もんげん。
「門限があるんだ」
そう切り出した友達をみんな笑った。でも俺は、笑う事なんてできなかった。
うちの家族は皆自由奔放に生きている。といっても、最低限家族としての責務は果たしてくれているし、繋がりのない家族ごっこだというわけでもない。
父親は仕事をし、母親は家事をする。そして俺は……よくわからない。
勉強をしろとも言われないけれど、遊びなさいと言われた事もない。
塾に行きたいといえば、自分で選んで好きな塾に行くといいと返され、志望校を変えたいと言えばわかった、好きにするといいと言われた。
肯定もされず、否定もされない。
信用されているのか、無関心なだけなのかそんなよくわからない家庭環境で育った俺は、門限と言うものが少し羨ましく思えた。
「俺も帰ろうかなぁ」
なんとなしに口にした言葉は割と大声だったみたいで、笑い声は消え去りしんとした空気がそこに漂っていた。
「珍しいな、お前がそんな事言うなんてさ」
「そうそう、いっっつも最後まで残ってんし」
乾いた笑い声と、引きつった表情の友人たちの姿に俺はそんな風に思われていたのかと察する。
「明日のバイト、朝はぇーんだよ」
昼からだけど、そう言う事にしておこうと思った。
「ほら、お前門限なんだろ?一緒に帰ろうぜ~。じゃあなー」
肩を組み、背中を向けたまま手を降り、おれはその場から立ち去った。