020 動物ギルド1日目
『カナ、カナ、あさだよー、こんにちはー』
えっ? リトくん……ここまで飛んで来たんだね。
「おはよう。リトくん、朝はおはようだよ」
『カナ、カナ、おはよう、パンちょーだい』
「はい、はい」
今朝は雑穀パンをあげる。
『パン、パン、パン、たべたパン』
えーっ? それって何が言いたいの? 嬉しいのかな? まぁーいいか。
かなえは支度をして、オアシスカフェで最後の朝食を味わって食べる。
カーラさんに挨拶をして、ルルちゃんの服の御礼を言われる。
お店から出て来ると、カウンターに青い服を着たルルちゃんが座っていた。
「おはようルルちゃん。その服着てくれたんだ」
「おはようございます。はい、この服ありがとうございます。青い服着たことなかったけど、きれいな色で気に入りました」
「そう、良かった! ピンクのエプロンもピッタリだね」
青いワンピースはルルちゃんの青い瞳と同系色で本当に可愛い。
かなえは少し話したあと、部屋に戻ってチェックアウトの準備をする。
と言っても、ポーチに全て入れればいいだけなんだけど……手ぶらで出て行くのも変だよね。
かなえは買い物に使う大き目のリュックを出すと、私物を詰めた。
「リトくん、わたし牧場に行くけどリトくんも一緒に行く?」
『うん、ぼくじょーいく』
リトくんには窓から出て木の枝にとまって待っていてもらい、もう一度忘れ物が無いか確認して、部屋の扉を閉めた。
下に降りて行きチェックアウトの手続きを終えると、ルルちゃんと出て来たカーラさんにも挨拶をして、かなえはオアシスインを後にした。
外に出るとリトくんが、サ―ッと木の枝から降りて来てかなえの肩にとまる。
「リトくん、眠くないの?」
『ねむいけどぼくじょーいく』
かなえはジャンプで牧場の牛舎の前に着く。
「リトくん、好きなとこ飛んで来ていいよ。疲れたらお昼寝してなね?」
『うん、ぼくぼくじょーみる』
リトくんは眠気より好奇心が勝ったようで、勢い良く飛んで行った。
かなえは牛舎に入ると昨日と同じように、空気を入れ替えウォッシュをかける。大きなミルクタンクが置いてあり、中には半分ほどミルクが入っている。
メラニーさんに寄ると、牝牛は乳房にミルクが溜まって来ると、牛舎にやって来るそうだ。牝牛は自分でミルクタンクの横に設置されている、自動搾乳機能の付いている柵の中に入り、スッキリして帰って行くのだとか。
そして定期的にケンがやって来てミルク工場へミルクを運んでいるそう。南門の辺りは、ミルク工場がありチーズやヨーグルトなどの乳製品を作っているそうだ。
かなえは牛舎の奥まで歩いて行き、異常が無いか点検する。飲み水を交換し、を補充する。シロンに頼んで牛達の様子を見てもらうが、心配は無さそうだ。
ジョンさんもほとんど快復しているし、メラニーさんも健康のようだ。
「シロン、リトくんはどうしてる?」
「今は、小川で水を飲んでいます」
かなえはジャンプでリトくんの隣に現れると……羽をバタバタさせて、
『カナ、カナおどろくだめ』
「ごめんなさい。リトくん、驚かせちゃったみたいね」
もう少し離れてジァンプしなきゃな……。
「リトくん、どうする? 帰るよ」
『ボク、かえらない』
「えー、ここが気に入ったんだ。じゃー夕方迎えに来るよ」
『うん』
そう言うとリトくんは飛んで行った。
知らない場所を探検するのに忙しいみたいだ……。
かなえはジャンプで新居に移動する。もう何度も来ているし一度泊まったが、オアシスインをチェックアウトして……今日が新居、第1日目と言えるだろう。
これからお世話になります。
何から始めよう……そうだ。両隣の人にまだ挨拶してなかった。
クッキーは……あと一袋しか無い。午後からリリララ姉妹も来るから、クッキーを多めに作っておこう。
しばらくして出来上がったのは、一口サイズのバタークッキーと、半分の生地にココアを混ぜ互い違いにした、市松模様のクッキーだ。
かなえは一先ず、味見を兼ねてお茶の時間にした。
「おいしー」
今日もおいしく出来た。
小さいと、食べ易いからいいな。また材料を買ってきて作ろう。
冷めたクッキーをラッピングしてリボンで結ぶと、7袋出来た。全てポーチに詰めると、家を出て隣の家へ向かう。
動物ギルドの建物の並びはほとんどが住居で一階も住まいになっている。見た目はレンガ造りの2階建てで、どの家もソックリな造りだ。
変化を持たせるとしたら、玄関マット、植木、置物、窓のところにプランターを置いて花を飾るぐらいだ。
表札も無いので、住所がわからないと一軒づつ探さなくてはならなくなる。
かなえがやって来たのは動物ギルドの左隣の14N5番通りだ。扉の両側に膝丈の植木が置いてある。
―― カン、カン ――
「……」
しばらく待ったが不在のようだ。働きに行っている可能性もある。仕方が無いので、動物ギルドの右隣の16N5番通りに行ってみる。
―― カン、カン ――
「ハーイ」
女性の声がして扉が開く。
「はい、どちら様かしら?」
出て来たのは50代の中年の女性。ウェーブのかかった茶色い髪に薄いグリーンの瞳。エプロンをしているのでお昼の準備でもしてたようだ。
「こんにちは。わたし、隣に越して来ました、カナエリュウゼンです。動物ギルドを始めますのでよろしくお願いします。これは私が焼いたクッキーです。どうぞ」
かなえは動物ギルドのカードを一緒に渡す。
「まぁ、こんな可愛い娘さんが隣に住むなんて嬉しいわ。動物ギルドなんて凄いわね。どうぞ宜しくね。私はスーザンよ、ここには夫と9才の息子と住んでいるの」
「そうですか。スーザンさんよろしくお願いします」
かなえは引っ越し挨拶を終えると家に戻って来る。
隣の人、優しそうな人で良かった……左隣の人はまた夕方にでも行ってみよう。
「シロン、今何時?」
「11時40分です」
そう。じゃーもうランチにしよう。
「シロン、お勧めのレストランはある?」
「向かいのテラスカフェの1階、テイクアウトの店はどうでしょう?」
それは良いかも。この辺りの店は一通り試してみないと……。
かなえは戸締りをすると、公園を横切りテラスカフェに向かった。
テラスカフェの1階のテラス席や2階のバルコニーの席は、前来た時と同じように賑わっている。かなえはお店に入ってすぐのテイクアウトのカウンターに並ぶ。
おいしそうなお総菜がきれいに並んでいて、迷ってしまう。
少しづつ試していけばいいよね。
かなえは……具がたっぷり入ったミネストローネのような赤いスープに、野菜やチーズがたっぷり挟まれているハンバーガー。それにチョコブラウニーとオレンジ色のアイスティーを選んだ。
それからリトくん用の、まるパンも3つ。窓際にセルフサービスのカウンター席が空いていたが、家に持ち帰りゆっくり食べる事にした。
「いただきまーす」
家に戻って来ると、テーブルにランチを並べて、食べ始める。
「あー、おいしー」
ミネストローネ風のスープはかなえの想像よりも、甘みと酸味が効いて後からピリッとスパイスが辛くクセになる味だ。
ハンバーグはモツァレラチーズの様に柔らかいチーズにトマトやレタスにハーブが効いていて優しい味がする。
「シロン、リトくんはどうしてるかな?」
「牛の背に乗ろうとしています」
「へっ?」何やっているんだろう。リトくん。
かなえは最後の一口を食べ終えると、リトくんのところにジャンプした。
ホントだ……。
リトくんが大きな黒い牛の背に乗ろうとすると、牛が「モー」っと背中を震わせながら嫌がってる。
かなえは近寄って行き……、
「リトくん、牛さん嫌がっているでしょ! 何しているの?」
『ぼくむしとる』
「えっ、虫?」
牛に近寄って良く見てみると、雄牛の背中に毛虫の様な虫が乗っている。
「牛さん大丈夫?」
『は? おまえさんかい、言葉がわかる人間は……丁度良かった。ワシの背中の虫を取ってくれ。くすぐったくてたまらん!』
かなえは「ちょっとジッとしててね」と言うと、近くに落ちていた枯れ枝で虫を地面に落とした。
「取れたわよ」
『そうかい。助かったよ。そこの小鳥もありがとよ』
『うん』リトくんは嬉しそうに返事をする。
「良かった。私、リトくんが雄牛さんに何かいたずらしてると思ったんだけど違ったのね」
『ちがうよー』とリトくん。
「雄牛さん、私はかなえよ今度この牧場で働くことになったの。よろしく」
『ああ、聞いているよ。人間もワシらと会話が出来ると聞いた時には驚いたが本当だったんだな』
「ええ。だから何か困ったことがあったら言ってね。出来る事はするから」
『わかったよ。他の牛達にも言っておく』
「リトくん、私はもう帰るけど、リトくんはどうする? 夕方までここにいる?」
『ぼくここいる』
リトくんは雄牛の背中にとまって嬉しそうにしている。
「そう、それなら夕方にまた来るね。雄牛さん、リトくんをよろしくね」
『ああ、わかったよ』
かなえはジャンプで再び部屋に戻って来る。
もうそろそろリリララ姉妹が来る時間ね……。
かなえは、自分の部屋と動物ギルドにパッとウオッシュをかけてキレイにする。
すると「カン、カン」扉の音がした。
かなえは扉を開けると、昨日のリリララ姉妹が目の前に立っている。今日はお揃いの薄いオレンジ色のチュニックを着ている。
「「こんにちは」」
「こんにちは、どうぞ入って」
かなえは姉妹に長椅子に座ってもらい、動物ギルドの仕事の説明をする。
まず初めに……動物ギルドの依頼に来た人に、用紙に記入してもらい、そこの掲示板に貼って行き、その際の報酬を預かっておく。依頼が完了したら、サインをもらい、動物ギルドで確認したら、報酬を払う……。
一通り話し終わると、マーブルトークの使い方を教える。かなえのブレスレットがマーブルトークと連絡を取れるので、何かあった時にすぐ戻って来れる。
この動物ギルドを運営するには動物の依頼を受け、その依頼を受ける人も必要になって来る。
その為にはもっと人に知ってもらわないと……。
かなえは動物ギルドのカードをリリララ姉妹に何枚か渡し、機会があれば宣伝してくれるように頼む。
この世界ではどうやって仕事の宣伝をするんだろう……。
テレビもインターネットも無い世界でどうするのか想像も付かない。
日本では……そういえばティッシュの中に広告を入れて配っていたっけ。うーんでもな。
そうだ! トートバックを作って、動物ギルドのマークと住所を印刷したらどうだろ。可愛く出来たらそのバックを使ってくれてそれが宣伝になるかも。あのルルちゃんの服を売ってくれた、お婆さんに聞いてみよう。
かなえは閃くとすぐに行動したくなる。リリちゃんララちゃんに今できる事は……。
そうだ!
かなえは二人を地下に連れて行き部屋を見せた。
……家具が届くのは明日だったわね。
二人にその事を伝え、近くの市場に身近なものを買い物に行くように勧めた。まだ研修中の様なものだが、一月近く暮らすなら準備も必要だろう。
「ここに住んでもいいんですか?」
二人は何も無いガランとした部屋の扉を開けて見て回る。
「ええ、とりあえず一月ね。働いてもらうことが決まったら、ずっとここで暮らしてもいいわよ。明日、最低限必要な家具と雑貨が届くから、とりあえずは……シーツとタオルは買っておいた方が良いかも」
「それから、私はこれから出掛けるから、あなた達は自分の買い物をして来ていいわ。明日また午後から来てくれる?」
リリララ姉妹はこの部屋が気に入ったようで、嬉しそうにしている。すぐ近くの市場を教え、かなえの作ったクッキーを1袋づつ渡す。
地下の部屋には何も道具が無いので、動物ギルドの簡易キッチンの使い方を教えておく。
地下と、動物ギルドの鍵を渡すと一旦自分の部屋に戻った。
かなえは部屋に戻ると先ほど閃いた、トートバックのアイディアを、もう一度頭の中でまとめる。バックの大きさや印刷してもらう場所。
……なるべく無駄遣いはしないようにしないと。
かなえは昨日訪れたハッピーキッズ、子供服の店の前にジャンプして行く。
「こんにちは」
「おや、あんた。また来てくれたのかい?」
お婆さんがニッコリ迎えてくれる。
かなえはまず、ルルちゃんのブルーのワンピースが似合っていて本人も気に入ったことを話した。その後に、
「実は教えていただきたいんですけど……簡単な手提げ袋を大量に作ってくれる方をご存じないですか?」
「手提げ袋かね?」お婆さんは奥から何枚か手提げ袋を持って来る。
「うゎー可愛いですね。お婆さんが作ったんですか?」
「ああ、そうだよ」
その手提げ袋は随分手の込んだもので、パッチワークがあったり、刺繍がされていたり色も種類があり、可愛らしいデザインだった。
「とても、素敵ですが予算もあまりありませんし、一番シンプルな物にしたいんです」
かなえはお婆さんに、動物ギルドの宣伝のために手提げ袋に動物ギルドのマークと住所を印刷し、無料で配るアイディアを話した。
「へー、無料で配るのかい? そんな話聞いた事ないよ」
「でも動物ギルドを宣伝しないと誰にも知られません。まず知ってもらわないと仕事にならないんです」
かなえはおばあさんに動物ギルドのカードを見せながら、
「こういうカードは作ったんですが、これでは足りないんです……」
「あんたが言いたいことはわかったよ。私はそんな大量には作れないしねー。私の娘を紹介するからそこで聞いてみたらいいよ」
「えっ、娘さんも裁縫職人なんですか?」
「ああ、そうだよ。それでもだめだったら、商人ギルドに行って聞いてみればいいよ」
そうか、商人ギルドに依頼を出すことも出来た。でもせっかく教えてもらったので娘さんのところに行ってみよう。
「わかりました。まず娘さんに聞いてみます。
かなえは娘さんのお店の場所を聞き、お礼を言うとお店を後にした。
行き先を確認すると……まかない亭のある細い路地だった。かなえはジャンプして娘さんのお店に向かう。
「仕立屋」と書かれているお店のショーウインドウには落ち着いた女性の服が飾ってある。お店の中に入って行き、
「すみませーん」と声をかけると、
「はーい」
30代の女性が中から出て来る。深緑の長い丈のワンピースを着ている。笑った顔がお婆さんに似ている。
……この人だな。
「すみません。あのー『ハッピーキッズ』のお婆さんに聞いて来たんですけれど……」
かなえはお店の人にお婆さんと同じ説明をする。すると……。
「面白そうね。生地はこんな感じかしら?」
その女性は奥から薄手の生成りの生地を持ってくる。
「はい、この生地でしたら丁度いいです」
「そう。ならやらせてもらおうかしら。今そんなに仕事が忙しくないから合間をみて出来ると思うわ。なんなら他の人にも声をかけてもいいわよ」
話し合いの結果……一つサンプルを作ってもらい、どれくらいの時間で作れるかも計算してもらい、値段の交渉をすることにした。なので明日また来る約束をしてお店を後にする。
よーしなんとかなりそうだ……。
次は印刷職人の店だ。近いが時間があまり無いのでジャンプする。
「こんにちは」
「あら、いらっしゃい」
「あなた動物ギルドのかなえさんね?」
「はい」
……あれだけの数のカードを依頼すれば覚えちゃうか。
「あのー今日はちょっとお聞きしたいんですけど……」
かなえは同じように、手提げ袋を作る事、それに印刷したいことを話すと……。
「あなた、面白い事を考えるのね。いいわよ。引き受けてあげる」
やったー。印刷職人さんも了承してくれた。
「それでその印刷する絵なんですけど、看板屋さんで作ってもらった動物ギルドの看板の絵を使いたいんです」
「ふーん。なるほど。いいんじゃない?」
かなえはそこまで説明すると、また明日来ると言い、看板屋に向かった。
「こんにちは」
「やーいらっしゃい」
前と同じ看板の職人さんだ。
まず、取り付けてもらった看板の御礼を言い、先ほどと同じように手提げ袋の説明をした。
そして、看板のデザインが気に入ったので、手提げ袋に印刷したい事と、代金は支払うのでそのデザインを紙に描いて欲しいとお願いした。
「へーいいねー。わたしが作った看板の絵が手提げ袋に印刷されるのかい、それは見てみたいな」
明日迄に仕上げてくれると言われたのでお願いし、かなえはお店から出て自分の部屋にジャンプで移動する。
「シロン今何時?」
「17時です」
「大変! あっ、リリララ姉妹は?」
「もう、救済センターに戻られたようです」
「リトくんは?」
「雄牛の背中で寝ています」
かなえはジャンプでリトくんを迎えに行くと……。
「あーホントだ。リトくん眠っちゃった」
『ああ、しばらく待っていたが待ちきれなかったようだぞ』と、雄牛さんが答える。
「リトくん、お腹空かせてましたか?」
『木の実を見つけたと言っていたから、何か食べたんだろう』
まだ一晩農場にいさせるのは不安だしな……。
「今日は連れて帰ります。また連れて来ますので話し相手になってあげてくださいね」
かなえはリトくんを両手でそっと包むと、部屋に戻って来て、イスの背にとまらせる。一瞬目を覚ましたがすぐに寝入ってしまった。
かなえも何だか眠くなってくる。
シャワーを浴び、夕食はあるもので簡単に済ますと、かなえもベットに入り眠りについた。
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<かなえのIDカード>
表示
名前 カナエ リュウゼン
年齢 16才
職業 動物ギルド長
特技 動物の世話、歌声
ポイント 10000
お財布 10000
パワー 5
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非表示
名前 竜禅かなえ
年齢 16才(32才)
職業 アニマルレスキュー、女神様の子分
特技 人間、動物とのコミュニケーション、癒しの声
持ち物 ブレスレット、ポーチ
ポイント
プラス
マイナス 1200(ランチ+パン テラスカフェ )
残り 96万1200
パワー 498
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動物ギルド用
立て替え 80000(地下の家具、二人を雇えばギルド科からの補助金で賄われるので保留)




