056 モモちゃんとルークス
『カナ、カナ、パンだよー、おはよー』
『カナ、カナ、おきてー!』
「……」
「かなえ、起きてください」
「……あーねむい。わかった、起きるよー」
今日は起きるのが辛いな……。
……昨夜遅くまでモモちゃんの面倒を見ていたからだ。
「シロン、モモちゃんはどうしてる?」
「アニマルドームの自分の小屋で眠っています」
そうか、あれから泳いだり山に行ったりしてたら、まだ眠いだろう。
『カナ、カナ、はやくー』
リトくんがしびれを切らしたのか、かなえを急かす。
「わかったよー」
かなえはベットから出ると、ノロノロと居間へ向かいリトくんにパンを出すと、
「はい、リトくん。どれが良い?」
『ぼくねー、そのみどりのがイイ』
リトくんが選んだのは緑色のオリーブが細かく生地に練り込まれたオリーブパンだ。
かなえは隣を崩さない様に丁寧に取ると、リトくんにパンをあげる。
『おいしーな、みどりのパン』
今日もご機嫌なリトくん。
それに引き換えかなえは……頭がスッキリしない。
「シロン、何かこの眠気を取るものある?」
「はい、どうぞ」
かなえがポーチから取り出したのは、半透明な小さな飴。注意書きには「動物の世話で寝不足の緩和飴」と、表示されている。
「はっ? うーん……まぁいいか」
かなえはちょっと注意書きが気になったが、それよりもこの眠気を取るのが先だ。口の中に飴を入れるとミントの香りが広がり、頭の中の靄が晴れて行くように、スッキリして来る。それと同時に体の怠さも取れて行く。
「あー、おいしー!」
あっという間に元気いっぱいに回復したかなえは、朝ご飯もガッツリ平らげ支度をして、リリララ姉妹にランチを届けに行く。
「おはよー! はい、これ、今日のランチね」
「おはようございます」ララちゃんがランチを受け取る。
ララちゃんも元気そうなので昨日楽しかったのかな。
かなえは自分の部屋へ戻ると……リトくんはもう、ピーちゃんのところへ戻って行ったようだ。
「シロン、リトくんはピーちゃんのところに居るの?」
「はい、かごの上に並んでとまっています」
そうか、それならいいかな。
かなえはジジさんの待つ牧場へジャンプして行く。
「おはようございます。ジジさん」
『今日はおまえさんだけかね?』
「そうなんです。リトくん達はまだピーちゃんの家に居ますし、モモちゃんは昨夜アニマルドームに行ったので……」
ジジさんはまだ話を聞きたそうだったが、かなえは取りあえず飴を渡して、アニマルドームの砂浜へ移動する。
かなえは砂浜でジジさんに、昨夜のモモちゃんとの出来事を話していると、キングスが小屋の方からやって来た。
「キングス、おはよう。調子はどう?」
『ああ、わしは良いんだが、ルークスがずーっと寝ているんだ』
キングスが心配そうにしているので、かなえはキングスにも昨夜の事を話す。
『そうか、ルークスには夜遊び仲間が出来たから、朝寝坊なんだな』
キングスはルークスが眠っている理由が分かりホッとしている様だ。
「ルークスは毎日夜中も泳いだり山に行っているの?」
『わしは寝ているから詳しくはわからないが、夜中も起きて出かけているようだ』
そうか、動物も色々だから、夜中も元気に動き回っても不思議じゃないわね。子猫達だって大きくなって来たら、夜も自由に活動するだろうし。
『そろそろ、行って来るよ』と、ジジさんと、キングスは仲良く橋を渡って行く。
マリー達も寝ているようなので、かなえは先に牧場の牛舎へ向かう。
牛舎の中へ入ると、順番にウオッシュをかけて行く。
牛舎が終わると、牧場の池と川にもウオッシュをかける。
「シロン、牛達は何か変わったことは無いかな?」
「いえ、今のところ何も問題はありません」
「じゃー、メラニーさんとジョンさんはどう?」
「メラニーさんは料理をし、ジョンさんは家具を作っています。体調に問題は無いですね」
そう、良かった。
かなえはアニマルドームの砂浜にジャンプで戻ると、モモちゃんの小屋へ向かう。
「あら? モモちゃんは居ないのね」
「シロン、モモちゃんはどうしてる?」
「山の麓でフルーツを食べています」
「ルークスは?」
「ルークスもモモちゃんの側に居ます」
ルークスは、モモちゃんに付き合ってくれているのかな。
かなえは先に、モモちゃんとルークス達の小屋をウオッシュして、餌やミルクを補充しておく。
次は並びにある、子猫達とマリーの小屋。
「マリーおはよう。何か変わったことは無い?」
『ええ、みんな元気よ』
「そう、なら良かった」
子猫達は元気に庭を小走りで、走っている。動きが日に日に、機敏になって来ている。
『この新しい丘、子猫達は喜んでいるわ』
「うん、そうみたいね」
かなえは思いついたので、丘の中にトンネルを設置してみた。
すると急に現れた丘の中を通る穴に、子猫達は興味を示し、しきりに穴の中を覗いている。
『なにこれ?』『あなだよ』『むこうがみえるー』
子猫達は穴の中を通りたいがまだ怖いのか、足を1歩踏み入れては戻って来る。
そこで、かなえが側にあった子猫達のボールをコロコロっとトンネルの中に転がすと、タイガが釣られて、スタスタっとトンネルの中に入って行き、ボールを咥えて反対側の穴から出て来た。
タイガがトンネルの中を通れたので他の2匹も安心したのか、
『ぼくもー』『待ってー』と後に続いてトンネルの中に入って行く。
それからはもう怖くないようで、3匹はトンネルの中で遊び始めた。
そんな様子を温かい目で見守るマリー。
かなえはマリーにも昨夜のモモちゃんの様子と、ルークスと夜中も遊んでいたことを話す。
『そう。でもルークスに仲間が出来て良かったじゃない』
「うん、私もそう思う。ルークスはパワーがあり過ると思ったけど、モモちゃんも凄いから丁度いいみたい」
またこの先女神様が、凄いパワーのある生き物を送ってきたらどうしようと、一瞬思ったけど、怖いので考えないことにする。
あまり他の動物達と違い過ぎると、一緒に暮らしていくのに支障が出て来るかもしれない……と再び不安がよぎるけど、
あー! 今は考えない。取り越し苦労ほど、無駄なものはないものー。
かなえは気分を変えようと、モモちゃん達の所へ移動する。
「モモちゃん、ルークス。仲良くしてるかな?」
『あー、カナカナ。うん、ぼく仲良くしてるよ!』とルークス。
モモちゃんはフルーツをムシャムシャと食べている。
……ちょっとお腹が膨れているよ。顔も手もフルーツでまみれだ。
「モモちゃん、そんなに一度に食べたら良くないよ。少しづつユックリ食べなよ!」
かなえはモモちゃんにウオッシュをかける。
『うん、モモちゃん、フルーツ好きー』
モモちゃんは、かなえの言った事など気にしていないようだ。
「そうだ。モモちゃん、ルークスに山の頂上に連れて行ってもらえば? 景色が良いよ」
『いいよー、モモちゃん、山の上まで行こ―』
ルークスはもう山の外側の道の方へ走っていく。
モモちゃんは重たくなったお腹をつきだして、スーっと浮き上がると、ルークスの後をゆらゆらと追って行く。
もしかしたら、モモちゃんがフルーツばかり食べていたのは栄養が足りなかったからかな……。
かなえは地図を見ながら、アニマルドーム中にモモちゃん用のプロの実を植えて行く。
これでいいな……。
山の外側の道をすごい勢いで駆け上がって行くルークスと、その後をモモちゃんがピッタリ後を付いて行くのが見える。
モモちゃんは、飛べるから、一気に頂上まで飛んで行けるのに、走っていくルークスと一緒にグルグルと山道を登って行く。
フフッ、モモちゃん、ルークスの側を離れたく無いのね……。
モモちゃんとルークスは昨夜、一緒に走ったり泳いだりして過ごし、より一層仲良くなったように見える。
暫らく放っておいても大丈夫だろう……。
かなえはジャンプで1合目の温泉に移動する。
「あっ、ジジさんここに居ましたか」
『ああ、このお湯は身体の疲れが一番取れる気がするなー』
「そうですか。このお湯は疲労回復と神経痛に効果があるみたいです。ゆっくり入っていると効果がより出るみたいですよ」
『そうだったな。わしにピッタリだ』
ジジさんは気持ち良さそうに、お湯に浸かって目を細めている。
かなえは1合目の温泉全体に、ウオッシュをかけてきれいにする。
ジジさん、そろそろ3合目の温泉に行きますけどどうしますか?
後の方が良ければ、時間を置いてまた呼びに来ますけど。
『そうだな……3合目に連れて行ってくれ。あの泡風呂にも入りたいからな』
「そうですか。わかりました」
かなえは湯船から出て来たジジさんを連れて、3合目の温泉にジャンプする。
マリーはまだ来ていないようで、キングスだけが泡風呂でくつろいでいた。
ジジさんは空いているトンネルシャワーへ入って行く。
「キングス、泡風呂はどんな感じ?」
『ああ、この風呂はいいなー。心も体もトンドン軽くなって行く』
「そう。良かった。みんなここへ来たばかりの頃より、毛並みがツヤツヤで、念入りに手入れをしているように見えるよ」
『ハハッ、そうか。年を取るに連れて毛並みが良くなるとはな』とキングス。
『そういえばわしも、牧場の牛達が最近見ないがどうしただの、体が良い匂いがするだの、いろいろうるさいんだ』とジジさん。
そうか、栄養も足りてるし心身共に健康で、おまけにいい匂いをさせて居たら怪しまれるだろう……。
「そういえばジジさんとキングスには奥さんとかガールフレンドは居なかったの?」
『わしは……うーん、まー居ないわけでは無いがな』とジジさん。
「えーっ!? ジジさん。誰かいい人が居るんですか?」
『まぁー、そうだな。たまに会うぐらいだが』
そうなんだ。知らなかった。
「お相手が居るのに、毎日アニマルドームに来ていていいんですか?」
『何を言っているんだ。この温泉に入れないくらいなら、会えなくてもいいんじゃ。もうお互いいい歳だしの』
えーっ、そんなの良くないよー……。
ジジさんはトンネルシャワーを出て泡風呂に入って行く。
「じゃーキングスは?」
『わしは、あの子が気になっておったが、もう会う機会は無いだろう』
「えっ? あの子ってだれ?」
『かなえも知っている、クイーンだ。わしよりも若いが、優しい子でな』
「えーっ! クイーンの事が気になっていたんだ。キングスが会いたかったら連れて行ってあげれるよ?」
『うーん、そうだな、それも良いが……ここへ連れて来てもらう方がいいな』
キングスは、前に暮らしていたドームシティーの放牧地では、嫌な思い出があるから近寄りたくないのかな……。
「そうね。クイーンをここへ連れて来ることも出来るかも」
乗馬教室のアンディー達が仕事を終わった後なら、クイーンを1度連れて来ることは可能ね。
もしクイーンがキングスと一緒に暮らしたいと言ってから、正式にアンディー頼みに行けばいいし。今度クイーンに聞きに行ってみよう。
キングスは泡風呂を出て、休憩場で寝転がる。
「クイーンには聞いて見るね。ジジさんもここへ一緒に連れて来たいですか?」
『うーん、そうだな。聞いててみようかのう』
ジジさん、なんだか嬉しそうだな……。
みんなにお相手が出来て、もっと幸せになれるならその方がいいね。
すると、マリーが3合目の温泉に入って来る。
『あら、みんなお揃いで』
マリーはトンネルシャワーに入り、気持ち良さそうに目を細めている。
「マリー、ご苦労様。子猫達は眠ったの?」
『ええ、かなえが作ったトンネルが気に入ったみたいで、ずっとあそこにいたわよ』
「そうなんだ……マリー、もう少ししたら子猫達を動物ギルドへ連れて行くから、もうここでのんびりしててね」
『ええ、助かるわ』
かなえは3合目の温泉、全体にウオッシュを掛けきれいにすると、砂浜にジャンプして行く。
ハンバーガーのセットで簡単にランチをを済ますと、子猫達の所へ向かう。
子猫達は小屋の中でグッスリ眠っている。
「シロン、モモちゃんと、ルークスはどうしてる?」
「山の頂上で、昼寝をしています」
「えー!?」
そうなんだ。モモちゃんはあんなにフルーツを食べてたからなー。
眠くなっても不思議ではない。
まだ少し時間があるので、山の頂上にジャンプで様子を見に行く。
あー、ホントだ!
モモちゃんとルークスは仲良く並んで、頂上の広場で眠っている。
モモちゃんは、また口の周りに何か食べ物を付けている。
かなえは、モモちゃんと、ルークスにもウオッシュを掛けておく。
この頂上にもお風呂を造ろかな。眺めが良くてみんな喜ぶだろう。
かなえはジャンプで小屋へ戻り、子猫達を連れ自分の部屋へ移動して行く。




