表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
32/45

追憶29 残忍

 今、俺の目の前にいるこいつは長刀なぎなたあらし・・・。見た目は普通の子供で、髪もボサッとはしているものの一応、女の子だというのだから驚く。


「何だよ・・・」


 長刀は俺の視線に気づいて低い声で言う。口調も男の子だしなあ・・・別にいいけども。


「長刀はさ、何でこんな仕事・・・というか、組織として戦うようになったんだ?」


 俺が知る限り、常にヴィジランティーの任務内容は死と隣りあわせだ。言い過ぎだとしても、現に死者が出ている。なぜ、こんな地獄のような苛酷な仕事をしているのかと思った。


「・・・」


 長刀は一瞬、表情を歪めたかと思うと、俯いて黙り込んでしまった。

 聞いちゃまずかったか・・・。


「悪い、質問を変える。お前のその・・・さっきの爪みたいな武器は何なんだ? 悪魂間と同じ力のようなものを感じたが・・・」


「・・・爪長ウンギア・ルンガ


「いや、それだけではなくて特性とかをだな・・・」


「鉤爪で俺はいつも戦ってる。こう言えば理解力のない貴様でもわかるだろ」


 鉤爪か・・・。あの時も手から爪が伸び、武器として戦っていた。今までの敵の武器は大抵、剣か銃だった。それも悪魂間の力を応用した強化武器。

 彼女の素早さと手の器用さによって、数々の戦線を爪という武器でくぐり抜けてきたわけだ。


「まあ・・・いいか」




 外も暗くなりはじめている。夕飯はどうしようかと冷蔵庫の前で悩んでいると、ふと、一つのことに気がついた。


「長刀・・・お前、宿泊先っていうか、これからの泊まる場所ってあるのか・・・?」


「俺も不服だが、しばらくは貴様の家で過ごすことになる」


 なんだと・・・それはそれでまずい気がする。


「一応女の子なんだし、それなりにプライバシー的なのを配慮しなければならないというか・・・」


「心配するな。もし貴様が淫獣な行為をした場合、俺の爪長ウンギア・ルンガで始末する」


 こええ・・・この展開どっかでもあったような気がするが・・・。


「始末されたら困るんだが・・・」


「では、死んでもらうか」


 長刀は例の鉤爪を俺に向け、細く、冷たい眼差しを送る。


「大して変わらねえよそれ・・・。始末よりひどい気がするわ」


「大丈夫だ。痛みは一瞬だけだ。我慢して逝け」


「いや、だから殺すなって・・・」


 こいつだけは、後で絶対泣かしてやる・・・。

 俺はそう決めて冷蔵庫を開けるのだった。




 夕食はレトルト的なおかずを9割占めて、味噌汁だけは、豆腐だのワカメだの入れてやった。

 ・・・こいつらのためにも本格的に料理覚えないとだめか・・・。

 ご飯を盛っている最中で真由香も起きてきた。

 黙々とご飯を食べる長刀。寝起きのせいか箸の進みが遅い真由香。こうして誰かとまた一緒に食べるなんて久しぶりだった。


「にい君? どうかしたの?」


「え? い、いや、なんでも・・・」


 おっと・・・感動に浸ってる場合じゃないな。

 そうして、俺も食い始め、しばらくした時だった。

 携帯のコール音のようなものが聞こえた。音の方に目を向けると、長刀が携帯のようなものを手にして、画面に映る何かを見ていた。

 そして、携帯の形が普通のとは少し違っていた。辻おじさんの持っていた携帯にそっくりで、たぶんではあるが、組織専用の端末なんだと思う。


「・・・ちょっと行ってくる」


「何かあったのか?」


 俺は長刀の腕を掴み、玄関に向かうの止める。


「あのデパートの近くで敵の襲撃だ」


 デパートというと隣町のことを言ってるんだよな・・・


「敵?」


「大量殺戮だ。それもインディペンデントが関わってる」


「なんだよ、それ・・・」


 大量、殺戮? インディペンデントが関わっている? 人が大勢、殺されたってことか? 一般人が巻き込まれることなんて普通はないと思ってた。少なくとも悪魂間の存在が露わになることは、ないはずだ。でなければ今頃、人間と悪魂間の殺し合いになっている。ヴィジランティーも軍隊も関係ない。小さな子供も女性も戦わなければならない世界になる・・・。ヴィジランティーあってこその平和だ。例えそれが、気づかれることのない犠牲があったとしても。

 誰が何の因果があってそんなことを・・・黒井か? それとも他のインディペンデントの誰か・・・何にしても!


「俺も行く!」


「私も!」


 真由香は武器を持っていた。


「真由香はここにいたほうがいい。相手がインディペンデントだっていうんなら、この前みたいにいかないかもしれない」


「それでも・・・行く。もう何もできないのは嫌だから」


「そうか・・・」


「行くんならさっさとしやがれってんだ!」





 月が出ていた。夜道は明るい。俺たちは隣町まで走って行った。俺の武器・異一型剣についても、なんとか左腕の防具として変化させることができた。この中じゃ真由香の武器・十字口 Gガンが一番重いんじゃ・・・

 そんな中、途中、辻おじさんが車で追いかけてきた。組織専用の端末で事件のことを確認したんだろう。俺たちは車に乗り、目的の場所に向かった。てか、レンタカーか?

 隣町のデパート近くに車が止められ、そして―――――

 俺は目の前に広がる惨劇に目を疑った。


 さっきまでの賑やかな町の形は一切残されていなかった。

 まわりの建物や地面は崩れ、瓦礫のようになっており、炎が燃え上がっているところもある。

 見渡せば、たくさんの人が倒れていた。

 恐ろしく、静かで夜なのに月の明かりのせいか、赤い血が飛び散っているのがわかる。人一人の流す血の量をはるかに超え、何人もの人が犠牲になった証明として、どこを見ても血だらけだった。

 赤い血でどろどろになった死体。えぐられ、引き裂かれ、呪いのようにも見える血痕がそこらじゅうに広がっていた。


「にい君・・・さっきまで、私たちもここにいたんだよね・・・。ここにいた人たちって、皆―――」


 真由香の声は震え、俺も足が震えていた。


「殺された・・・!」


 ―――――タタ――タタ――タタタタタタタタ―――タタタタタタタタン―――――


 銃声のようなものが聞こえる。まだ、ここに・・・インディペンデントがいるってことか・・・!


「既に、組織は動いているようだな・・・」


 長刀はそう言って銃声のする方へ駆けて行った。


「あ、おい! 真由香!ここにいてもしょうがねえ!長刀について行くぞ!」


「にい君!!頭を伏せて!」


 そう言うと真由香は俺に武器<十字口 Gガン>を向けて、赤い閃光を放った。


 ドゴォォォオオオオオオオオオオオ!!!

 

 何かにヒットする音。


「ぅっく!?」


「クギャァァ!?」


 俺とは別にもう一つの荒声が、閃光とともにうち放たれる。事前に言われたため俺は避けることができたが。

 黒く燃え上がるその屍を確認して、真由香は止めていた息を吐く。


「―――――はぁ」


「悪魂間か・・・? 狙われてたのか俺・・・。ともあれ助かった。ありがとな、真由香」


「うん、早くあの子追いかけないと!」


「ああ、そうだな」


 俺たちは長刀の行った方向である銃声のする方へ走る。途中、数体の悪魂間に襲われたが、俺の剣、だけではなく、真由香の銃と共に応戦し、次々と敵を蹴散らしていった。


「真由香! 大丈夫か! 怪我とかは!?」


「今のところは大丈夫!」


「すげえな! 悪魂間とまともに戦えるなんて・・・。怖くないのか?」


「うん・・・何かこの武器が体を動かしているみたいで・・・。よく分からないけど、私に似たような心の感覚があるというか」


 案外、真由香には戦闘センスの素質があるのかもしれない。まだ無駄な動きがあるとはいえ、悪魂間と戦えるほどの心の強さが感じられた。


「にい君、どいて!」


「え? お、おお・・・」


 この場での集中力は彼女が上か・・・

 真由香の武器から放たれた赤い光は俺の横を通り抜け、敵に向かって撃たれたであろう閃光が直撃する。


「・・・やはり、このザマか。ヴィジランティーが聞いて呆れるな」


 直撃した方から嘲笑うかのような声が耳に入る。

 そして、舞い上がった煙から一人の男が出てくる。

 黒いコートの下に白いワイシャツ、黒ズボンを着こなし、髪もさっぱりとした短めで、普通の人間と変わらない。様子からして、真由香の攻撃が効いていない・・・?


「確かに・・・当たったはずなのに」


 真由香が後退りする。俺はその男の前に出て、剣を構える。

 そして、他の悪魂間とはまた違う感覚に襲われる。

 その男に隙がない。無暗に突っ込めば、危ない気がした。


「お前が・・・何の関係も罪もねえ人たちを・・・殺したのか?」


「ああ?」


 その男の表情は嘲笑から形相を変え、睨みつけるようにして俺を見る。

 悪魂間に対して、ここまで恐怖を感じたのは黒井以来だと思う。

 てか、長刀はどこ行った。とっくにこいつと対面して戦っているんじゃないのかよ・・・


「組織の人間でもない一般人が俺に盾突けるのか?」


「俺の目的はガンズってやつなんだけどな・・・。成り行きでお前らの存在を知っちまったのさ」


「ガンズだと? ・・・ぶっはっはっはっは! まさかとは思うが、やつと戦うつもりなのか?」


「捕らわれている少女を助けるためにな・・・」


 男はしばらく、俺を見て大笑いしていたが、笑みを浮かべながら再び俺を睨む。


「この前の戦いといい、さっきのガキといい、どいつもこいつもカスばかりだ」


「ガキ? 長刀のことじゃないだろうな・・・」


 嫌な予感がする。俺は真由香に視線を送り、長刀を探すように示唆する。


「そして、てめえは口だけのつまらんカスだ。消してやる」


「お前の奪った命の代償はでかいぞ・・・」


 俺は剣を構え、男は銃のようなものを両手に持つ。おそろく武器なんだろう。

 お互いが殺気ともいえる赤黒い炎を剣、銃とまとわせ、大きくなっていく。






 次話投稿を待たれよ

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ