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追悼32 仇敵

 建物の階段をいち早く駆け下り、放置された自転車を見つけ、それに乗る。

 爆発音を頼りに自転車のペダルに足をかけ、向かおうとした時、


「にい君、待って!」


 建物内から真由香の声が聞こえた。


「武器を忘れるな!」


 長刀が叫ぶ。

 おっと、忘れてた・・・。

 すぐさま二人のもとへ行き、真由香と長刀が剣を持っていた。

 重そうな剣を腕防具に変える。


「持ってくるの大変だったんだよ?」


「わりぃ、ありがとな」


「どうやってあっちまで行くの? あのおじさんが来るとは思えないし、走っても―――――!!!?」


 俺は真由香の頭に手を置き、撫でる。真由香はびっくりしていたようだった。


「俺は先に行ってる。お前らはこの町の人たちを多くでも避難させろ」


「ちょっと待ってよ・・・んっていうか、撫でるなっ!」


 真由香をこうしてやれるのも最後かもしれないと悟った。確かに最終目標はガンズだ。死ぬわけにはいかない。しかし、井手口さんや満月でもかなわなかった相手だ。油断できない。


「前に言ったよね。協力しないと勝てないの。君の力になりたいって言ったのにもう忘れたの?」


「忘れてない。大丈夫だ、俺が帰ってきたら存分にお前には甘えさせてもらうから覚悟しとけ」


 俺は自転車に再び乗り、ペダルに足をかける。


「もう! ・・・バカは死んじゃえ」


「さてと、あっちに行くには―――――――」


「おい」


 長刀が声をかけてくる。


「さっきの爆発でこの町の人間や警察が動き始めてる。なるべく人気のない場所で―――――――」


「ああ、わかってる」


「人気のない場所で死んでくれ、貴様の死体の置き場所は考えものだからな」


「前言撤回だ。死んでたまるか。お前にはお仕置きが必要なのがよく分かった、待ってろよ」


 そうして、俺は勢いよく自転車をこぐ。

 爆発はまだ続いている。

 ラウス――――――――――――――第2ラウンドといこうか。








 数分は経っただろうか。

 周りは大勢の人たちが叫び、うごめいている。何とか人の合間を縫って自転車を走らせる。

 この爆発音だ。日はとっくに落ちているのに騒がしい。車も仕事帰りの車ではなさそうなほどの量である。これほどにまで、大きな事件はあっただろうか。


「人間と悪魂間の開戦ってか・・・」


 必死に自転車のスピードを上げる。


 しばらく漕いでいると後ろから来た車が俺の目の前を走り、斜めに車を止めた。俺はブレーキをかけ、道を阻まれる。


「くっ!?こんな時に・・・」


 車から人が降りてきた。それも二人―――――――


「敵か・・・?」


 俺は自転車を降り、右手の防具に手をかける。

 スーツ姿の男と女。


「これから、敵のいる地点に向かうつもりでしょう? この車に乗ってください。我々も行くところだったんです」


 男が話しかけてきた。どっかで見たことあるぞ・・・


「じー・・・この子、もしかして」


 この女も見たことある。スーツの上からでもわかるその胸の大きさはその子の頭ぐらいでハンパない。

 って俺は何を考えてるんだ・・・。


「お前ら・・・確か兄妹だったっけか」


「やっぱりあなたでしたか」


「前よりカッコよくなってる」


 そう、俺がこの組織を知り始めて間もない頃。剣の特訓がてら組織の任務に参加したことがあった。真由香を助けたのもその時だ。そこで一緒に戦ったのがこの人たちというわけである。


「乗せてってくれるのか・・・」


「さあ、急ぎましょう」









 絶えない銃声――――――――――――――――――――――――――――


「許可はもう下りてる!! 休まず撃てえええ!!!」


「了解!!!」


 赤黒い銃弾が飛び交い、標的に向かって光の線を次々とのばしていく。

 まわりの町の形はもうほぼ壊滅状態で、赤く染まっていた。夕方でもないのに明るいほどに。


「リーダー!敵の詳細を!!!」


「奴はラウスといって!インディペンデントの一人だ!!警戒しろと皆に伝えろ!これから来る増援にもだ!!」


「了解!!!」


「奴め・・・なぜこのタイミングで」


 無線機から応答要請――――――――――――――


「応答願います!!!敵は我々の射撃を受け、なお抵抗しています!!増援を!!!?なぜ貴様がこんなところに!っぐあぁぁああ!!!―――――――――――――――――――――ザザ―――――――ザ―――――――」


「どうした!!応答しろ!!何があった!!」


「くそっ!別働隊はまだ到着しないのか!」


「彼らが到着する前に我々が時間を稼がねば・・・」


「よし、そろそろ動き出そう!」


「おい!待て・・・!?ふぐぅわ!!」


 一際赤黒い炎が数人を飲み込む。その炎が通った跡、人の形は跡形もなく消え失せ、地面は黒く焦げていた。


「おいおい、あんな役にも立たねぇもんで、俺に楯突けると思ってんのか?ああ?」


「ラウス・・・!?」


「華々しく消えろ」


 相手に迷いなく、銃口が向けられる。







 赤く染まった壊滅状態の町。倒れている人の数は計り知れない。


「着きましたよ!ここにラウスという男がいるはずですが」


「さらに増えてるじゃねえか、あの野郎・・・」


「じー・・・これは今まで以上にひどい」




 咄嗟に何かを感じ取った。大きくて凶悪な力。

 ・・・こっちに向かってくる!?


「お前ら、伏せろ!!!」


 俺は二人を両手で力強く押す。二人は勢い余って倒れた。

 そして、俺に目掛けて放たれたであろう赤黒い炎が向かってくる――――――――――――――


ドゴォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォオオオオオ!!!!!



 噴煙のように激しく、炎は俺を貫通していった。


「っふっぐはぁ、はぁ、はぁ―――――――」


 防具変化を体全身に集中させてたはずなのに、受けた損傷は大きい。

 内臓でも潰れたのか、口や鼻から血が出ていた。

 それを手で拭い、放たれた方向を睨む。


「てめぇはチリになったんじゃねぇのか?」


生憎あいにく、寿命を延ばしてくれた奴がいてな・・・」


 ラウスは、いつになく眉間にしわを寄せ、俺よりも睨みつけてくる。


「確実にてめぇは仕留めた。あの状況で逃げ切れるわけがねぇ」


「・・・」


 確かに俺は逆上した時、冷静すら失い、ラウスの炎を背中から喰らった。

 俺にはあの一瞬、攻撃がくること自体は認識していたため、防具変化することができたのだろう。とはいえ、そのまま気を失ったみたいだが。

 あそこから黒井が来て、あの建物の屋上に・・・ってところだと思う。


 その時、ラウスがいきなり突進してきた。


「答える気がねぇなら、一生死んでろ」


 油断した!!

 すかさず、右手の防具に集中させる。


「遅せぇ」


 ガキィィィィィィィィィィ――――――――――!!!!!!


 ラウスの攻撃は止められる。

 左右からの剣先によって――――――――――――――


「残念でしたね」


「遅いのはそっち」


 兄妹がラウスの体ごと剣で抑えていた。


 俺も防具から剣に変え、ラウス目掛けて、左腕を左肩の後ろに、右手を左肩の前に、剣を構え、突きの姿勢を取る。


「おいおい、小賢しいぞ、てめぇら」


 ラウスがそう言い放った刹那、体を回転させ、無理やり二人を払いのける。


「あそこから払いのけるとは・・・!」


「つ、強い・・・!」


 余裕そうにラウスは俺の方へ向く。そのときすでに、俺は速攻をかけていた。


「ぐっ!?」


 そして俺の突きはことごとく止められる。ラウスの素手によって―――――――


「つまらねぇ」


 俺に銃口が向けられる。

 

「はっ、止めると分かってたさ」


「ああ?」


 俺は剣から手を離す。そしてラウスの顔目掛けて右手こぶしを力強く握りしめた。

 体の底から足全体に力を込め、地を蹴る。

 右手ごと吹っ飛ばす勢いで―――――――――――――――――――――


ガッ―――――――――――――――――――――――――――――!!!!!!!


「ぶはッ―――――――」


 ラウスは顔ごと殴り飛ばされる。


「お前は俺の剣を握った時点で負けだ。俺の手から離れたこいつは殺気の力を失って重くなる。あとお前自身、銃を構えたのはまずかったな。片手の重量を考えれば、もう片方は防御どころじゃなくなる」


 しばらくの沈黙・・・俺は乱れた呼吸を整える。


 ラウスはゆっくり立ち上がる。その様子からして奴から感じる雰囲気オーラは凄まじい。





「ガキガァッ――――――――――――――ブッッッ殺スッッッ!!!!!!!!!!!!」


「くっ」


 やっぱり短気か、怖ええ野郎だ・・・。

 俺は剣を持ち直す。

 正直言って、体中ボロボロだった。


 それでも、俺は思い出す。井手口と満月のことを。











「怒ってんのは―――――――てめえだけじゃねえぞ!!!絶ってぇ許さねえぇ!!!!!」


 話に出てきた兄妹については追跡17任務だったかな出てますので・・;

次話投稿を待たれよ

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