プロローグ
「えー、皆様、本日はkimAIraの新商品完成式典にお集まり頂き有難うございます。」
やっとか、と動きを始める。それまでの空気とは違った空気に包まれるこの瞬間はやはりまだなれない。
新人記者の俺はあの大手会社kimAIraの新商品公開会見に来ていた。会見と言う物は緊張してしまう。以前にも来たことのあるキムアイラの会見だった事がせめてもの救いだった。ボイスレコーダーの電源をいれ、ペンを構える。
俺たちは後ろ席だったので前方の様子が確認できなかったが、人々が席につき始めたので司会の女性が見えるようになった。淡々と話をするその女性の隣にはフラッシュと観衆の目を我が物にしている一人の男がいた。恐らく彼がキムアイラの社長"キム・ジョンナン"だろう。若干二十歳にしてキムアイラを立ち上げ巨万の富を築いたイケメン社長。まあ作ってる物が作ってる物だから良く思わない人も少なからず居るらしい。
「_____…それでは当社の代表取締役、キム ジョンナンより当社の新商品について紹介させて頂きます。」
司会の女性が笑顔でそういった。すると、キム社長は大きな幕のかかった檻の前に向かった。こうしてじっくり見ると社長と呼ばれるのに相応しいカリスマ性の様なものが感じられた。流石、イケメン凄腕ワカ社長と呼ばれるだけあり、容姿もなかなかいい。
人々がその容姿に感嘆していると中央に立ったキムはおもむろに口を開いた。
「皆様、本日は当社のために足を運んで下さり有難うございます。謹んでお礼申し上げます。」
キムは我々取材陣に向かって頭を下げた。キムアイラの会見では以前も見た光景であるが、始めて会見に参加した者はたじろぐであろう。今回はキムアイラの新商品公開会見ということで世界各国から報道陣が押し寄せているのだ。
それにこんな動作は余り目にする様なものではない。
キムそんな記者の動揺を感じ取ったのか、顔を上げると
「おっと、これは失礼いたしました。当社の会見に初めていらっしゃった方もおりましたか!これはとある伝説の国の文化でございます。」
それで多くの記者が話を理解したようであった。まあ、当然であろう。キムの指すその国と謎の文化を結びつけるのは容易である。
「その国とはそう…ジャパンです。海底都市ジャパン。いやあジャパンに伝わっていた文化には、大変興味を惹かれますね。例えば俳句、大仏、ヒラガナ、忍者、着物、オニギリ……あ、そうそう先日、私オニギリを食させて頂きました。あれは大変美味でしたね。また頂きたいものです。」
会場が笑いに包まれる。キムのトークには人々を惹きつけるものがあるって前に先輩が言ってたっけな。
「……おっと、話が脱線してしまいました!えー、ジャパンの文化でしたね。えぇ本当に興味が惹かれます。それで私ジャパンについていろいろと調査をしていた訳であります。新商品のヒントでもあれば…と。」
その瞬間誰もがキムの話に夢中になっていた。
ここからが話の本題であろう。記者の一人がキムに問いかける。
「ヒントは見つかったのですか!?」
記者の問いにキムは笑顔で答える。
「えぇ、もちろん。調査でその生物はジャパンの人びとの生活密接に繋がっていた事がわかりました。我々はその生物を実現させるため研究に研究を重ねて今日に至ったのです。」
俺も思わず手をあげてキムに問いかけた。
「そっ…それは何という生物ですか!?」
キムも記者も真剣な顔になる。その場にいる全員が息を飲む。
「龍ですよ。」
この作品が初投稿になります、ものすごい粉雪です。
本作を読んでくださりありがとうございました。
更新は遅くなるかもですが、温かい目で見守ってやってください。