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追跡19 もう一人の境遇者

「ちょっと待て、今なんつった・・・」


「私も入れてください。」


 相澤真由香、知り合って間もないのだが、彼女は正座をして言う。


「む、無理だ。お前みたいなやつがあんな場所で・・・戦うなんて・・・。」


「大丈夫。覚悟はできてる。助けと理解者がいるんでしょ?」


 相澤ともう一人を助けた時、兄妹である兄のほうがそれを言っていた。犠牲者を増やさないために理解者に力を貸して欲しいと。

 <日本部ヴィジランティー>として・・・

 だが、あんな任務自体、俺も知らなかったし、俺の求めるものは別のところにある。そして、任務には命に関わってくることだとも知った。俺の強さは自分のためと記憶によるものだ。武器を持った時点で俺も覚悟はできていた。いや、武器がそうさせたのかな・・・


「ねえ・・・何とか言いなさいよ・・・」


「・・・お前の人生は?これから先、そんなことすれば死ぬ可能性だって、」


「おばあちゃんの話、したでしょ?」


「パン屋の?お世話になったって言ってたじゃねえか。」


「うん・・・でもね、不幸なことが起きて・・・死んじゃったの・・・」


 相澤の顔が沈み、声のトーンが低くなる。


「私が小さいときから、おばあちゃんのことは知っていたから、すごく泣いた。何もできずに・・・」


「相澤・・・お前・・・」


「でもね、最後におばあちゃんと話した時、言ってたの・・・」


            自分のしてほしいことをみんなにしてあげなさい


「そう言われたっきり、してほしいことってよくわからなくて・・・あの夜、後悔してた。あんな状況で、自分の命が危ないってのに、おばあちゃんの言うこと、聞けなかったなあって。」


 相澤は顔を上げ、真剣な眼差まなざしが俺の瞳に映る。


「君を見たとき分かったんだ、どうすればいいかを。」


「その結果が、組織に入れてほしいというわけか。」


「そう・・・犠牲になった人たちだって助けられたかもしれない。今の私だって助けられた身だし。今度は私が助けなきゃ。こっちのほうがおばあちゃんの言ってたこと、できそうだし。」


「そっか、俺もな・・・助けられたんだ、ある少女に。」


 あれ・・・なんでこんなこと言ってるんだ

 

「少女に?男なのに?なんで?相談事?それとも・・・」


「おい待て、何言う気だ・・・」


「単にその少女が可愛いすぎて、自分が汚れてるということにも関わらず、その少女の写真や声を聴いては今の自分の原動力にしてると、そういうことね?ただの変態じゃん。」


「ちがうわっ!」


「ちがうの?最初に会った時からそんなイメージしかないけど。」


「まず、俺の話よりお前の誤解を解くほうが先だったか、イメージひどくね!?」


「ナ、ナイスツッコミ! で、何の話だっけ?」


「誰が言うか、あほ」


「あほ!?あほって何よ!」


「正確に漢字で書くとだなあ、阿呆あほうと書いてだなあ、意味合いは、馬鹿とか愚か者だとかに似たようなもんだ。まあ罵倒するときには打って付けというわけだ。わかったか?」


「そういうことじゃないしー、口で言われても漢字見えないしー、馬鹿とか愚か者?それ君のことじゃないの~?」


「そうかそうか、せっかくお前がいるからオムライスの一つや二つ作ってやろうかと思ったが、いらないんだな?なら、とっとと出て行ってもらおう。」


「二つも食えないよ・・・っていうか謝るから作って?あと追い出さないでー」




 俺が言おうとしたこと、それは、やっぱり少女に命を助けられたということだろう。何かしら関係はあったと思うが、辻おじさんの話を元としたことでしかなく、根拠も事実もわからない。ただ、俺の名前がない、覚えてない。はっきりさせるには会うしかない。

 俺のいた世界がどんなだったのか分からないが、剣の力は必要かもしれない。助けられ、今度はこっちが助ける番だ。そういった点では、相澤と同じなのかもしれない。根本的に違うところはあると思うが、同じ境遇者がいるとなれば、支えにはなる。力になると思う。だから・・・戦う。

 なんて・・・な









 ~二日前 ここから遠く離れたある場所~


 私はいつもどおり、大男、ガンズの後ろについている。ここのところ、彼は特に目立った行動はせず、夜道を歩いていた。そして、ガンズの足が止まり、声を上げる。


「だれだぁ、でてこい!!!」


 シーンとした空気、そして柱の陰から現れる人物。


「ハイ、ご機嫌いかがかな、ガンズ君。」


「てめえか・・・」


 黒服帽子、顔は見えない、でも長髪なのはわかる・・・間違いない、<インディペンデント>の一人、黒井という男だったはず・・・


「ガンズ君は相変わらずのようだね。」


「・・・フ・・・ハッハッハッハッハ、おい、てめえ、同じ<インディペンデント>でありながらなんだその傷は~、まさか転んだわけじゃあるまい、ハッハッハ、言え!!!どいつに切られたぁ?」


「おや、いきなりばれてしまったか、誰に切られたかはいずれわかる。ガンズ君自身がね。」


「そいつは楽しみだぁ」


 確かに黒服帽子の服の脇腹あたりに血がしみ込んで、数時間前のものということがわかる。


「ガンズ君の後ろにいる少女と話をさせてくれないかね?」


「すきにしろぉ」


 ガンズは気にせず前を歩いていく。ついて行かなきゃ・・・黒服帽子の男は横に並んでついてくる。


「初めまして、いきなりで悪いが、なぜ、彼について行ってるんだい?」


「・・・」


「ガンズく~ん、なぜこの少女は君についていくのだね?」


「そいつのフードをよく見てみろお、第一、それがこいつの望みだからなあ。」


「フード?」


 そう、私は、嫌でもこの男について行かなければならない。このフードは・・・・・


 爆弾だから・・・


「何か、呪文のようなものが見える・・・呪いに近いね・・・・」


「そいつが、おれから勝手に離れれば爆発する、そういう仕組みだぁ」


「相変わらずだねえ・・・そんな君に耳寄りな情報があるのだが、この傷にも関連がある。」


「ハァハッ、退屈してたんだぁ、どこへ行けばいいんだぁ?」


「日本だよ・・・」


「え・・・」


 体が凍り付いていくような感覚。私は思い当たる節があった。

 まさか・・・



 リーダーなの?

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