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追憶21 背負ったもの

 一切の光を遮断した自室。片隅で一人、俺は座っていた。雨は止むことなく降り続いている。

 わかっていた。井手口、満月の二人は<日本部ヴィジランティー>として任務を遂行しようとしていただけだ。今回のような惨事は組織にとっては避けられないことであり、これまでも続いてきたことだ。

 あの後、満月を抱きかかえ、車に乗せた。雨のせいなのか満月の体はひどく冷たかった。そして、やはり、小さい体だと思ったのである・・・。不思議と俺は慟哭どうこくも動転もせず、ただひたすら、安らかに眠る満月の顔を見ているだけだった。でも、ひどい顔はしていたと思う。短い期間だっただけに失ったものは少なかったんだろうか・・・自分でもよくわからなかった。

 辻おじさんにこのことを知らせ、林道を後にした。車の中で、おじさんは悪魂間について詳しく説明してくれた。今現在、行っている任務の進歩状況、おじさん自身が<日本部ヴィジランティー>の人間だったことも・・・その後は静かになってしまった。おじさんは俺を家まで送り、満月を連れてどこかへ行ってしまった。最後まで俺もいてやればよかったのだが、見てられなかった。おじさんに後を任せ、現在に至る。

 満月とは喧嘩したままだ。井手口さんとも最後に話した言葉は記憶にない。


「俺のせいだ・・・」


 もとより、俺は自分の目的である少女の行方と自分のことを明らかにするために戦うことを決めた。<インディペンデント>も<日本部ヴィジランティー>も関係なかった。だから、俺がその件に関与する必要もなければ筋合いもないのだ。しかし、そんな現実が許せなかった。

 そして心に決意したものがあった。二人のためにも仇を討つ。


 元凶は俺が倒す・・・いや、


    ぶっ殺す・・・


 人間の生み出した復讐を復讐で返す。それが俺にできる二人への・・・とむらいだ。













 その日から、異一型剣による自己訓練が始まった。簡単に殺気を出せるようになったのか、剣が軽くなることが多かった。訓練場所は、あの林道である。おじさんにも協力してもらい、剣についてはっきりとわかったことがある。とはいえ、おじさんが昔、異一型剣を使っていたというのだから驚愕した。こいつは体の一部になるというのだ。以前、黒服帽子の男と戦ったとき、腹部を蹴られても痛みが軽減していた。それは剣が瞬時に腹部を鋼鉄へと変化させたのである。正確に言えば、腹部のまわりに防具をつけたといったところだろう。しかし攻撃自体を認識できなければ、その効果は発揮できないらしい。剣とはいえ防具にもなるのだから使いこなせることに越したことはないのだが・・・。

 それと、一つの型についてもおじさんに問う。黒服帽子の脇腹を斬った時、俺が赤い何かに包まれていたことだ・・・関連性があるのかどうか。


「もし、それが本当なら、お前はその剣に支配されてしまう可能性があるということだ。一つの型と言っても、悪魂間の武器でしかないからな。ろくなものではない。」


「!?・・・他の武器もそうなのか?」


「全部、悪魂間から手に入れたものだ・・・でなければ人類は終わりだ。支配されないように強い心でいることを肝に銘じておくことだ。」


「あの時の湧き上がるように感じた力って・・・」


「悪魂間の力だ・・・あらゆる感情の塊だからな、それをお前が利用したというわけだ。」


「そうか・・・」


 考えてみれば、殺気がなければ剣が使えなくなって重くなるのも、こんな非現実的な力が証明できないのも、悪魂間が関わっているとなれば、つじつまは合う。とんでもなく恐ろしい武器を俺は持っていたわけか・・・。

ふと、相澤真由香を思い出す。


「なあ、おじさん。満月の武器ってどうしたんだ?」


「・・・持っているが・・・井手口のもな・・・」


「その・・・満月の武器、譲ってくれないか・・・」


「お前には扱いきれんと思うが・・・なぜだ。」


「・・・相澤っていうやつがいてさ。」

 

 俺はおじさんに相澤のことを話した。被害者である彼女が組織に入りたいということ。パン屋でのこと。彼女自身の思いをすべて・・・。満月の武器、<十字口 Gガン>は威力が強いのは知っている。相澤の武器とすることで、相澤のためにも、満月のためにもなると俺は考えていた。


「大体は分かったが危険すぎる。組織にも入れることはできない。」


「!?なんでだよ・・・」


「ぼくや・・・お前は二人から何を学んだ!!!」


「井手口さんと満月・・・?」


 おじさんの表情は厳しい。でも、俺も決めていた。


「俺が守る。もう誰も殺させやしない・・・」


 しばらくの沈黙と風に揺れる林。おじさんの顔は、厳しい表情から悲しむような顔、俺をあわれむような表情を浮かべた。


「その子の面倒はお前が見ろ。その子が満月の武器を使うとなればなおさらだ。組織の現状を理解していない。お前と共に行動したほうがいいだろう・・・。それに、お前が入りたいと言われたんだ。組織じゃない。」


「確かに俺は組織とは関係ないけどさ・・・。やることは同じなわけで。」


「その子とよく話してみるんだな・・・組織ではなく、お前に従うと思うぞ。」


「・・・」


 でも、たしかあの時、組織に入れてほしいと言っていたのは本当なはずなんだが・・・


「それより、お前の特訓が先だ・・・」


「それよりじゃねえよ、っていうかいいのか?俺が面倒見るって・・・。」


「武器は車の中に入ってる。まずは剣のコントロールだ。支配に慣れろ。」


「・・・ああ」











 剣を握り、今までため込んでいた気持ちをすべて剣に注ぎ込むように大声を上げる。


「うおあああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあああああああ!!!」




 そのめいいっぱいの声には悲しみも込められていたかもしれない。

 

 頭の中に流れた記憶。気づけば、目からは涙がこぼれていた。

 









 井手口さん・・・満月・・・

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