061 マリーの泡風呂
『カナ、カナ、おきて―、パンだよー』
「うーん……」
『カナ、カナ、ごほうびパンだよー』
「フフッ……」
リトくんの朝の挨拶、微妙にいつも違うのよね。
「はーい、起きます。おはようリトくん。元気?」
『うん、ぼく、げんきー』
そうね、とっても元気そう……。
かなえは起きて、居間へ移動しリトくんのご褒美パンを出すと、
「はい、リトくん、どれがいい?」と聞く。
『ぼくねー。これー』と、口ばしを欲しいパンの側に向ける。
かなえはリトくんが選んだ、雑穀パンをちぎってあげる。
リトくんは元気にパンを食べ始めると、
『あー、青い実が入ってるー』と驚く。中にブルーベリーが入っていたようだ。
朝食を済まし、準備を終えるとリリララ姉妹に食事を届けに行く。
「おはよう。はい、これ今日のランチね」
かなえが自分の部屋に戻って来ると、リトくんとピーちゃんが椅子の背に並んでとまっていた。
「あらー、今日はアニマルドームに行くの?」
『うん、ぼくおいしい実たべるのー』とリトくん。
『あたし、やまに行きたいのー』とピーちゃん。
「ハイハイ、それじゃー出発!」
かなえはリトくんと、ピーちゃんを連れて牧場にジャンプする。
いつもの牧場の丘には、ジジさんとババさんも一緒にかなえが来るのを待っていた。
「おはようございます。ジジさんとババさん」
『あー! ババもいる―』とリトくん。
『ババー』とピーちゃん。
『おお、今日は皆、揃っているな』と、ジジさん。
『リトと、ピーちゃん、久しぶりね。私も行くのよ。宜しくね』とババさん。
ババさんは、農場でリトくん達と前に会っていたので初対面ではないようだ。
「じゃー、皆さん行きますよー」
かなえは、全員を連れて、アニマルドームの砂浜へジャンプで移動する。
到着すると、
『ピーちゃんいこ―』と、リトくんとピーちゃんが山の方角へ、飛んで行く。
『じゃあー、今日もお世話になりますね』と、ババさんはジジさんと一緒に、橋を渡って行く。
「シロン、他の皆はどうしてる?」
「マリーは子猫達と一緒に眠っています。キングスとクイーンは、牧草地に居ます。そして、ルークスとモモちゃんは、山を登っています」
そう。なら、先に牧場ね。
かなえはジャンプで、牧場の牛舎に移動して行く。
中に入ると、順番にウオッシュできれいにして行く。
力は加減しているが、最近どうも牛舎の中の傷みが減り、ピカピカになって行っている気がする。
うーん、だからって掃除しないのも嫌だな。気を付けなきゃ。
かなえは農場の周りを、スクーターで、点検する。
柵に使われている木が、斜めになっている所を治していく。劣化して倒れそうなところも見つけたので、ウオッシュを何度もかけて、修理する。
遠くに見覚えのある牛がいたので近づいて行くと、
「こんにちは。この子も大きくなって来たわね」
かなえは前に、親子で鏡を見に来ていた牝牛に話しかける。
『あら、久しぶりね。この子は最近は良く食べているから、大きくなって来たでしょ?』
「そうですね。前見た時より、元気そうに見えます」
『最近は、草が良く生えているからねー』
「そうですか。何か、困ったことはないですか?」
『うーん特に無いねー……あっ、あのおいしい飴をくれないかい?』
「シロン、お願い」
かなえはポーチから、大きな黄色い飴「健康塩飴、乳牛用」と、中ぐらいの白い飴「元気な子牛用、ミルク味」をあげると、
『おいしー、ミルクの味!』と、子牛が、
『そうそう、この味だよ』と、牝牛も喜んでいる。
「それじゃーまたねー」
かなえは牧場の点検を終えて、ジャンプでアニマルドームの砂浜へ戻って来る。
クイーンの小屋から順番にウオッシュを掛けて行く。
隣のモモちゃんの小屋も終わり、次はルークス達の小屋だ。
「あら? ミルクが少し残っているな」
ルークスはいつも哺乳瓶のミルクは全部飲み切るのに、どうしたんだろう……。
「シロン、ルークスはミルク以外に何か食べているのかな?」
「はい、おそらく山の木の実やフルーツも食べているのでしょう」
「ルークス用に他に準備できる食べ物はある?」
「ルークスはまだ暫らくミルクの栄養が必要ですが、大きくなって行くに連れ、食べる必要が無くなって行きますので、特に必要ないでしょう」
「えっ! 大人になったら食べなくなるの?」
「いえ、おそらくフルーツやナッツ等は、気が向いた時に食べることもあるでしょう。ですが、体に栄養としての食事は必要無くなります」
「そんな事ってあるのー?」
「はい。おそらく大気から何かしらの栄養を摂っているのでしょう」
そうなんだ。それはうらやましいような……。
でも毎日食べることが楽しみな、かなえには無理な話だ。
「モモちゃんも、大人になれば毎日の食事は必要なくなります」
モモちゃんって大人になったら何十メートルにもなるのに、毎日食べなくていいんだ。
体の構造が、かなえの知っている動物達とはだいぶ違う様だ。
ルークス達の小屋の掃除を終え、隣のジジさんの小屋の掃除を始める。
そういえば、ババさんの小屋をまだ造っていなかったな。
かなえは、一度ジジさんの小屋を片付けると、2頭用の一回り大きい小屋を設置する。ババさんもここで、ゆっくり休む事が出来るだろう。
次はマリー達の小屋だ。
かなえは歩いて行くと、子猫達が起きていて、元気に庭を走り回っている。
マリーが側に居たので、声をかける。
「おはよう、マリー。今日の調子はどう?」
『みんな元気よ。3匹仲良く遊んでくれるから、手が掛からないわ』
「そう、良かった。もう少ししたら、この柵も飛び越えそうね」
『ええ、その時は外へ散歩に行く事にしようかしら』
「うん、その判断はマリーに任せるよ。初めのうちは誰かしら側に居た方が良いけど、直ぐにどこでも走って行っちゃう日が来るよね」
『そうよねー。それもちょっと悲しいかも』
「この子達にとって、マリーはいつまでもお母さんだよ」
『ええ』
かなえは小屋の中と庭をウオッシュして、餌とミルクを補充する。
「マリー、マリー用の泡風呂は山のどの辺に造ったらいい?」
『そうね、下の方だと混みそうだから、少し上の方が良いかも』
人数が増えて来たし、マリーだったら、少し上に造ったとしても問題無く登って行けるだろう。
「わかった。それなら、5合目に造るね。泡のお風呂と、トンネルシャワー、その他に何か希望は無い?」
『……疲労回復しか、思いつかないわ。かなえに任せるから何か面白いものを作って』
「うーん、何か考えてみるね」
かなえはジャンプで山の5合目の広場に移動する。
地図と、山の立体映像を出して5合目に温泉を造って行く。
入口に、トンネルシャワー。そして、手前に免疫機能強化と美容効果のあるレモン風呂。奥には疲労回復、癒し効果のある泡の強さ「中」の泡風呂を設置する。
休憩場も造り、水飲み場も設置しておく。
こんな感じかな……マリーは気に入ってくれるかな?
まぁー、また何か思い付いたら変更出来るからいいか。
「シロン、マリーはまだ子猫達のとこに居るの?」
「いいえ、今は1合目の温泉に来ています」
そう、なら丁度いいわね。
かなえは1合目の温泉へ移動する。
マリーはいつもの様に、トンネルシャワーを浴びていた。
「マリー、新しい温泉が出来たから、一緒に来て!」
『もう出来たの? いいわよ。連れてって』
かなえはマリーを連れて、5合目の温泉へ移動する。
『へー、本当だ。3合目と似てるけど、お湯の色が違うのね』
お湯の色は薄い黄色でグレープフルーツジュースの様な色だ。
淡いレモンの香りが漂っている。
「そうよ。美容と免疫強化の効果付きよ。あと奥の泡風呂は強さを『中』にしたから、試してね」
『フフッ、ありがとう、かなえ。試してみるわ』
マリーはまず、トンネルシャワーから入って行く。
『このシャワーは、下の二つと同じなのね?』
「そうよ。お湯の強さとか、変更して欲しいところはある?」
『いいえ、あたしにはこれが丁度いいみたい』
マリーはいつもの様に、気持ち良さそうにシャワーを浴びている。
次にマリーに、レモン風呂に移動してもらう。
少しづつお湯の中に入って行くマリー。
「深さも大きさも、下の温泉も同じにしたから、安心して入ってね」
『ええ』
マリーは首までお湯に浸かると、
『気持ちいいわー。お湯が体にしみて来る見たい』
「お湯の温度はどう?」
『長く入るには、これぐらいがいいわ』
次に奥の泡風呂、強度「中」へ入ってもらう。
マリーの体の周りには、少し弱めの泡がポコポコと出来ている。
『あー気持ちいいわー。泡も、このぐらいで丁度いいわー』
マリーは気持ち良さそうに目を閉じている。
「マリー、気持ちいいからって、寝ない様に気を付けてね」
『ええ、わかったわ』
「子猫達は後で連れて行くから、マリーはここにいていいよ」
『ありがとう……』
かなえはジャンプで山の頂上に移動して来る。
ルークス達は居ないみたいね……。
かなえはお腹が空いて来たので、お昼にする。
選んだのはマッシュルーピザと、グリーンサラダ、ひよこ豆のフライに、ピンクベリーソーダにした。
「おいしー! この頂上からの良い眺めと、おいしい食事。幸せ―!」
すると、どこからかリトくんとピーちゃんが飛んで来て、かなえの向かいの椅子の背にとまる。
『カナ、カナなに?』
リトくん達は、かなえの声が聞こえて飛んで来た様だ。
「アッ、ごめんね。驚かしちゃったかな? 美味しかったから思わず叫んじゃったの……何か食べたい?」
『ぼく木の実たべたよー』とリトくん。
『あたしもー』と、ピーちゃん。
「そう。また、好きな所へ行って来て」
『ピーちゃんいこ―』
リトくん達はどこかへ、スーッと飛んで行った。
かなえは、ランチを終えると、子猫達の所へ移動して行く。




