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切望40 特別任務開始まで残り2日

――――――夢を見ていた。 

 親しげに話しかけてくる少女がいた――――――

 今の“にい”という呼び名ではなく本当の名前を持っていたときの俺――――――

 その子は俺を、リーダーと――――――


「――――――っっぐふ!?」


 腹部に走る激痛に目を覚ます。


「起きろ、ケダモノ男」


 俺を見下ろす長刀。腹にはその長刀の足があった。


「・・・お前、起こし方ってもんがあるだろ」


 長刀のアグレッシブなモーニングステップオンに・・・モーニングステップオンってなんだ、技みたいだな・・・使いどころに困るだろうな使用者。

 朝から長刀は俺と戦う気満々だったらしい。


 真由香たちが手伝ったであろう朝食を食べ終わり軽く支度をした後、俺は長刀に連れられ、旅館から離れた。数分は歩いただろうか。長刀は止まり、少し離れたところで俺も足を止める。

 俺たちが立つ場所は道路の真ん中。まわりは木々で覆われ、人や車が通る様子はない。


 長刀の両手の武器、爪長ウンギア・ルンガには赤黒い炎と悪魂間のオーラが強く出ていた。


「万全かよ・・・。一日で治るもんなのか、お前の傷は」


 そう言いつつ、俺は一時的に防具になっていた武器を剣に変化させる。右腕負傷中の俺には普通の剣を持つことはできなかっただろう。だがこの異一型剣と名付けられた剣には殺気一つで羽毛のように軽くなる。


「やっとこの身で貴様の実力を測ることができる」


 長刀はそう言うと、いきなり俺の方に突進してきた。


 俺はそれを右に避ける――――――――――が、脇腹部分の痛みに顔を歪めた。

――――――――――ラウス戦の影響か・・・!





「――――――――――っっぅが!!」


 顔面と背中に大きな衝撃が走る。


 何が起きたのか一瞬わからなかったが、目の前に長刀が立っていて、俺は木に寄りかかっている。


 殴り飛ばされた。長刀はあの突進をした後に、右に避けていたのにもかかわらずあの武器で俺にヒットさせたらしい。

 鼻にツーンと何とも言えない痛みを感じる。


「さっすが・・・だな。あれ、剣どこ行った」


 右手で握っていたはずの剣が消えていた。


「ガキだと思って甘く見るな。俺は真剣に貴様を殺す気でやっている」


 ガランっと鉄のようなものが落ちる音が響く。まさしくそれは俺の剣だった。


「・・・なるほど」


 本来、防具にも変化するはずの剣だが、痛みがあるということはそれは機能していない。認識が追いついていなかった。


――――――――――速ぇ・・・!


 相手は女の子だ。


「わかった――――――――――」


 しかし、俺より戦い抜いてきた組織部隊のプロだ。


「これからお前を人として、戦う人間として――――――――――」


 避けられない運命に。






「悲観と憎悪で作られた、殺気で応えよう――――――――――」







 長刀の頬が少しほころんだように見えた。そして、再び突進してくる。















 俺も身構え、大事なことを思い出す。




「――――――――――の前に、剣くれるとありがたい」


 長刀は聞こえたのか気づいたのか勢いをなくし、俺のそばで止まる。


「~~~なん、だよそれ・・・ふっくく」


 声には笑い、いや、侮辱めいた感じの声だったような。


「うるせえな、場面的には良かっただろうが・・・」


 この発言後、長刀に爆笑されたのは言うまでもない。








 長刀との特訓試合は昼に休憩をはさみ、昼食を食べ終わり、夕方になるまで続いた。お互い殺す気で戦っている割には飛ばされるか強い衝撃を与えるくらいのもので収まっていた。

 そんな中で、長刀が急にふらつき始め、倒れそうになった。

 怪我が完治した――――――――というのはやはり嘘だったらしく、意地とかプライドの部類で気を張っていたんだと思う。

 おんぶして帰ろうかと提案したが当然ながら拒否られた。

 でも――――――――――何かが緩んでいたのを、俺は確かに感じた。










 夕食も終え、休憩ついでに真由香、佐方兄妹との雑談タイムから数時間。現在の装備タオル一枚。つまりは旅館の浴場なのだが・・・。扉を開けたまではよかった。


「あ・・・」


 白い肌の人影が目の前にたたずむ。


「にい・・・君?」


「すまん真由香!!」


 すぐさま回れ右をし、浴場から出ようとした――――――――――


 それを違和感が邪魔をし足を止めてしまう。


 聞き覚えある声――――――――――知り合いであることは間違いないのだが、その“呼び方”にしっくりこない。


 それが真由香だったらまだしも、違う声でそれを呼ばれるとついつい後ろを見ざるをえない。


 白い湯気でほとんどは見えづらいものの、小柄な体型としっとりと濡れた髪はより一層女の子感を漂わせる。


なぎ・・・なた・・・?」


「・・・っ!」


 いきなりその小柄な体型に飛びつかれ、柔らかい感触が俺に抱きつく。


 理性と視点が乱れ始める。


「にい、君」


「・・・はい」


 いつもの彼女にはない、しおらしさが・・・。


「俺、風呂とか、温泉とか、こういう場所・・・嫌いだ」


 長刀の口調は変わってはいないようだが、明らかにおかしい。


「何か変な気持ちになって、切なくて、俺が俺じゃないような気がして・・・怖いんだ」




「それはどういう・・・」


 俺は冷静さを必死に取り戻す。


「俺にもわからない。でも昔からこうで・・・これって病気か何かなのか!?」


 小さな膨らみを押し付けられ、そろそろ限界なのだが、いつもの長刀に戻してやることを俺は優先した。




「病気かどうかは俺にもわかんねえ。だけどな、俺の思う長刀なぎなたあらしっていうのは、子供のくせに強気で、女の子なのに男っぽくて、無理して、意地張って、誰よりも・・・誰よりも人思いのいい子なんだ。そして、何よりも俺が失いたくない一人でもあったりする」



 一滴の水が落ちて、小さく飛び散る音がした。その後に開かれた唇と発する言葉には慎重さのような弱い気持ちが入っていた。


「――――――――――たとえ、俺が、敵だったとしても・・・か?」


 彼女は上目遣いで問うのに対して、迷いなく答えは出てきた。


「――――――――――ああ」


「・・・そうか」


 そう長刀が言い残すと、俺から離れ、外の方へと出て行った。のぼせ上がったその顔は赤かった。

 確認し、俺はお湯をかけ、頭と体を洗っていた。その途中から記憶が飛び始め、いつの間にか布団の上で寝ていた。



 






 何か取り返しのつかないような罪悪感を胸に――――――――――

 何を聞いて答えたのかすらも消えはじめ――――――――――

 眠りに落ちていく感覚に襲われていった――――――

次話投稿を待たれよ

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