水を飲んでいるモモちゃんの側に近づいて行く。
かなえはカーペットをしまうと、
あー、終わったー。と一息つく。前もそうだったが、空の高速での移動は緊張するようで、地上に降りて来るとどっと体がだるくなる。
ルークス達はもういつもの調子で、山を駆け下りて行く。
もうそろそろ時間なので、かなえはジャンプで子猫達を迎えに行く。
動物ギルドに入って行くと子猫達は遊び疲れたのか、良く眠っている。
「ご苦労様―。はいこれー」
かなえは食事を渡し、アンディーに言われていたことをリリララ姉妹に伝える事にした。
「アンディーが言ってたけどあなた達二人とも、乗馬の素質があるみたいよ。だから気が向いたらまた行って見たら?」
「はい、わたしもまた行きたいと思っていました」と、リリちゃん。
「ララも、馬乗りたーい」とララちゃん。
「そう、良かった。今度のパーティーにアンディーも来る予定だから、何か聞きたいことがあれば話してみてね」
「ハーイ」とララちゃんが元気に返事をする。
かなえは子猫達をそっと、ケージに入れて部屋から、アニマルドームの小屋へ戻って来る。
もう一度、ケージを開けて子猫達を寝かせる。
餌を確認し、軽く周りにウオッシュを掛ければお終いだ。
次に3合目の温泉は……、
いたいた。キングス達と、ジジ達カップルが良く寝ている。
みんな温泉を気に入ってくれるのは嬉しいけど、運動不足にならないかな。
何か考えた方がいいかも。
かなえはジジたちを先に牧場に送り、キングスとクイーンも別々の小屋へ移動させる。
マリーは上かな?
かなえは5合目に移動すると……みつけたー。
マリーが休憩場でグッスリ寝ている。
かなえはジャンプで小屋まで移動させ、子猫達の隣にマリーを寝かせる。
見上げると、リトくん達が木の枝から舞い降りて来て、かなえの肩にとまる。
「リトくん、ピーちゃん、お待たせ―。今日は楽しかった?」
『うん、いっぱい食べたー』と、リトくん。
『あたしも食べたよー』と、ピーちゃん。
「そう、良かったね」
かねはリトくん達を連れて、ジャンプで部屋に戻って来るとサーッと窓から飛び立って行くリトくんとピーちゃん。
終わったー!
これで今日のやることは済んだのよね。
かなえは食事を済ますと、いつもの温泉泡風呂をシロンにセットしてもらい、ゆっくりお湯を楽しむ。
「あー、極楽極楽」
昔、テレビで、年配の人がお風呂に入る時に行っていたっけ。
体の疲れが溶けて行く。
また寝そうになったので、かなえはお風呂から出ると、ウオッシュで乾かしパジャマを着てベットに入る。
フフッ……。 かなえは今日一日の事を振り返る。
毎日何かしら起こって退屈しないなー。特にあの元気なルークスとモモちゃんがいるからな。
まー、楽しいからいいか……。
かなえはゆっくり目を閉じた。
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<かなえのIDカード>
変更のあった場合表示
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ポイント
プラス 2000 健康塩飴乳牛用、元気な子牛用飴ミルク味
2万 ジャグジ― 設置
マイナス
残り 207万5100
パワー 498
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パーティーの準備 合計 24万5000
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立て替え 8万(地下の家具、リリララ姉妹を雇えばギルド科からの補助金で賄われるので保留)




