023 市場での買い物
かなえは1階の動物ギルドに降りて来ると、地下から階段を上る音がしてリリララ姉妹がやって来た。
「「こんにちは」」
「こんにちは。もう下の片付けは終わったの?」
「はい、荷物は少ししかないので、すぐ終わりました」と、リリお姉ちゃん。
「じゃー今日からここに住むのね。よろしくね」
「「よろしくお願いします」」
「あのー、教えて欲しいんだけど……」
かなえは気になっていた、リリララ姉妹が住んでいた、救済ドームの事を教えてもらう事にした。
姉妹によると……。
救済されてこの世界にやって来た人達は、まず救済ドームで過ごし、一般常識からこの世界の事を学んでいく。なぜか必要最低限の言葉は初めから理解できるそうだ。
そしてドームでの暮らしに慣れてくると自分の適性を見つけ、許可が下りると救済ドームを出て、仕事を探し始める。
リリララ姉妹のように、子供の場合は自分達の保護者になってくれる人を探し、仕事をしながらこの世界の事を学んでいく。
救済ドームを出る許可をもらう時点で、大人と子供の学力の差はほとんど無いそうだ。子供は柔軟なせいか大人達より短期間で、救済ドームから出る許可がもらえる事もあるそうだ。
なので、リリ、ララ姉妹を6、7才の子供と思わず、中学生位と思って接した方がいいのかもしれない。
かなえが以前、ギルド室長に教えてもらったのと大体同じだ。今の話に補足すると、救済ドームを出て暮らし始めた全ての人達には、住むところが支給される。
そして、大人は週20時間以上、子供は週15時間以上働く事により、オクタゴンから報酬が支払われる。住むところが与えられ、光熱費や水道代、医療費は無料で、税金もかからないので、報酬だけで十分暮らしていける。
何歳からでも学校に通うことが出来るので、働きながら違う仕事をする為の授業を取ることも可能だ。しかも授業料は無料だそうだ。
また、かなえの様に起業する場合も店舗には家賃もかからず、家具などを揃えるための準備金も支給される。誰かを雇う場合も、大人の場合は週20時間までは報酬を支払う必要は無いが、それを越えると雇い主に支払いが発生する。
かなえの場合も、リリララ姉妹に週15時間以内なら報酬を支払う必要が無い。
何とも至れり尽くせりだ。
なので、特にこの試用期間の間、姉妹達の労働時間は1日3時間以内にしておくべきだろう。慣れてきたら、二人で交代しながら働いてもらってもいい。
今日、二人にやっておいて欲しいことはあるかな……? うーん。掃除もかなえが毎日ウォッシュで一瞬で終わらせているし。
何か無いかと動物ギルド内を見回してみる……なんとなく物足りないような。
観葉植物でもあったらいいかも。
「あなた達、今から買うものがあるから付いてきてくれる?」
「「はい、わかりました」」
戸締りをして、外に出ると3人で市場に向かう。行く途中、地下の部屋の様子や、食事はちゃんと食べているか等、気になった事を聞いてみるが、問題は無い様だ。
公園の中を通って行くともう前方に市場が見えて来る。この時間も沢山の人で溢れている。人気があるのはやはり食べ物の屋台だ。
しばらく行くと植木が沢山並んでいるガーデニングの店を見つけた。
「今日は、動物ギルドに飾る植木を買いに来たの。リリちゃん、ララちゃんは、好きな花の植木を一つづつ選んでくれる?」
「「はい」」
二人は自分達がで選べるのが嬉しいのか、目をキラキラさせている。二人がお店を見て周り始めたので、かなえは玄関の外と窓際に置く観葉植物を探し始めた。
このドームの気候は一年を通して温暖なので、フルーツの木もいろいろ種類がある。どれも欲しくなってしまうが……玄関用にはもう少し場所を取らない木の方がいいと思いながら見ていると、
お気に入りを見つけてしまった。木自体は普通のドラセナなのだが、周りにツリーハウスが付いていて、中に小人でもいそうな雰囲気だったり……。
その隣にもガジュマルのようなのっぺりとした木肌に人形が縄梯子を渡して上っていたり。おもちゃのお菓子の家が下に置いてあったり。
どれもその植木の特徴を生かした細工がされていて、目が離せない。もちろん値段も普通の植木より割高になってしまうが、この植木を見る度に幸せな気分になれそうだ……。
「娘さん、随分と気に入ったようだね」
かなえがずっと見入っていたので、お店の人が話しかけて来る。
「その植木の装飾は、私の知り合いの芸術家が趣味で作っているんだよ。面白いだろ?」
「そうなんですか。どれも可愛くて気に入りました」
かなえはお店の人に動物ギルドを始めたこと。植木が幾つか必要な事を話すと、
「それならこれはどうだい?」と奥に置いてある植木を指していうので、見てみると……、
玄関にピッタリな背の高い三角錐の形に刈られた植木が二つ並んでいる。そして、小さな梯子が掛かって入たり、ロープで上っている人形がいたり、中央には赤い屋根の家があり実際誰か住んでいそうに見える。
わぁー! いいな。
「これ、買います」と、かなえはまた即決で決めてしまう……。
気が付くと結構時間が経っていたようだ。
「あっ!」
リリララ姉妹は待ちくたびれて、お店の角で佇んでいる。
かなえはすっかり二人も一緒に来ている事を忘れていた。
「ごめんね。遅くなって。もう決まったから」
二人も自分達が選んだ植木を足元に置いているので、
「可愛いの選んだね、じゃー一緒に買っておくね」
他に、ジョウロや肥料など必要な物も合せて購入する。お店の人が今日届けてくれるそうなので、住所の入った動物ギルドのカードを渡してお願いする。
買い物が終わったので、デザートの屋台に行くと二人に好きなものを選んでもらう。
リリちゃんが選んだのは、大きなシュガーコーンに包まれたパフェ。アイスクリームやフルーツが入っていて、生クリームたっぷり。トッピングにチョコを選んだようだ。
ララちゃんのは、メロン半分をくり抜いた中に、フルーツポンチが入っていて、バニラアイスと生クリームが乗っている。かなえはお金を払うと近くのテーブルに二人を座らせる。
デザートを頬張る二人は子供らしくて可愛い。
夕飯が食べられるといいけど……たまにはいいよね。
「じゃー、ゆっくり食べてね」
あとは二人の自由時間にしてもらう。
かなえは市場を出て行き、ジャンプでもう一度ジョーさんのところにやって来た。
お店の中に入ると「すみませーん」と呼んでみる。
すると奥から、足音がして来て、ジョーさんが出て来た。
「あー、あんたか」
「こんにちは、手の調子はどうですか?」
「ああ、あれから調子いいよ。あんたに貰った薬が効いてるようだ。疲れた時にあれを塗ると、調子が戻るんだ。助かってるよ」
「でも無茶はしないでくださいね。薬が必ず効くわけでは無いんですから」
「ああ、わかってる」
「それで、今日来たのは、一つ作ってもらいたいものがあるんです」
かなえは、あの切り株のようなカウンターに引き出しか、箱を固定して鍵を付けて欲しいとお願いすると。
「そのぐらいならいつでもやってやるよ。あんたはオレの命の恩人だからな」
「命のってそれは大げさなんじゃ……?」
「いや、あのままオレの手が動かなかったら、何もする気力が無くなったまま、干からびていたさ。だから大げさなんかじゃ無い」
ジョーさんが快く引き受けてくれたので助かった。
かなえはお店を出ると、
「シロン、今何時?」
「15時です」
そうか、ならまだ時間があるから、仕立屋のお姉さんのところに行って様子を見て来よう……。
かなえはお店の前にジャンプして中に入って行くと……おねえさんは真剣な表情で何かをしている。
「こんにちは、手提げ袋はどんな感じですか?」
「あら、いらっしゃい、今も縫っていたところよ。どう、見て?」
おねえさんは、奥から出来上がった袋の束を持って来て見せてくれた。
「うぁー! 随分沢山出来ていますね?」
「ええ、これで50枚よ。あと半分ね」
お姉さんはそういいながら、手の指を伸ばしたり縮めたりしている。
疲れているんだな……。
「シロンお願い」
かなえはポーチを開けると、中からピンクの飴が幾つも入った袋が出て来た。注意書きには「目の疲れや筋肉疲労に、一日3個まで」と書かれている。
お姉さんに早速舐めてもらうと、
「おいしー、甘くて疲れがとれて行く感じがする―」と喜んでくれる。
かなえは出来上がった50枚の袋をもらい、お礼を言うとお店を後にする。
次は……印刷屋にジャンプして、お店の中に入って行く。
「こんにちは」
「ハーイ、あら、いらっしゃいませ」
「あのー、手提げ袋の出来上がった分を持って来たんですが……」
かなえは持ってきた手提げ袋50枚を渡す。
「ちょっと待ってて」
と印刷職人さんが奥から持ってきたものは、前に来た時に渡しておいた手提げ袋のサンプルだ。そのサンプルには、もう看板職人の書いた動物ギルドの看板の絵が印刷されていた。
「わぁーきれい!」
印刷の発色が良く、手提げ袋とのバランスも良い。
かなえは絵はこのままで、追加でこの手提げ袋を作るのに協力してくれた人のお店と住所を入れるようにお願いした。
「あのー……下の方でいいんです、お願いします」
「それじゃー、私の店の名も印刷するの? あなたホントに面白い事思い付くわね。いいわよ。作った職人の店まで名前が載るなんて、皆喜ぶわよ」
そろそろ失礼しようとすると、印刷職人に止められ、前に頼んでおいた200枚のカードを渡される。絵を看板と同じにデザインに変えてもらったので、もっとインパクトがあり、いい感じになった。
「ありがとうございます。気に入りました。それでは手提げ袋の印刷をお願いします。また2、3日したら様子を見に来ます」
かなえは挨拶をするとお店から出て行く。
「シロン、リトくん達はどうしてる?」
「はい雄牛の背に2羽とも、とまっています」
そう。なら丁度いいわ、迎えに行こう。かなえはジャンプで雄牛の横にたどり着くと、
「雄牛さん、ありがとう。2羽を面倒見てくれて」
『いいんだよ。わしにも良い話し相手さ。それよりさっきは子牛を助けてくれてありがとよ。驚いたが……感謝してるよ』
「どういたしまして。雄牛さんが知らせに来てくれたから、早く対応出来て助かりました」
静かだなーと思ったら、リトくんとピーちゃんは雄牛さんの背中で仲良く眠っていた。かなえは2羽を手の中に包んで、雄牛さんにお礼を言うとジャンプで部屋に戻って来る。
椅子の背の縁にとまらせると、リトくんは頭を胸の中に入れてまた寝入って行く。ピーちゃんは目が覚めたようで、周りを見回している。
「ピーちゃん、どうする? お家に帰る? それともここに泊まって明日の朝帰る?」
『……あたしかえる。リアにあいたい』
「そう、わかった。ピーちゃん、今度また外に行きたくなったら教えてくれる?」
かなえは、とっておいたリボンを見せて、
「このリボンをピーちゃんの鳥かごに軽く結んでおくから、もし外に出たい時はこのリボンを外して下に落としてくれる?」
かなえは鳥かごを出すとリボンで結んで見せる。
「ピーちゃん、このリボン外せるか試してみて?」
『うん』
ぴーちゃんは鳥かごの中に入って行くとリボンを口ばしで緩ませてあっという間に下に落として見せた。
「そう、それでいいの。上手ね。お家の人にリボンの事は言っておくからね。ピーちゃんがお外に行きたくなったら、リボンを下に落としてね? 私が迎えに行くから。……わかった?」
『うん。わかった』
これでよしっと。かなえはピーちゃんを肩に乗せ鳥かごを持つと、リアちゃんの待つ家にジャンプした。
―― カン、カン ――
「ハーイ」
リアちゃんの声がして、スタ、スタ、スタと早足歩いて来る音がして扉が開く。
「ピーちゃん!」
かなえの肩に乗っていたピーちゃんは一旦リアちゃんの頭の上にとまって、腕に飛び移った。
リアちゃんもピーちゃんもお互いに会えて嬉しそう。すると後ろからお婆さんが来て、
「まぁ、かなえさん。ご苦労様ね。どうぞ、入ってください」
かなえも何度も来ているので遠慮なく居間に行きソファーに座らせてもらう。
「ピーちゃん、すっかり元気になったみたいね」と、お婆さん。
かなえは鳥かごに付けたリボンの説明をお婆さんとリアちゃんにする。
「まぁ! そんなことができるの。ピーちゃんが、外に行きたい時は自分で知らせてくれるのね」
リアちゃんはなぜそんなにお婆さんが驚いているのかわからないようでキョトンとした顔をしている。
「はい、大丈夫だと思います。もし何日かして連絡が無い様でしたら、また様子を見に来ますね」
かなえは話し終えると、依頼完了の書類にサインをしてもらい、リアちゃんの家からお暇した。
自分の部屋にジャンプで戻って来ると、リトくんはもうグッスリ眠っている。きっと牧場で木の実を沢山食べてお腹が空いていないのだろう。
今日は長い一日だったなぁー。朝から子牛を助けたり、飲茶を食べに行ったり、市場で植木を見つけて……。
「あーっ!」 植木の配達を頼んだんだ。
かなえは慌てて下の階に降りて行き、灯りを付けると……今日購入した植木が窓際のところに並べてあった。
ああー、良かった。リリララ姉妹が、ちゃんと対応してくれたんだ。
かなえはホッとすると、自分の部屋に戻った。
お腹が空いたなー。
かなえは今日市場で買っておいた、ピタブレッドサンドと野菜のゴロゴロ入った、ポトフのようなスープを食べ始める。ポーチから取り出したので、どちらも出来立てのほやほやだ。
食べ終わる頃にはもう、まぶたが落ちそうになっている。
なんとかシャワーを浴び寝る支度をすると……ベットに入ったかなえは、そのまま眠りに落ちた。
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<かなえのIDカード>
表示
名前 カナエ リュウゼン
年齢 16才
職業 動物ギルド長
特技 動物の世話、歌声
ポイント 10000
お財布 10000
パワー 5
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非表示
名前 竜禅かなえ
年齢 16才(32才)
職業 アニマルレスキュー、女神様の子分
特技 人間、動物とのコミュニケーション、癒しの声
持ち物 ブレスレット、ポーチ
ポイント
プラス 2万(子牛の救出 女神様から)
1000 (仕立屋 筋肉疲労用飴 女神様から)
マイナス 1200(ランチ 飲茶 ラウンドカフェ)
5000(市場での食事テイクアウト)
1万3千(市場で植木購入)
1200(市場でリリララデザート)
残り 96万0800
パワー 496
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動物ギルド用
手提げ袋関係
3万 手提げ袋(100枚 仕立屋)
5千 デザイン画(看板屋)
未払い 印刷職人
カード追加分 1万 印刷職人
合計 マイナス 4万5千
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立て替え 80000(地下の家具、リリララ姉妹を雇えばギルド科からの補助金で賄われるので保留)




