105 スミス夫妻の選択
『カナ、カナ、パンですよー、おきて―!』
「うーん……もうあさかー」
『カナ、カナ、パンちょ―だい、おはよう』
「リトくん、おはよー。今日も元気ね」
『ぼく、げんきだよー、パンちょーだい!』
「はいはい、わかった、わかった」
かなえはゆっくりベットから起き上がると、居間に向かう。
「ハイどーぞ」と、リトくんが選んだパンをあげると、
『おいしいパン、クルミパン』と、おしりフリフリダンスをしている。
「フフッ」
かなえはリトくんの踊りを見るのが、楽しみになっている。
「リトくん、またねー」と、窓の隙間から飛んで行くリトくんを見送ると、かなえも出掛ける準備をする。
さっ、これでよしっと。
かなえは支度が終わると、牧場へジャンプして行く。
「おはようございます!」
かなえはジジさん、ババさんに朝の挨拶をする。
『ああ、おはよう。昨日はここの夫婦は来たのかね?』と、ジジさんは気になっていたようだ。
「はい、昨日は二人で来てくれました」
『まあそう。それでどうなったの?』と、ババさんも詳しく聞きたいようなので、先に島の砂浜へジャンプして行く。
「あのー、昨日は一緒にお昼を食べてから……」と、かなえは昨日の事を一通り話す。
『そう、それじゃあまだ、牧場に温泉を造ってもらえるかはわからないわね』と、ババさん。
「はい、まずはここの島の家に住んでもらえるか聞いたんですけど、すぐには返事をもらえませんでした。でも結果がどうであれ、温泉の事は頼んでみますね」
『そうかい。それは助かるよ』と、ジジさん。
話が終わったので、2頭はエスカ機能で素早く登って行く。
かなえは、ジミーさんの庭に移動して行くと、リリララ姉妹も、ジミーさんももう庭の椅子に坐っていた。
「おはようございます」と、かなえが挨拶をすると、
「かなえさん、おはようございます」とリリちゃん。
「今、温泉の話してたのー」と、朝から元気なララちゃん。
「温泉の話?」と、話を聞きながら朝食の準備をする。
今日の朝食はプロの実ボールとマッシュドパンプキン、ほうれん草のポタージュ、チーズ入りのグリーンサラダに、グレインたっぷりレーズン入りのハードなパン。
それにミックスベリーヨーグルト。
飲み物はオレンジジュースと、かなえ達にはアップルティーで、ジミーさんにはコーヒーだ。
食べながら、みんなで温泉の話をする。
ジミーさんも近いうちに行こうと思っているそうで、リリララ姉妹が勧めていたそうだ。
「夜も照明がキレイでお勧めですよ」と、かなえは夜の温泉を勧める。
「そうなんですよね。私達が帰る頃にだんだん温泉の灯りが点きだしてきれいなんです」と、リリちゃん。
「温泉の床も光るんだよー」と、ララちゃん。
温泉の壁や床自体も光るので、幻想的な雰囲気で来る人に評判の様だ。
「夜はお仕事が終わった大人の人が、通っているみたいですよー」と、リリちゃん。
「そうかい。それなら私も夜に行ってもいいな」と、ジミーさん。
ジャンプミラーがあるので、ここで夕食を食べてから行っても十分に温泉に入る時間がある。
食事を終えると、みんなそれぞれの場所へ向かう。
かなえは、キャットタワーの台でウトウトしているバニーちゃんと、子猫達の様子を確認すると、牧場へ移動して行く。
牧場の牛舎に入ると、壁にメモが貼り付けてあった。
そのメモには「かなえへ、仕事が済んだら私達の家に寄ってくれる?」と、記してあった。
メラニーさんだ。昨日の事をどうするか決めたんだな……。
かなえは早く結果が知りたくなり、急いで牛舎と牧場の掃除を終わらすと、メラニーさんの達の家に向かう。
「カンカン」と、玄関の扉を鳴らすと、
「ハーイ」とメラニーさんが出て来て扉が開いた。
「かなえ、急に呼んでしまってごめんなさいね」
「いえ、全然大丈夫です」
かなえはどうする事にしたか早く聞きたいのを我慢して、リビングに入るとソファーに座る。
メラニーさんが出してくれたヨーグルトソーダを飲んでいると、ジョンさんが奥から居間に入って来た。
「やぁ、かなえさん。昨日は色々と世話になったね」と、ジョンさん。
「いえ、色々驚かせてしまい、申し訳ありません」
「まぁ、かなえったら謝らなくていいのよ」
「ハハッ、まぁ驚いたのは確かだがなー」
「……」
「それで昨日の事だが、昨夜あれから二人で話し合ってね、私達もかなえさんのドームで世話になる事に決めたよ」
「えーっ、本当ですか!? ありがとうございます」
「やーね、かなえ。お礼を言うのはこっちの方よ」
「そうだな。私達にとって良い事ばかりだからな」
「でも、やっぱり色々変わっていますから、受け入れてもらえるかどうか不安だったんです」
「そうね。信じられないような事ばかりだったけど、あなた達と一緒に過ごせるのは嬉しいの」
「今まではここで暮らす事が一番だと思っていたが、2人だけではやはり寂しい時もあるしな」
「嬉しいです! 島のみんなも喜ぶと思います」
「私も嬉しいわ。これからはあなた達と好きな時に会えるんですもの」
「それでは、今日歓迎会をしましょう! 準備は私がしておきますから夕方に来てもらえますか?
「えっ? そんな急に大変じゃないかい?」
「そんな大げさなものではなく、簡単なものです。どうせ食事をするんですからみんなで一緒に食べましょう?!」
「まぁ! そうね。そうしたら私はデザートとシチューを用意しようかしら?」
「それは、助かります。では私がそれ以外の物を用意しておきますね」
かなえはその場でコンテナ「小」を出すと、
「まぁー! 急に何も無いとこから出て来たわ!」
「ほんとだ。なんだそれは?!」
そうだった……。
「すみません、また驚かせちゃいました……あのー私は目に見えない大きなカバンを持っていて、その中にいろいろ便利なものが入っていると思ってもらえますか?」
「ほんとに驚いたわ! でも今更よね。きっとまだいろいろ驚かされそうだから心の準備をしておかないと」
「ハハッ、そうだな。ところでそれは何だね?」
「はい、これは島のメラニーさんの仕事部屋にもあった、コンテナの小さいサイズです。お料理を持って来てくれるとの事ですので、この中に入れて来てもらえばと思いました」
「あの出来たままの状態にしておける箱ね」
メラニーさんは嬉しそうにコンテナの中を覗いている。
ついでなのでかなえのブレスレットの機能の内のフォルダの事を話す。
「なので、私の透明なカバンにはメラニーさん達の荷物も、一度に収納して運ぶことが出来ます。もしこの家から向こうの家へ運びたい物があればいつでも言ってくださいね」
「そうかい、そのかばんは大きさや重さはどれくらい大丈夫なんだね?」
「そうですね、まだどこまで入るか試してはいませんが、例えばこの家にある荷物をいっぺんに収納し運ぶことは可能です」
「まぁーそれは凄いわ!」
「はい、ですからいつでも移動したい時は声を掛けて下さい」
「うーん……そうか」
この話はこれくらいにしておいた方が良さそうだな……。
「あとお願いなんですが、明後日の日曜日、ララちゃんの面倒を見てもらう事は可能ですか?」
「え!? まぁー、もちろんよ。嬉しいわ」
かなえとジミーさんはその日、職人さん達と会う予定がある事、リリちゃんもお友達の所へ行く事を伝える。
「私が一緒に連れて行ってもいいんですが、ララちゃんが『メラニーさん達と過ごしたい』と言うので、お聞きしてみようと思ったんです」
「フフッ、そうなの?」
一通り話し終わったので、かなえはポーチから鍵を二つ出すと、
「あのー、これはお家の鍵です。お渡ししておきますね」
「ありがとう。嬉しいわ」
「そうだな」と、ジョンさん。
「ですから、もういつでも好きな時にいらしてください」
「ああ、わかったよ」
「では、夕方にお待ちしています」と、かなえは言うとジャンプで島の砂浜に戻って来る。
あー良かった。メラニーさん達がここに来ることに決めてくれた!
フフっ、リリララ姉妹が知ったら大喜びね。
かなえは、まず小屋の掃除から始める。
クイーンの所からリキさんの所までを終えると、動物達が食事をしている場所を回る。
次に山の1合目から頂上までウオッシュし、山の上の温泉まできれいにしてシャワードームへ移動する。
この時間はみんなまだ元気だな……。
動物達はみんな、シャワードームの中でフワッと飛んだり跳ねたりしている。
かなえはドーム周辺にウオッシュを掛けると、子猫達の所へ移動して行く。
わぁーここもみんなでシャワードームで飛び跳ねているー!
バニーちゃんも濡れることに慣れて来たみたいね。
あら? バニーちゃん、一回りスリムになったかな……。
ここに来た頃に比べると動きが機敏になっている様だ。
最初はあんなに文句を言っていたのに、今では子猫達と遊ぶのがとても楽しそうだ。
かなえはドームと、子猫達とバニーちゃんの小屋にウオッシュを掛けると砂浜に移動して来る。
今日歓迎会に決まったが、何を準備すればいいかな。
かなえは必要な物を紙に書き込んでいく。
テーブルは昨日使ったのを出して……そうだ、メラニーさんの所の庭で食べてもいいな。
飲み物は……大人達用にはエールとかワインを用意しておいた方が良いのかな?
そういえばメラニーさんの家にワインボトルが置いてあったから、普段飲むのかもしれない。
メラニーさんがシチューとデザートを準備してくれるって言ってたからな。
かなえはそれに合ったメニューを考える。
美味しいパンと、新鮮なサラダにおつまみっぽいものが必要だな……。
かなえはまず総菜屋にジャンプして行くと、山盛りのサラダと、おつまみ用のプロの実とポテトのフライ、チーズの盛り合わせを注文する。
その後に動物ギルドの前のテラスカフェのに行き、出来立てのパンの中から何種類か選ぶ。
次は飲み物ね。
かなえは島のフルーツを持ってリッカ―ショップへ向かう。
「こんにちはー」
「やぁー、かなえさんじゃないか」と、ショーンさんが出迎えてくれる。
「この前のパーティーではお世話になりました。これフルーツなんですけど、どーぞ」
「ありがとう。あのパーティーは凄かったね。最後はパティがいつものごとく眠っちゃんたけど……」
「今日は、お酒を数本とソーダを買いに来たんです」
「そう。どんなのがいいかな?」
かなえはショーンさんに、大人と子供の人数と今日の料理を告げて、お勧めの飲み物を幾つか選んでもらう。
「また何か面白そうなパーティーをやる時は声を掛けてね」と、ニッコリ笑うショーさん。
「はい、その時はまたお願いします」と、かなえはカバンに飲み物を詰めると、店を出てジャンプで戻って行く。




