060 クイーンと温泉
「それじゃー、宜しくね」
かなえは、子猫達をリリララ姉妹に頼むと、2階にあがって来る。
そろそろ子猫達をここに連れて来るのも難しいかな。
リリララ姉妹の悲しがる顔が浮かぶ。
動物ギルドが忙しくなれば、子猫の世話どころじゃなくなるだろうけど、まだまだ軌道に乗るのは時間が掛かりそうだし。子猫の代わりになる何かがあれば……。
今は思いつかないからまた考えよう。
次はー、クイーンの受け入れ準備をしよう。
かなえは、モモちゃんの小屋にジャンプで移動する。
「モモちゃんは、いつもここに居ないな」
いったい何時寝ているんだろう。まぁー元気だから問題は無いんだけど。
「シロン、ルークスとモモちゃんはどうしてる?」
「今は、山の頂上で昼寝をしています」
「ハハッ!」
そうなんだ。ちゃんと眠い時は休んでいるなら大丈夫ね。
かなえはモモちゃんの小屋の隣に、クイーンの小屋を設置する。
そして、牧草地のクイーンの所へジャンプして行く。
「クイーン!」
かなえは、木陰で休んでいるクイーンを見つけて声をかける。
『待ってたのよー! 早くあの温泉に入りたいわ』
クイーンは嬉しそうにかなえの側にやって来る。
かなえは前にキングスを連れて行くときに面倒だったので、先に鞍をシロンに選んでもらいポーチから出してクイーンに取り付ける。
わからないところはクイーンに聞いたので、何とか出来た。
「クイーン、他の馬達に挨拶しなくていいの?」
『いいのよ、もう話してあるから』
そういえば少し、離れた所から何頭かの馬が、クイーンを見守って居る。
「あの馬達には、なんて話したの?」
『キングスに会いに行って来るって言っておいたわ。それで気に入ったらそこで暮らすって話したから』
そうなんだ。馬達の別れって人間よりもサッパリしているんだな。
「それじゃー、アンディーに挨拶してから行くから」
かなえは、クイーンと一緒に乗馬教室の建物まで移動して、アンディーに借りていたキングスの鞍を扉の前に置いた。
「クイーン、あなたに乗っていい?」
『いいわよ。どうぞ』
かなえは扉を「カンカン」と鳴らすと、ジャンプでクイーンの鞍に移動する。
『えーっ! あなた急に乗らないでよ!』
クイーンは、かなえがいきなりジャンプで、背中に移動したので、ビックリしたようだ。
「ごめーん、クイーン。だって私小さいから、まだ普通に乗れないのよー」
かなえはふと扉を見ると、いつの間にかアンディーがもう出て来ていた。
「あっ、アンディー、もう準備が出来たから、クイーンを連れて行くね」
アンディーは、いつからクイーンとかなえのやり取りを見ていたのか、不思議そうにしている。
「かなえさん、鞍を自分で付けられたんですか。随分と上達したんですね」
「あっ、そうなの。キングスで練習したから出来るようになったのよー」
と、誤魔化しておく。
「そうですか」
「それじゃー私達は行くね。どんな様子かまた知らせに来るからー」
かなえは慣れない仕草で、クイーンに乗って行く。 アンディーが後ろでまだ見ているで、
「クイーン、そのままゆっくり歩いて行ってね」と、言いながら、
後ろを振り向きアンディーも居ないのを確認すると、木の陰に回ってもらい、アニマルドームの砂浜にジャンプする。
あー怖かった。無事到着だよ。
まだ乗馬に慣れないかなえは、ジャンプでクイーンから降りる。
「それじゃー、鞍を取り外すね」
かなえは順番に取り外していく。
『やったわー、あたしここで暮らせるのねー!』
「そうね。クイーンの小屋に案内するからこっちに来て」
かなえはクイーンを先ほど設置した小屋まで連れて行く。
「ここがクイーンの小屋よ。何か必要な物があったら言ってね」
クイーンは小屋の中に入って行くと、
『わー、藁がフワフワで気持ちいい!』と、嬉しそうに藁の上で、ゴロゴロし始める。
「クイーン、これからどこに行きたい? 案内するけど」
『そうねー、あたしあの、おいしい草が食べたいわ』
「わかった。じゃー行こう」
かなえはスクーターを出して、クイーンと一緒に橋を渡って行く。
牧草地に着くと、クイーンは嬉しそうに草を味わい始める。
『ここの草、どうしてこんなに美味しいのかしら。おいしそうなフルーツも生っているじゃない。嬉しい!』
クイーンはここを気に入ってくれているんだな。その調子でキングスも気に入ってくれればいいんだけど……。
「シロン、キングスはどうしてる?」
「3合目の温泉にいます」
まぁー、そうだとは思ったけど。
「クイーン、キングスが温泉にいるみたいだけど、クイーンも行く?」
『そうね。温泉にも行きたいわー!』
クイーンは、もうお腹はいっぱいになったようで、山の方へ軽く走り出す。
引退したと言っても、クイーンはキングスより若いからか、山へ向かっていく足取りはとても軽やかだ。
「クイーンはまだ若くて元気そうに見えるけど、引退したのよね?」
『ええ、そうよ。あたし、まだ引退する年齢じゃなかったんだけど……事故を見てから馬車を引くのが怖くなったの』
「事故?」
『そうなの。あたし怖くって……』
クイーンは話したく無さそう。よほど怖い目に遭ったんだろう。
「クイーン。わかった。思い出さなくていいよ。ここの温泉に入って嫌な事は忘れてね」
『ええ、そうね。温泉! 嬉しいわー』
クイーン。もう立ち直ってる……。
かなえとクイーンは、山道を登り1合目の温泉へやって来る。
「クイーン、ここのお風呂も入ってね。まず、このトンネルシャワーで体をきれいにしてから入って」
『ええ、わかったわ』
かなえは温泉の説明をして、クイーンは1番目の湯に入る。
『このお湯、最高ね。体の疲れが取れて行くわ』
「このお湯は疲労回復と神経痛に効果があるのよ。調子が悪い時はこのお湯にゆっくり浸かってね」
かなえは隣の熱いお湯と、水風呂の説明をすると、
『それより今日は、あの泡風呂に入りたいわ』
「それならまず手前のミルクの湯にも入ってね。あのお湯に入ると毛並みが良くなって行くわよ」
『まー、そうなの? そう言えば久しぶりにキングスを見たら、毛並みの色つやが良くて驚いたのよ……』
「そうね。キングスはここに来た時より、健康になっていると思うよ。そろそろ上に行って見る?」
『ええ、そうね。行きたいわ』
かなえはクイーンを連れてジャンプで3合目の広場に移動すると、温泉に入って行く。
おー! 勢ぞろいだ。でもルークス達は居ないか。
ジジさんと、ババさんが泡風呂に入り、キングスは休憩場で寝ている。そしてマリーはトンネルシャワーに入っている。
「マリー、今日からここで暮らす、クイーンよ。昨日会ったかな?」
「クイーン、マリーよ」
『よろしく』とトンネルシャワーを浴びながら挨拶するマリー。
『ええ、こちらこそ、宜しく』とクイーン。
後は皆、紹介は済んでいるな。
『あたしは、この白い湯に入るわー』
クイーンはかなえが話した、毛並みが良くなるお湯に興味があるようだ。
かなえは奥の泡風呂まで移動して、ババさんに話しかける。
「ババさん、温泉はどうですか?」
『ここは、凄いわねー。私はずっと驚きっぱなしよ!』
ババさんが興奮気味にかなえに話す。
そのババさんとは対照的に、ジジさんは静かに泡風呂に浸かっている。
「そうですか。気に入って頂けたら、嬉しいです」
『もちろんよ。こんな良いところを、ジジったら内緒にしてたのね』
ジジさん、ちょっと困った顔をしているよ。
「それはジジさんのせいでは、ありません。ここはまだ出来たばかりで、どれくらい動物達を、受け入れられるかわからないので、ジジさんには内緒にしてもらうように、頼んでいたんです」
ジジさんは『そうだそうだ』と、うなずいている。
『あら、そうなの? それなら仕方が無いわね』
ババさんは納得してくれたようだ。
『わしは、もうあがるよ』と、ジジさんは、泡風呂から出て来ると休憩場のキングスの隣にうつ伏せになった。
「ババさんも、適当な所で休憩してくださいね。泡風呂は刺激が強いので……」
『ええ、そうね。でもこのお湯は心の奥のモヤモヤが溶けて行くような気がするわ』
「はい、この泡風呂は癒し効果があるんですよ。ちなみに隣のミルクの湯は、毛並みが良くなりますよ」
『まぁー、そうなの? ジジったら最近体中、ツヤツヤしていい匂いがすると思ったら、やっぱり温泉の効果だったのね』
かなえは、ババさんに牧場の牛達には、ドームの事を内緒にしておくように、お願いしておく。
ババさんの周りのお湯の泡が消えたので、かなえは「そろそろ休憩する時間ですよ」と、ババさんを、休憩場に案内する。ババさんは眠っているジジさんの横にうつ伏せになる。
暫らくすると、クイーンが泡風呂に入って行く。
『あー、気持ちいいわねー。この泡風呂最高だわー』
クイーンもこの泡風呂がお気に入りの様だ。
「ちゃんと、お水も飲んで、休憩もしてね」
『ええ、わかったわ』
かなえはミルクの湯に入っている、マリーの所へ行く。
「マリー、ここも混んで来たから、明日にでも弱めの泡風呂を造るね。マリーはどんな効果があったら嬉しい?」
『そうねー、やっぱり疲労回復が良いかも』
「そう、わかった」
かなえは3合目の温泉にウオッシュを掛けると、温泉から出て行く。
「あー! リトくん達の事を忘れていた! シロン、リトくん達はどうしてる?」
「ドームシティーのセンターパークの木に居ます」
もうすぐ夕方だが、一応どうするか聞いて見よう。
かなえはリトくん達の居る公園へジャンプする。
かなえは木の枝にとまっている、リトくん達に声かける。
「リトくーん、ピーちゃーん!」
リトくん達はすぐかなえの声に気が付いて、舞い降りて来るとかなえの肩にとまる。
『カナカナー!』リトくんがかなえの名を呼ぶ。
「遅くなったけどー、山に行くなら連れて行くよ。どうする?」
『ピーちゃんどうする?』リトくんはピーちゃんに尋ねる。
『あたし、ごほうびパンがイイ!』とピーちゃん。
『いいよー。カナカナ、ごほうびパンちょーだい!』とリトくん。
かなえはリトくんのパンを取り出すと、ピーちゃんに見せて、
「どれがいい? 好きなのを選んで?」と、聞くと、
『うんとねー、赤い実パンがイイ』と、ピーちゃん。
ピーちゃんこのパン好きだなー。かなえはそのパンをちぎるとピーちゃんに渡す。
「リトくんは、いいの?」
『ぼくねー。ピーちゃんと一緒に食べるからいいの』とリトくん。
「わかった。それじゃー、また明日ね」
かなえはジャンプで自分の部屋に戻ると、子猫達を迎えに行く。
今日も子猫達は動物ギルドの部屋中を走り回っている。
「わー、みんな元気ね!」
「あっ、かなえさん。はいっ。元気いっぱいで捕まえられません!」と、子猫達の後を追うリリちゃん。
「こらー! 待てー」と追いかけるララちゃん。
子猫達は鬼ごっこでもしている気分なのだろう。逃げるのが楽しくて仕方が無い様だ。
かなえは、ケージを取り出すと、
「みんなー、帰るよー」と声を掛ける。
すると、ケージに我先にと、入って行く子猫達。
かなえはケージの扉を閉める前に、
「はい、あなた達、世話をしてくれたリリちゃん、ララちゃんにありがとうは?」
と言うと、
『ありがとーリリ』『またねーララ』『またあそぼーね』と、一斉に鳴き始める。
リリララ姉妹は、子猫達の言葉は理解できないが、一斉に鳴きだした姿が可愛らしく、嬉しかったようだ。
「みんな、また明日ねー」とリリちゃん。
「また、あそぼ―ねー」とララちゃん。
言葉はお互いにわからなくても心が通じ合っていっるんだな。
かなえは、2階に戻るとアニマルドームの子猫達の小屋へ、戻って来る。
「はい、出ていいよー」
かなえはケージの扉を開けて、子猫達を庭に放つ。
『わーっ!』『あーっ』『えーい』
子猫達は、庭に戻って来れたのが嬉しいようで、一斉に出て来ると走ったり、ジャンプしたり、ボールにじゃれたりと忙しい。
「もう少ししたら、マリーも戻って来ると思うから、遊んででねー」
『うん』『いいよー』『はーい』
子猫達はもう遊ぶのに夢中だ。
かなえは3合目の温泉へジャンプして行くと、皆良く眠っている。
まず、ジジさんとババさんね。かなえは2頭を牧場へ連れて行く。
次は―、キングス。その次はクイーン。そして最後にマリーを小屋へ移動させる。
「シロン、ルークスと、モモちゃんはどうしてる?」
「今は、湖から水路に向かって川を泳いでいます」
「体の調子はどう?」
「2頭とも、何も問題はありませんね。毎日鍛えているので、パワーが増えています」
へー、ルークス達は、本当に凄いな!
かなえは一通り終わったので、自分の部屋に戻って来る。
ゆっくり夕食を食べ、寝る支度をしてベットに入る。
今日はババさんと、クイーンもこのアニマルドームの仲間になったのよね。
皆、大人だし仲良くやって行けるだろう……。
また明日も良い1日でありますように……。
かなえは目を閉じて眠りに着いた。
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<かなえのIDカード>
変更のあった場合表示
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ポイント
プラス 1000 ジジの健康塩飴
1000 ババの免疫強化塩飴
マイナス
残り 205万3100
パワー 498
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ネームプレート 50枚 5000
パーティーの準備 合計 24万5000
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立て替え 8万(地下の家具、リリララ姉妹を雇えばギルド科からの補助金で賄われるので保留)




