第三話 ミリエス
お楽しみください!
冒険者ギルドで幼馴染であるミリエスと再会したエルであるが、ちょっとした事情からエスカールの町を走り抜けていた。
「それにしてもなんだか駆け落ちみたいで楽しいね!」
「言ってろ!」
「いやー、なんだか昔を思い出すなー」
「そんな場合かよ!喋る余裕があったら走れ!」
「というけどさ、目的地はエルしか知らないんだし」
「まあそうなんだけど。目的地である食堂にいきなり行くと迷惑かかるだろ」
「でしょ?だから走りがてら旧友を深めようと」
「落ち着いてからじゃだめか?」
「だって暇なんだもん。もういっそ魔法で蹴散らしちゃおうか」
「もっとだめだろ!お尋ね者にはなりたくないぞ!」
「ならさっさと撒こうよ」
こんな会話をしつつ追っ手を撒いていた。喋り、冗談を言い合う二人であったが、そんな二人を全力で追っていたが、追いつけない冒険者たちには実力不足についてとても堪えたという話を後で聞くことになったという。
しばらく、走っていた二人だがある程度走り抜けるとようやく後ろから来る気配は無くなっていた。
「どうやら全員撒けたみたい」
「みたいだな。ちょうど良かったかも、食堂も近くにあるし」
「なら向かおう。全速前進ー!」
「まて!そっちじゃないからな!」
見当違いの場所に全速前進しそうになったミリエスを何とか引きとめ、目的地である食堂へと案内する。
ただ、エルは撒くことに成功しても次に説得をしなければならない相手がいたのである。
「おう?やけに早い帰りじゃないか。あがりで良いって言ったのに……ん?」
食堂に入り、とりあえず自分の部屋に案内しようとしたエルであったがその途中、食堂の店主であるオヤジさんに見つかったのだ。
ニコニコと笑顔を絶やさないミリエスを見て、エルを見る。その行動を何回か繰り返したあとオヤジさんはエルに近づき。
「ふんっ!」
ゴチンッ!
鉄拳が見舞われるのであった。
「いってぇ!何だよいきなり、何も悪いことしてないだろ!」
「あぁ?悪いことはしてねえってどの口が言ってるんだ?俺は今日はもう上がっていいと言ったが、女を部屋に上げて遊べとは言ってねえぞ?」
どうやらオヤジさんはミリエスのことを遊女かナンパしてきた女だと勘違いしているようだ。
「は?オヤジさん本気で言ってる?俺が今までそんな女遊びをしたことなんてないことぐらい知ってるでしょ。何を根拠に」
「根拠ならあるさ。普段女子と一線を越えないようにしていたお前がわざわざ部屋に連れてくるぐらいだからな。しかも飛びっきりの美人ときた。どう考えてもお前の知り合いには見えない」
エルは本気で頭を抱えたくなってきた。このオヤジさん普段はいい所もあり、機微には聡いのだが思い込みが激しく信じ込んでしまったら頑固として突き進んでしまうのだ。
どうしようかと迷ったところ、ミリエスのほうを見るとミリエスもこちらを見ていたのか視線が合う。
「……(ニヤッ)」
何かを企んだ笑いをしたのを見てしまって、振り返らなければ良かったと後悔するがもう遅い。
後ろで事態の推移を見守っていたミリエスがオヤジさんの前に来ると、とびきり笑顔を向けて自己紹介を始めた。
「こんにちわ、私の名前はミリエス。ミリエス・ホーレストと申します。エルとは昔いた施設での幼馴染になります。今までエルのことを面倒を見ていただいていた様子。どうもありがとうございます」
エルはミリエスを見て、誰だこれ、と思った。先ほどと比べて接し方がぜんぜん違う、淑女そのものの振舞い方だ。
いきなり丁寧な反応に面食らいつつ反応を返すオヤジさん
「あ、ああ。こんにちわ。俺はこの食堂『豊潤の食卓』で店主をやっているものだ。名前は、あー好きに呼んでくれ」
「わかりました。ではオヤジさんと呼ばせてもらいますね」
「それでいい。……にしてもお嬢ちゃん見たいな女の子がエルの知り合いにいたとわな。こりゃあ、町の奴らに勝ち目はねえな」
「勝ち目ですか?」
すると、なぜかオヤジさんは視線を一度エルに向けたがすぐに視線を戻し言う。
「そいつの何が気に入るのか。結構好意を持っている女はいるんだよ。前なんて部屋に連れ込もうとしていたしな」
「……へぇ」
ミリエスの空気が変化した!?というか、視線で後で説明をお願いね?と言葉で言われていないのにわかる気がした。
内心焦りつつエルはオヤジさんに文句を言う。
「オヤジさん!それはだから勘違いって言ってただろう!あの人は前々からの知り合いで何度も手伝ってもらっている関係だって!」
「そうか?俺もよくしらねえが、お前の部屋から出てきた後に嬉しそうに出て行くのを見たことあるぞ?」
「え?ああ。それはたぶん手伝ってもらったお礼にブローチをプレゼントしたんだよ。そしたら喜んでたなー。けど、今はもうこの町にはいないよ。北のほうに向かっているらしいから」
「よくわからんが、とりあえずそういうことにしておこう。でだ、エル。少し聞きたいんだがこのお嬢ちゃんとはどういう関係だ?幼馴染とは聞いたが」
「いや、だから普通の「将来を誓い合った仲です」ですっておい!?」
こちらの言葉に被せてきたミリエスには思わず叫ぶが、ミリエスは続ける。
「オヤジさんはエルに私のことはどこまで知っているんですか?」
「昔のことはほとんど聞いてねえよ。ただ、昔生き別れた女の子を捜すことが目標だということだけは聞いていたけどな」
「そうですか。ならその女の子が私なんです。昔ある施設で一緒だったんですが事故に会ってしまって……事故に会う前は結婚の約束をしていたんですよ」
「ミリエス!何でそんなことを」
言うんだ!という前に
「ほう!なるほどなるほど。そうだったのか!そして今日再会したってことか?」
「はい!」
「なんと、それはめでてぇな!これはこんなことをしている場合じゃねえ。今日は臨時休業にするぞ!そして夜は祝いだ祝い!」
「オヤジさんんんん!いつもの頑固オヤジはどこ行った!というか急に店閉めるとか迷惑すぎるだろ!」
「んなこと気にするな!数年らいの友人の再会を喜んでやらねえで何がオヤジだ!しかも、相手と生き別れて会える確立も少なかったのにも関わらずにだ!よし、こうなったら材料を調達しねえとな。おい、誰か!今から言うものをそろえて来い!」
エルの反論をも聞かずにいなくなってしまったオヤジさん。残されたのは二人。
「……はぁ、とりあえず部屋に行こう」
「エルも大変だねぇ」
「お前のせいだからな!」
騒がしくしながら部屋へと向かうのだった。
「ここがエルの部屋かぁ。意外と片付いているんだね」
「まあね。ここ最近手伝い以外に依頼って形で行動していたから。さっき喋った道具のおばさんにも薬草を届けたりもしてるよ」
「依頼って、ということはエルはギルドに入ってるの?そういえばギルドの中に来てたし」
少しだけ怪訝そうにしたミリエスだが、エルは気づかず首を横に振る。
「違う。あれはオヤジさんから頼まれて職員の人に弁当を届けるのが仕事。あとは情報を集めるため」
すると、からかうような笑みを浮かべて
「あっ、ということは私のことを探してたんだぁ~そこまで寂しかったんだねー」
いきなり言われたことにエルは慌てて反論しようとするが
「それはちがっ……いいや、うん。そうだよ。ミリエスのことを探していた」
素直に認めた。ミリエスにとってこの反応は予想外で、確かに探していたとは聞いていたけど真剣に探してくれて、しかも寂しいといってくれるなんて。特別な感情を持っているミリエルは急に顔を赤くして視線をはずす。
「あ、あはは。そうなんだ。それは、その、うん。ありがとうって言ったほうがいいのかな」
「ん?どうしたのそんなに顔を赤くして」
「何でもないの!別に!それよりも、エルはこれからどうするつもりなのか聞かせて!」
突如強い口調で言ってくるミリエスに、首を傾げながらもエルは頷く。
「うーん、それなんだけどミリエスを探すつもりで旅に出るつもりだったんだ。けど、目的は達成しちゃったから……そうだね。今度は復讐でもするかな」
顔を赤くしてまだ動揺していたミリエスだったが、いきなり復讐という物騒な単語が出てきて気を引き締める。
「復讐って誰に?」
「施設を襲った奴らに」
今まで明るく飄々(ひょうひょう)としていたエルだったが、今は暗く鋭い刃のような威圧を放っている。今までの経験からも殺気には慣れているミリエス。でもエルという人物を知らなければ逃げていたかもしれない。
「エルってさ、変わったよね」
言葉を投げかけるとエルからの威圧はなくなり、顔を上げてエルが聞く。
「変わってどこが?」
「なんかこう、丸くなったっていうか。穏やかになったかな。昔は無愛想だったのに」
「あー、そうかも。けどこのエスカールの町に住めば変わりもするよ」
「……うん、そうみたいだよね」
頭に浮かぶのは道具屋のおばさんや食堂のオヤジさんの顔だ。
けど、そこでエルは小さく言う。
「でももう潮時かな」
「どうして?」
「ミリエスが来たから。まだ理由は聞いていないけどただ探すだけじゃないんでしょ?どうして俺を探していたの?」
「……半分は本当に探すつもりだったんだけどね。うん。もう半分は力を貸してほしかったからだよ」
「一体何に力を貸せばいい?」
「その話をする前に聞いてもらわないといけない話があるの」
「どういう内容?」
「さっきエルが聞きたいといった内容だよ?」
ミリエスはそこで寂しそうに影が掛かったような表情をしながら言った。
「四年前、私たちが暮らしていたあの施設で一体何があったのか。聞きたいんでしょ?」
その言葉に、真剣に頷いた。
四年前のことが明かされる。
こんにちは、二時間ぶりです!
今回の話はミリエスとのコント?回でした。ですが、少しだけプロローグで行われた話を詳しく話すための導入でもありますね。
さて、今回はこの辺で、一時間後にまた!




