記憶8 インディペンデント
俺の記憶が確かならば、でかい大男の正体がわかるということだ。なぜ追いかけられていたのか。おじさんは正体を知ってしまうと戦わなければならなくなるだろうと言っていた。そもそも、記憶以来、でかい大男が襲ってくるようなことはなかった。普通に平和だった。
「いいですか、わかっているとはおもいますが最初に言っておきます。その男は今も実在しています。」
さらに、井手口さんは言葉を続ける。
「男の名前もわかっています。名前はガンズ。彼らのチームの中で一番でかい男です。」
丁寧な口調でわかりやすいのだが、後戻りできない状況にすこしずつ気づき始める。
「なぜ、でかい大男がその、ガンズってやつだとわかったんだ?」
「清吉さんがあのとき、その敵について、特徴を覚えていたからです。それに、大男ならばだいたいわかります。」
「・・・なるほど」
「そして、ガンズは<インディペンデント>というチームの一人です。」
「・・・いんでいぺんでんと?」
「はい、チームでありながら、彼らが協力して戦うことがないことはもちろん、それぞれの目撃証言がバラバラなのです。今は、6人ほど、いることが確認されているそうですが、もともとその6人は勝手にチームにされたといいますか、<インディペンデント>なんてものは本当はないんです。」
言っている意味がよくわからなかった、というより途中から頭の中に入っていなかった。やべえな、そういうの苦手だった。もう一回言って?と言ったらあきられるよな・・・。
「人々に勝手に決められたチームなんですよ。本人たちは何とも思ってないようですがね。でも、決められた以上、それなりの脅威があります。ガンズもその一人で<インディペンデント>としては名は知れています。私や満月でも、ガンズやほかの5人に勝てるかどうか・・・。」
「なるほどな・・・だいたいはわかった。でも、俺の戦う理由ってなんなんだ?」
「ぼくや、お前は覚えてない。だから、なかったことにしてもいい。それがあの少女のためにもなる」
俺はあの記憶の結末を知らない。思い出せないというより見えない。少女がいたことはたしかだ。なぜ逃げていたんだろう・・・。
「おじさん、教えてくれ、あんたに助けられたとき、その・・・どうなっていたんだ。」
うまく言えない。なにもかも。少女がどうなったのか、なぜ今、俺は生きているのか・・・
「いいか、ぼくや、お前の名前や記憶がないのは、その少女の力によるものなのかもしれない。そして、少女の何らかの力によってガンズというやつから逃げ切ることができた。」
「まってくれ、おじさんが俺を助けたんだよな、おじさんもあそこにいた・・んだよな。少女だってどうなったんだ。」
「偶然だったがたしかに、お前を助けた。だが、逃げていただけだ。追いかけてきたやつもガンズというやつだった。あの少女は何かをつぶやいたんだよ。言葉が言い終わった瞬間にお前は倒れた。そして、あの少女は、大男に一人で足止めをして時間を稼いでいる間に逃げ切ることができた。あの少女のおかげだよ。」
俺はその少女がなんなのかを知らない。でも、少女のおかげって・・・だから、今いないのか。考えたくないが、少女はもう・・・。まだ、よくわからないことだらけだな・・・。本当に少女の力によるものなのか、その力ってなんなんだ。名前のあった頃の俺って何をしていたんだ。そして、逃げていた理由なんておじさんにきいてもわからないよな。俺は助けられたのか・・・
俺が今の事実、現状に悲観していると井手口さんが、
「・・・・その少女は生きている可能性があります。」
「ほんとうか・・・今そいつはどこにいるんだ!」
生きているならその少女に会えばいろいろわかるかもしれない。俺の名前や記憶が・・・
「最近、ガンズを見かけたやつによるとガンズの後ろにフードをかぶった少女らしき人物がついているらしいです。あなたが名前のなくなった時からだそうですから、つじつまは合います。あくまで、ですから確証は持てません。」
「・・・ガンズってやつに会うべきなのか・・・」
なるほど、俺のすべきことは決まった。少女に会う。でもガンズってやつと会って戦うかもしれないってことか、そうだな・・・おじさんの言うとおりだった。きかなきゃよかった。できれば戦わない方法はないだろうか・・・よくわからんが剣は持っていたほうがいいらしい。
「戦うことになれば、私たちもお手伝いすることになるでしょう。」
「強いんだよな・・・俺のため?それともおじさんに頼まれたとか?」
「いえ、<インディペンデント>は私たちの敵でもあります。彼らは危険人物ですから」
「そうなのか・・・いまいちどういう仕事してるのかわからないけど・・・」
「そして、今のあなたでは、ガンズはおろか、満月にも勝てないでしょう。だから、ここにきたのです」
「やっぱり、特訓すか・・・」
正直、ガンズに会う前に先にこの人たちに倒されるんじゃないだろうか。そう思う俺がここにはいた。




