103 スミス夫妻の訪問
先に来ちゃったけど大丈夫かな……。
かなえはメラニーさん達をおいて、ジャンプミラーで島に移動して来てしまったが、少し不安になって来た。
どうしよう。来てくれるかな……。
かなえは島にある、牧場へ通じるジャンプミラーを眺めていると、
サーッと、ジョンさん、そしてそのすぐ後にメラニーさんが現れた。
良かった……来てくれた!
かなえは、良く状態が呑み込めていない、立ち尽くした二人に向かって、
「ようこそ! アニマルドームへ。このジャンプミラーがあれば一瞬で牧場から移動出来るので、便利ですよ」と、話す。
「かなえ、どういう事? 私達、もう着いたの?」と、やっと言葉を発するメラニーさん。
「はい、そうです。ここが、私が管理しているアニマルドームです。まだ数は少ないですが動物達と、人はジミーさんにリリちゃんララちゃんが暮らしています」
「なんだか、夢でも見ているみたいだな」と、ジョンさんは辺りを見回している。
「それでは、歩きながらジミーさんの所へ行きましょう」
かなえはまだ納得いっていない二人を連れて、ジミーさんの庭に向かう。
「この家はリリちゃんと、ララちゃんが住んでいるお家です」
「まぁ、赤い屋根で可愛らしいわね」と、メラニーさん。
「ここは島で周りが湖になっているんですよ。向こう岸にはあそこにある橋を使います」
かなえはメラニーさん達を案内しながら、遊歩道を歩いて行く。
「あの小屋には私の住む動物ギルドと通じているジャンプミラーが設置してあります」と、もう一つの小屋の前を通りながら説明する。
「そしてあの前の家がジミーさんの住む家ですよ。今は隣の仕事部屋にいると思います」
かなえは、ジミーさんの家の庭にメラニーさん達を連れて行き、テラスの椅子に坐ってもらう。
「リリちゃんと、ララちゃんはオクタゴンの教室に通っているので、お昼過ぎには戻ると思います」
かなえはいつもと同じように二人に接しているが、メラニーさん達はまだ緊張しているようで、口数がとても少ない。
どうしようかな……。
「あのー、ジミーさんを呼んできますね」と、かなえは二人を置いてジミーさんのところへ向かう。
ジミーさんがいつもの様に仕事場にいるのが見えて、ホッとするかなえ。
「ジミーさん!」と、大きな声で呼ぶと、仕事場の窓から顔を出すジミーさん。
「あのー……二人を連れて来たんですけど、まだ緊張しているみたいで」と、かなえが言うと、
「そうかい。それはそうだろうなぁ」と、ジミーさん。二人の気持ちが分かるようだ。
「だからジミーさんももう来てくれませんか?」と、かなえが頼むと、
「ああ、もちろんだ。私も行くとしよう」と、ジミーさんも一緒に来てくれるようだ。
かなえは少し安心する。
一緒に二人のいるジミーさんの庭に行くと、メラニーさんとジョンさんが静かに座っていた。
「やぁ、良く来てくれましたね」と、ジミーさんがメラニーさん達に挨拶する。
「私達は何て言っていいか……驚いてしまって、戸惑っているんだよ」と、ジョンさん。
「そうだろうな。私もここへ来た時は何が何だかわからなかったよ」と、ジミーさん。
それからジミーさんは、なぜ自分がここに来ることになったかを、2人に話し始めた。
体調が悪くなり、これから先もマリーの世話をして行ける自信が無くなり、かなえのやっている動物ギルドにマリーを連れて行った事。
一人になりもう生きる元気が無くなり、光に帰るのを待つだけだったが、気が付いたらこの島の家のベットで寝ていた事。
今ではすっかり体調も良くなり、マリーもいて仕事も再開出来て、とても幸せだと話す。
静かにジミーさんの話に聞き入っていた二人は、少しずつ受け入れてくれたようだ。
「かなえはジミーさんにとって命の恩人なのね。あなたはまだ子供なのに、しっかりしていて動物や人を助けているのね」と。メラニーさん。
「そうだな。いろいろ不思議な事だらけだが、ここが良い所なのはわかったよ」と、ジョンさん。
「驚かせてしまいごめんなさい。本当は事前にここのドームの事を説明しようと思ったんですが、どう話していいかわからなくて……」
「そうよ。あの鏡はいったい何なの? 私たちの牧場から一瞬でここに来れるなんて……でも今までのかなえの謎が少し解けたような気がするわ」
「え? 謎ですか?」
「そうよ。あなたいつも牛舎や牧場をピカピカにしてくれているのに、姿は見えないし、馬車で来ている気配は無いじゃない?」
「そうだな、牛舎の中は錆びていた蝶番が新品になっていたり、きしんでいた窓枠が治っていたり……まだまだあるが。あれは修理したとかではなく新品に戻った感じだな」
「かなえには不思議な所があるけど、いい子だしちゃんと牧場の牛達の世話もしてくれてるから、私達は気にしない事にしたのよ」
そうか……やっぱりばれて居たんだ。気を付けては居たんだけどな。
「でも、さすがに一瞬でここに移動したのには驚いたわ!」
「あのー、いろいろごめんなさい」と、かなえが謝ると、
「ハハッ、いいんだよ。かなえさんには私達も世話になっているからね。私達が牧場にまだ住めているのも、かなえさんのおかげじゃないか」
「そうね。かなえに牧場を任せられるから、私達もまだあそこで生活出来ているんですもの」
すべて女神さまのブレスレットのおかげだけど、そこまで詳しくは言えないな。
かなえが何て言おうと考えていると……、
「わぁー、メラニーさん達いるよー!」と、リリララ姉妹が走って庭に入って来る。
「まぁー、あなた達お帰りなさい。元気そうねー」と、メラニーさんも嬉しそうだ。
「ララねー、絵の教室行ったんだよー」と、もうララちゃんのいつものおしゃべりが始まる。
「あのー、ちょっと準備をして来ますから待っていてくださいね」と、かなえが設置した、庭の中心のテーブルに向かうと、
「私も手伝います」と、リリちゃんが付いて来てくれる。
メラニーさんはララちゃんの相手をしてくれて、ジミーさんとジョンさんも話を弾ませている様子なので良かった。
かなえはシールドを解いて、花瓶をテーブルの中心に置く。
「素敵なテーブルですねー」と、リリちゃんも気に入ってくれたようだ。
コンテナから料理の入った瀬戸物の箱を次々に並べて行く。お水とジャスミンティーのポットを置いたら準備完了だ。
「皆さん、用意が出来ましたからいらしてくださーい」と呼ぶと、みんなが立ち上がりテーブルの所まで、やって来る。
「まぁー! 可愛らしいテーブルね」と、メラニーさん。
「お花、きれい!」と、ララちゃん。
「あのー、お好きな席に座って下さい」と、かなえはが言うと、
ララちゃんの両隣にメラニーさんとリリちゃん。メラニーさんの隣にジョンさん、その隣にジミーさん。かなえはジミーさんとリリちゃんの間に坐った。
お水とお茶をみんなのカップに注ぎ、料理の入った箱のふたを取ると、上品な秋の味覚の料理が現れた。
「まぁー、美味しそうね」
「まだ温かい!」
「いい匂いだ」
みんなで食事を始める。
「ララねー、この野菜食べれるよー」と、ララちゃんが言うと、
「この、料理は初めて食べたわー」と言ったり、
「これは、上手いなー」と、みんなも話し始める。
それからは、日常の他愛の無い話で盛り上がった。
リリちゃんが、普段は温泉に通っている話をすると、
「そう、温泉ってどんな感じなのかしら。行ってみたいわー!」とメラニーさん。
「かがみの中からすぐに行けるんだよー」と、ララちゃん。
「そうですよー。私達はいつも西門の温泉に居ますので、来てください」と、リリちゃん。
「あー、バニーちゃんだー」と、突然ララちゃんが指をさした方を見ると、
バニーちゃんが隣の庭で子猫達と走り回っているのが見えた。
今まで静かだと思ったけど、眠っていたのね。
「あらー可愛い。でも随分と大きいうさぎねー」と、メラニーさん。
食事が済んだので、子猫達の庭に案内する事になった。
「こっちだよー」と、メラニーさんの手を引っ張って行くララちゃん。
その後にみんなも付いて行く。
「随分広い庭だなー」と、ジョンさん。
ジミーさんの庭、その隣のマリー達、その先のバニーちゃんの小屋の前の庭を全てつなげているので、植えている木を退かせばサッカーの試合が出来るくらいに広くなっている。
「あれは何かしら?」と、子猫達のドームを見たメラニーさん。
「あれはねー、中で猫ちゃん達が遊ぶんだよー」と、ララちゃん。
「不思議な素材だな」と、ドームに触ってみるジョンさん。
かなえは庭で遊んでいる子猫達と、バニーちゃんに、
「あなた達、どうやって遊ぶか見せて欲しいの。ドームの中に入ってくれる?」と、声を掛けると、
『えー、いいけどー』と、バニーちゃんが方向転換して近づいて来る。
『いいよー、行こ―!』と、子猫達もバニーちゃんと一緒に来て、シャワードームに入って行く。
「わぁーなんなの! みんなビショビショじゃない!」と、メラニーさん。
「でも、上手く跳ねているなー」と、ジョンさん。
二人ともシャワードームで遊ぶ、バニーちゃんと子猫達に目が釘付けだ。
かなえはそろそろと思い、メラニーさん達に、
「あのー、お二人に見てもらいところがあるので来てもらえますか?」と、聞くと、
「ええ、もちろんよ。行きましょう」と、メラニーさん。もうすっかりいつものメラニーさんで、楽しそうにしている。
かなえはメラニーさん達に、準備した家を見て欲しかったのだ。
リリララ姉妹は何だろう?と言う顔をしている。
ジミーさんとは家の事も話しているので良くわかっている。
なので、みんなで遊歩道を歩いて行くことにした。
「きれいな湖ねー」と、メラニーさん。
さっきも通った道だが、今の方が景色を見る余裕があるようだ。
「あそこがララのお家だよー」と、ララちゃんが赤い屋根の家を指して言う。
「可愛いお家で、リリちゃんとララちゃんにピッタリね」と、メラニーさん。
メラニーさん達が使用した小屋の前を通り過ぎると、緑色の屋根に白い壁のスッキリした家が見えて来る。
「あのお家は、かなえさんの家?」と、メラニーさんに聞かれる。
そういえば島の奥に私の家も造ってあったっけ。スッカリ忘れてた……。
「いいえ、違います。私の家はこの先にあります。でも普段は動物ギルドの2階に住んで居ます」と、かなえは暫らく自分の話をして、緑の屋根の家の説明を後回しにする。




