054 パワフルなモモちゃん
「かなえ、起きてください。モモちゃんが目を覚ましましたよ」
「あー、えっ? うん。わかった」
かなえは砂浜で目を覚まして、モモちゃんの小屋へ歩いて行く。
「モモちゃん、おはよー。良く寝られたかな?」
……かなえ自身も良く寝たが。
『うん、カナカナ?』
「フフっ、いいよカナカナで、呼びやすいでしょ? ルークスが一緒にモモちゃんと遊びたそうにしてたけど、どうする?」
『うん、ルークとあそびたい……』
モモちゃんは、まだ恥ずかしそうにしている。
「シロン、ルークスはどうしてる?」
「水路を泳いでいます」
そうか……モモちゃん泳げるのかな?
とりあえず行ってみよう。
「モモちゃん、じゃールークスの所へ行こう! そのぬいぐるみは濡れちゃうから置いて行こうか?」
『やー! 一緒に行くー』
モモちゃんは、ピンクの子馬のぬいぐるみをきつく抱きしめる。
まーいいか。汚れたらウオッシュすればいいんだし……。
「わかった。一緒に連れて行ってもいいよ」
かなえは、モモちゃんを連れてジャンプすると、
ルークスが目の前の水路で泳いで行く。
『あっ、ルーク!』
モモちゃんが声をあげる。
『あっ、モモちゃん!』
モモちゃんに気が付いたルークスが、水路から上がって来る。
『モモちゃん、起きたんだ。ぼくと一緒に泳ぐ?』
『……およぐ?』
「モモちゃん、泳いだことある?」とかなえが聞くと、
『うーん……ない』とモモちゃん。
「それなら、浮き輪があるから泳ぐ練習してみる?」
『およごー、モモちゃん。面白いよー!』とルークス。
『……うん、およぐ』とモモちゃん。
かなえは前に皆に使ったのと同じ浮き輪を取り出すと、
「モモちゃん、これを体に付けると水の中でも沈まないのよ」
モモちゃんの胴体に、はめてみる。ちょっときつそうだけど。大丈夫だろう。
コロンとしたモモちゃんの体に浮き輪をすると、人形みたいで可愛らしい。
「モモちゃん、ぬいぐるみは濡れちゃうから持ってようか?」
『いやー』と、モモちゃんはぬいぐるみから手を放したくないようだ。無理やり離すのも可哀想だから、様子を見よう。
『モモちゃん、行くよー!』ルークスはゆっくり水路の中へ入って行く。
モモちゃんもトコトコと歩いてルークスの後に続く。
『あー、みず!』とモモちゃん。
『大丈夫だよ、ここまで歩いて来て』とルークス。
モモちゃんは少しづつ奥に入って行き、
『あっ、足がつかない!』
「モモちゃん、浮き輪を付けているから、体が浮くでしょ? 大丈夫よ」
『うん、浮いたー!』モモちゃんはプカプカと水の上で浮かぶのが楽しい様だ。
あーあ、ぬいぐるみはビショビショだよ。
『足をうごかしたら、前にすすむよー。やってみて』とルークスが足をバシャバシャして、モモちゃんに見せると、モモちゃんもパシャパシャと足を動かす。
あーもー、ぬいぐるみが邪魔そうだなー。
それでも、モモちゃんは水路の流れに乗って前に進みだした。
『うわー、凄ーい!』
モモちゃんは泳ぐのが楽しくなってきたようだ。
かなえはスクーターを取り出すと、2頭の後を追う。
『モモちゃん、それ、カナカナにもっててもらいなよ。お水に濡れてかわいそうだよ!』とルークスがモモちゃんのぬいぐるみを見て言うと、
『……うん、わかった』
ルルちゃんは悲しそうにビショビショで重くなった、ぬいぐるみをかなえに渡して来る。
えーっ!? モモちゃん、ルークスの言う事は聞くのね。
かなえはぬいぐるみを受け取ると、ウオッシュをかけてポーチにしまっておく。
『じゃー。モモちゃん、ぼくの後についてきてねー』
ルークスは少しづつスピードを上げて行く。
モモちゃんもぬいぐるみが無くて楽になったようで、バシャバシャと泳ぎ始める。
モモちゃん、凄いなー。初めてなのにルークスの後を付いて行っている。
「モモちゃん、浮き輪の空気を少し抜いてみるねー」
浮き輪は少し小さくなったが、モモちゃんは元気に泳いでいる。
これはもしや……ルークの時と同じパターンでは?
様子をみて、問題無さそうだったので、また浮き輪の空気を抜いてみるが、モモちゃんの泳ぐ速度は変わらない。
「モモちゃん、もう泳げるみたいだから浮き輪を外すよー!」
かなえは浮き輪を取り外すとモモちゃんは泳ぎやすそうに、前を泳いでいるルークスの後を追う。
ちょっと―! モモちゃん、もう泳げるようになちゃったよー。
「シロン、モモちゃん疲れてない?」
「はい、パワーはまだほとんど減っていません」
えーっ、ドラゴンってそういうものなのー!?
なんかもう……あんまり心配しなくても良さそうね。
モモちゃんは、さっきまであんなに恥ずかしそうにしてたけど、実はたくましいいのかも。
かなえは水路を一周する2頭の後に着いて行ったあと、
「ルークス、そろそろモモちゃんを別の所へも案内したらどう?」と聞くと、
『うーん、いいよ! モモちゃん山に行こ―』とルークスは水路から上がりモモちゃんを誘う。
モモちゃんは水路から上がるとルークスの後をトコトコっと付いて行く。
さすがに陸ではルークスの後を追うのは大変だろう。ルークスの体は細くて足が長いので、軽々と走って行けるが、モモちゃんの体形はコロッとしていて足は太くて短い。なのでとても走れるようには見えない。
そんなことは気にせず、走って行くルークス。その差はどんどん開いて行く。
『まって―、ルーク―』とモモちゃんは必死に追いかけるが……、
かなえはモモちゃんの様子を、スクーターで付いて行きながら見ていると、
あれっ?!
モモちゃんの体がフワッと浮いたと思うと、ルークスの後をスーっと滑らかに飛びながら追い始める。
えっ! モモちゃんが飛んでる。でも羽はほとんど動いてないのに。
モモちゃんは背中に羽が付いているが、まだ小さくて縮こまっているので、まだ飛べないだろうと思っていた。
モモちゃんは、あっという間にルークスに追い付くと、並んで飛び始める。
『あーっ、モモちゃん飛んでる! 鳥みたい』とルークスも驚いている。
かなえも2頭に追い付くと、
「モモちゃん、上手に飛べるのね? 練習したの?」と聞くと、
『ううん、ルークに追い付きたいとおもったら体が浮いたのー』とモモちゃん。
「そうなんだ。凄いねー」
ドラゴンは羽の力を借りなくても飛べるんだな……。
だんだん山に近づいてくると、
『モモちゃん、温泉行こうね。面白いよー』とルークスが山の外側の道を登り始める。その後をスーッと飛びながら付いて行くモモちゃん。
『ここだよー、温泉』
ルークスは1合目の温泉に着くと1番目のお湯に入って行く。
他の皆は上の温泉に居るのだろう。
『モモちゃん、おいで―』
ルークスがモモちゃんを呼ぶと、
『うん』とルークスの後について温泉に入って行くモモちゃん。
お湯の中も全く問題無さそう。ルークスと一緒に深い方まで行き、一緒に泳いでいる。
暫らくすると上がって来て、
『次は隣の温泉だよー』とルークスがモモちゃんを連れて行く。
『熱いよー。ちょっとだけ入ろうねー』
ルークスはもう慣れたものだ。熱いお湯を我慢しながら進んで行くと、
『あーっ、熱ついー!』と声をあげる。
モモちゃんは『あつい?』と不思議そうにしている。
『次は―、お水のお風呂だよー』とルークスはまたモモちゃんを案内する。
『あー冷たい!』
ルークスは冷たいのを我慢しながら中に入って行く。でもモモちゃんは、他のお風呂と同じように普通に入って行く。
『モモちゃん冷たくないのー?』とルークスが聞くと、
『うん、冷たくないよー。気持ちいい!』と、モモちゃんは奥の方まで泳いで行く。
凄いよ、モモちゃん。お水もお湯も大丈夫みたい。
「そろそろお腹が空いたんじゃない?」とかなえが聞くと、
『うん、ぼくお腹すいたー』とルークス。
『うん、モモちゃんもお腹すいた』と、モモちゃん。
フフッ、自分の事モモちゃんて呼んだ! カワイイ。
「それならジャンプで行く? それとも走って、飛んで行く?」
『うーん、ぼく走っていくー』
ルークスはもう山の外の道を走って降りて行く。するとモモちゃんも、『ルーク、待って―!』と、滑らかに飛びながら、ルークスの後を追う。
かなえはルークスとモモちゃんが、山を降りどんどん遠ざかって行くのを見つめる。
ルークスに、一緒に泳いだり走ったりする仲間が出来たんだな……。
女神様、ルークスに友達を見つけてくれたのかな。
「シロン、他の皆はどうしてる?」
「キングス、マリー、ジジさんはどうしてる?」
「上の温泉に居ます」
そうか。ちょっと様子を見て来よう。
かなえはジャンプで3合目の温泉へ移動する。
マリーは、トンネルシャワー、キングスは泡風呂、ジジさんは休憩場所でウトウトしている。
「皆さん、調子はどうですかー?」
『あたしは、良いわよー。気持ちいいわー』とマリー。
『わしも、これ以上無いぐらい体の調子がいいぞ』とキングス。
『ああ、そうだな』と眠そうに話すジジさん。
「それはなによりです」
かなえは皆に、ルークスがモモちゃんに泳ぎを教えてあげた事。
めきめきと上達して、ルークスと同じぐらい泳げるようになった事。
山まではルークスに追い付こうと必死になったら、飛べるようになった事と、
温泉では熱いお湯も冷たい水も全く問題無さそうだった事等を話した。
『そうか、ルークスも友達が出来て楽しいだろうな』と嬉しそうなキングス。
『そうね。ルークスだけ特別元気だったけど、仲間が出来たなら安心ね』とマリー。
『うんうん』とジジさんは話を聞いている。
シロンが子猫達が起きたと知らせてくれたので、マリーに、
「マリー、私が子猫達の様子を見に行くから、ゆっくりしててもいいよ」と言うと、
『わー、ありがとう。助かるわ』とマリーは嬉しそう。
かなえはジャンプで子猫達の所へ移動すると、ルークスとモモちゃんが一緒に遊んでいた。
「あら、あなた達眠くないの?」
『うん、お風呂入ったからげんきだよー』とルークス。
モモちゃんは子猫達を踏まない様に低空飛行しながら、ボールを転がしたりして遊んであげている。ぬいぐるみが好きなモモちゃんには、子ねこ達は可愛くて仕方が無い様だ。
かなえが高く作り替えた丘や、渡れるように置いた板が目新しいようで、タイガは丘へ登っては板の上を歩いて、行ったり来たりしている。
小屋の中へ入りウオッシュをかけ、離乳食とミルクを補充しておく。
「シロン、今何時?」
「15時50分です」
もうそんな時間かー。
「リトくんと、ピーちゃんはどうしてる?」
「そこの木の上からこちらの様子を見ています」
えー、そうなんだ。かなえは上を見上げると、あー、いたいた。木の枝にとまっているリトくん達を見つけた。
「リトくーん、ピーちゃん! こっちにおいでー」
かなえが呼ぶと。2羽はサーッと降りて来てかなえのすぐ横の木の枝にとまる。
リトくんはモモちゃんを見ながら、
『モモちゃん、とんでるねー!』とビックリしている様だ。
「そうなの。モモちゃんはさっき、ルークスを追いかけて居たら、急に体が浮いて飛べるようになったのよ。凄いでしょ?」
『うん、モモちゃんすごーい』とピーちゃんも驚いたようだ。
「じゃーそろそろリトくん達を送るね。モモちゃんはまだここに居る?」
『うん、モモちゃんここで遊んでる』と、モモちゃん。
「わかった。また後で迎えに来るね」
かなえはリトくんとピーちゃんと一緒に家に戻って来る。
するとすぐに窓の隙間から飛んで行くピーちゃんとリトくん。
「また明日ねー」
かなえは窓を開けると2羽に向かって声をかける。風の動きを利用してサーッと飛んで行く後姿はとてもかっこいい。
モモちゃんの飛び方とは全く違うのよねー。
モモちゃんは、羽を動かさなくても飛べるし、さっき猫と遊んでいるときは空中で静止していた。
ドラゴンって不思議……。
「シロン、リリララ姉妹はどうしてる?」
「カフェで食事をしています」
そう。なら夕食はいらないわね。
かなえは明日の朝食を準備すると、地下に降りて行きドアノブの所にかけておく。
そしてアニマルドームの3合目の温泉に移動する。
あーッ! 良く寝てるな―。
かなえの想像した通り、みんな休憩場所で熟睡している。
まず、ジジさんを牧場へジャンプで連れて行き、次にキングス。そしてマリーをそれぞれの小屋へ移動させる。
そして子猫達もルークスに寄りかかって眠っている。ルークスも寝ているが、モモちゃんはまだ起きていた。
「モモちゃん、おまたせ。みんな眠っちゃったんだね。ちょっと待っててね」
かなえは子猫達を小屋の中で眠っているマリーの隣へ寝かせて行く。
次にルークスもキングスの隣に移動する。
「モモちゃん。帰るよー」
かなえはモモちゃんと一緒に部屋へ戻って来る。




