追憶27 デート?と男の子?
黒井との一戦にひとまず休止符を打ち、自宅に帰ることができた俺。多少は疲れていたが、それは病院で回復できたらしい。ついでに言えば、記憶の手がかりとして昨日の出来事は、行動的に無駄足だったのかもしれない。おじさんと黒井の過去に触れることはできたかもしれないが、それはともかく、
この剣の恐ろしさが今になってはっきりし始めた。剣から感じた力は感情による支配だ。あの時、俺はとにかく必死だった気がする。自分でもよく分からないんだが、気づいたら爆発してたというか・・・あんまり気分は良くない。防具にしている自分自身ですら恐ろしい。
「あの、にい君。」
後ろから真由香に声をかけられる。俺の名前はないはずだが、慣れてきてしまった。剣から目を離す。
「あれ?帰ったんじゃなかった・・・って・・・なんだその荷物。」
ドサッと無造作に置かれた旅行鞄のようなもの。真由香の私物だろうけど。
「あのおじさんに荷物まとめるまで待っててもらったの。で、また来ちゃった。」
「いやいや、 また来ちゃった じゃねえよ。」
なぜか病院からの帰宅だったのだが、おじさんから聞けば、とりあえず、念のために病院で見てもらったほうがいいと考えたようだ。幸い、これといった異常も怪我もなかった。そんなことだろうとは思っていたけど。
それに碌に戦った覚えないしな・・・。
「それで・・・急いで来ちゃったから、その・・・まだ・・・」
真由香の様子が妙に落ち着きがない。
「お前、親とか大丈夫なのか?」
俺は、懸念していることを問いかける。
「・・・親とは疎遠中、ていうか・・・そんな感じだから、大丈夫なんだけど・・・」
「そうなのか・・・あ、わりぃ・・・」
察して、謝罪する。
「いいの。それよりなんだけど・・・」
「ああ、なんだ?」
「シャワー・・・貸してもらっていい?」
さっきからそれが言いたかったらしい。
「あ、ああ、お好きなように・・・」
「ありがと・・・あ!のぞかないでよ?」
念押しされて、はいはい、と俺は即答する。真由香は荷物を持っていき、浴室へと向かう。タオルだのシャンプーだの着替えなどは自分で用意してきただろうから些細なことは気にしなかった。
俺は剣に視線を戻した。
ふと、ドライヤーの音が聞こえる。漫然としていたようで、瞬きを1、2回する。
「にい君、これからどうするの?」
俺の隣に座った真由香から、一瞬シャンプーの香りがふわりとした。
「俺もどうしたらいいのか、わからん。」
真由香は俺に体を寄せてくる。
「じゃあさ、買い物付き合ってくれないかな・・・。」
「買い物って、金銭的なの期待されても困るぞ。」
急に肩をつかまれ、揺さぶられる。
「そういう身も蓋もないこと言ってないで行くの?行かないの?どっちぃ~~~~」
「わ、わかった、行くから、行きますから、揺さぶんのやめろ~~」
首、折れる折れる。骨折したらどうすんの。これぐらいで折れたら骨粗しょう症か・・・。あれ、怖いし、可哀想だよな。何より不便だろうさ・・・。
ボーダーシャツにベージュのキュロットスカート、黒タイツにブーツといった着こなしで俺の隣を歩く真由香。金銭的なことを気にしておいて一応、財布は持ってきた。それはいいのだが、こんな悠長な事をやってていいのかと思う。そして、武器を置いてきた。なぜか防具にできなかったのである。疲労がまだ体に残っていると踏んでいるが・・・。
隣町のデパートに着くや否や、手を引っ張られ、服やらゲームコーナーやらと連れ回された。服についても女の子だからだろうか、自分に合うのかどうか、いろいろ見比べていた。試着するたびに俺に見せ、俺は適当な感想を述べていた。面倒な顔をしていたのか途中、軽く怒られた気がする。結局、何着か買ってたけど・・・。
ゲームコーナーと言えば、うるさいというイメージしかなく、それは的中し、周囲からいろいろな音が入り混じって騒音と言ってもおかしくない。いるだけで疲れてくる。慣れだなこれは・・・。いや、慣れとかあるのかこれ・・・。もし、いたら尊敬するかもしれない。
そして、やはり、ここは必定というのだろうか、見事に俺の財布から紙幣が飛んでいった。メダルゲームにクレーンゲーム、あとハ〇クラ?ジャ〇クラ?なんて言うのあれ・・・プリクラ?というのをやったりと、両替機に何度足を運んだことか・・・。
デパートの中には、広場があり、休憩や食事をとるようなスペースがあった。テーブル、椅子と用意され、俺たちは、適当な場所を見つけ、腰を掛ける。
「ん~楽しいぃぃ~~~」
「とてつもなく疲れた・・・。」
「喉渇いちゃった・・・ね?にい君。」
真由香の笑顔の裏には、飲み物買って来いと示唆されていた。
「俺は別に・・・」
「早く買ってくるーほらほらー」
仕方なく、応じることにした。甘いな、俺・・・。
「・・・買ってくればいいんだろ?何がいいんだ?」
「にい君と同じでいいよ。」
「水か・・・」
「なんでそうなるの!やっぱりミルクティーとかにして!」
やむを得ず、デパート内にあるスーパーに入り、飲み物のコーナーを探す。
「おい貴様」
後ろから声が聞こえた。どうやら俺に掛けられた声らしい。振り向くと、一人の男の子が立っていた。しかも、スーツ姿なのが驚愕だ。俺より身長はない。異様に髪がぼさぼさしてるのが気になる。
「俺?・・・なんだお前、迷子か?」
「いきなり失礼なやつだ、貴様を助けるように言われて来たんだ。姿を見て、探していたが、見つけるの苦労したんだからな。」
胸を張られて言われたが、どうしたものか。
「人違いしてないか?お前・・・迷子センター連れてってほしいんなら連れてってやるけど・・・。」
「ふざけるな!俺はガキじゃない!馬鹿にしやがって・・・」
男の子は俺の胸をつかむ。とりあえず、周りが気にし始めてるから、飲み物買って、この場を去らないと・・・。
「お、おお~、そうだ、お前、何が飲みたいんだっけか?」
「はあ?何言ってやがんだ!俺は――――――――」
「お前もミルクティーでいいな!ほら行くぞ!」
俺は水とミルクティー2本を片手で器用に持ち、片方に男の子を抱えた
その瞬間―――――――
「ぁんんっ」
「!?なんつー声出しやがる。誤解されるだろ!」
男の子は赤面で、取り乱していた。
「お、お、おお、お前が、い、い、いい、いきなり、変なところ触るから!!!」
「わけわからないこと言うんじゃねえ!大人しくしてろ!」
「くぅ、はなせ!変態!」
レジで飲み物の代金をきっちり払い、広場まで全速力で走る。
広場が見え、真由香がいることを確認した
―――――――のだが、その近くに知らない金髪男を中心とした男たちが真由香を囲んでいた。
「ちっ・・・なんだあの野郎ども・・・おい、お前、離れてろよ。」
俺は男の子に飲み物を渡し、降ろす。
「貴様では無理だと思うが」
「・・・まあ、見てろって。」
とは言ったものの、足が震える。相手が俺と同じ人間で、人間以上の化物と戦ってきたはずなのに・・・ガクガクと震えていた。なぜだ、武器がないからか?
「君、可愛いねえ、俺たちこれからカラオケしに行くんだけど、一緒に行かない?」
ちゃらちゃらとした男が真由香に話しかける。
「お断りします。私、そろそろ行かないといけないので・・・」
真由香は男たちをすり抜けようとするが、阻まれる。
「ああ?なめてんのお前。俺たちと遊べないってどゆこと?」
「どいてください!!」
「まーまー、きっと楽しいからさっ」
「いや!離してよ!!!」
「そいつを離せよ、お前ら・・・。」
腕をつかまれた真由香を見て、男たち一人一人を見据える。
「にい君!助けて!!」
「ああ?誰だお前。こいつの彼氏か、兄貴か?」
金髪男が前に出る。
「そんなことはどうでもいい、そいつを離してやってくれないか?」
金髪男は笑みを浮かべ、俺と向かい合う。
「偽善ぶる部外者ってところだな、消えな、殴られる前に・・・。」
「離せっつってんだろ!!!」
真由香の腕をつかむ男に駆ける。その刹那―――――――――――
「ぐっっ!?」
腹に拳が入る。
「にい君!!」
「この俺の強烈な一発はどうだ、お兄さんよお、ふっくっく」
髪を掴まれ、顔を殴られる。
「そら、もう一発!」
男は俺を殴るのをやめない。蹴りも入り、何回もそれは繰り返された。
くそ・・・こんなやつらに手も出せないなんて・・・情けねえ。あのガキにも見られてんのかな・・・俺って本当は弱いってことなんだな。そう、何一つ守れずに。
誰もが動こうとしない。誰もが黙認の世界だ。男たちの人数が多すぎて気づいてないだけかもしれない。
体から力が抜けていく。抵抗する気もなかった。
すべてを時間に任せようとした。
「口先だけかああ!!!!なあ、聞いてんだよ!!!」
金髪男の拳が振り落される。目を閉じた―――――――――――
シュ――――シュシュシュシュッッパッ
覚悟していたが、いつまで経っても拳が襲いかかってこない。それどころか髪を掴まれていた感覚がなくなっていた。そっと俺は目を開ける。
「か、か、かかか、顔が、顔から、俺の顔から血が!?血がああああああ」
金髪男の顔には、5本の線、血の線がある。爪で斬られたような・・・
俺の後ろに立つ影。振り向くと、先ほどの男の子だった。依然として視線は金髪男に向いている。
「お前・・・逃げろ!あぶねえぞ!」
「ガキ扱いするな!今、証明してやる!」
男の子がそう言うと、両手を広げ、手から爪のようなものが伸びていく。やがて、その爪は赤黒くなっていく。そして、俺の体にも感じたことのある感覚。しっかりと伝わってくる。
悪魂間の力・・・
男の子は、素早い動きで、男たちの顔を斬っていく。次々と斬られていき、悶えていく。
こいつのスーツ姿といい、この素早さといい。助けに来たとか言ってたよな・・・まさか、こいつ・・・。
金髪男の仲間たちは悲鳴をあげて、逃げ出していく。
「あとはお前だけだ、金髪男。」
「くそ!こんなクソガキに!!!」
「ガキじゃない!!!」
交差するように金髪男の顔がさらにシュパシュッパッと斬られた。金髪男は倒れ、静かになる。
「気絶しやがった。」
男の子の手から爪のようなものが消える。
真由香が駆け寄ってきて、俺の顔を心配そうに見る。
「ばかぁばかぁばかぁ・・・なんで戦わないの・・・にい君は、にい君はぁ・・・」
「すまん、本当に悪い。俺に、俺が力不足だったばっかりに・・・また怖い目にあわせちまったな・・・ごめんな、真由香。」
俺の背中で泣く真由香。守るって決めてたのに、何やってんだ俺は・・・
「やはり弱いな貴様。<インディペンデント>の黒井を退けた男とは思えない。」
「お前はいったい・・・ただの男の子じゃ・・・ない?」
「ガキじゃないし!男でもない!!」
「はい?男じゃない?じゃあお前って、本当は・・・」
「・・・女に見えなくて・・・悪かったな」
男の子だと思っていたが、実は、女の子でしたーってか・・・
シャレにならねえ・・・
次話投稿を待たれよ




