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アニマルレスキュー  作者: コトリコトリ
3/229

003 ニュードームシティーの街並み


「……何、これ? 本物?」

 地図で見たのと同じドームシティーが下方に広がる。


「はい、ニュードームシティーの上空に着きました」

「そんな!? 200キロ離れてたんでしょ? 何で一瞬で着くのよ?」

「スクーターの『ジャンプ』機能を使用したので時間はかかりません」


 ……凄すぎて頭が付いて行かないよ。


「それでは下に降りてみましょう。あの南側の門から少し離れた大きな木に焦点を合わせ、生体反応を確認して下さい」


「……あっ、はい、ちょっと待って」

 ナビを確認すると、木の周りには人はいないようだ。

「それでは先ほどと同じように、移動してください」


 かなえは、木の隣に焦点を当てるとサブミットボタンを押して……。

 シュッ――――と、一気に地上の大きな木の真横に移動した。

 なんかもう、このジャンプ機能、凄すぎる! 


「ここから南門まで歩いて行きます。スクーターはポーチに収納して下さい」

「収納って、さっきと同じでいいのかな……」

 

 ポーチを開けて……、

「スクーター、収納!」

 パッとスクーターが目の前から消えた。

 

「それではここで装備を揃えましょう」

  

 再び目の前の画面が開いて、かなえのポーチリストのフォルダが開き、ニュードームシティーの服、旅用をクリック。かなえの服が、濃い緑色のフード付きのマントに変わり、靴は茶色いブーツ。マントの中にはクリーム色のチュニックを着ている。鞄は、リュック(小)をクリック。ポーチはグリーンに変化していた。


「欲しいものが分かれば、ポーチから直接取り出すことも出来ます」とシロン。

 もうイチイチ驚いているのも疲れたよ……。


 そして髪は……濃い金色?!

「えっ、私の髪がダークブロンドになってる!」

 

 よく見たら手も白くてほっそりしてるし、足も細くなったような……動物の世話でできた、小さいひっかき傷も無くなってる!


「何! これ……お願い、鏡を見せて!」

すると画面が鏡に変わり、目の前に可愛い女の子が現れた……。


「だ、だれ? これ私なの?」

色白で整った顔立ちの十代半ばの女の子に……スラリと伸びた手足


「これがわたし……?」

興奮して涙目になった、エメラルドグリーンの瞳が輝いている。

目線は以前とあまり変わらないから身長は変わらなそう。でもそれ以外は何もかも違ってる……。


 パッと胸に手を当ててみる。ささやかな膨らみ。おしりは……。

 うーん。これからきっと成長するだろう。


 女神様が「まかせて」って言ってたっけ。

 かなえは、可愛い女の子になれて嬉しいような、ポッチャリ、色黒の以前の自分の姿を失い、ちょっと悲しいような……複雑な気分になった。

 

「かなえ、そろそろいいですか?」

「えっ? はい、そうでした。南門ね……」

 自分の変化にビックリしすぎて、他の事は忘れていた。


「その前に、こちらをご覧ください」

 目の前の鏡が消えて、再びポーチのリストが表示される。

 その中の一番上のIDと書かれたフォルダーをクリックすると、表示されたのは……。

 

―――――――――――――

<かなえのID>

 表示

 名前  カナエ リュウゼン

 年齢  16才

 職業 未定

 特技  動物の世話、歌声  

ポイント 10000ドーム

 パワー 5

―――――――――――

 非表示

 名前  竜禅かなえ

 年齢  16才(32才)

 職業  アニマルレスキュー、女神様の子分

 特技  人間、動物とのコミュニケーション、癒しの声

 持ち物 ブレスレット、ポーチ

 ポイント1000000ドーム

 パワー 500

―――――――――――


「これは、ドームシティーで必要になるIDカードのリストです」 

「へーっ、私って16才なんだ……」

 

 中身は32才なのにいきなり半分の歳になっちゃった……それに、

「表示、非表示での数字が随分違うんだけど?」


「表示は、実際IDカードに実際表示される内容です。ポイントや、パワーの数字はこのドームシティーの人々の平均に合わせているので、ほとんど変化しません。非表示は実際のかなえの状態を表しています。このカードはID機能の他に、クレジット機能も付いています」


 へーそうなんだ。それにしても……、

「わたし、いつから女神様の子分になったの――――?!」


「女神様はかなえを随分気に入られたようですね。期待に応えられるよう頑張ってください」

 もう、色々突っ込みどころ満載だけど……。


 気が付くと辺りがだんだん薄暗くなってきた。

 もう夕方かな? 早く行こう……。


 しばらく歩くと南門に守衛さんがいて、20人ぐらいの列が出来ている。

 門の両脇にはドーム型の灯りが設置されていて、周辺を照らしている……。


 馬車に品物を積んだ商人のような人、私のようにマントを羽織った旅人のような人達。親子なのか小さい子を連れた人も並んでいる。


 かなえの前に並んでいるのは、野菜を乗せた荷馬車をロバに引かせる農家の人のようだ。


『いたっ、アシ、いたいよー』

 かなえは声がした前方を見てみるが、痛そうにしている人は見当たらない。


『い、イターイ――!』

 もう一度、声のする方をよく見ると……えっ、ロバ?

 

 ロバが苦しそうにしながら声を発しているように見える。周りの人は何も気が付いていなようだ……。

 もしかしたら……私、ロバの言葉がわかるみたい!

 

 かなえは急いでロバに近づくと

「ロバさん、どうしたの? 痛いの?」


『うん、左の後ろ足、何か刺さってる!』

「ちょっと待って。見てみるから……」

 

 するとロバの持ち主のおじさんが、

「むすめさん、どうしたんだい。うちのロバに何か用かい?」と不思議そうにしている。


 ……えっとー、どうしよう。ロバが足が痛いって言ってるなんて言えないし。

「あのっ、このロバ、足を痛そうにしてるんですけど」


「そうかね? 別にそうは見えないけどなぁ……?」

 おじさんが、疑い深い顔をして私を見る。

 

 ここは少し強引にでも……。 

「私、動物に詳しいのでちょっと診せてください!」

 目の前に苦しんでいる動物がいるんだから。

 

 わたしはロバの左の後ろ足を見てみる。

 ドコだろ……わからないな。


「ちょっと、痛いところ診せて?」

 ロバは痛いのか、足を震わせながらちょっと持ち上げる。

 見えないな……。


「すみません、ロバのこの足、持ちあげてくれませんか?」

 おじさんが渋々、かなえを手伝って持ち上げてみると、伸びた足の蹄が割れて足に突き刺さり血が滲んでいる。

 

 わー痛そう!  

 かなえは小声で……、

「シロン、救急セットある?」と聞くと、


「はい、準備しますので、ポーチから出してください」とシロン。

 シロンの声はおじさんに聞こえないみたいだ。


 ポーチを開けるとロバ用爪切りバサミに、消毒用の軟膏と包帯が出てくる。

 おじさんも傷を見たせいか、しっかり足を持ち上げてくれている。

 

 かなえはロバに話しかける。

「ちょっと割れた蹄を切るから痛いけど、我慢してね」

『うん、わかった……』

 ハサミを持ったかなえはロバの足の蹄を切り、刺さった蹄を外すと傷口に軟膏を塗りつけた。

  

 ここまで来れば、一安心……。

 かなえは慣れた手つきで、ロバ用の大きな包帯で足先から少し上まで巻き付けた。

 

 このぐらいの応急処置は、日本にいた時に動物達にしていたから慣れたものだ。

 気が付くと、周りに並んでいた人達が集まって来ていて、かなえの処置に感心していた。

 

 ロバは足踏みして、

『もう痛くない、やったー! ありがとー!』と嬉しそうに『ヒーホー、ヒーホー』と鳴き声をあげた。

 

「むすめさん、助かったよ。まさか蹄が刺さっているとは思わなかった。ほっといたら大変だった」

 うん、傷口が化膿したら大変だったかも……。


「この軟膏を差し上げますので、何度か傷口に塗り込んでくださいね」

「えっ、いいのかい? 助かるよ」


「他の足の蹄も伸びてきているので切ってあげてください」

「ああ、わかったよ、ありがとう」

 

 まさか、ロバと会話が出来るようになるとは、考えてもみなかったな。おかげでロバの怪我に気が付けたし……女神様には感謝しないと。


 しばらくするとおじさんの順番が回って来た。

「市場でいつもフルーツや野菜を売っているから来ておくれ」

 おじさんはそう言うと門の中に入って行った。

 

 そしてやっと、かなえの番になり……。

「IDカードを提示してください」と言われる。


 生真面目そうな守衛さんだだなぁー。20才ぐらいかな。

 ブラウンヘアーにブラウンアイ。今まで32才だった、かなえの感覚では若いお兄ちゃんに見える。

 

 IDカードの内容が表示されたのか、

「カナエリュウゼンさん、16才、ニュードームシティには何しに来たの?」

「旅行です……気に入ったら仕事を探そうかと思います」

 とっさに思い付いたことを言ってみた。


「そう、偉いね。ここは良いところだから気に入ると思うよ」

 えらいって、こんなお兄ちゃんに言われても……。

 

 この姿に慣れるまで時間かかりそうだな……。

 

「それじゃー、入場料500ドームになります。このままIDカードでの支払いにしますか?」


 へー、入るのにお金かかるんだ。

 お金の単位、ドームか……。


「はい、それでお願いします」

「一度支払うと一月、出入り自由ですよ。この門は、朝6時に開いて夜20時に締まります。では良い時間を」

 と言いながら、IDカードを返された。


 入場手続きが終わりドームシティーへ入ると、広場になっていて屋台が何軒かあり、おいしそうな香りが漂ってくる。


 広い石畳の道が続いていて両脇に歩道があり、2階建てのレンガ造りの家が並んでいる。 

 気温が少し下がたように感じるけど……ドームの中に入ったからかな? 

 

 汗ばんだ額に涼しい風を感じる。

 ……あまりにも自然で誰も、この街をドームが覆っているなんて信じないだろうな。

 

 空を見上げると、いつの間にか、夕日でオレンジ色になって来ている。

 空は地球と同じなんだな……しばらく物思いに耽っていると、


「かなえ、あそこの乗り合い馬車に乗車して、宿まで移動しましょう」とシロン。

 ……久しぶりにシロンの声を聞いた気がする。

 

「はい。そうね、わかったわ」

 かなえは、停車している馬車に近づくと御者台に坐っている人に、


「すいません、今晩泊まるところを探しているんですけど……」と話しかける。


 なんて髭がもじゃもじゃな人!?

 御者はカウボーイハットのような大きな帽子をかぶり、薄い茶色の長い髭、体格もいいし赤い服を着たらサンタクロースに見えそうだ。


「乗りな」

 わっ、凄いガラガラ声!

「乗車料金は?」

「300ドームだ」 

 高いのか安いのかわからない。

 

 馬車の中を覗くと、他にも二人乗客がいる。少し安心しIDカードで支払いを済ますと乗車した。

 馬車からの町の眺めは……。

 

 この通りは商店街なのか、レンガ造りの建物が道を挟んで両側にビッシリ並んでいる。一階の部分が店舗になっているようだ。街灯が灯され、家路につく人、夕飯を食べに行く人、皆楽しそうに歩いている。街路樹の横に等間隔でベンチが設置されていて、おしゃべりに興じている人達も……。

 

 幸せそうだなぁー。

 初めて見る風景なのに何故か懐かしいような気分になる。

 暫らく外の様子に見入っていると、馬車がユックリと停車した。


「嬢ちゃん、着いたよ。そこを左に曲がったところが、宿泊通りだ。お勧めは真っ直ぐ行った、右側の『オアシスイン』だ」


「あ、ありがとうございます」

 馬車を降りるとお馬さんにも「ありがとね、お馬さん」と声をかけ、宿泊通りを歩きだした。


 宿泊通りは、今通って来た馬車通りより少し狭いが、十分馬車がすれ違える広さだ。やはり両脇に歩道があり、街灯が灯っていて、夜でも問題なく歩けそうだ。


 宿泊通りに入ってすぐの建物は、高級感漂うホテルのようでお値段も高そうだが、だんだん道を進んでいくと、庶民的な雰囲気の建物が増えてくる。


「そろそろかなぁー」

 右側の建物を見ながら歩いていると……。

 結構年季の入った木の板にベットのマークとオアシスインの文字。


「良かったー、あったー」

 建物はレンガ造りで2階建てで、1階はレストランがあるようだ。食事時だからか良い匂いも漂ってくる。

 

 かなえは、中に入ると周りを見渡した。

 ロビーにはクリーム色のソファーと小さいテーブルがいくつか置いてあり、そのテーブルに一つづつランプが灯されている……一息つくのに丁度良い感じだ。宿泊客なのか、年配の女性がゆったりと座っている。正面には2階へ上る階段があり、両脇の葉の大きな観葉植物が、南国の雰囲気を醸し出している。

 

 オシャレなペンションみたいな感じだな……。


 カウンターまで行くと、

「すみませーん」

 声を張り上げ誰か来るのを待った。



 ――――――――――――――――――――

 

 <かなえのIDカード>

 表示

 名前  カナエ リュウゼン

 年齢  16才

 職業 未定

 特技  動物の世話、歌声  

 ポイント10000

 パワー 5

 ―――――――――――

 非表示

 名前  竜禅かなえ

 年齢  16才(32才)

職業  アニマルレスキュー、女神様の子分

 特技  人間、動物とのコミュニケーション、癒しの声

 持ち物 ブレスレット、ポーチ

 ポイント 

     プラス  1000(ロバの足の治療 女神様からの報酬)

     マイナス 500(入場料)、300(馬車) 

      

 残り  1000200

 パワー 499




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