041 アニマルドームの山(前)
『カナ、カナ、パンちょーだい』
「はっ? えっ……リトくん」
かなえは眠りから目覚める。
「あー良く寝たー」
リトくんに起こされるのは久しぶりだ。
「おはよー、リトくん。今パンあげるね」
かなえはベットから起き上がると、居間に歩いて行く。
もうマリーも子猫達も居ないんだな……。
『カナ、カナパンちょーだいおいしいパン』
リトくんのパンの催促も何だか嬉しい。
かなえはリトくんの好きなウォールナッツレーズンの雑穀パンをあげると、
『パン、パン、パン、おいしいパン』
リトくんまた踊ってるよ。
一晩、一度も起こされずに眠れたので、頭がスッキリしている。
「シロン、アニマルドームの皆の様子を教えてくれる?」
「はい。子猫達は朝起き出して、ミルクを飲み庭の散歩をしています。マリーは側で見守って居ます。そして、ルークスはまだ眠っていますが、キングスは湖の水を飲みに行っています」
「そう。ありがとう」
何も問題無さそうだな。
かなえは朝食を済まして、着替えるとランチを持って地下のリリララ姉妹に会いに行く事にする。
「トン、トン」扉をたたくと、ララちゃんが出て来て、
「かなえさん、おはようございます」とあいさつする。
「おはよう、ララちゃん。ちょっとお話があるから入っていい?」
かなえが聞くと、
「どうぞ、かなえさん入ってください」とリリちゃんが奥の部屋から出て来てかなえを居間のソファーに案内する。
二人とも、いつものように子猫の入った保育器が無いのを気が付いたようで、心配そうにしている。
「猫ちゃん達なんだけど、今は犬のマリーと一緒にいるの。昨日は保育器から出して、離乳食を始めたんだけどマリーが世話をしてくれてね」
リリララ姉妹はもう子猫達に会えないと思ったのか悲しそうにしている。
「子猫達ももうマリーと一緒に寝ているのよ。それに芝生の上を楽しそうに歩き回っているのを見たら、もう保育器の中では可哀想な気がしてね……」
「でもマリーに全て任せるのは大変だから、ここにも連れて来るつもりよ。今日も午後から連れてくるから子猫達の世話をお願いね」
「はい!」
リリララ姉妹は、今日も子猫達と会えるし、また会うチャンスがあるとわかり少し安心したようだ。
「毎日長い時間世話をしてくれてありがとう」
かなえ一人では大変だっただろう。
かなえはランチを渡し、今日はいつもの様に13時から動物ギルドに来て欲しい事と、お酒や飲み物の配達があるので奥の部屋に運んでもらって欲しいと伝える。
それに、パーティーをする事と、子猫の世話の御礼に二人にドレスをプレゼントすると言うと、リリララ姉妹は喜んでくれた。
乗馬教室も二人とも興味があるようなので、かなえが持っていた残りの3枚のレッスンチケットも渡しておく。
子猫達の事、もうちょっとうまく話せたら良かったな。リリララ姉妹の悲しそうな顔が過り、かなえは反省する。
いつかリリララ姉妹をアニマルドームに呼んであげれたらいいな。あの二人にならかなえのジャンプの事も話してもいいような気がするんだけど。今度女神様に会ったら聞いてみよう。
2階の部屋に戻って来ると……、
あれっ? リトくんが居ない。リリララ姉妹と話していたのが、思ったより長かったようだ。
「シロン、リトくんはどうしてる?」
「ピーちゃんと公園の方へ飛んで行きます」
そうか、それならいいわね。
かなえは支度をすると、
ジャンプで牧場に移動する。
「ジジさん、おはようございます」
『おはよう。今朝もわしだけかね?』
「ええ、リトくん達は公園の方へ行きました」
かなえはジジさんに塩飴を上げると、アニマルドームにジャンプする。
「それじゃージジさん、1日楽しんでください。良かったら子猫達にも会って下さいね」
『ああ、わかった』
ジジさんがゆっくり歩いて行くのを見届けると、かなえは牧場の牛舎にジャンプする。順番にウオッシュをかけていく。餌とお水の容器にウオッシュをかけ、補充する。
こんな感じでいいな。
かなえはまずハッピーキッズにジャンプする。
「こんにちわー」
「おや、あんたかい。どうしたんだい?」
「今日は、私の所で働いてい居る、リリララ姉妹のドレスを作ってもらいたくて来ました」
「ああ、あの二人かい。それは良いね」
リリララ姉妹は、一度ここへ服を買いに来ている。
「明日の午前中にでも、二人を来させますので希望を聞いてもらっていいですか?」
「ああ、かまわないよ。でももう日にちが無いからね。幾つか作ってあるのがあるからね。それをまず見てもらうよ」
「はい、お願いします」
お婆さんはパーティーには、体の調子が良ければ娘さんと参加してくれるそうだ。
シロンに見てもらい、出て来た飴は「高齢による神経痛緩和飴、1日1個」と表示されている。幾つも入っているので、パーティーの日までには快復して行くだろう。
かなえはドレスのお金を支払いお店を出る。
次は……忘れたら大変! かなえはパティさんに話しだけして、パーティーの招待状を渡していない事を思い出す。
不動産ギルドの前にジャンプして中に入って行くと、
「あら―かなえ。元気だったぁ? この前もらったフルーツ、新鮮でおいしかったわー」
元気に迎えてくれたのは、真っ赤なワンピースを着たパティさんだ。
「そうですか。良かったです。また手に入ったら持参しますね。今日は、これを持って来ました」
かなえは封筒に入ったパーティーの招待状を渡す。
パティさんは、招待状を開けると、
「日付は……あら、まだ2週間近くあるのね。まーいいわ。もちろん私もカイも参加するわよ」
パティさんは招待状を見ながら、
「この招待状と封筒キレイねー。まだあるの?」
「あ、はい。50枚頼んだのでまだ30枚以上あります」
「まぁー! ……そう。それなら20枚私に譲ってくれない? 私にいい考えがあるの」
いい考え……? うーん。何か嫌な予感がするんだけど。パティ―さんは凄く嬉しそう。まぁーいいか。
「いいですよ。この招待状を作ってくれた職人さんの店が、封筒に印刷されていますので宣伝してくださいね」
「ウフフッ、わかったわ」
かなえは不動産ギルドを出ると、ジャンプで子猫達の所へ移動する。
子猫達はまだ眠ってるようだ。添い寝をしていたマリーがかなえに気が付いて、顔を上げる。
「マリー、調子はどーかな?」
『あー、かなえ。子猫達は元気よ。さっきまで庭を動き回っていたわ』
「そう、ご苦労様。子猫達の離乳食を持って来たから準備するね」
かなえは小屋に入ると、容器を3つ出して離乳食を入れ軽く蓋をしておく。
「マリー、子猫達が起きたら食べさせてね。ミルクはまだ入っているみたいだから、後で入れ替えるね」
子猫達は健康に育っている。シロンにマリーの体調も診てもらい飴を出してもらうと「子育て中の睡眠不足、ストレスの緩和 大型犬用」と注意書きに表示されている。
マリーにあげると「あーおいしい。何だか体がスッキリして来たわ」と、嬉しそうにしている。
かなえは午後から子猫達を動物ギルドに連れて行くともう一度話しておく。
『あたし、ちょっと走って来るわー』
体調が良くなったマリーは勢い良く柵を飛び越え橋の方へ走って行った。
「かなえ、そろそろパーティー料理を受け取りに行く時間です」
「あーそうだ、ありがとうシロン」
かなえはジャンプで、イタ飯屋に行き出来立てのご馳走を受け取る。どれも一口サイズで食べやすい大きさになっている。
「ああーおいしそうな匂い」
かなえは店を出ると、料理をポーチのフォルダにしまう。
次に総菜屋に行き、同じように料理を受け取ると、フォルダにしまっておく。
これくらいで料理は良いかな。もし足りなかったら向かいのテラスカフェの1階で買うことも出来る……。
「シロン、リトくん達はどうしてる?」
「今はオクタゴンの周りの貯水池の木にとまっています」
かなえはリトくんのいる木の横にジャンプする。
あっ、いたいた。リトくんとピーちゃんが仲良く一番上の方の枝にとまっているのが見える。
「リトくーン、ピーちゃーん」
するとかなえの声に気が付いたリトくんとピーちゃんがスーッと舞い降りて来てかなえの肩にとまる。
『カナ、カナなに?』
「リトくんと、ピーちゃんは、アニマルドームに行く? それともここに居る?」
『ピーちゃんどうする?』リトくんが隣のピーちゃんに聞くと、
『あたし、リトといっしょどこでもいいよ』と答える。
あら? もしかしたらお邪魔だったかな。
『ぼくもピーちゃんといっしょどこでもいい!』
リトくん嬉しそうにおしりをフリフリしている。
「それじゃー、私は行くけどいいかな?」
かなえは確認すると、
『ピーちゃんドームのみ、たべたい?』
『うん、たべたい』
2羽はやっぱり、一緒に行く様だ。
「はい、わかった。それじゃー行くよー」
かなえはリトくんとピーちゃんを連れて、アニマルドームの砂浜にジャンプすると、2羽は勢いよく飛び立って行く。
次は……動物ギルドね。
かなえは一旦自分の部屋にジャンプすると、動物ギルドに降りて行く。
かなえは子猫達の為に動物ギルドの一角に子猫達の居場所を作る。
柵を設置してクッションとトイレも置くと結構場所を取るが、連れて来た時だけ柵を広げればいいので問題無いだろう。室内全体にウオッシュをかけておく。
これでいいわね。かなえは準備が終わると、アニマルドームの砂浜にジャンプする。
「シロン、キングス達はどうしてる?」
「ルークスは貯水池で泳いでいます。キングスは橋を渡った牧草地で休んでいるようです」
そうか、ルークスもう自分だけで貯水池まで泳ぎに行っているんだ。
かなえはスクーターを出すと、泳いでいるルークスの所へジャンプする。
「ルークス、大丈夫? 疲れてない?」
『あーカナ、カナ、疲れてないよー』
えっ? カナ、カナってルークスも私の事を呼んでる……。
「そう、凄いねー。ルークス、泳ぐの好きなのね」
『うんぼく、うごくのすきー』
ホント元気だよ。エネルギーの塊って感じ。後でルークスの為に山も造ろう。
ルークスが興味を持ってくれるような山を考えなきゃな。
かなえは元気に泳いでいるルークスの横を並走しながら、何か良い方法が無いか考える。
「ルークス、私はもう行くよ。ミルク交換しとくね。もうそろそろ休憩しなよ」
『ハーイ』
パワーは凄いけど、返事はまだ子供らしい。
かなえはジャンプでキングスのいる草原に移動する。
キングスは疲れたのか、いびきを掻いて寝ている。
キングス良く寝てるなー。今はこのままそっとしておこう。
かなえはジャンプでルークスの小屋に移動する。
ルークスの哺乳瓶は一回り大きくしたばかりだが、もうほとんど空になっている。よく動くから食欲もすごいなぁー。
かなえは新しい哺乳瓶を設置し、小屋の中にウオッシュをかける。
小屋の中が綺麗になるとジャンプで砂浜に移動する。
あーお腹が空いた。昨夜1度も起こされずに寝られたので、日中も眠くならないし、食欲もある。やっぱり睡眠は大切ねー。
かなえは、ランチを選び椅子に坐ると食べ始める。
選んだのは総菜屋のインドカレーとチーズ入りの大きなナン、アツアツもちもちでカレーに付けて食べると、おいしー。スパイシーだからリリララ姉妹にはちょっと辛いかな。それにグリーンサラダと、ココナッツソーダ。デザートはキャロットケーキにした。
かなえは全て平らげると、暫らく休憩して子猫達の所へ向かう。マリーが居たので、
「子猫達を迎えに来たわ。どう? 離乳食食べたかしら?」
『ええ、きれいに食べたわよ。タイガは足りないようでミルクも飲んでいたわ』
「へー、やっぱりタイガが1番食欲があるのね。それじゃー子猫達をこのまま連れて行くわ。夕方には連れて帰るわね。マリーはそれまでゆっくりして」
『そうね、好きな事をして過ごすわ』
かなえは眠っている子猫達をそっとケージに移し、ポーチに入れると自分の部屋へジャンプで移動する。




