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切望39 特別任務開始まで残り3日

 旅館での一日目を迎え、若干の倦怠感を感じつつ、周りを見渡す。和室という空間内で自分の家ではないということを改めて感じ、寝ていた布団を片付ける。

 同室の佐方兄の姿はなく、時間を見れば、昼近く。

 寝すぎた・・・。


 とりあえず、部屋を出てはみたものの客の姿はなく、旅館の人の姿もなかった。

 向かいの部屋は真由香たちがいるはずなので、ノックしてみる。が、反応がない。勝手に入るのも気が引けるため、そこを後にしロビーの方へ向かう。

 受付には年老いたじいさんが一人。ズズーっとお茶を飲んでいた。

 俺は近づき、声をかける。


「なぁ、じいさん。この旅館に俺たち以外で客はいるのか?」


「あい?」


 そのじいさんは眉間にしわを寄せながら、耳をこちらに傾けてきた。

 聞こえなかったらしい・・・ちゃんと配慮してやらないとな。


「ええっと、この旅館に! 他の客はいるんですか!」


 大きな声でゆっくり簡潔に敬語で話す。


「ヒャッハッハ、ワシの歳は17だよ」


 このじいさんいきなり何抜かしてんだ・・・。しかも質問とは違う回答じゃねえか。


「えらい若けぇなじいさん。そうじゃなくてさ、客いるのか聞いてんだけど」


「あい?」


 また聞こえなかったらしい。


「他のお客さんは! いるんですか!」


「別に嫁さんは募集しとらんよ」


「聞いてねーよ!?」


「ゲッホゴッホ、カァァ――――――」


 まあ客のいるかどうかは自分で確かめたほうが早いか。

 質問を変えよう・・・。

 

「じいさん、腹減ったんだけど朝食・・・いや、昼近いから昼食か。飯って出してくれるのか?」


「あええ? 菓子を出せ?」


「いや、飯だ」


「絵師?」


「絵師じゃない、飯。ご飯だご飯」


「あー、あいあい」


 そう言うとじいさんは言葉が通じたのか受付席をよいしょっと立ち、奥の方へ行ってしまった。


「大丈夫かよ・・・」


 こんなんでよく受付の仕事してきたな・・・。だからこそトラブルが起きやすいとかなのだろうか。


 奥の部屋からじいさんの声がかすかに聞こえる。


「・・・ヤクザじゃ、ワシの命を」


 えええェェェェェェェェェエエエエ!?


「え、三日後じゃなかったの!? ・・・よくわかんないけど、おじいちゃんは隠れてて」


 この声・・・真由香か?


「――――――やああー!!先手必勝!!」


 奥の方から駆けてきたと思ったら、やはり真由香で武器の銃口を向けられる。


「!? おい待て俺だ!!」


「あれ!? にい君!?」


 その瞬間、真由香は走ってきた勢いのまま体勢を崩し、こっちに流れてくる。




――――――――――――激しい引きずり音。


 そのまま受け止めた――――――つまりは真由香が俺を押し倒すようなわけだが、俺の右手は下に伸び、柔らかい何かをつかんでいた。左手もまた自分の身を守るための反射神経で動いたはいいが、自分の胸に手の甲が乗っており、手の平にはやはり柔らかい感触が・・・。


「痛っつ・・・」


 起き上がろうと足を動かす。


「ひん、そこ、だめぇにい君~」


「あ!? どこがだ!?」


 真由香の変な声のせいで身体全体に力が入る。


「ゃあぁ!!」


 くっ、とにかく離れなければ!

 真由香に触れないようにしつつ、仰向けのまま、すぐさま後退する。


「すまん、大丈夫か・・・?」


「はぁ・・・はぁ・・・」


「若いのはいいのお」


 じいさんは一人笑う。


「いや、もとはと言えばアンタのせいじゃ!?」


「にい君!!」


 真由香は座り込んだままこちらを睨みつける。


「・・・はい」


「その・・・今、あやまれば、今までのこと、全部、ゆ、許してあげなくもないけど?」


「いや、許すも何もあなた様から事故ってきたわけで、正直言って―――――――」


「ふ、ふ~ん、口答えするんだ・・・」


「この度は誠にご迷惑をおかけしまして申し訳ない気持ちでいっぱいです。ごめんなさい」


「うん・・・最初からそう言えばいいじゃん」


 真由香はそう言うと立ち上がり、タタッと部屋の方へ走って行ってしまった。


「ふぅ・・・」


「さ、さーて、ワシは仕事に戻らんと・・・」


 じいさんは俺に背を向けて、奥の方へ早歩きしていた。


「おいジジィ・・・」


「最近の、わ、若いもんは、口が悪いのお」


「じいさん、ちょっと話がある」


「と、とと、年寄りは、だ、大事にせんといかんなぁ」


「さっき歳17って言ったのどこのどいつだあああぁぁぁぁぁ――――――――――――」


「ぎゃああああああああ――――――――――――」










 じいさんをロビーの椅子に座らせ、俺も腰かける。


「で、何で真由香がそこにいたんだ?」


 受付の奥には部屋が見え、真由香はそこから出てきた。


「・・・ワシはそんなん知らん」


「こ、このジジィ・・・」


「―――――――――――護衛もかねて昼食のお手伝いをと思いまして」


 そう言いながら奥の部屋から出てきたのは、佐方兄。エプロン付き。


「手伝い? 何でそんなことしてんだ?」


「理由は二つ、一つは旅館の料理を作っているのは高齢の女性一人ということ、もう一つは任務待機場所とさせてもらったことへの感謝・・・と言ったところでしょうか!」


 佐方兄はやけに元気だった。いや、いつもどおりの調子か。


 詳しく聞けば、どうやら受付の奥の部屋は調理場らしく、一人のおばあさんが作業をしているようだった。高齢の夫婦二人がこの旅館を切り盛りしているそうだが、経営破綻は時間の問題だったらしい。客の数も少なければ、受付のじいさんもあの調子だ。無理もない。

 それと、この二人はあの指揮官オッサンの親戚にあたる人たちらしく、見過ごすわけにはいかなかったらしい。


「ん、ってことはお前の妹と長刀もそこにいるんだな」


「いえ、我々二人だけしか手伝っていませんね」


「え? じゃあ、どこ行ったんだよ」


 佐方兄は首をかしげる。


「真由香に聞いてみるか・・・」


 さっき戻って行ったんだから部屋にいるだろ・・・。





 自室の方まで戻り、真由香たちの部屋の前まで着くと俺はノックもせずに勝手にふすまを開ける。

 軽い気持ちで部屋に入ると、布団の上で伏せるようで突っ伏すような感じで寝る真由香が一人。佐方妹と長刀はいないようだ。 そして、真由香は俺になぜか気づいてないようなので脅かしてやろうと静かに近づく。



「――――――――――ばかばかばか」



 まくらの上で何かを呟いていた。声は聞こえづらい。



「――――――――――にい君のばかえっちへんたい」



 えっと、どうすればいいんだろう・・・。まだ怒ってるよな・・・?



「でも――――――――――だい・・・しゅきいぃぃ」



 咄嗟に真由香は伏せた状態から仰向けになる。よく見ると胸にもう一つの枕を抱いていた。



「はぁ、にい君・・・すきだよぉ」



「・・・え」


 真由香が俺を発見する。眼を見開き、彼女の頬はだんだんと赤く染まっていく。


「あれ・・・にい、君?」


「よ、よう。聞きたいことがあってさ・・・」


 うん、俺は何も聞いてない。何も聞いてない。何も聞いてない。何も聞いてない。


「や・・・何で、あの、ちがくて、その・・・聞いちゃってた・・・よね・・・?」


「何も聞いてない。何も聞いてない。何も聞いてない。ああ、うん俺何も聞こえてなかったよ」


「何そのしゃべり方!? ていうかもう絶対聞こえちゃってるじゃないそれ!!」


 真由香は両手で顔を隠し、何とも言えない声を上げていた。

 そして、その声は急に止まる。


「そ、そうだよ! 勘違い!」


「ん・・・?」


「にい君、勝手に勘違いしないでよ。私が言ったのは、にい君が人間的に好きっていうか、性格的に好きってだけで、べ、べつに? にい君のことなんてそこらへんにいるおじさんと変わらないんだから!」


めてんのかけなしてんのかどっちなんだよ・・・」















 数分後、真由香自身も落ち着いてきたところで長刀たちの居場所を聞く。


「え? 二人って衣理さんと嵐ちゃん?」


「ああ、どこ行ったか知ってるかなと思ってさ」


「朝は二人とも寝てたはずなんだけど・・・どこ行ったんだろ」


 真由香もわかんないか・・・。そもそもこの旅館内にいるのかどうかすら怪しいもんだが。

 




 結局、旅館内を探したが見つからず昼食だの片付けだの武器の手入れなどをしているうちに夜になってしまった。夕食を作る手伝いに行くと佐方兄が言うのでついていくと旅館を切り盛りをしているもう一人のおばあさんが俺たち人数分の料理の材料を用意しているところだった。


「さあ、作りますよ!」


 佐方兄はスーツを脱ぎエプロンをつけ、Yシャツの袖をまくる。


「おばあちゃん、私も手伝うからね」


 真由香も俺たちが向かうのに気づいたようで、後ろにいた。


「いいのかい?・・・すまんねぇ」


 おばあさんはしゃがれた声で言う。

 横目で俺はそれを確認し、調理場を出てロビーの椅子に腰かける。


「・・・任せよう」


 一息つく。

 え? お前も手伝えよって? いや、まあなんていうの、二人の熱心ぶりに俺の出る幕はないなと思っただけであって、けっして面倒だとかやりたくないとかじゃないから安心してくれ。

 なるほど。謙虚で素晴らしい。などと自分で勝手に納得させていると玄関から長刀と佐方妹が入ってきた。


「あれ!? お前ら今の今までどこにいたんだよ」


「貴様に教えてやる義理はない」


 長刀はそう言うが、武器を装着しているところを見ると、特訓的なことでもしてたんだろうか。


「・・・私は見張り役みたいなものでついていっただけ」


 佐方妹はそう言うが、武器を持っているところを見ると、以下略。


「佐方はともかく、長刀は・・・」


「心配するな、朝には完治していた」


 長刀は完治したと言うだけあって、昨日の疲れはてていた様子とはまるで違っていた。


「・・・嘘だろ?」


「そう思うなら明日、俺と勝負しろ」


 しばらくの沈黙、一瞬、頭が真っ白になり、聞き間違いかと思いつつも我に返る。


「いやいやいやまてよ、今、勝負しろっつったんだよな? ・・・俺が、お前と戦うのか?」


「今までの屈辱をすべて貴様に叩きこんでやるから、覚悟しておくんだな」


 そう吐き捨て、長刀は自分たちの部屋の方へ消えていく。


「まじかよ・・・」


「じー・・・にい、私は朝とお昼ご飯を食べてない」


「・・・今、お前の兄と真由香が夕食作ってるから待ってろ」


「りょーかい」




 それにしてもどういうことだ・・・。重傷で歩くのもやっとだった長刀が一日でああも平然としていた。 まあ、それは明日の俺に考えさせるか・・・。

 若干、急な感じで話が進んでいるような・・・次話投稿を待たれよ

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