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追憶26 当惑

 自分の意識というものを感じる。いつもの眠りから覚めた感じ。目を開ければ真っ白な天井。明るいところからして朝・・・いや、昼くらいかもしれない。

 自分の体を起き上がらせ、掛けられた白地の布団を確認し、周りを見渡す。派手な色というものはなく、とにかく白い部屋。そこは個室なようで、どうやら、俺はここでずっと寝ていたらしい。


「・・・」

 

 しばらく、体と共に寝ていた頭をフル回転させ、状況を把握させようとする。見覚えのある室内。眠る前の俺の記憶。とにかく現実か否か・・・。


「・・・病院!?」


 ああ、だんだん思い出してきた。俺は昨日、黒服帽子の男と争いになって・・・戦ったっけ?

 体に痛みや傷があるか確かめるため、視線を落とす。目を細め、俺の体に伸し掛かる重みに今さら気づく。そっと布団を持ち上げると―――――――


なんと、そこには可愛い猫!!!・・・ではなく相澤真由香だった。寝顔に騙されるところだった。


「なんでこいつが・・・にしても、よく寝てんな・・・」 


 真由香が起きる様子はなく、すーすーと吐息を立てていた。とりあえず現実だった。体といえば、これといって痛みもないし、むしろ、なぜ病院の病室に俺がいるのかがわからん。

 再び、真由香に視線を落とす。いつの間にか柔らかそうな頬に手を差し伸べて、ふにふにと指でつついていた。そして、なぜか病み付きになった。よく見たら病み付きって病気なのな。だから入院してるのか。なるほどなるほど・・・違うか・・・。


「んん・・・んあぁ~」


「!!!」


 突然の声にビクッとなってしまった。同時に現実に戻された。何してんだ俺・・・。


「ん~・・・ぃい君?・・・ふみゃあ~」


 真由香も体を起こし、目を擦りながら欠伸あくびをする。そしてなぜか抱きつかれる。

 

「お、おい・・・ね、寝ぼけてんのか?いろいろ説明してほしいんだが・・・。」


「どうでもいいじゃなぁいぃぃ・・・」


 どうしたものか・・・。まあ意識がはっきりするのも時間の問題だろうしな。ほっとくしか他がねえか。でも、この状態、状況は俺にとってマズいんですけど・・・。

 不意に病室のドアが開く音が聞こえた。


「おや、辻さん。目が覚めましたか。」


 格好、口調からして、担当医だろうか。その前に辻さんって言ったのか?完全に俺じゃねえだろ。

 真由香のせいで身動きの取れないまま、ベットのまわりを見回し、自分の名札が後ろにあったことを確認する。確かに、辻 清吉 となっていた。


「えっと・・・先生?俺はいったい・・・」


 俺の名前がないだけにおじさんの名前でこの病室にいるとは・・・。たぶん、俺を 辻 清吉 にしたのはおじさん自身だ。考えあってのことだろう。ここは話を合わせるべきか。おじさんになんか申し訳ないな・・・あとで礼を言っておこう。


「辻さん・・・まぁ今回は軽い疲労によるものでしょう。無理をせず、十分に体を休めてください。」


「ああ、はい・・・。」


「見たところ元気なようですので、お荷物が整い次第、手続きを済ませて自宅にお帰り下さい。では、お大事に。」


「はい。」


 ん・・・何も考えず返答してしまった。え?仮にも俺病人だよね。遠回しに荷物まとめてとっとと帰れって言ってるよねあれ。いや、いいんだけどさあ・・・。せめて、もうちょっと寝かしてくれないもんなのかね。でも、迷惑かけちゃいけないし、いさぎよく、荷物でもまとめるか。荷物というものほど荷物あったか・・・?

 


 



 相変わらず、真由香は引っ付いたままだった。寝息も聞こえる。その姿は甘えてくる幼児のようで、起きようとしない。


「いい加減起きろって・・・、俺、腹とか減っててさあ。ここも出てけって言われてるし。」


「んー・・・ぃい君うるさいぃぃ~」


「おーい、起きろ~」


 俺は、真由香の頬を再び、両手でふにふにする。


「やぁーっめれぇぇえー」


 反撃と言わんばかりに真由香の拳が俺に飛んでくる。


「よっ、パンチ失敗~」


 のろのろと俺に向かってきた拳を受け止める。


「ん~、じゃあこう!」


 今度は真由香の顔が俺に近づく。しかも顔に。


「おい!?」




 ふにゅい・・・








「あっぶな・・・」


 すかさず動いた俺の片手が真由香の顔を止める。さすがに真由香も目を開け、俺と見つめ合うような感じに・・・。


「あれ・・・にい君。って近い!!!」


「うぉ!?」


 後ろに両手で押された。俺に背を向け、縮こまる真由香。


「お前が近づいてきたんだろ・・・。ってそんなことはどうでもいいんだ。昨日のこと教えてくれ。」


「ちょっと!どうでもよくない!」


 一瞬、俺に向き直ろうとするがやめたらしい。


「まあまあ、昨日俺、黒井と話してたよな。それっきり記憶があいまいなんだが・・・。」


「・・・あの後、その黒井?って人、女の人たちが急に光を放ったと思ったら、消えちゃったの。」


「ああ、あの妙な技か。」


 以前にも、彼女らは魔法陣みたいなのを放っては爆発したり、消えたりだったな・・・。


「で、残された私たちは、あのおじさんが救急車呼んで、倒れたにい君を搬送したってわけ・・・。」


「大体分かった。でさ、お前はそれから今に至るまで、ずっとここにいてくれたのか?」


「う、うん・・・。だから早くお風呂とか入りたいし・・・。」


「そっかそっか、悪かったな。俺のせいで・・・。」


俺は真由香の頭に手を伸ばし、撫でる。そういや刀の刃で手のひら切ってたんだった・・・。


「ちょ・・・撫でないでよ。髪くしゃくしゃになる。」


 そう言いながらも真由香は俺の手をどかさなかった。


「さて、帰ろうか。早く病院から出て行かないとだめだし。あれ、俺の服どこ行った?・・・ああ、あった。」


「手伝ってあげようか?」


「断固、断る。」


「冗談だも~ん、マジになっちゃって。可愛い可愛い。」


「こいつ・・・。ああーそういえば、寝ぼけていた真由香は可愛かったなー」


「え!?私寝ぼけてたって何が!?何したの私・・・」


「そりゃあもうねえ~・・・。コホン、続きはWEBで。」


「あ、ひどい!ごまかした!!きもいきもいきもいきもいきもいきもいきもい・・・」


「きもい言いすぎだろ!結構グサって刺さるからなそれ・・・、だいたい、お前が俺の布団の中に入ってくるのが悪いんだろ。自業自得だ阿呆。」


「阿呆って言ったー、そう言った人が阿呆なのにー」


「んなわけあるかっ!」


「んなわけがあるの!」





 この後、いろいろ言い合いになり、周りに迷惑をかけ、二人もろとも追い出されたのは言うまでもない。


 ちなみに帰りはおじさんがおじさんの車・・・は爆破されてしまったので、タクシーだった。

 結局、昨日の戦いで得られたものはないようで、俺の記憶の手がかりにすらならなかった。また最初からふりだしのようでどうすればいいか途方に暮れた俺だった。

 次話投稿を待たれよ

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