―奇怪―
気がついたら、俺は家の前で寝ていた。銃で撃たれたというのに、頭部には傷ひとつなかった。
「また冒頭で気絶から復活スタートかよ!いい加減にしてもらいたいものだ」俺はいったい誰と話しているのだろうか?まぁそんなことはさて置き………
本題は、傷がないこと、電車の中から家に帰っていたこと、そして可憐がその後どうなったかということだ。
ひょっとして全部夢だったのか。いや、そんなはずがない。あの恐怖はいまでも鮮明に覚えている。
しかし、これだけ証拠がないのであれば、夢だったと信じるしかないなぁ。
俺は、家に入り、自室にこもり、ベッドに倒れこんだ。
腹が減っていなかったわけではないが、食欲がなかったので晩飯は食べないで寝ることにした。
だんだんと眠たくなってきたが、俺は今日起こった、奇怪な出来事について考えていた。すると驚きの事実に気がついたのである。
朝、可憐に出会っていなければ、校門で襲撃にあうことはなく、夕方まで気絶ということは当然なかった。すると、学園を出る時間が、通常通りの6時30分となり、あの電車に乗らなくてすんでいた。いや、あいつのせいにするのは悪いな。俺があんなにゆっくり出たのが間違いだったんだ。もう少し早く家を出ていれば、あんなことにはならなかったのに………
そういや、可憐はどうなっているんだろう?俺と同じように、家に帰れたのかな?
その疑問を晴らすために、ケータイを開いた。
「………!?」見てしまったのだ。ケータイの時計を。
「まさか……まだ7時だと……」驚いたのもそのはず。俺は学園を出るとき、腕時計を見ていた。そのときの時間は、7時30ぐらいだったはず。ならなぜ、今まだ7時なのだ?何が起こっているんだ?
そのとき、俺のケータイにバッハの"小 フーガト短調"のメロディーが鳴った。可憐からの呼び出し音である。俺は、ナイスタイミングと思いながら電話に出た。
「もしもし?可憐か?お前無事なんだよな?」電話をしてくるってことは無事ってことだと分かっていたが、念のため聞いてみた。
「一応無事……ていうか無傷だけど、いろいろと引っかかるところがあって…電話したんだけど」カモの頭でも事の重大さに気づいたか。立派だ。
「俺もいろいろと引っかかるところがある。話してくれ」
「実は……あの事故?事件?のあと、気がついたら家の前にいて、時間もなぜか戻っていたの。それで銃で撃たれたのに、無傷なの」俺と全く同じ待遇だ。
「あぁ、俺も全く同じだ。今ちょうどそのことについて考えていたところだ」
「とりあえず今日は寝よう。んで明日話そう。いつもの時間で俺の家に来てくれ」
「いつもの時間って今日と同じ時間?」
「いや、もっと早い時間」俺は、二度と同じ過ちをくり返すまいと誓った。
「分かった……じゃあ切るね。バイバイ」
「あぁ、じゃあな」
そして俺は、眠りについた。
新年明けましておめでとうございます。
昨日は、忙しかったので投稿ができませんでした。すみません。
とりあえず、プロローグ的なものは、全部終わらせたので、これから登場人物や、世界観を出して行きたいと思います。