切望41 特別任務開始まで残り1日
――――――悪夢を見た、いや、それは現実で起こったことが夢として再来したのかもしれない。
身体は恐怖に塗れ、金縛りのように動けない――――――
その理由は図体の大きい男が少女を引き裂いていたからだ。その少女は俺に助けを求めている。でも動けない。その大男が俺に向かってくる。まだ動けない。
逃げろよ――――――
だめだ、助けないと――――――
――――――逃げろよ
できない。
では、なぜ――――――逃げられない。
もう――――――――――――こんなことは! 何もできないのは!!
「――――――あれ・・・」
「よっ」
旅館の部屋。布団の上に俺はいた。朝の明るさと隣で俺に抱きつく一人の女性は寝間着で若干、白い胸が服のすき間から見えていた。
「――――――佐方妹!?」
「じー・・・その呼び方は不服」
「何してる・・・?」
「男女は愛し合うもの」
「それは今関係あるのか・・・」
「これはまだ序の口。本番はこれか――――――ら」
「できるかぁあああ――――――!!」
佐方衣理は眠たそうに欠伸をする。
「で、本当に何してたんだよ・・・」
「作戦・・・会議?」
佐方妹はそう言い、布団から出て、なぜか寝間着を脱ぎ始める。
「な、おい! 今出るから待ってろ!」
俺は急いで部屋から脱出した。
落ち着く居場所がなくなったので、旅館のロビーに足を運ぶ。そこには佐方兄と真由香の姿があった。
「あ、起きてきた」
「・・・朝から何してんだ」
「あれ、衣理さん言ってなかった?」
佐方妹だと・・・。そういや、男女は愛し合うがどうとかって言ってたな。
「いや、あれは意味が分からないというか、刺激的だったというか」
「・・・?」
真由香の表情は、まるで初対面の外国人と言葉が通じず、困惑しているような感じだった。
「明日に備えての作戦・・・なんて我々には必要ないですかね」
佐方兄は苦笑しながら言う。
「作戦? ・・・ああ、そっちか!」
すげえ勘違いしてたな俺。
「そっちって? 何があっちだったの?」
真由香は問いつめ気味に言ってくる。いや、怖ええよ。
「はは、そんなことはどうだっていいじゃないかー」
「どうだってよくなぁああーいいぃぃぃ!!」
「・・・そう、男女が愛し合うことに理由なんていらない」
いつの間にか俺の背後をとっていた佐方妹。服装はスーツではなく、今どきの女の子が着るような服だった。上の服は緩く作られているようだが、やはり胸に関わってくるのだろうか。
「衣理さん、にい君に何かしたんですか」
「・・・うん。でもどちらかというと攻めてきたのはにいのほう。激しかった」
なぜか佐方妹は頬を赤らめる。
「何の話だ!?」
真由香が俺に銃を向けてくる。
つかその武器いつ持ってきてたんだよ。
「にい~く~ん。どう激しかったのか説明して」
「説明を求めたいのは俺の方だ」
「にい君。気づいたんだけど、この武器、剣みたいに振り回せば良いと思うの」
重そうな武器を軽々と上に持ち上げる真由香。
「そいつは良いな。だが、なぜそれを今言うんだ」
彼女は笑った。冷酷的なその表情は敵意むき出しで―――――
「実践相手が欲しくって――――――――――っね!!」
「うお!?」
横に振り回してきた真由香の武器を、避けたはいいが、当たったらものすごく痛い気がする。
「なんで避けるの!!」
「そりゃ避けるだろ!?」
それほど広くないロビーで、真由香の武器から逃げていると、部屋の方から長刀が歩いてくるのが見えた。佐方兄妹と合流する。
「あの、二人ともそろそろ―――――」
「久信、これは真由香とにいの戦い。邪魔しちゃだめ」
「衣理――――――――」
「おい、何でこんなに騒がしいんだ」
佐方兄妹が止めに入らないところを見ると、頼れるのはもう長刀しかいない!
「やああぁぁぁぁあ――――!!!」
「―――――くっ。おい長刀、助けてくれ!」
「っ!・・・貴様ここで何して――――――――」
「佐方妹のせいで真由香がひどい勘違いを」
「俺が知るかってんだ」
「ええ―――――ってあぶねぇ・・・!」
今度は赤黒い光線まで飛んでくる。旅館の壁にダメージ与えてるんですけど・・・。
「そ、それに。昨日の―――――その、あったくせに、よく話しかけられたな・・・」
「え? 昨日?」
あ―――――
旅館の浴場で俺は長刀と会ってしまい、それから・・・なんだっけ。
記憶若干、飛んでるんだよな・・・。
「じー・・・そっちも愛し合った?」
「おいまてこら、話をさらにややこしくするな」
「――――――――愛し・・・合った・・・はわわ」
長刀はどうやら自分の世界に入ってしまい、赤くしたその頬に両手で覆い隠す。
「はぁ―――――はぁ―――――、っなに、嵐ちゃんとも激しいことしたの!?」
息切れを起こしても敵意だけは消えていない真由香。
「違げえよ! 激しいことってなんだ。とにかく嘘偽りなく、俺は何もしてない!」
「どこにその根拠があるの!」
「根拠!?」
え、なに、俺、証拠以前に根本から疑われてるの・・・?
「あの、皆さん、明日のための作戦、考えませんか・・・」
「「「必要ない!」」」
「・・・そーですか」
佐方兄はひっこんでしまう。
「久信、言ったはず。邪魔しちゃだめなの」
妹は兄を諫言する。
「だから! 話を大きくしたのは佐方妹で、お前は勘違いしてるんだって」
俺は必死に誤解を解こうとする。
「衣理さんは悪くないもん! たとえ私の勘違いでもそう思わせるにい君が悪い!」
真由香は、何だその理由はというような――――――――
――――――――ってなんつー理不尽な!?」
この後も事態は一向に解決しなかったという。
次話投稿を待たれよ




