記憶5 いまみえるもの
俺は何かを見ている。ここはどこだ。見ている景色がいつもと違う、夜のようだが・・・。これは・・・走っているのか?声どころか音すらない。いったいに何を見ているんだ。でも、またこの恐怖だ。誰かから必死で逃げている。逃げ切れないっ・・・でかい影が俺たちを追う。俺たち?確かに誰かと逃げていた気がする。影は、すでに前に大きく立ちはだかっていた。いつの間にっ・・・影から手なのだろうか、その大きな手が俺たちに向かって―――――――――――
「っおにいちゃ・・・おにーさんっ」
姫乃?あれ、ここは・・・
「おにーさんっおなかだいじょうぶ?」
姫乃の顔と天井が見えた。どうやらここは辻家のようで俺はベットに寝かされていたらしい。目を開けたら姫乃がいたので、ずっと見ていてくれたのだろうか。外は完全に朝である。さっきのは夢だったらしい。今思うと記憶にあったことが本当だったのかわからなくなる。
体を起こそうとしたが、ズキッと腹に痛みが走る。黒服帽子の男の攻撃がまだ癒えてなかった。急に俺が痛みで顔をしかめたせいか姫乃がやや泣きそうな顔になってしまった。おっと・・・
「俺は大丈夫だから、それより怖い目にあわせてごめんな、本当に・・・」
「んーん、おにいちゃ・・・おにーさんっかっこよかったもん」
姫乃を助けられなかった自分に憤りを感じていたのだが、溜まった涙をふき、えへへと笑う姫乃は正直、可愛かった。救えなかったのに救ってもらった。
武器か・・・
あの時、剣があればと思ってしまった。あったところで勝てなさそうだけど・・・。それにもうこんなことはないだろうし。すると、ガチャっとドアの開く音がした。姫乃の母である。
「おかあさんっ、おにーさんっおきてくれたよ」
「もう大丈夫なんですか?起き上がって・・・」
ここで言うが、実をいうと姫乃の母とはしゃべったことがない。野菜をもらうときも大抵おばあちゃんか姫乃が出てくる。昨日、夜に帰ったところを見ると昼間はあまりいないようだ。
「はい・・・それよりもおばあちゃんのほうは・・・」
「心配しないで、怪我は負ってるけど今は元気だから」
「そうですか・・・・・・あの、すんませんっ」
姫乃の母だ、姫乃を助けられなかったことを謝らなければならない。ベットも貸してもらって・・・俺がいながら今回の事態を招いてしまった。
姫乃の母は表情を変えず、
「話はこの子から聞きました・・・姫乃は私にとって大事な子なんです。今回、この子は無事だったけど、また同じようなことが起きて、この子に何かあったらどうするつもりなんです・・・おばあちゃんにまで・・・」
姫乃の母の声はひどく凍っていて悲しそうな声だった。そうだ・・・俺が姫乃を自分の家に連れてくることはなかった。鍵を壊した時から俺が辻家にいて謝ればよかった。そうすれば、黒服帽子の男とも違うかたちで会っていたかもしれない。どちらにしても衝突は避けられず、やられるのか・・・。
「ちがうよっおかあさん、おにいちゃんは姫乃のヒーローさんなんだよ?」
姫乃の声が心に振動するように響いた。ん?おにいちゃん?
「・・・姫乃・・・いい?姫乃はまだ大変な目に合っていたのかもしれないの、今回は良かったけど、姫乃に何かあってからじゃ遅いの・・」
姫乃の母は目線を姫乃と合わせる。
「~~~~ちがう~~おにいちゃんはかっこよかったのっ」
「・・・ありがとな姫乃・・・でもそのとおりなんだ・・」
「おにいちゃん・・・姫乃は・・・おにいちゃんのこと・・」
さて、と言わんばかりに俺はベットから降り、姫乃の母に深々と一礼し、玄関まで歩き始めた、腹の痛みはまだ少しある。
「おにいちゃんっどこいくのっ」
俺はもう「おにいちゃん」でいいらしい。
「またくるよ、ちょっと家に帰らなきゃ・・・」
「ほんとに?」
「野菜もらわないとな・・・うまいし・・」
そうして、辻家を出て歩き始めた俺だった。後ろを見れば、姫乃とその母が見ていた。二人とも顔の表情は分からなかった。なぜなら、確認する前に先の方向しか見ていなかったのだから・・・。
姫乃については言語こそ子供な感じですが、辻おじさんと呼べるほどなのです。年齢的には・・・やっぱりどうなんでしょうね。このまま書いていいのかな?暇あったらまた書きますのでよろ~




