第一話 サヤルアペス大陸
お楽しみください!
この大陸の名はサヤルアペス大陸という。
大陸には複数の国が存在し、人は生活を営んでいる。ただ人だけではなく異形の形も数多くいる。ダンジョンと呼ばれる遺跡が数多く存在し、人は戦い、冒険し、宝と夢を追いかけている。
そんな大陸の中に一つの帝国が存在する。
帝国の名前はアスティール。富国強兵の文字が合う国だ。周りの国にも影響力が強く国民達も戦争が起きることがあったとしても、負けるとは思わないだろう。
しかし、外敵がいないということは決して安全と同義ではない。領内に住む国民にとっての敵とは、傲慢で愚昧な貴族、領主こそが敵でもあるのだ。
アスティールではここ数年不穏な空気が流れていた。理由には貴族の腐敗が主な原因だ。
とある領主は重税をかけ、重労働を強いる。とある貴族は人攫いを行わせ若い娘をさらい、売り払う、または奴隷にする貴族もいた。
もちろん、アスティール王も貴族の腐敗を防ぐために対策はしていた。貴族の影響力を縮小、民の税収改革を行い行き過ぎた課税防止案などを。
しかし、貴族たちも馬鹿ではなく色々と難癖をつけ王の提案をことごとく潜り抜けてしまった。それほどにアスティール王の知性はすでに地に落ち始めているということだろう。
そんなアスティール王国だが、この国の南東にエスカールという中規模な町があった。エスカールは産業が盛んというわけではなく、貿易を中心として行われている。王都に近づくため港町との途中に位置し、陸路からも北から港に行くために通るため交通の要衝なのだ。
そのようなエスカールの一角には町で珍しくない食堂があり、厨房からは今日も怒声が響く。
「こらぁ!またお前はさぼってるのか!しっかり仕事をしろ!」
食堂の店主からしかられた相手、見た目十六歳の少年は怒声を気にした様子もなくのんびりした様な声で返事を返す。
「あぁ、親父さんか。いやね、今日はなんだか天気が良すぎてさ、やる気がどうしてもおきないんだよ」
「お前な、やる気云々でその日に働かないでいいなら俺は毎日働いてねぇ!」
「えー、それはちょっと働いている食堂の店主の言動としてどうかと思うよ?」
「お前がふがいないからいったんだろうが!というか言わせるな!」
親父さんと呼ばれた店主はさらに怒鳴ろうとしたが、突如声量を落とし肩を落とす。
「はぁ、なあエル。俺はなお前がやる気を出せばできる奴だと知っている。いいや、本気を出せばもっと大きなことをできる力があることを。実際に目にしたんだから間違いねぇ。だからこそ、俺もお前さんをずっと雇っているんだ。なのにどうしてお前は努力をしようとしないんだ?」
「……あれだよ。前にも言ったけど昔にさ、どんなに努力しても死ぬ気でも頑張っても失うときは一瞬、何もかもなくなるのは簡単って事を自覚したんだ。だから日々を楽しく過ごしたもの勝ちだと思うんだ」
そういってエルと呼ばれた少年は憂いを帯びた、何かすべてを諦めた表情をし語る。店主はいつもこの表情を見ていつも思う。この歳でどうやったらこのような『何十年も経験したような』すべてを絶望した表情をできるのだろうかと。だから興味があり何度も繰り返した質問をする。
「やっぱり、以前の事件の話は聞かせてくれないのか?目的だけは聞いたがほかは聞いていない。もう少し話してくれれば少しぐらい力になれるかもしれないぞ?」
エルは寂しそうに笑いながら
「ううん、すでに雇ってくれて住むところも用意してくれているんだからそれだけで十分すぎるよ。それに、話をしてしまったら確実に迷惑をかける。これ以上は迷惑をかけられない」
そのように店主に返事を返した。
店主はもう一度ため息をしつつ右手を腰に当てた。
「ふぅ、まあお前さんが言うなら聞かないさ。でも仕事をしない、するは別の話だ。商売なんだからな。丁度いい時間だからお前はこれから冒険者ギルドのほうに行って弁当を届けて来い」
「また役員の人?」
「ああ、本当はお前を行かせたくないんだ、勧誘がしつこいらしいからな。けど目的のためには必要なことなんだろう?弁当を持って聞いて来い。弁当を届けたら今日は仕事はしないでいい」
「さぼってた俺が言うのもなんだけど店は大丈夫なわけ?」
「へん、いつもさぼっている奴がいようがいまいがほとんど影響はないぞ」
「あはは、ごもっともなことで」
おどけた調子で言う店主にエルも苦笑いをしつつ、頷いた。
それから、エルは弁当を渡されエスカールの町を歩き出す。
目的地は東にある冒険者ギルドだ。距離は結構あるがエルにとっては散歩のようなもので苦にはならない。
そんなふうにゆっくりと歩き、道具屋のそばを通ったときにエルは声をかけられる。
「おや、エル君じゃないかい。手荷物を見るにまたギルドに弁当を届けるのかい?」
「ああ、おばさん。丁度用事もあったからね。あ、そういえばこの前とってきた薬草はどうなった?大丈夫だとは思うけど一応気になってさ」
「あれね、従来品よりもすごく効果が高いってお客さんには好評だよ。周りよりも質がいいというんで薬草を求めてきてくれる客が多いさね。だからまた今度薬草を取ってきてもらえないかねぇ」
「わかったよ。次は多めに採ってくる。ただ、代わりというわけではないんだけど……」
「もちろんわかってるよ。旅に必要な道具一式は後数日で集まる。少し値が張ったものもあったけど薬草の取引の分でお釣りが来るくらいだからね。期待しといていいよ?」
「ありがとう」
「ただ、そうかぁ。エル君がここに来たのも数年前になるけど、もうすぐいなくなるって聞くと寂しくなるねぇ」
「俺も町から離れるのは寂しいですよ。エスカールの皆はほとんどが優しいですから」
「そういってもらえると町民としては嬉しいよ」
「けど俺には……目的が一つだけありますから」
「例の女の子の話かい?生き別れになったかもしれないという」
「はい。本当に生きているのかわかりませんけど俺は絶対に生きていると信じたいんです。今までは情報が集まるエスカールで情報収集しつつ旅の為にお金をためてたんですが、必要な情報は少なかったからですから」
「そうかい。……エル君、一つお願いがあるんだ。もちろんただじゃない、聞いてくれたら一つ便利なものを旅道具に追加しておくよ」
「お願い?」
「その女の子を見つけたら私に紹介しておくれよ。一人の男にこれほど執着されているならよほどすばらしい女の子なんだろ?興味があるんだ」
「いや!あんなじゃじゃ馬!」
「顔が真っ赤だよ?と、少し引き止めてしまったかね。弁当も鮮度が命だ。さっさと持っていかないといけないだろう。約束のことは信じてるよ。さっさとギルドにいきなさい」
さすがに否定しようとしたエルだったが、表情を見ればばればれだった。けれど、大人の対応というべきかそれ以上は何も聞かずに話を変える。
「わかったよ!見つけたら紹介する。でも、おまけは期待するから!」
「あはは、期待してなさい」
そういって、エルは照れ隠しするように顔を背け道具屋のおばさんとは別れギルドへと急ぐのであった。
冒険者ギルド
これはその名のとおり冒険者が集まるギルドだ。サヤルアペス大陸には数多くの遺跡や秘境の地、未開拓地などが存在する。それらを含めた通称でダンジョンと呼び、冒険者はロマンや財宝を求めて日々挑戦していた。
ただ、挑戦するだけではなく他にも仕事はたくさんある。形式的にはクエストという形で住民が依頼する内容を解決していくものだ。
先ほどダンジョンと説明したが、もちろん危険は伴う。それぞれの地に蔓延るモンスターが原因だ。そして、モンスターはダンジョンだけではなく獣のように野生モンスターとして多く生息している。幸いに都市や町に隣している場所ではそこまで強力なモンスターはいない。だが街道になってくるとそれなりのモンスターが出てきて移動にも一苦労するのだ。
そこで腕の立つ冒険者に依頼して護衛をしてもらう商人なども珍しくない。他にも必要な素材をとってくるなどもあったりする。
ではエルがここに来た理由はというと、依頼をしたわけでも冒険者なわけでもない。
他の重要な要素、情報が集まる場所という価値を見出して通っているのだ。小さな情報でも手がかりを知るには利益を追求する商売人よりは、ロマン、財宝を追求する冒険者のほうが情報を引き出しやすい。そう『教えられた』。
「さてと、さっさと弁当を届けて情報を聞いていくか」
冒険者には結構粗暴が悪いやからもおり、一般市民、気が弱いものは近寄りたがらない場所だ。しかしエルにとって日課ともいえる行動を数年していれば慣れるというもの。何気なく近づき、今日も収穫はないだろうと思いつつ歩を進めるエル。
いざ扉を開けて中へと――――
「ぐわぁ!」
――――入ろうとした瞬間、ギルド内から出てきた男がいた。ちなみに、外への出かたは空中を平行に飛び、外に出たところで頭から地面に衝突するという内容だ。最近の出方はダイナミックになったものだ。
「……って、どう考えても吹っ飛ばされたんだよな」
一体何がギルド内で起きているのか。飛んできた男を見る限り確実に面倒ごとが起きているのだろう。エルは頭の中に複数の選択肢を思い浮かべる。
1.何もなかったように入り役員に弁当を届けてから情報収集をする。
2.今日の所は諦めて帰る。
3.事態を収拾する。
4.なんとなく死んだ振りをする。
「……」
いや、というか4はおかしいだろうと内心でつっこみを入れつつエルは中のほうを見た。辺りは静かになり呆然となっている。実力があるであろう冒険者たちも何事かと言葉を発していないようであった。
「……うん、やっぱり一番かな」
エルはそう考え何事も無かったように中に入っていった。何回も来ているから顔なじみがいたとしても自分には関係ないだろうと判断したのだ。
今度こそ扉を開けて中に入っていく。するとやはりギルド内は呆然としており屋内にいる視線のほとんどが一箇所に集まっていた、おそらく原因の人物がいるのだろう。顔は向けないが視線はその人物に向けていた。突如絡まれたり攻撃されても対処できる用にだ。
そして、そこで少しだけわかったことは原因の中心は女ということだった。腰辺りは白の赤が混じったスカートをはいてお、り足もスラリと細く素肌はむき出しである。軽装しているんだろうか、胸も膨らんでいるように見えるため女と判断した。ただ、なにぶん注視していないのでそれぐらいしかわからない。
相手からの視線も感じるが、敵意は感じないので視線をはずし受付のほうへと向かっていた。おそらくどこかの馬鹿がちょっかいを出して返り討ちになったのだろう。
受付の前までやってくると、弁当を毎回頼んでくるギルド役員の常連さんが騒動を見て慌てているところだった。
「あの、エッセさん?頼まれたお弁当を持ってきたんだけどここの置いていい?」
「え、あ、ありがとう」
「なら確かに届けたからね。それよりもまた情報が無いか聞きたいんだけどなにかないか」
しかし、エルが最後まで言葉をいうことはできなかった。
「エル……?やっぱりエルだよ!」
後ろから聞こえてくる声に中断されたのだ。どうやら自分の名前を知っているから知り合いだろうと後ろを振り向けば。
「……?」
ぜんぜん知らない少女だった。けれどブロンドの髪はどこか懐かしい感じを思い起こさせる。しかし少なくともエスカールでは見たことが無い少女だ。
けど相手は確信を持って自分の名前を伝えてきた。
「あれ、わからないの?私ミリエスだよ!」
その名前には覚えがあった。というか自分が探している女の子の名前がそうなのだから。しかし偶然もあるもんだなぁ。
「……え?ええええええええ!ミリエスって、あのミリエスか!」
「そう!そうだよ!そのミリエスだよ!」
こうして二人は数年の月日をかけて再会を果たすことになる。
このときの出会いが二人にとって序章の始まりだったというのはまだ知らない。
こんばんわ!主人公がプロローグから数年後のお話をお送りいたしました。
現在では戦闘とはぜんぜん関係ない生活を送っております。
もちろん、物語は始まったばかりなので何かは起こるでしょうが……
そして、花でもあるヒロインの登場!まさか探すという目標を匂わせながら、いきなりの再会は驚かれた方もいると思います。
自分でもびっくりです……。
というところで、また後でお会いしましょう。二時間間隔であと2~3話投稿させていただきます。よろしくです!




