1話 〜厭世〜
結構暗い仕上がりになりました
至らないところがありますが、よろしくお願いします
「でさでさ、そこで、東條君が・・・!」
「きゃー!!ちょ!ネタバレ止めてよ!録画してるんだからぁ」
「はいはい、じゃぁ、昨日の『ザ☆世界の不思議』って見た?」
「あぁ!見た見た!!めっちゃ怖かったしぃ!」
何を騒いでいるのか・・・
恐らく、あの人達が話しているのは、昨日のテレビの事だろう。
そして、少し前に話していたのは、最近流行っている、アイドルの出ている連続ドラマの事だ。
何度か見てみたが、主演のアイドルは、そこそこルックスも良かったし
演技力もあった。が、内容がいまいち、ピンと来なかった。
たかが、テレビの事くらいで、そんなに声を張り上げなくてもいいと思う。
「あ、園摩さん!園摩さんも見た?よかったら、こっち来てさ・・・」
何故私に話を振る?
別に、見ていなかった訳ではないが、興味もないし、第一、あなた達とは、話せない。
生理的に受け付けない
「ごめん、昨日は塾で見てなかった・・・ごめんね、折角誘ってくれたのに・・・」
私は、話をしない為に、嘘をついた。
塾なんて通ってないし、ご免なんて、欠片も思っていない。
でも、他人に害を与えない嘘なら、この位どうって事無い。
むしろ、必要な事だ。(と思う)
「そうか・・・残念だけど、仕方ないね、また明日」
私は、笑顔で、軽く会釈をして、下駄箱を後した
「別に残念なんて、これっぽっちも思ってないくせに」
秋風に、私の声は、掻き消され、
誰の耳にも届く事は、無かった。別に聞かれてもよかったが、消されたなら、
それでも良い。
こんな事を、毎日思いながら、下校する。
友達はいない訳ではないが、所詮、皆上辺のみの関係だ。
誰一人として、本音を言っている者はいない
昔は、本音でぶつかり合えた友達がいた
その人間は、簡単に私を裏切った。私を利用した。
それでも、信じたかった、でも、もう元には戻れなかった。
親に言っても、まともに聞いてくれなかった
もう、誰も信じられない。
この世から消え去りたい。
私の目からは、いつの間にか、涙が溢れていた。
「あの・・・どうかしたんですか?」
目の前には、小学5、6年生程の男の子が立っていた
涙で視界が暮夜けて、顔はわからないが、身長からして、そうだろう。
ランドセルを背負っているため、下校中と思われる
心配してるわけ?
どうせ、自分が良い人間に思われたいから、心配してるだけでしょう?
どうせ自己満足の為に、私を利用しているのでしょう?
本当の善人なんて存在しないんだ。皆偽善者だ!
「うん、目にゴミが入っただけだから、大丈夫。
君も、早く帰りなよ」
私も、偽善者。
たった今、優しいふりをした
目の前に男の子なんて、別に攫われ様が、私には関係がないから
別にどうでもよかった。
これも、皆同じ、自己満足の為の、嘘の優しさなんだ。
自分もやっぱり、同じ、人間なんだ。
消え去りたい
でも、消えるのが怖い。そんな自分を消えささせたい・・・
でも、消えたいのは、変わらない
気がついたら、家の門まで来ていた。
「ただいま・・・」
今日もまた、玄関の扉を開く。