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追悼36 ライバル視

 広い司令部のような部屋、そこは黒いスーツ姿の人たちで群がえっていた。

 床に倒れた一人の青年は、しばらくしてからゆっくり立ち上がる。


「ちっ・・・まぁ油断してただけなんだがな」


 青年は整っていたスーツをわざと乱す。


「・・・効いてなさそうだな」


 俺は負傷した右手の痛みに耐え、平然を装う。


「当然だろーが、てめーごときが俺に勝てるわけねーし」


「・・・勝てないとでも?」


「無理だ。俺に挑むのは十年早いんだよ」


「じゃあ、お前は俺に挑むには二十年早ええってことになるな」


「ぁんだと! 馬鹿かてめーは。なぜそうなるんだ、まるっきりてめーと俺の力の差は歴然なんだよ」


「んなわけねえだろ、俺は素手で戦う人間じゃねえんだよ。今日はたまたま武器持ってき忘れてだな」


「言い訳にしか聞こえねー」


「そんな俺に殴られたじゃねえか」


「あのタイミングで殴るてめーがわりぃんだろーが、フェアじゃねーんだよ」


「おいおい、それを言うなら最初の不意打ちだってフェアじゃねえだろ。いきなり爆発させるとかどこの阿呆だよ」


「誰が阿呆だゴルァ!この馬鹿が!」


「馬鹿はねえだろ!クズ!」


「クズはてめーだろーがッ!」


「いいや、お前だね!」


「てめーだッ!!!」


「お前だッ!!!」


 お互いがお互いを睨みつける。どれだけ睨み合ったか分からない。そして息切れしているのはなぜだろう。


「あの、にいくん?」


「真由香、お前の気持ちが今、よーくわかった。こいつはムカつく野郎だ」


 まだ左腕の調子は大丈夫なようだし、せめてもう一発隙を見つけて殴ろうとしていた時だった。


「え・・・うん。でも私もう満足だよ?」


「もういいってことか?」


「うん。さっきにいくんの気持ちが聞けたから・・・」


 真由香は人差し指で頬をかき、照れくさそうに言う。

 俺、なんか言ったっけ・・・?


「なんにせよ、俺の方が強いことには変わらないんだがな」


「まだ言うかこの野郎、今の俺は絶賛不調中だっつってんだろ」


「さあ、どうだろうな」


「俺が完全回復したら、いっそのこと決着つけようか?」


「それでも勝てねーから」


「だろうな、俺が本気を出すまでもない」


「だとォ、それは俺の方だろーが。てめーが死ぬ意味で勝てねーと言ったんだ」


「俺が勝つからそう心配すんな、手加減はしてやるよ」


「ほんっと馬鹿だなてめーは、そういうのを負け惜しみと言うんだ」


「その言葉そのまま返すよ」


「俺は負けてねーだろーがッ」


「勝ってもねえのに勝手なこと言うんじゃねえッ」


「「ああ゛!?」」


 今まで黙っていた佐方妹が口を開く。


「・・・兄弟ゲンカ?」


「「 兄弟じゃねえッ!」」


 同時に同じ言葉を発し、お互いの眼は語っていた。マネすんなと。


三神みかみくんは落ち着く、にいはその腕なんとかしないと」


「ちっ」


「あ・・・ああ、そうだな・・・」


 その後、佐方妹からあのムカつく野郎のことを教えてもらった。あいつは三神みかみなんとかと言うらしい。下の名前は覚えなくてもいいだろう。

 爆発魔法?が使えることと俺と同じように常に剣で戦ってるらしい。それも変化型の。

 とりあえず、あの場から佐方妹の力もあり、三神を退くことができたのだが、結局、本部指揮官に会えずじまい。いや別に会わなくてもいいけど。

 佐方妹は俺の腕を処置するためにも治療室へ行くことになった。

 俺たちはエレベーターに乗って、佐方妹はボタンを押す。


「全治2週間ってとこ?」


「そんなかかるのか、その間に敵とか現れたら・・・」


「心配ない、組織が動く。あとここに住めば安心。組織の人間として」


「・・・」


 そういえば、この施設に入るまで考えたことなかったな。俺自身そもそも組織の人間ではなく、一般人だ。そんな俺が命がけの現状で今を生きている。

 忘れそうだ・・・、俺の戦ってる理由。


 エレベーターが止まり、ドアが開く。

 やはり広いのだが、本当に病院の治療室みたいな感じだ。病室としてもちゃんと機能してるらしい。


「何でもありかよ・・・」


「にい、こっち」


 俺は佐方妹について行く。

 佐方妹はどこからか救急箱のようなものを持ってきて、近くにあった椅子に座らせられる。それなりに包帯やら塗り薬やらと処置してくれた。庶民的ではあるがそれが一番良いだろうと思う。


「痛みがあるなら、機械で見るけど?」


 包帯で巻かれた腕を見て、軽く振り回したり、痛みがないか確かめてみる。


「いや、たぶん大丈夫だ。ありがとな」


「どういたしまして」


 そこから立ち上がり、周りを見渡してみる。ベットが並んでいるが、人がいる様子はない。

 すると、咄嗟とっさにベットの布団が動いたのが見えた。布団が勝手に動くわけないだろうし、誰か寝ているんだろう。でもなぜ隠れるようにしているのかが気になる。


 そっと近づいて待ってみる。


 布団も少しずつ下に動いてまわりの様子を確かめるように一人の人物が顔を出す。


 そして、目が合う


長刀なぎなた!」


「ひゃぁ!? み、みみ、見るなあぁぁぁぁぁああ!!!」


 長刀は一気に布団の中に姿を消す。


「元気そうだな、心配したんだぞ」


「ううううるさい!!!消えろ!!!帰れぇええ!!!」


 布団の中で必死に声を張り上げている。


「なんだよ、会えたのに・・・。顔ぐらい見せろって」


 俺は強引に布団をはぎ取る。


「あう、き、きき、貴様!!!返せ!」


 長刀の顔は真っ赤で若干涙も見える。


「く、屈辱だ・・・貴様なんかに」


 ついでに服装も病院の患者が着るような服で楽そうだった。


「おい、どこ行くんだよ」


 長刀はベットから降りて、逃げるように歩き始めた・・・のだが、転びそうになる。

 すかさず、俺はそれを防ぐ。片腕で支えられるほどの軽さで助かった。


「危なかったな」


「はわ、あわわわ」


 長刀はなぜか慌てふためいていた。顔の紅潮も増しているように思える。


「――――――さ」


「さ?」


「触るなぁああああああああああああッ!!!」


 そう叫びながら長刀は俺の腕をはねのけ階段の方へ駆け下りて行った。


「大丈夫なのかよ、あれ・・・」


「ちょっと、にいくん


「え?」


 真由香の声音は低い。


「さっき何気にセクハラしてなかった?」


「な!? 俺は助けたつもりで・・・」


「へー、長刀・・・ちゃんだっけ、あれでも女の子なんだけどなー」


 こいつは何が言いたいのだろう・・・。


「あ、わかった」


「えっ!?」


 真由香は俺が悟ったことに驚き、急に後退りする。


「な、何が分かったの・・・?」


「はっはっは、真由香さん、あなたもしかして・・・俺に――――――」


 静まり返った空間内。


















「“ちゃん”づけで呼んでほしいってことだな!!!」


「・・・」


「ぇ、違うのか・・・?」


 真由香はうつむき震え始める。

 これはマズイ・・・何か考えなければ・・・。


「あ、今度こそ分かった、セ・・・セクハラすればいいのか?」


「ちがぁぁあ―――――――――――――――ぅぅううううう!!!」


「えぇ!?」


「それじゃあ、ただの変態じゃない!!!」


「じゃあ、お前は俺に何してほしいんだよ・・・」


「そ、それは・・・言えない」


「言えないって・・・何に怒ってるのか分かんねえよ」


「~~~~~~~にいくんの馬鹿あああッ!!」


 そう言って真由香も階段を駆け下りて行ってしまった。


「分からん・・・」


「じー・・・指揮官戻ってるかも、また上行く?」


「・・・そうするよ」


 そうしてまたエレベーターに乗るのだった。





次話投稿を待たれよ

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