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切望37 本部指揮官

切望編ですかね・・・

 上へと揺れ動くエレベーターは俺と佐方妹を乗せ、やがては止まり、司令部のような広い部屋に再び足を踏み入れる。

 エレベーターのドアが開き、三神みかみが目の前に立っていた。


「あ、てめー!また来やがったな!」


「ッ別に来たくて来てるわけじゃねえ!」


「二人ともやめて」


 佐方妹は止めに入るが、俺たちには聞こえない。


「いいかよく聞きやがれ、まずてめーはここに入れるような器じゃねーんだよ、そこらへんをもうちょっと自覚しやがれ、この、口だけ偉人野郎」


「邪魔で無駄な雑音立てるような爆発魔法バカに言われたくないね、つか、お前のとりえそれだけじゃねえの?」


「なに・・・俺の武器の性能をあなどらないほうがいいんだがな」


「というと?」


「この武器はな、爆発による衝撃波だけじゃなく、剣にも変化可能なんだよ」


 佐方妹の情報通りだな・・・。


「あくまで、剣は副武装だがな。常に俺の片目に魔法円が回ってるだろ、こうして常に常備できてるってわけだ」


 なるほどな、俺の場合は常に剣の状態ではあるが防具に変化できる武器。戦うとなれば若干こっちが不利か・・・?


「・・・ぺらぺらと情報提供ありがとう」


「武器の性能が知れたところで、てめーの勝ち目はない」


「やってみなきゃ、わかんねえ」


「わかるんだよ」


「わかんねえんだよ」


「わかるっつってんのが聞こえねーのか!」


「絶っ対ぇ、わかんねえ!」


「聞き分けねーなてめーは、泣かさねえと理解しないか脳筋野郎!!!」


「お前の脳みそこそ筋肉以前に腐ってんだろ、この妄想頭!!!」


「「ああ゛!?」」


 そう、どっちもきれた。声を張り上げ、殴りかかろうとする俺たちはどんなに醜かった光景だったのだろう。それが未然に防がれたのは佐方妹ともう一人の人物よるものだった。

 俺は佐方妹に引っ張られ弾力ある胸に顔を押し付けられた。


「むがッ!?」


「にい、おちつく」


 一旦、落ち着ける・・・わけもなく息ができないことと理性が崩壊しそうなことは言うまでもない。






「て、てめー・・・じゃなくて、指揮官、離してください・・・!」


 指揮官? さっきまでいなかったんじゃ・・・今来たのか?


「じー・・・指揮官、ただいま戻りました」


 佐方妹は敬礼のためか、俺の頭から両手を離す。

 やっと息ができる・・・






 俺はここにきて、やっと日本本部ヴィジランティー本部指揮官の顔が見れるって訳だ。これだけでかい組織を動かしてるんだ、さぞかし立派な外見なんだろうな。




 俺はそっと振り向く。



「ご苦労様~、衣理ちゃんたちにはご褒美が必要だわ~」



 女口調・・・女指揮官か?



「あなたがラウスを倒してくれた男ね~、感謝してるわ~」





「はあ・・・あ・・・!?」





 俺は驚く。ただただその外見に。額から大きく逸れた長髪にどこぞの飲食店バーにいる人のような服装。





「ご褒美はアタシのハグでいかがかしら?それでいいわよね!!!」


 ハグされる。普通なら喜ばしい行為の一つなのに何一つ喜びを感じない。それも無理はない。説明するまでもなく今にわかる。


「――――――――――――いでででででででででででででで!!?」


 鍛えられたであろうその腕は、軽く俺の体の骨を砕くかもしれないほどの馬鹿力で締め上げる。


「あら、そんなに喜んじゃって」


「いやいや!!!喜んでねえ!!!んぎゃあああああ!!!?」


「あの・・・指揮官、それ以上はだめ。にいが死ぬ」


「サービスしすぎたかしら?」


 指揮官は俺を離す。




 そして、あまりの痛さに俺は禁句を叫ぶ。


「指揮官オカ〇かよ!!!」


「あ・・・にい、それは言っちゃダメ」


「え・・・」


 次の瞬間、俺は胸倉を掴まれ、強烈な殺気を感じた。


「おい誰が〇カマだ!次言ったらただじゃ済まんぞ小僧!!!」


 さっきの気持ち悪い裏声ではなく、ただただ渋いオッサンの声だった。


「す、スミマセンした・・・ネエさん」


 オネエ・・・そこから勝手にネエさんと頭の中で整理してしまった。死を覚悟した。


「・・・案外その呼び名いいわね、特別に許してあげないこともないわよ。それに・・・、聞き分けいい子だから気に入っちゃったわ~」


 違った。別の意味で今、死を覚悟した。









 なぜかカフェのような部屋に案内される。

 なんで本部にこんなところがあるんだ・・・。


「ささ、楽にしてちょうだ~い」


「・・・」


 この状況がきつい・・・。


「改めて、インディペンデント征伐ご苦労様。これは組織にとっても大きな進歩よ」


 お茶を出されたが飲む気にならない。つかなんで俺と指揮官の二人だけなんだよ~!

 殺される・・・いろんな意味で・・・。


「あ、自己紹介がまだだったわ、アタシはこの日本部ヴィジランティー本部指揮官ナリッサよ」


「・・・えと、俺は」


「大丈夫よ、あなたの情報は衣理ちゃんたちから聞いて知ってるわ。今までいろんな苦難があったみたいね」


 指揮官の声に慣れるのに時間がかかりそうである。早く帰りたい。


「それなのに、気づいてあげられなくて!本当にごめんなさい!」


「いや、別にそんな」


 オッサンに謝られても・・・


「これからはあなたの力になれるよう、本部も全力を尽くすわ!」


「あの、オッサンは・・・」


「ああ゛!?誰がオッサンだ、もう一度言って見ろや」


「し、指揮官はなぜ俺を・・・なんていうか、ここに呼んだんですか」


「もちろん謝辞を言うためでもあるんだけど、本部にとってもあなたの力は大分戦力になるのよ」 


 指揮官は真面目に話しているが、どうにも目を合わせづらい。でも話の内容的に組織への勧誘ってところか。


「もし、あなたさえよければアタシたちの組織に・・・ちゃんとそれなりの待遇もあるわよ!」


「例えば・・・?」


「悪魂間討伐数に応じて報酬を加算」


「おお!」


 家計の経済面でも苦しんでたところである。一人二人と増えたしね・・・

 だからといって、元は人間だった悪魂間を倒すとなると気が引ける。


「今まで黒井の仲間や襲いかかる悪魂間は・・・倒してきたけど・・・今思えば・・・」


「あなたの気持ちもわからなくはないわ、アタシもそんな時期があったもの。でも、これだけは頭に入れておいて! 例え、これから人間の悪魔を目の前にしても、姿に惑わされず、迷わず斬ってちょうだい」


「俺には・・・もう」


 俺のやってきたことは暴力であり、はっきり言ってただの殺しである。彼らとやってることは変わりない。だから剣を振るうたび、自分を恐れた。


「そんなこと言ってるといつか本当に死ぬわよ!」


「・・・!」


「人間に取りついた悪魔を祓うには、武器の力によってその悪魔を殺気以上に滅すしかないの。それが唯一の取りつかれた人間を救う方法・・・」


 みんな知っていた・・・。この組織の戦いは常に悲劇だと、惨劇だと・・・。それでも戦い続ける者たちの覚悟は俺以上に強く計り知れないもの。

 そして、その戦いの終焉はまだまだ先にある。弱音を吐こうが吐くまいが、犠牲者は増え続ける。

 あの二人もそうして戦い続け死んでいった。

 俺が二人の意思を受け継がなくてどうする・・・もうそう決めたんだ。


「そう・・・だったな・・・」


「ヴィジランティー組織の人間として、アタシたちに力を貸してくれるわね・・・」













「・・・ああ」





 こうして、俺は正式に組織の一人となった。

 因みに討伐数の報酬は政府や警察からの援助からきてるらしい。 

次話投稿を待たれよ

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