バーバラの日記1
バーバラの日記1
季節は夏。
空は素晴らしく晴れ渡って、屋敷の住人は皆、思い思いに外へ出かけている。
そうだというのに、バーバラは外へ出ることができない。
怪我がまだ治りきっていないので、止められているのだ。
こんなに体を動かしたくて仕様がないというのに、実際は体を動かせない。
腕のほうも痛めているので、杖をついて動こうにも誰かの助けがないと無理なのだ。
動きたいのに、動けない。
ほとんど拷問だ。
(屋敷の中のカイルの本は、ほとんど読みつくしてしまったし……)
かといって、刺繍や裁縫は大の苦手である。時間があってもやりたくない。
「バーバラさん、何してるの? 本、読んでる?」
暇をもてあましていたバーバラの元に、格好の獲物がやってきた。
「シオリちゃん、丁度いいところに!」
逃がさないぞと言わんばかりに、彼女のその手をがっしと握り締めた。
「いいこと、しない?」
シオリと遊ぶために、アイザックの妻サラまで呼び寄せて(もれなくケイトもついてくる)、
バーバラはにんまりと笑った。
「いや~! 最高! かわいいっ、似合うわ!」
妙齢の親父のごとく、にやにや眺め回して、バーバラは満足げに何度も頷いた。
目の前には、着せ替え人形と化したシオリがくるりと回った。
「そうかな?」
まんざらでもなさそうな様子のシオリは、照れて頬を染めている。
「うん、とってもいい。ね、サラ」
「ええ。とってもかわいらしいし、よく似合っているわ。シオリちゃん」
シオリが着ているのは、サラがもっと若いころ着ていた服だ。鮮やかな黄色の、美しいドレスだ。
同系色の糸で細かな花の刺繍が施されている。
バーバラでなくても、かわいいを連呼しても仕方がない。
そう思わせるほど、ドレスはシオリの快活な雰囲気に似合っていた。
髪の毛は、少しコテで巻いて短い髪をふわっと柔らかく見せていて、これまたかわいらしい。
「カイルがどんな反応するのか、みて見たいわねぇ~」
思わずそうこぼすとシオリが後ずさった。
「カイルに!? うそ、絶対ヤだ」
過剰反応と言えるぐらいのその反応に、バーバラは首を傾げた。
カイルだったら、かわいいとさらりと言いそうにも思うのだが。それの何が嫌なのだろう。ほめられたら普通は嬉しいものではないだろうか。
「なぜ、そうなるのかしらねぇ~。いいじゃない。きっと褒めてくれると思うわよ」
バーバラがそういえば、サラもケイトも力強く同意した。
「シオリちゃん。カイル様は、正直な御方です。褒めないはずがありません」
「だ、だから、それがイやなの! 恥ずかしいじゃん! そんでもって、寒いし」
寒い発言が理解できなかったバーバラとサラ(小さなケイトもだ)は顔を見合わせた。
「「寒い?」」
「そう! 歯が浮きそうなこと言われたら、鳥肌立っちゃうし、逃げたくなるもん。
カイルには、そんな言葉言われたくない」
「え~と……。それ、本気で言っているの? シオリちゃん」
力強く頷いたシオリに、バーバラは深いため息をついた。
彼にも自覚症状がないらしいとはいえ、カイルに同情を禁じえない。
間違いなくシオリのとこを気に入っているのに、かわいいと褒めたらきっと逃げられてしまう。
「「前途多難ね」」
サラと同時に呟いてしまい、二人は顔を見合わせて吹き出した。
お久しぶりです。
短編を書いてみました。バーバラ視点のお話です。現在、暇を持て余している彼女が何をしているか…です。
拍手のお礼として書いたものをのせてみました。




