100 明日の準備
『カナ、カナ、パンですよー、アサですよー』
「うーん」
『カナ、カナ、パンちょーだい、おきて―』
「うーん、もう朝か―……リトくん、おはよー」
『カナ、カナ、大きいのいないねー』
えっ、大きいのって……もしかして?
「リトくん、昨日いたウサギのバニーちゃんの事?」
『うん』
「バニーちゃんはね、島にいるよ。子猫達と仲良くなったのよ。リトくんもピーちゃんと見に来れば?」
『うん、ぼく、大きいの、みにいく』と、リトくん。
リトくんはかなえがあげたごほうびパンを、あっという間に平らげると、ピーちゃんのところへ飛んで行った。
さっ、私も仕度しよー。
かなえは出掛ける準備を終えると、牧場に向かう。
「おはようございます」
『おはよう』
『おはよう。いつもありがとね』
最近めっきり若々しいジジさんとババさんを連れて、砂浜にジャンプで移動して行く。
エスカ機能でスイスイと登って行くが、もしかしたら空中階段だけで昇れるようになっていたりして……。
もう少し様子を見て考えよう。
かなえはジミーさんの庭へ行くと、いつもより早かったようで誰も居ない。
なので、バニーちゃんと子猫達の様子を見に行く。
側まで行くと、バニーちゃん達の声が聞こえて来る。
「おはよう、あなた達もいたのね」
「おはようございます」と、リリちゃん。
「ララねー、バニーちゃん重たいから持てないよー」と、言うが、ララちゃんには無理だろう。
今朝もバニーちゃんは子猫達に追いかけられている。
でも気のせいか、昨日よりバニーちゃんの動きが機敏になっている様に見える。
まぁー、1日でそんなに変わらないだろうけど。
かなえはリリララ姉妹に、
「そろそろ朝食にしよう」と、声を掛けジミーさんの庭に戻る。
「おはようございます」と、庭に出て来たジミーさんに声を掛ける。
「ああ、おはよう」
こんな時「今日はいいお天気ですねー」とか「今日は暖かいですね」なんて、お天気の話をしたり出来そうだけど、このドームの中は温度管理がされていて天候が一定だからなぁー。
そんな事を考えながら、朝食の準備をしているとリリララ姉妹もやって来る。
「はーい、どうぞ。いただきましょう」と、みんなで食事を始める。
今朝のメニューは、ポテトとニンジンがゴロゴロ入ったコーンチャウダーに、ブルーベリーベーグルのモツァレラチーズサンド。
ミックスビーンズとブロッコリーのソテーにグアバジュース。
それにココアをリリララ姉妹、かなえはソイラテ、ジミーさんにはコーヒーにした。
今日のメニューは野菜が多いので「ララちゃんはどうかな?」 と、思ったけどちゃんと食べてくれた。リリちゃんもそれを見て、安心したみたいだな。
食べ終わると、かなえはバニーちゃんに様子を聞きに行く事にした。
子猫達の庭に行くと……、
『バニちゃん、ドームであそぼ』と、子猫達に頼まれている。
『えーっ、だってお水が出るんでしょー』と、バニーちゃん。
子猫達はバニーちゃんに『シャワードームへ入ろう』と、誘っているようだ。
「バニーちゃん、そっちはシャワーが出るけど、隣のドームと同じように弾むから楽しいと思うよ。嫌ならすぐに出てくればいいから試して見れば?」と、かなえが言うと、
『うーん、いいわ。じゃあー入って見る』と、バニーちゃん結構度胸があるみたい。
さっさと入口のトンネルシャワーに入って行き、子猫達が後へ続く。
すると、すぐに、
『ギャー! 濡れちゃったー』と、騒ぐバニーちゃんの声。
でも後ろから子猫達が入って行くのでバニーちゃんは仕方なく前に進み、ドームの中へ入って行く。
するとドーム全面からバニーちゃんに向かってシャワーが流れて来る。
『きゃー! イヤー』と、言いながらバニーちゃんは飛び、子猫達も一緒にポーンと身軽に跳ね始める。
『バニちゃん、ビショビショー』
『バニちゃん、フサフサないー』
『ほんとだー』
子猫達はバニーちゃんと一緒に跳べるのが嬉しいようで、もう夢中だ。
『そ、そうね。この、浮く感じが面白いわ……体が軽くなったみたい』と、バニーちゃん、少しづつ濡れる事にも慣れて来たみたいだ。
「バニーちゃん、嫌だったら無理しないで出て来ていいのよー」と、かなえが大きな声で言うと、
『うーん。もうちょっとだけいるわ』と、バニーちゃん。
思ったよりシャワードームが気に入ったようだ。
バニーちゃん達は仲良くしているので、かなえは牧場にジャンプで移動して行く。
さぁー、掃除を始めるぞー。
かなえはミルクタンクの周辺を念入りにキレイにする。そろそろタンクの中がいっぱいになって来たので、ケンがミルクを取りに来る頃だろう。
最後の部屋までウオッシュを掛けると、スクーターを出して牧場を回る。
牧場の掃除も終わったので、小屋を誰も通りそうにない牛舎の裏に設置し、ジャンプミラーを取り付ける。
鏡の所に「島」と表示し、小屋の外には牧場と記しておく。そして、メラニーさんとジョンさん、島の皆とかなえの名前を登録しておく。
念の為、小屋はインビジブルにしておこう……。
これで終わりね。
明日メラニーさんの家の隣に、小屋を移動すればいいだけなので簡単だ。
かなえは準備が終わったので、アニマルドームの砂浜に移動して来る。
椅子に坐り、メラニーさん達を迎えた時の段取りを考える。
まず、ジャンプミラーで島まで来てもらい、歩いて行きジミーさんの所まで行けばいいかな。
その後隣の、子猫達の様子を見てもらおう……。
この砂浜まで歩いて来てもいい。
リリララ姉妹が帰って来たら、一緒にランチを食べて……。
「あっ!」
明日のランチの事を忘れていた。
どうしよう……。
ポーチの中には、かなえが買った普段の食事は入っているが、もうちょっと特別感が欲しい。
……とは、言っても、パーティー用の大皿の料理を使うまでも無いしな。
「シロン、明日のメラニーさん達を招いての6人分のランチ、どうすればいいかな?」
「そうですね、いろいろ方法はありますが、簡単なのはいつも注文するお店で6人用のパーティーセットを作ってもらう事ですね。その他に、バーベキューや、鉄板焼きもありますが」
そうか、でももうあと1日しかないから、やはりプロに任せた方が良いな。
かなえは、ラウンドカフェにジャンプで移動して行く。
お店に入って行くと、いつものお姉さんがかなえを出迎えてくれる。
メニューを見せてもらうと、色々ランクがあるようだ。
その中の「秋の味覚セット」が、仕切りの付いた白い瀬戸物の箱に入っていて、中華の懐石の様な感じで良さそうだ。
スープからデザートまで付いて来るようなので、かなえはこれを注文する事にする。
これからランチの準備で忙しくなるので、出来上がるのは15時になるそうだ。
かなえは先にお金を払うと、アニマルドームの砂浜へ戻って行く。
明日のランチはこれで大丈夫だけど……何処で食事をしよう。
メラニーさん用の仕事場のキッチンには、大きなダイニングテーブルも置いたけど、いきなりそこで食べるのも何か違うな。
やはり、いつも食べているジミーさんの庭にテーブルをおけばいいか。
かなえはジミーさんの家の庭に移動して、いつも4人で食べる時に食べるテーブルの少し離れた庭の中心に、大きな丸いテーブルと椅子を6脚取り出す。
テーブルの上にクロスとランチョンマットを置き、お水のピッチャーとお茶のポットを準備しておく。お茶を入れるカップとお水のグラスにフォークにスプーン。
真ん中にお花を飾ったらキレイかも。
かなえは前に植えておいた、お花畑にジャンプして行く。
「わぁー、キレイ!」
かなえは自分でお花畑を設置していたが、たまにスクーターで上空は通るだけで、こうしてまじかに見たことは無かった。
少し傾斜のある所に、ビッシリと赤、白、黄色、ピンクなどの色とりどりの花が咲いている。
テーブルクロスの色はクリーム色だから、それに合うお花は……。
かなえは黄色やピンク、白の花を中心に採って行く。
こんな感じかな。かなえはまとめて紙に包むと、ポーチのフォルダの中にしまっておく。
再びジミーさんの庭に来ると、準備したパーティー用のテーブルにシールドを掛けておく。ぶつかると危ないので、ビジブルのままにする。
さぁー、これでいいな。
かなえは明日の準備が終わったので、動物達の小屋へ掃除しに行く。
クイーンの小屋から、リキさんの所まで終わらせると、島の温泉へ向かう。
1合目が終わり3合目に来ると、マリーとリキさんが泡風呂に入っていた。
「マリー達ここに居たんだ」
『あら、かなえ。子猫達はまだバニーを追いかけているかしら?』
「さっき見た時は、一緒にシャワードームに入ってたよ」
『そうなの? あの子ったら嫌がってるように見えて、そうでも無いみたいね』
そうか、マリーにもバニーちゃんが嫌がっていないように見えるんだ……。
「うん、私もそう思う」
『そういえば昨夜……』と、マリーがかなえが帰った後の夜のバニーちゃん達の様子を教えてくれた。
なんとバニーちゃんは昨夜、マリーや子猫達と一緒の小屋で眠ったそうだ。
『あの子、フワフワだから子猫達も夢中なのよー』と、マリーも嫌がってはいない感じだ。
「そうなのー? バニーちゃんも一緒じゃ狭くなかった?」
『うーん……そうでも無かったわよ』
子猫達も大きくなってきているし、もう一回りマリー達のクッションを大きくしておこう。
「リキさんは調子はどうですか?」と、かなえは静かにかなえ達の会話を聞いていたリキさんに声を掛けると、
『信じられんが、足の事は気にならなくなっているな。こんな事は事故に遭ってから初めてだ』
『そうよ、見た目だってもうどっちの足が怪我をしていたかわからないもの』と、マリー。
「そうですね。私も薬を塗りながらそう思っていました」
間違えて反対の足に薬を塗らない様にしないと。
それくらい、リキさんの足は治って来ているんだな……。
「森のドームに帰るまでに、もっと回復するといいですね」
かなえは3合目をきれいにすると、頂上と雲の上の温泉にウオッシュを掛け、シャワードームへ向う。
とうとう100話まで来ました。
ここまで読んでくださった方々、ありがとうございます!
これからも、どうぞ宜しくお願いします。




