告白
父が亡くなってから後を継いでフランソーズライズ様の右腕として
覚える事も多く忙しかったが、私はラッセンブレッド様の元へは
せっせと足を運んでいた。
大きくなった私はあの人の背を抜いていた。
「でかくなったな。」
感心した様に手を俺の頭にかざす。
「そうだな態度もでかくなった。」
「そんな事はありませんよ。」
ラッセンブレッド様は私をからかって遊ぶのが好きらしい。
最初の頃はあまり笑顔を見せてくれなかったが、今では大笑いまで
してくれるようになった。やはりフランソーズライズ様の弟君だからと
近寄りがたい人だったのだと思う。今まで人を愛した事はあるのだろうか?
私は今日この人に愛の告白をしようと思う。
この気持ちは会うたびに積もり重なった結果なのだ。
男同士であろうが関係ない永遠に生きるのだとしてもこの人となら
大丈夫だ。
「ラッセンブレッド様、どうか私の目を見て下さい。」
「なんだ、目に何か入ったのか?」
「そうではないんですが、ただ私の目を真っ直ぐに見て下さい。」
「やだね。」
そういってそっぽを向く。何故いきなりそんな態度をとるのだろう。
私は真剣に告白しようとしているだけなのに。
「お願いです。あなたの目を見て言いたいんです!」
「それが嫌なんだよ!!」
背を向けていたラッセンブレッド様がこちらを振り向きながら叫ぶ。
顔を歪め私の方を見る。
「何故?私はあなたを・・」
「やめてくれ!!!!!」
ラッセンブレッド様は悲痛な叫びをあげた。
私が言おうとしている事に怯えているのだろうか?
「お前は兄上の右腕として立派に役立ち、普通に女と結婚して子供を授かるんだ。」
「嫌です。」
私はラッセンブレッド様に近づく。そして頬を両手で包み、逃がさないと言わんばかりに
顔を近づけて口を開く。
「あなたを愛してます。」
その一言でラッセンブレッド様の目が潤み間もなく、
頬を包んでいた手に涙が流がれる、それすらも美しく愛おしい。
この人を永遠に愛したいのだ。
「俺は生まれた時から何もなかった。兄上の様に上界を支える神に近い天使でもなく、
役割すらない俺は兄上がくれたバラを育てる事だけが存在する理由だった。
それに兄上を置いてはいけなかった。全て兄上に辛い思いを押し付けて、
俺だけここからいなくなるのは嫌だった。きっと兄上は俺の幸せを願っているだろうが。
近くにいなくても会えなくても血のつながった兄上だ。一人にはさせない。
だからお前の言葉は「永遠」を意味する。それがどれだけ続くかも分からない。
それでも・・。」
「あなたの答えが聞きたい。」
私が聞きたいのは生い立ちや兄上の話じゃない。ただ一言、それで永遠にあなたは私のものになり、
あなたのものになる。
ラッセンブレッドさまの潤んだ瞳に私が映っている。その眼を閉じ、覚悟を決めた様にまた開く。
「愛してる。ニースを愛してる。」
「ラッセンブレッド様、愛してます。」
顔を引き寄せて口づける。
背に手を回し抱きしめる。
私の愛しい人を。
この人を永遠に愛する事を神に誓う。
2END