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♭2

今回は♭、真紀視点です

久々に見かけたから驚いた。

幼小中高まではずっと一緒、クラスは同じだったり違ったりしたが、登下校は毎日一緒に行ってたし、休みの時も必ずお互いが先生に連絡してた。なんていうか、いるのが当たり前で最早家族よりも近い存在だった。なんでも相談に乗ったし、乗ってもらってた。俺が元々早起きだから、家族よりも早く挨拶することなんて日常茶飯事だし、旅行以外で何日も見かけない事なんてなかった。その上帰ってきたときは一番に挨拶に行ってた。

でもいつかは会わなくなる日は来るし、恋人だって作れば結婚だってすると思う。ただなんでか知らないけど心優は彼氏を作らなかった。何回告られてるかは知らないけど、その度に相談しに来て、毎回断ってた。ある時は俺が拒否ってると思われて逆恨みしてくる奴までいたかな。まぁそんなわけでモテる心優だから、大学に入れば多分彼氏だって作る。そのために大学に入ってからは、なるべく会いに行ったり、連絡したりはしてない。慣れるために。そんなことを考えてるは時点で俺は心優にべったり依存しているって気づいたのはここ最近だった。ただ、これは恋愛感情ではないことは確かだ。


そんな矢先だった。切符売り場にいる心優を見つけた。ずっと見てきたから後ろ姿ですぐに気づいた。気付いたら隣に行って確認して声をかけてた。少し化粧をしていて違って見えたけど、笑った顔は昔のまま、心優だった。思わず一緒に帰ろうとか言ったけど、友達の家に行くと言った。正直残念だったが、ここで決めた。もう心優に依存するのはやめよう。心優には心優の人生があるし、干渉しすぎてもうざったいだけ。心優が大事だからこそ、ここは距離を置くべきだ。それに俺の学部と心優の学部は幸か不幸か正反対にあるから会うこともほとんどないと思う。


その日はサークルもなく、珍しくバイトもなかったので家から数駅離れたところにあるショッピングセンターに出かけることにした。数駅離れたと言っても学校側になので定期でタダで行ける。ちょうどこれからの季節のための服がなかったため、買いたかったのだ。

(とは言ってもブランドとか全然わからないから最低限ダサくないようにだけど。)



1時間くらいぶらぶらして、少し気に入ったものを買い、出口に向かっている途中で、


「あ、真紀くん!」


と後ろから声をかけられた。振り向くとそこには俺のバイトの先輩である安藤瑛里華さんがいた。


「あ、安藤さん、こんにちは」

「こんにちは、瑛里華さんでいいよ」

「はい、すいません」


肩よりやや下まで伸びた髪の毛を1つに束ねているポニーテールが特徴で、すらっとした体にかわいい、というよりきれいな顔立ちの安藤さん、あ、瑛里華さんは俺の一個上で俺よりバイト歴は一年長く、いろいろ面倒を見てもらってる、いわゆるお世話がかりだ。地元にある居酒屋でバイトをしているのだが、いろいろとよくしてもらっていて、多分一番仲がいい。あとよく客のおじさんにナンパされていて本人は困っている。


「何してるのー?」

「学校帰りに暇だったんでぶらぶらしてました」

「あら、奇遇ね、私もそうなの。このあと時間ある?」

「はい、ありますけど」

「じゃあお茶でもしましょ!」


そう言って俺の手を引き、ショッピングモール内にあるパンケーキ屋さんに入った。俺は甘いものが大好きなので、願ってもいない誘いだった。さすがにあの中1人では入れない。


中に入り、それぞれ違うパンケーキと紅茶、俺はコーヒーを頼み、食べながら話している。


「ん〜、やっぱりここのが一番美味しいわ」

「結構いくんですか?」

「うん、好きなのよねー甘いもの」

「俺も大好きです」

「あら、お子ちゃまなのね見かけによらず」


そう言っておちょくってくる瑛里華さんは微笑んでいる。


「あのさ、真紀くんは彼女とかいるの?」

「えっ?」


唐突の質問に思わず飲んでいるコーヒーをふき出しそうになる。


「い、いや、できたことないすけど」

「え、いがーい!とっかえひっかえしてるのかと思ったー!」

「ひどいこと言いますね、そういう安藤さんはいるんですか?」

「だーかーらー、瑛里華でいいって。いや、こないだ別れたばっかー」

「あ、そーなんですか」

「うん、なんか他の女が好きになっちゃったから別れたいって」

「うわ、それはひどいですね」

「でしょ?まぁでも向こうが私に冷めてたのはちょいちょい気づいてたし良かったけど」


意外な失恋話を掘ってしまって少し後悔する。


「でも瑛里華さん男に困ったことないでしょ?そんなきれいで優しいし」

「そ、そんな、私を尻軽女だと思ってるでしょー?」

「あ、いや、そういう意味では……」

「言葉には気をつけなさいね、真紀くん」

「うっ、ご、ごめんなさい」


なんか気づいたら謝ってた。なんか悪いことしちゃったな。


「真紀君こそいたことないなんてほんとに意外だなー、モテそうなのに」

「いや、そんなことないですよ」

「じゃあ今まで何回告白されたことある?」

「ん〜…えーっと………」

「ほら、悩むほどいるんじゃーん」

「いや、ほんとそんなことないですって」


普段仕事のことばっかり瑛里華さんとは話しているからこういう話をするのも新鮮だ。


「でもそれ全部断ってきたんでしょ?すごいね。ってことはまさか誰か好きな子がいるとか」

「いません」

「はやっ!」


即答だった。っていうか今だに好きとかそういう感情はわからない。


「なんかものすごく仲がいい幼馴染がいて、だからかなーって」

「それって好きなんじゃない?」

「いや、それとは多分違います。何だか家族に近いっていうか、むしろ家族よりも家族っぽいというか」

「そうなんだ」


そういったあと瑛里華さんが少し悲しそうな顔をしたのは気のせいかな?

お互いの恋愛の話?をしたあとは大学のこととか高校のこととか話して、いつの間にか7時を回っていた。


「じゃあそろそろ帰る?」

「はい、そうですね」


そう言って会計に向かう。

俺が値段を見ていると、


「あ、いいよいいよ出さなくて」

「いや、そういうわけには」

「いいから!お子ちゃまはお姉さんの言うこと聞きなさい」


とお金を返された。


「あ、じゃ、じゃあすいません、ごちそうさまです」


なんとも情けない。女の人に会計を持ってもらうなんて。今度なんかお返ししよう。



「いやー美味しかったね!」

「はい美味しかったです、ごちそうさまです」

「楽しかったからいいの。じゃ、帰ろっか」


電車の方向も一緒だったため、雑談しながら一緒に帰った。さすがに情けないので家までは送ることにした。ものすごく遠慮されたが、ここは引けなかった。


「あ、ここうちだから、ありがとね真紀くん」

「はい、こちらこそありがとうございました」

「また今度出かけようね!」

「はい、よろしくおねがいします」

「んじゃ、またねー!」

「はい、また」


そうお別れをしてから、瑛里華さんが家に入るまで見送り、家に帰った。






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