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アニマルレスキュー  作者: コトリコトリ
22/229

022 子牛の救出 


『カナ、カナ、パンちょーだい、ピーちゃん、ぼくじょー』

「……リトくん、朝の挨拶、おはようが抜けてるよ」

 かなえは大きく欠伸をする。


「あー、良く寝たなぁー」

『カナ、カナ、パンちょーだい』

 リトくんは、かなえの枕元に飛んで来て、空腹を訴える。

「ハイハイ、わかったよ」


 かなえは居間に行き、ポーチから、ピンクベリーとナッツの入ったパンを取り出すと、リトくんにちぎってあげる。


『パン、パン、おいしいパン、しらないパン』

「あははっ!」

 そうだね、初めてあげるパンかも。向かいのテラスカフェで買っておいたパンだ。


「リトくん、昨日はありがとう。リトくんが居てくれたから、ピーちゃん元気になったよ。また今日も一緒に遊んでくれる?」

『うん、ぼく、ピーちゃんいっしょあそぶよ』


 かなえは出掛ける準備をして今日の服装を選ぶと……、

 白地にオレンジの模様が入ったチュニックに一瞬で変わった。可愛らしい感じだが、16才のかなえには良く似合っている。ポーチはブーツと同じ薄い茶色に変化した。


 汚れが目立ちそうだけど……汚れたらウオッシュすればいいよね。

 

 かなえはリトくんと一緒にピーちゃんの家の前にジャンプして、ドアノッカーを鳴らすと、扉を開けてくれたのは……リアちゃんだった。


「あっ、リアちゃん、お出迎えありがとう」

 リアちゃんは肩に乗っているリトくんを見ながら「あー、小鳥!」と声をあげる。


「そうよ。今日も一緒に連れて来たの。ピーちゃんと一緒に遊んでもらうね」


 すると、奥からお婆さんがやって来た。

「あら、かなえさん、朝からご苦労様ですね。どうぞ入ってください」

 かなえは、お婆さんに挨拶をすると、居間に案内されピーちゃんのいる鳥かごの前まで来た。


「ピーちゃん、おはよー。今日もリトくんと遊んでね」

 

 リトくんは『あそぼ―、あそぼ―』と、かなえの肩の上で足踏みをして、ピーちゃんも嬉しそうに『あそぼ―』と言いながら鳥かごの中で行ったり来たりしている。

 

 かなえは、お婆さんとリアちゃんに見送られてお家を出ると、鳥かごに入ったピーちゃんを抱えて、リトくんと一緒に牧場にジャンプする。




「さぁー、ピーちゃん今日一日楽しんでね。リトくんもピーちゃんをよろしくね」


 リトくんはピーちゃんと一緒なのが嬉しいのか『ぼくじょー、ぼくじょー』と、いいながら、ピーちゃんの鳥かごに乗って羽をパタパタしている。


 鳥かごを開けるとピーちゃんがパーッと飛び出し、リトくんも後に付いて飛んで行った。

 

 元気に飛び立った2羽を見届けるて、かなえは鳥かごをポーチのフォルダにしまい牛舎にジャンプする。

 

 牛舎に入りいつものようにウオッシュをかけて、きれいにしていく。


 元の状態にする効果があるので、緩んだ釘にウオッシュをかけると、打ち付けたばかりのようになり、大助かりだ。餌箱や水入れもウオッシュをかけて、補充をしておく。

 

 これでいいかな、と思っていると……足音がして牛舎にいつもの雄牛さんが慌てて入って来る。


「あー、雄牛さんおはよう」

『丁度良かった、あんたを探していたんだよ、大変なんだ。子牛が池に落ちた! 助けてくれ』

 雄牛は急いで来たのか荒く息をしている。


「えっ、大変! シロン正確な場所を教えて」

「はい……こちらです」


 画面の地図の池の辺りに赤い点滅がいくつも見える。周りにも牛達がいるのだろう。

「雄牛さん、場所はわかったから、私先に行くわね」


 かなえは急いでジャンプして池の前に移動すると、目の前には池に落ちて、足が滑るのか上って来れないでいる子牛がいた。幸い頭は池から出ているので、息は出来る。


 子牛の側をウロウロする牝牛。子牛のお母さんだろう。そして周りに様子をうかがっている何頭もの牛達。


 かなえは子牛に近寄ると「ちょっと待ってね。今助けるから! 落ち着いてじっとしててね」と声をかける。


「シロン、何かロープみたいなものはある?」

「ありますが、この場合効果的なものがあります」

「何?」


「池用の緩いスロープがありますので、設置しましょう。幸いこの辺りの水深は浅めなので子牛でも移動できるでしょう」


「そう、わかった。私が子牛とお母さんに説明するからちょっと待ってて、その前に子牛を落ち着かせる飴か何かない?」

「はい、どうぞ。用意できました」


 ポーチを開けると、ゴルフボール位の半透明な黄色のグミのようなものが入っていて、注意書きに「子牛の精神安定効果がある」と書いてあった。


 ……うん、これでいいわ。


 かなえは再び子牛に近寄ると『ママ―』と言って口を開けた瞬間に、黄色いグミを放り込んだ。すると一瞬『なに?』って顔をした子牛が口の中のグミに気が付き口を動かし始める。


 すると『おいしーもっとー』と水の中にいるのも忘れて、催促し始める。

「うん、じゃー後であげるね」


 ……良かった。子牛、少し落ち着いて来たみたい。

 

 かなえは子牛の母親の牝牛に今からやることを説明する。心配そうにしていたが、牛舎から戻って来た雄牛が、


『大丈夫だ。このむすめに、任せてみてくれ』と言ってくれたので、牝牛も心を決めて『私の坊やを助けてちょーだい』とかなえに頼んだ。

 

 よし、じゃぁー始めよう! 


「シロン、何からすればいいの?」

「はい、まずスロープを池の中に設置しますが、今、子牛がいる位置が丁度良いので少し子牛を移動させてください」


 かなえは子牛に近づくと「もう少しで出られるからね。これからスロープを作るから、こっちにゆっくり歩いてきてくれる? 後でおいしいグミあげるね」


 子牛は水の中でゆっくり方向転換をするとかなえが誘導する方へ近寄って来る。

「そうよ、いい子ね」


「シロン、もうこれでいいかしら?」

「はい、ではスロープを設置します」


 すると先ほど、子牛がいた辺りからゴボ、ゴボっと泡が上がったと思うと、幅の広い緩やかなスロープが現れた。


「凄い! これなら子牛も登れそうね」


 かなえは子牛にスロープまで誘導するとゆっくり上がるように指示をする。

「このまま上って来てくれる? そうその調子」

 

 かなえもスロープから池に入り、子牛を支えて一緒に上って来る。

 

 ……そして、やっと地面に上がって来れた。子牛は牝牛に近寄ると『ママ―、ママ―』と甘えている。


 すると牝牛が『ありがとう、娘さん、私の大事な坊やを助けてくれて、ありがとう』とお礼を言ってくれた。


 あー良かった。無事に助けられた……。


 かなえに近寄って来た雄牛さんも『あんた、凄いなぁー、いきなりあんな坂が出来て驚いたよ。ありがとう』と、感謝してくれる。


 かなえはビショビショになった子牛にウオッシュをかけると、きれいになってスッキリしたのか、子牛は母親の牝牛の周りを走り始めた。


「シロン、今のあの子牛に合う飴はある?」

「はい、用意しました。どうぞ」

 

 かなえはポーチを開けて見ると、白透明の柔らかいグミが出て来て、注意書きには「元気な子牛用の飴、ミルク味」と表示されている。


 かなえは近づき、子牛にミルクの飴をあげると『おいしー、おいしーママのミルクのあじ』と喜んでいる。


 

 丁度いいので集まって来ていた牛達に、かなえは自己紹介をする。


「牛の皆さん、初めまして。私はかなえです。この牧場で働く事になりました。よろしくお願いします」


 すると側にいたキャラメル色の牝牛が、『あんたみたいな娘がこの牧場に居たら、あたし達も安心だよ』と言ってくれ、他の牛達も同じようにかなえが働き始めたことを喜んでくれているようで安心した。


「わたしは毎朝牛舎に来ているので、何か困った事があれば教えてくださーい」

 と、最後に牛達に伝えておく。


 ふと、池を見ると少し濁っているのが気になったので、ウオッシュを念入りにかけた。

 すると……池の水が澄んで透明になり底まで見えるようになった。スロープも出来たしこれなら牛さん達も安心して水を飲めるだろう。

 

 一通りやり終えたので、かなえは部屋に戻って行く。


 今日は朝から、ひと仕事したなぁ……。


「シロン、今何時?」

「11時30分です」

 結構時間が経っていたんだ……ゆっくりランチを食べようかな。


「シロンこの辺りでまだ行っていない、お勧めのランチの店はある?」

「はい、市場の側に飲茶形式の店があります」

「えー、面白そう! そこに行きたい!」

「はい、ですがその前に着替えるかウオッシュをかけた方がいいでしょう」


「えっ?」

 かなえは自分の服を見ると、池に浸かってドロドロになったブーツと、泥のはねた服にビックリした。


「ウワー! 大変!」

 

 子牛を助けるのに精一杯で自分の事まで気が回らなかった……。

 かなえはウォッシュを念入りにかけ元通りの姿に戻る。


 さぁ、準備も出来たしランチに行こう!


「シロン、その飲茶のあるレストランはどこ?」

「こちらです。ラウンドカフェ。15NW5番パーク通り」

「へー、ここなら家からも近いし、市場の真ん前ね」

 かなえはお店の側にジャンプして行く。


 お店に入ると、水色の細身のドレスを着た係の人が、かなえを席に案内してくれる。

 

 お店の中は、100人は座れそうな大きな丸いカウンターがあり、まだお昼前なのに半分近くの席は埋まっていて活気がある。


 中央にキッチンがあり、料理人が自慢の腕を振るっているようだ。その周りを、食べ物をカートに乗せた人達が何人も回っている。


 カウンターに座ったお客さんは自分の目の前を通る食べ物のいっぱい積まれたカートから、好きな料理を取って食べている。

 

 食べ終わった皿を積み重ねながら次の料理を選んでいる、食欲旺盛な人達もいる。


 かなえの前にも、カートが回って来たので、料理を見せてもらう。まずシュウマイと、生春巻きを選ぶと自分の前に置く。器の中には湯気を立てた大きなシュウマイが二つと、生春巻きも二つ入っている。

 

結構ボリュームがあるなー。いい香り―。


「おいしー」

 かなえが昔食べたことのある中華レストランの味が蘇る。シュウマイを一口食べると肉汁がじわっと……あれ? この世界ではお肉は無いんだった。でも味も食感もお肉みたいだけど、何で出来ているんだろう。まぁーおいしいからいいか。

 

 生春巻きは中のエビの様なオレンジ色の食材が透けていて、食欲をそそる。一口食べてみるとレタスや生のニラ、ライスヌードル、ハーブに豚肉薄切りのような物のが入っている。スパイスの効いた甘酸っぱいたれと、甘いナッツのたれの2種類があり、違った味が楽しめる。


 まだ食べ終えていないが、次のカートが回って来て……。


 おかゆだ! 小さなお椀に入っているので、食べられそうだと選ぶ。それから、肉まんはないからあんまんかな? 小さくて3つ入っているのを、選んだ。

 

 次々とカートは回って来るが、自分で選んだ料理に集中する。席についてすぐ持って来てくれた、ジャスミンティーを飲みながら頑張って食べたが……、


 結局半分しか食べられなかった。デザートの杏仁豆腐もあきらめたくらいだ。


 お店の人に残りを持ち帰りたいと言うと、テイクアウト用の容器と袋を持って来てくれる。周りを見回すと、かなえの様に持ち帰る人が結構いるみたいだ。


 やっぱり目の前にご馳走が来ると、つい多く取ってしまうんだなぁー。


 お店の人に食べ終わったお皿を数えてもらい、伝票を作ってもらうと、出口のところにあるカウンターで料金を支払う。4皿で1200ドームだった。

 

 今度、リリララ姉妹も連れて来よう。皆で分けた方が種類が食べられるし、楽しそうだ。家の近くに、飲茶レストランがあるとは……嬉しいな。


 家に戻る前に目の前の市場の屋台に立ち寄った。出しておいたリュックから買い物したものをフォルダにしまって行く。


 劣化しないから多めに買っておこう。


 サンドウィッチや、スープに串焼き、コーンの丸焼き、フルーツ盛り合わせ、チャーハンも。これだけ買えばしばらくは持ちそう。リトくんが好きそうなパンも5個選んだ。


 これでよしと……。かなえは市場のはずれからジャンプで家に戻って来る。


「シロン、今何時?」

「12時50分です」

 もういい時間だ。そろそろリリララ姉妹も来ている頃だろう。


「リトくん、ピーちゃんはどうしてる?」

「池の周りに集まっている牛達と一緒に過ごしているようです」


 へー、そうか。何をしていたか後で聞いてみよう。

 




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