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アニマルレスキュー  作者: コトリコトリ
18/229

018 オアシスイン最終日(前)



「カナ、カナ、パンちょーだい、おはよー」

 あー、だから、順番がー……。

 

 今朝は雑穀たっぷりのパンをリトくんにあげる。


「おいしーぱん、おいしーパン」

 フフッ、リトくん踊ってる……相当好きみたい。


 とうとうオアシスインも、明日の朝にはチェックアウトだ。カーラさんとルルちゃんには毎日話し相手になってもらった。


 かなえがこのドームシティに来て初めて仲良くしてもらった人達だ。何かお礼としてあげられる物は無いか考える。


「シロン、何か良いアイディアは無い?」

「それでは、カーラさんには健康チェックをして、何か症状があればそれに見合ったものを飴に。ルルさんには、女の子が喜びそうなお人形や、可愛いドレスなどはいかがでしょう?」


「そうね、それがいいわ! カーラさんの症状を見てくれる?」

「うーん、パワー8、健康8かー。健康の残りの2ポイントは、何か問題があるの?」

 健康の詳細が表示され、なんと妊娠2か月だそうだ。


 へーっ! カーラさん妊娠してるんだ。ルルちゃんお姉さんになるのね。それなら妊娠の症状を軽くする飴がいいかも。



「シロン、お願い」

 ポーチを覗くと小さな丸いピンクの飴が沢山詰まった袋が出て来た。注意書きに「女性特有の病気に効く、妊娠初期の症状にも」って表示されてる。


 ピッタリ! これなら喜んでくれるかも。


「あとは、ルルちゃんの服や、お人形が売っているお店はある?」

「それなら、南門の側の10番通りにいくつかお店があります」


 えっ? その辺りって、最初にドームシティーにやって来て馬車で通ったかも……。

 確かに色々なお店が並んでいた。

 

 

 行く先は決まった。かなえは朝食を食べ、部屋に戻って来る。


 今日の服は……お任せにすると、カラフルな花模様の刺繍の白いチュニックに茶色いブーツ。可愛らしい感じだ。準備が出来たので、南門の側の10番通りにジャンプして行く。

 

 

 ここは……初めてドームシティに入って来て、あそこからシモンズさんの馬車に乗ったんだな。


 あの時は夕方で暗くなり始めていたっけ。まだあれから9日しか経ってないけど、いろいろな事があったなぁー。


 かなえは馬車から見た景色を思い出しながら、10番通りを歩いて行く。この通りは飲食店や土産屋が多い。特に、観光客向けのような商品を置いている店が目立つ。


 定番はスノードーム。ガラスのボールの底に8角形のオクタゴンや小さいベルハウスの置物が入っていて、逆さにして元に戻すと雪が降り積もるアレだ。


 他にも、オクタゴンを型どった、置物や、絵、など。


 ……誰が買うんだろう。観光客っていったいどこから来るのかな? 

 

 同じようなお土産屋を通り過ぎ、歩いて行くとやっとお目当ての子供向けの服屋があった。


 お店の名前は「ハッピーキッズ」ショーウインドウには小型の馬車に乗った男の子と女の子の人形が並んでいる。かなえはお店の扉を開けて中へ入った。

 

 すると奥に何か繕い物をしているおばあさん顔を上げて「いっらっしゃい。何かお探しかい?」と声をかけて来た。


「はい、あのー女の子の服を探しているんです」

 かなえはルルちゃんの髪や瞳の色、背格好を伝えると、


「おや、まるでルルちゃんみたいね」

「えっ、ルルちゃんの事知っているんですか?」


 おばあさんが言うには、ルルちゃんはたまにこのお店に来て、洋服を買って行くそうだ。両親はオアシスインで忙しいので、ルルちゃんは一人で来てちゃんと自分で選んでお金を払って行くんだとか。

 

 ……ホント、6才なのにしっかりしてるよ。


「そうです。そのルルちゃんです! 私、ルルちゃんに洋服をプレゼントしたいんです」

「おや、そうかい。ちょっと待ってておくれ」

 お婆さんはお店の奥の方へ入って行き、しばらくすると幾つか服を抱えて戻って来た。


「わっー、可愛い!」

 どれもルルちゃんに似合いそうなワンピースだ……迷っちゃうな。


「ルルちゃんはパステルカラーが好きなんだけど、こんな濃い色も似合うんだよ」

 お婆さんが勧めてくれたのはワインレッドの光沢のある生地にフレアがたっぷり入ったワンピース。それに、鮮やかなブルーのワンピース。色違いの様だ。エプロンも何種類かあり組み合わせで雰囲気も変わって来る。


 かなえが選んだのは、ブルーのワンピースにフリルの付いた薄いピンクのエプロン。


「あら、この組み合わせもいいわね」

 おばあさんの反応も良さそうなので、ブルーのワンピースに決める。エプロンと共布のリボンも付けてもらい、きれいにラッピングしてもらった。


「あの、今すぐでは無いんですけど……こちらでは赤ちゃんの服も置いてますか?」

「あるよ。赤ちゃんが生まれるのかい?」

「はい。でもまだ先なんです。また来ますね」

「はいよ。ありがとう」


 あーよかった。ルルちゃんの洋服、可愛いのが見つかって。お婆さんも、親切だったなぁー。たまたま入った店が、ルルちゃんの行きつけなんて……助かったな。また来よう。


 

 かなえはお店を出ると、そのまま10番通りを歩いて行く。

 

 次に目に留まったのは、雑貨屋さんだ。店先に木のツルで編んだような籠が大中小と、並んでいる。

「こんな籠、キッチンにあってもいいかも」

 

 お店の中に入ると、面白そうな小物雑貨が壁面にビッシリと飾ってある。これは……? 

「小鳥の鐘だよ。鐘の鳴る時間に鐘を咥え、小鳥が出てきて時を知らせるんだ」

 お店の人がかなえに商品を説明する。

 

 それって鳩時計のようなもの?

「そうなんですか、実際どんな感じが音は聞けますか?」


 店員は小鳥の鐘を壁から外すと後ろに付いているゼンマイを巻き、つまみを回した。すると小鳥が、鳥小屋から出てきて、口ばしの鐘が ―カラン、コロン― と、音を響かせる。

 

 しかも、その小鳥がリトくんのような雀だった。

「あのー、これ買います」

 

 かなえは一目見て気に入ってしまった。結局そのお店では、小鳥の鐘と外に置いてある籠二つ。それに石で出来た花瓶を購入した。


 いい買い物をしたなぁー。この雑貨屋さんに、また来よう。


 かなえは店を出て、リュックに入れておいた商品を、全てポーチに移動させ、気分よく歩き出した。


「シロン、明日から新居に移るけど、今のうちにやっておくことはあるかな?」

「そうですね。ミルクドームのスミス夫妻にそろそろ正式に返事をするべきでは?」


「うーん。そうよね! これから行ってみようかな」

 その前に……何かお土産を買っていこう。


「シロン、この辺りにケーキ屋のようなお店はある?」

「この道をそのまま歩いて行くと、左側にお菓子屋さんがあります」


 あっ、このお店ね。


 店の看板がビスケットの形で「お菓子な店」と表示されている。

 お菓子な? お菓子の、じゃないんだ……。


 扉を開けて入って行くと、

 本屋さん? おもちゃ屋さん? 野菜? 何このお店? 何の店かわからない、品物が並んでいる。


 すると、商品を整理していたのか、棚の前にいた男の人が、かなえのところに、やって来た。

「あら可愛い娘さん、何をお探しですか?」

 

 この男性、男性だけど口調がとても柔らかい、タイプの人だ……。くるみ割り人形のような赤いジャケットに、ストライプのズボンでとてもオシャレで、前髪がくるんと渦巻きになっている。


「こんにちは、あのー何かお土産になるお菓子を探しているんですが、ここは食べ物は置いていますか?」


「あなた、何を言ってるの? ここにあるものは全てお菓子よ」

「えっ? ホントですか?」

 目の前の本のところに近寄ってみるが、本物ソックリで。これがお菓子なんて信じられない!


「ホントよ。あなたみたいに驚いてくれると作った甲斐があるわね」

「えっ、これはあなたが作ったんですか?」


「それだけじゃなくて、この店にあるものは全部私が作ったのよ。ちょっとこれ食べてみて?」

 その派手な男性はトレーに乗った、本の形をしたお菓子のミニチュア版をかなえに見せた。

 かなえは、一つつまむと口の中に入れる。


「うわー、おいしいー!」

 口の中にラム酒のようなお酒の香りのチョコと、トロッとしたキャラメルクリームが広がり、幸せな気分に包まれる。


「気に入ってくれたみたいね。ここにあるものは、味も形も違うのよ。例えばそこにあるニンジンの形のお菓子は、中にニンジンも練り込んであって、体にもいいのよ」

 

 へー、どれにしよう。迷っちゃうな……。


「あのー、年配のご夫婦にあげたいんですけど、お勧めを幾つか選んでもらえますか?」

「いいわよ。じゃぁー、私の特製お土産セットを作ってあげる」

 そう言うと、仕切りの付いた箱にお菓子を詰め始めた。


「こんなんでいいかしら?」

 出来上がったお土産セットは、カラフルで食べるのがもったいないくらい可愛らしい。


「はい、とてもきれいです。それでお願いします」

 これならきっと、スミス夫妻にも喜んでもらえるだろう。


 

 かなえはお店を出るとお菓子の包みをそのまま抱え、ミルクドームのスミス夫妻の扉の前にジャンプする。


 木の扉に付いている、金属の牛に輪のドアノッカーをならすと、


「あらー、かなえ、良く来てくれたわね、どうぞ入って」とメラニーさん。

「すみません、急に。お邪魔します」


 かなえは居間に案内されソファーに坐る。お土産を渡し、メラニーさんが出してくれたアイスティーを飲んで一息つくと、要件を話す事にした。


「あのー、牧場の件ですがやらせて頂きたいです。ただ、もう一つやりたい事を見つけたのでその仕事との掛け持ちになります……ここに来れるのは一日起きぐらいになると思うんです。メラニーさんはどう思われますか?」


「そう……出来ればここに住んで毎日牛の世話をして欲しいけど、無理は言えないわね。私とジョンはあなたの事が気に入ったから、それでもいいわ。それならもう一人、誰か派遣してもらえばいい事だし。ここには離れがあるからそこをかなえの家にしてもいいのよ」


「あのージョンさんには聞かなくてもいいんですか?」

「そうね。でも大丈夫よジョンも私と同じ意見だと思うわ。今日はちょっと……、横になっているの」


「えっ、ジョンさんどうしたんですか?」

「ぎっくり腰よ。牛舎で作業中にちょっと腰をひねって昨日から寝ているの」

「大変じゃないですか!」


「そうね、でも仕方がないのよ。もういい歳だもの」

 かなえはその場でシロンに薬を出してもらう。ポーチを開けると「ぎっくり腰用、塗り薬」と表示されている。


「あのーこれ塗り薬です。ジョンさんに塗ってあげてください」

「まぁー、かなえ。あなたいつも薬を持ち歩いているの?」

「いえ、今日はたまたまです。それよりこの薬、良く効きますよ」


「わかったわ。ちょっとジョンのところへ行ってくるわね」

「はい、私はその間、牛舎を見てきます」

「ありがとう。かなえ」

 かなえは外に出ると牛舎に向かった。


 

 中に入るとムッとして空気がよどんでいる。かなえは窓を開け空気を入れ替えると、牛舎にウオッシュをかけて行く。


 するとだんだん臭いも取れ空気もきれいになって来た。

 牛用の水と餌を替え、ミルクの容器が倒れていたのできれいに並べておく。

 実際何時間もかかる牛舎の掃除を、ほんの15分で終えてしまう。

 

 ウオッシュの機能ってホント凄いよ。牧場では特に助かるな……。

 

 かなえなら毎朝ジャンプでここへ来てウオッシュをすることも可能だ。誰か派遣された人がいるとかなえの行動を不自然に思うかもしれない。


 どうしよう……。


「シロンこの牧場で体調の悪い牛はいる?」

「いいえ大丈夫です。この間、調子を崩していた牝牛はどう?」

「はい、今は健康度8です。丘の上で草を食んでいます」


「そうなんだ。じゃーその牝牛のところにジャンプするから場所を教えて」

 かなえはシロンが地図で表示した地点にジャンプして行く。


 するとすぐ横に見覚えのある牛がいる。横には子牛もいて……。


「こんにちは、牛さん。もう調子が良さそうね。赤ちゃん牛もカワイイなぁ!」

 かなえは子牛の頭を撫でる。


『おや、あんたかい。この前はありがとよ。あれからすぐ調子が良くなって助かったよ』

「そう! それは良かった。この子牛はあなたが産んだの?」


『ああ、そうだよ。元気に育ってるよ。ミルクも良く飲むしね』

『ママ、ママ』子牛が牝牛に近づきミルクを飲み始める。


「この牧場の牛さん達はみな健康そうね。何か困ったことは無いのかしら?」

『ああ、特に無いね。おいしい草が食べられて新鮮な水もある。気候もいいし、子供も元気だ。これ以上何もいらないよ』

 

 少し行くと小川が流れているそうだ。

 よかった。幸せそうね……。


「あのー、私もう少ししたらここで働くことになりそうなの。わたしはかなえよ。よろしくね」

『おや、そうかい。あんたがいてくれたら安心だね。他のみんなにも言っておくよ』

「はい、おねがいします。それじゃーまたね」


 

 かなえはジャンプで牛舎の前に戻って行く。



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