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追悼34 変わった日常

 ふと目が覚める。いつもの朝、にしては眠っている時間がやけに長く、久しぶりによく寝た感じがあった。

 誰もいない家。静かな空気に意識を持って行かれそうになる。


「・・・っつ」


 服をめくり、腹には包帯が巻かれている。だが、歩けないほどではない。

 朝飯でも作ろうかと思ったが、そんな気力はなく玄関へと向かい、靴を履く。

 適当に飯でも買ってくるか。

 ドアノブに手をかけた時だった――――――――


「にい君、どこ行くの・・・!」


「あ・・・忘れてた」


 相澤真由香。思えばこいつはなぜ俺の家にいるのだろうと思う。


「どこってそりゃあ・・・コンビニ?」

 

「なぜ疑問形・・・あと、忘れてたって何」


 あっれえぇ、なんか真由香さんの様子がいつもの違うような・・・。

 真由香が俺に近寄ってくる。


 これは、怒ってらっしゃる?


「にい君!!!」


「いっ!?」


 いきなり壁に押し付けられる。胸倉を掴まれ、真由香の瞳は睨みつけるように俺を見る。


「す、すまん! そういやお前居たんだもんな、ごめ――――――――」


 とりあえず謝ろうとした。


「心配したのに!! なにその態度!!」


「え・・・」


 真由香の瞳に涙が溜まっていく。


「ずっと、ずっと、ずっと待ってて、帰ってきたと思ったら! そのまま倒れて! ずっとそばにいたのに!」


「お、おい・・・」


 俺の胸倉を掴んだまま、真由香は顔を下げる。


「心配したのに! このまま起きなかったらどうしようって! 思ってたのに!」


 ラウスを倒し、長刀をあの兄妹に治療してもらうように頼んだ。

 その後は、ひたすら自分の家を目指した。途中転んだり、そのまま寝そうになったりしたのだが、数時間は歩いただろうか、家まで着くと真由香がいて――――――――そこからの記憶がない。


「ごめん」


「っっっ!! ごめんじゃないでしょ!!」


「ありがとう、心配してくれて」


「そういうことじゃなくて・・・、そういうことじゃ・・・」


 真由香はそこから何も言わず、俺たちはそのまま座り込んだ。しばらくその体勢が何分か続いた。

 せめて、泣き止むまでと。


「ただいま」


「・・・・・・おかえり」









 この包帯や傷の手当をしたのは真由香だろう。重傷ではあったが、そこは気合いで乗りきる。

 近くのスーパーに入り、二人分の弁当を調達する。コンビニは隣町まで行かないとなかった。

 家に帰り、黙々と買ってきた弁当を食べる。俺たちが言葉を交わすことはなかった。

 食い終わった後も空気は静かで重い。


 黒服帽子黒井にガンズ、ラウス・・・インディペンデントは6人いると井手口さんから聞いたことがある。少なくともあと3人の名前を知らないわけだが。

 ラウスはあの後どうなったんだ? あとおじさんもどこ行ったんだ・・・。

 

 すると急に玄関から音がした。ドアの前にいるようだが、入ってくる様子はない。

 おじさんか・・・?

 俺は恐る恐るドアに近づく。


 瞬間――――――――――――――――


「ふぐ!!?」


 ドアが飛んできた。


「にい君!? 大丈夫!?」


「大丈夫・・・じゃねえよ。なに、俺の家ドアを壊すの流行ってんの?」


 所々ヒリヒリとした痛みをこらえながら、開放的になってしまった玄関を見てみると一人の女性が立っていた。


「じー・・・」


「わあ・・・この人、む、胸、おっきい・・・」


 真由香が別のところに魅了されているが、俺はどうやってこのドアを飛ばしてきたのか気になる。

 いや、それより――――――――


「よっ」


 スーツ姿の女が挨拶する。


「よっ じゃねえよ。兄の方はどうした、てめえらには言いたいことがたくさんあってだなあ!」


「言いたいこと?」


 可愛らしく首をかしげたが、俺には効かないもんね。

 そう、こいつらこそあの兄妹だ。


「ああ、なぜ普通に家に入ってこない」


「自動ドアが反応しなくて」


 自動じゃなかったらドア吹っ飛ばすってどうなんだ・・・。


「これ自動じゃねえよ。いや、お前らのが自動だったにしても、ほとんどの家セルフだわ」


「私の家は自動じゃない」


 じゃあ、なぜ壊した・・・。


「じー・・・ほかに質問は?」


「お前らのことは何て呼べばいいんだ、今さらなんだけどさ」


「んー、じゃあ兄がジムで私がキャロラインで」


 なぜかキャロライン?さんは勝ち誇った顔をしていた。無駄に揺れる胸が気になる。

 つかそれ、本当にいる兄妹じゃねえの・・・。


「はいはい!質問!キャロラインさんはどうしたらそんなにスタイル良くなりますか! と、特に胸とか」


 真由香が乱暴に俺を押しのける。真由香さん? 俺こう見えても怪我人なんですけど。あと何でそんなに元気いいんだよ・・・。


「んー、揉むとか?」


「だ、だそうだよ、にい君」


「なぜ俺に振る・・・」


「って噂ではそう聞くけどね。私は知らないうちに」


「は、はあ・・・じゃ、じゃあじゃあ、ちなみに今おいくつですか!」


「んー、確か21年と何か月」


「ええー、21歳でそれって・・・私はいったい・・・。あとあと!」


 真由香たちはその後もいろいろ質疑応答していたが、俺はそれを尻目に破壊されたドアを見ていた。直せるかどうかと。


「すみません、また妹が迷惑をかけているみたいで」


「「・・・」」


 しばらくの沈黙――――――――


「「ジム!!」」


「・・・違います」








 とりあえず兄妹を家にいれ、話し合いの場を設ける。


「そういえば、まだ名乗ってませんでしたね。私たちは佐方さかたと言います。佐方さかた久信ひさのぶ。妹は衣理えり


「あ・・・私は相澤真由香です。よろしくです」


「相澤さんには感謝しなければなりませんね。残酷な現状に巻き込んでしまったことは申し訳なかったですが・・・」


 そう、以前この佐方兄妹と俺は任務途中、真由香たちを巻き込んでしまったことがあった。悪魂間が関わっていたとはいえ、守るべき人たちを危険にさらしたのだから悔いているのだろう。現に犠牲者も出てしまった。


「い、いえ、あのことはまだ怖いけど、今は、その、にい君あっての私ですから・・・言っちゃったあー! やあー!」


 背中を何回も叩かれる。


「痛い、痛い、痛いからやめろ」


「仲がいいんですね」


 佐方・兄が微笑ましそうに言う。


「じー・・・夫婦?」


 佐方・妹が突然口を開いた。


「「っっっ!!?」」


 俺と真由香は動揺する。


「ま、まあ、私はそう言われるのは構わないけど、そういうのキョーミないし・・・。ねーにい君?」


 真由香は横目で俺を見てくる。

 やめろ、こっち見んな。つか振るな。

 俺は佐方兄妹に聞きたいことを思い出す。


「それより、長刀なぎなたの方は?」


「にい君!? 何か反応くれたっていいじゃない!」


 なにやら横から槍のように文句を言ってる真由香がいるが置いておこう。


「重傷ではありますが命には別状ないそうですよ。我々の特別施設で療養中です」


「なら良かった」


「私だってにい君のこと心配したのに私よりあの子のこと気にするなんてどういうこと・・・!」


 真由香の瞳は何かを告げていた。


「あいつラウスの攻撃、まともに喰らってさ。ボロボロだったからちょっとな」


「うっ・・・それなら私だって心配だけど!」


 唸って納得いかないご様子だった。


「じー・・・頭にキスしてた」


「えっ!!?」


 真由香今日一番の声のトーンが高かった気がする。


「ぎく」


 佐方・妹に見られてたとは・・・。いや、それより真由香さんが俺に対する殺意的な何かを感じるのは気のせいだろうか・・・。


「すみません、様子を窺ってたらといいますか・・・まさかの行動でしたけども」


「そ、そういや、お前らなぜ途中から助けに入らなかったんだ?」


「とてもそのような状況ではなかったんです。それもありますし、何よりあの空気ではあなたにお任せしたほうがと思いましたので」 


「いやいや、死にかけたぞ・・・いいのかそれで」


 真由香が俺の背中に乗ってきた。


「に・い・君! 衣理えりさんたちが言ってることって本当? もしそうだとしたらお仕置きしないとかも」


 若干、首に腕を回されていることと胸が当たっていることは気にしないことにする。


「ラ、ラウスはどうなったんだ?」


「ラウスについては組織にある対悪魂間強制収容施設に隔離しています」


「なるほど」


 佐方・兄が音に反応し、情報電子機器のようなものを取り出す。


「すみません、私たちはそろそろ行かないと」


「ああ、いろいろありがとな」


「いえ・・・あ、そうそう、我々の本部指揮官が今回のラウス征伐に関わっているあなたに会いたいと連絡を受けたのですが」


「また今度にしてくれって言っといてくれ、少し体を休めたいしな」


 本当は面倒なだけである。


「分かりました、では失礼します」


「じゃあね、にい」


 にいって俺が兄ちゃんみたいになってんだろ。俺の名前、にい って決定事項なの? 

 佐方兄妹はそう言って出て行ってしまったわけだが・・・マズイ。

 何がマズイって? 


「邪魔者は消えた・・・。にい君、じ~っくりお話ししないとだね」


「いやいや、話すことなんて何も――――――――」


 真由香が俺に武器を向ける。


「そう? なら私のこのもやもやした感じは何かな」


「はは・・・真由香さんそんな物騒な物を、どうするっていうんだい?」






「こうするに決まってるじゃない!!!」


 赤黒い炎、間違いなく殺気を帯びているところを見ると――――――――


「もとから話し合う気なかった!?」











 名前なき青年は語る。

 その日、その武器の性能は前代未聞級の威力を発揮したという。

 次話投稿を待たれよ

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