第四話 四年前
お楽しみください!
「エルは四年前のことをどこまで知っているの?」
説明をする前に状況を確認するためミリエスはエルに質問してきた。
「四年前のことはほとんどわからないかな。気がついたら目の前は……」
すべてが炎に包まれて灰になった後だった。
「そっか、うん。そうだよね、エルはあの時施設の外にお使いを頼まれていたんだよね。先生に」
「それが運がよかったのか、悪かったのかわからないけどな」
「なら説明していくね。といっても私もほとんど知らなくて少ししかわからないんだけど」
「構わないから早く話してくれ」
「せっかちだなぁ」
苦笑して言うミリエスも次には真剣な眼差しになった。
「四年間、私は施設の中にいた。その日は先生と一緒に行動してて料理の手伝いをしていたよ」
ミリエスと先生は施設で数少ない料理ができる人員だったのだ。普段は厳しく接する先生もこういう何もないときはやさしい一面を持っていた。
けれど話によれば突然どこからか爆発が起きると同時に地響きがしたらしい。
「爆発と同時に地響き?地響き規模になると中級、上級、はたまたその上の魔法の可能性があるけど」
「うん、私と先生もそのときはそんな可能性を話してた。最初はもしかしたら誰かが失敗して暴発した魔法かとも思ったんだけどね」
気になった二人は、慎重にけれど迅速に行動を開始。音がしたほうへと向かって行ったらしい。そこで見たものとは。
「黒い集団と爆発後だって?」
「うん。一人が起こしたのか、協力して起こしたのかわからなかったけど少なくとも人数は七人いたわ」
「七人、顔は?」
「見えなかった。何か布で表情を隠していたから」
やっぱり顔を隠しているのか。顔を見られてはいけないからか。それとも見られるとばれるかのどちらかだろう。
黒装束の七人と対峙した施設の人たちは集結し一触触発の空気に包まれたらしい。けれどその時まだ爆発しなかった理由は主に先生がけん制しており、両方の暴発を防いでいたからだそうだ。次の会話はその時話された内容らしい。
まず先生が
「ずいぶんな歓迎だけど一体どういった了見で来たのかしら?」
今まで無言で佇む先頭の男が返事を返す。
「……お前らに死を届けに来た」
「……なんですって?それにしてはこっちの戦力が集まるまで動かなかったようだけど」
「……私は任務を遂行するだけだ。だから依頼主の言葉をそのまま伝えよう。【やあ、暗殺集団の諸君。今まで尽くしてくれて感謝しているよ。でもね最近君たちの力と影響力は強くなりすぎたような気がするんだ。だからさ選択してくれないか。私たちに隷属するか。それとも……死ぬか】というらしい。さてどうする」
ミリエスには何のことかぜんぜんわからない。しかし、先生に関しては何かを知っている様子だったようだ。
そして
「ありえない。確かに私たちは人を殺すための技術を磨いている。人を殺したことなんてこの中には何人もいるでしょう。けど、それはこの国がよくなると考えたから汚れ仕事をしているの。将来につなぐための暗部を。光に当たらなくても闇を薄くするための動きを」
一度きって先生は言ったらしい。
「なのに隷属なんて、それはもう私利私欲のためにしか使われない。将来に繋ぐためではなくその依頼主だけが得をする世界。そんな世界なんて子供が笑っている世界に到底思えないわ」
「交渉決裂でいいのだな?」
「ふん、交渉決裂とかいってそっちはそのほうがいいって顔をしているわよ。というかもし交渉を本気で成功させるつもりだったんならいきなり攻撃はしてこないでしょうが」
すると黒装束の男はニヤリと笑う。
「そうだ、名の知れた暗殺者を一度相手にしてみたいと思っていてな。そんなときにこの話だ。渡り舟とはこのことだと思わないか?」
「うるさい!」
無詠唱で先生は隠し持っていた短刀をいくつも投げていた。
突如の攻撃で一般の暗殺者や兵士ならこの一撃で物言わぬ屍となるだろう。
けれど
「ふん」
キンッ!
目の前の黒装束たちは並み以上の暗殺者だったのだ。
「戦線布告と受け取ったぞ……徹底的にやれ!」
「皆、相手はたった七人よ!教職員は前方に。魔法を得意とする子は後方から援護を!全員撃退するわよ!」
「「「「「おう!(了解!)」」」」」
ここまで話してくれたミリエスは一度深呼吸してから顔をエルのほうに向けた。
「私が知っているのはここまで」
「え、ミリエスも戦ったんだろ?知らないのか?」
「うん……実はその時早々に怪我をしたんだ。そうしたら先生が近くにいた大人に指示して私や負傷した人たちを避難させたの。もちろん敵は襲ってきた。だからそれぞれが別々の道を行って逃げ延びた。だから……先生の行方もわからない。分かれた皆もわからない」
「そうだったんだ。それは、その。大変だったね」
「それはもう大変だったよ。無一文でいきなり外に出たんだからね。時には変なおじさんに襲われそうになったり、体を触られたりしたし」
「……なんだって?」
その話を聞いて自分でも驚くほど低い声を出したエル。
エルの声を聞いて驚くが、自分のために怒ってくれている事がわかり嬉しく感じていた。
「もう過ぎたことだし結局その人たちは返り討ちにしたから何もされてないよ」
「なら安心だけど」
「まあ、心配してくれて有難うね。にしてもエルって昔より変わったね」
「ん?そうかな」
「変わったよ。昔は無愛想って感じだったもん。何事にも面倒だといってやるきをださない……見た感じそこは変わってないのかも」
「あー、それについてはなんともいえないか。確かに自分でも昔よりは周りを見る余裕というか、気遣うことを覚えたんだと思う。あの日全員が死んだと思って絶望したからさ、周りの大切な人が一瞬で失う可能性があるならその人たちを大切にしないといけないと気づいたんだ」
「うんうん、人生のいい経験になったんだね」
「そう言われるとすっごく上目目線だな」
「上目目線……か。私も結構あったからね」
ミリエスがそこまでいうと静かに周りに重い空気が流れる。
二人とも施設が無くなってからそれぞれ苦労を重ねてきたのだ。
なんと言っていいのかお互い無言でいると、突如扉をノックする音が聞こえてくる。
「おう、少しいいかい」
ノックしてきたのはオヤジさんだ。
「どうしたの?」
「なんだかお前さんに用事があるとかいって食堂の前に何人もいるが、どうすればいい」
二人の脳裏には確実にギルドの人たちだろうと予測するのは容易であった。
「エル、どうしようか」
「どうするも何も……さすがにばれたんなら何とかしないといけないけど。穏便に済むかなぁ」
「なんだ、外の奴らは知り合いじゃなくて迷惑な奴らと考えていいんだな?」
「うーん、まあ、そんな感じになるのかな」
いい人も、穏便に勧誘しようとする人が中にはいるかもしれない。けれど、今のエル達にとっては迷惑この上ない。
エルの返事を聞いたオヤジさんは頷き
「よし、わかった。なら少し待ってろ」
そういい残し部屋から出て行った。
いなくなった後しばらく待っていると外から
「こらぁ!お前ら!営業妨害で訴えられたくなければ早くどっかに散りやがれ!今日は臨時休業なんだ!」
「い、いや。オヤジさん、俺たちはここにいるエルに話が」
「ああん?こんなに大勢で押しかけて来ておいて善人顔するってのか?ふざけるな!用事があるなら日を改めろ!何なら出るとこにでて、訴えてもいいんだぞ!」
「わ、わかったよ!オヤジさん!ならせめて俺らが会いたがっていたことを言ってくれるとありがたいんだけど」
「ん、わかった。それぐらいなら伝えてやる。ただし、お前らあいつを困らせたりしたら容赦しねえからな?エルの人気は知っているだろう?町中を敵にしたくなければ穏便にするこった」
オヤジさんが言い切ると、外の喧騒は無くなる。それからしばらくして、オヤジさんが戻ってきた。
「おう、外の連中には言っておいたぜ。しばらくは押しかけることも無いだろうな。これでよかったんだろ?」
「よかったどころか助かったよ。正直困ってたから」
「へん、あいつらせっかくの再会に水を差しやがって。なんなら本当にギルドに訴えてやろうか」
「待って!そこまではしなくてもいいよ!別に話すぐらいなら日を改めてやるから!ミリエスもそれでいいよね!」
「う、うん。さすがに今日はエルと一緒に話をしたかったからいやだったけど、エルがそういうなら私はかまわないよ」
「そうかぁ?二人がそれでいいんなら訴えはしねえけどよ」
言葉を聴いてエルは安堵する。
普通に考えて町にある一つの食堂が大陸規模の組織である冒険者ギルドに訴えるなど、トラブルの元にしかならない。一応訴えを受理する制度もあるにはあるし、ギルドも外見を気にするから親切な対応をしてくれるだろう。しかし、オヤジさんの場合行き過ぎる可能性と、飲食店なので売り上げに影響しそうなのだ。
エルはそのことを思慮してやめるように言ったのだ。これ以上迷惑をかけるわけにはいかないから。
そこで、オヤジさんはまだ何か納得がいっていなかったようだが、ふと思い出したように話しかけてきた。
「お、そうだ。お前さんたちが部屋で何かを話している間、料理のほうは順調に出来上がってるぜ。それに二人の祝いをするんだったら知り合いがいたほうがいいだろうってことで、道具屋の奥さんとか、それとギルドのエッセにも声をかけといた」
「エッセさんか」
正直今はあんなことがあったために、ギルド職員であるエッセにも事情を聞かれるだろう。一部始終を見ていたはずだから、軽くだろうが。
あと、エル自身あの後ギルドがどのようになったのか気にはなっているから丁度いい。
「ほかには誰をよぼうかねぇ。お、そういえば西のパン屋のお嬢ちゃんがお前のことをいいかもといってたからそいつも呼んでやろうか?」
「え、いいと思ってたってどういう意味?」
「どうもこうもそりゃあ、お前」
「オヤジさん!別に説明しなくていいですよ?ねぇー、エルー?」
突如ミリエスはエルの腕を絡めて顔を近づけてきた。
「み、ミリエス!近い、近い!」
「んー?それよりも、別に大勢呼ばなくてもいいよね?そうだよね?」
正直エル自身それどころではなかった。顔が至近距離もさることながら、腕に柔らかく弾力がある何かが主張し、押し付けられているような。でも今まで感じたことが無い感触で……。
その正体に気づき、エルは顔を赤くするとミリエスも冷静になったのか気づき顔を赤くした。
一部始終を見ていたオヤジさんは
「がはは!安心しな、お嬢ちゃん。さっきのは冗談だったが気の知れたいい奴だけを呼ぶから、お嬢ちゃんが感じている心配はないだろうぜ:
「う、うぅ~」
いまさらながらに、恥ずかしくなっているようだ。
「エルも幸せものだな!」
「そうなのかな?」
「がはは!まあいい、それよりもこれはもっと一層盛大にやらないとな!おーい!誰か!食材の追加だ!とりあえず鶏肉百人前!」
「どれだけ盛大にするんだよオヤジさん!」
しかしエルの叫びは聞こえず、そのままオヤジさんは行ってしまった。
残された二人だったが、ミリエスがポツリと話しかけてきた。
「エル、本当にこの町の人たちはいい人だね」
「ああ、自慢の人たちだよ」
エルの言葉を聴いて、少しだけ沈痛な表情をするミリエス。
表情を見たエルは苦笑して右手をミリエスの頭に乗せて優しく撫でた。
「気にすることは無いよ。なんとなくミリエスが言いたいことはわかるから。けど、決めるのはミリエスじゃなくて俺なんだ。行動する基準をね。だから気に病むことは無いよ」
ミリエスは声を、話を聞いて、それがミリエス自身を安心さえるための言葉だとはわかっていた。だからだろう、色々な感情が湧き出てきたがミリエスがとった行動は
「エル……」
気持ちよさそうに目を細め頭で撫でられるエルの手の感触を味わうのであった。
二人がエスカールを去る時間はもうすぐだ。けど、その前に親しい住人と思いっきり飲んで、騒いで楽しもう。
そう考えるエルであった。
こんばんわ!今日はこの投稿がラストになります!予約投稿なんですけどね!
さて、とりあえず四年前のことが少しだけ明らかになり次はエルたちがどうするのかに注目がいくことになります。
というかどうしましょうか。
少しは考えているんですが……。
あと、オヤジさんの盛大な飲み食いの描写を入れるか入れないかは悩みどころです!
とまあ、そんなところでまた次回お会いしましょう!では!




