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らいじん  作者: タカバノ
3章 帰りたい
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バーバラの日記1

バーバラの日記1


 季節は夏。

 空は素晴らしく晴れ渡って、屋敷の住人は皆、思い思いに外へ出かけている。


 そうだというのに、バーバラは外へ出ることができない。

 怪我がまだ治りきっていないので、止められているのだ。


 こんなに体を動かしたくて仕様がないというのに、実際は体を動かせない。

 腕のほうも痛めているので、杖をついて動こうにも誰かの助けがないと無理なのだ。

 動きたいのに、動けない。

 ほとんど拷問だ。


(屋敷の中のカイルの本は、ほとんど読みつくしてしまったし……)

 かといって、刺繍や裁縫は大の苦手である。時間があってもやりたくない。


「バーバラさん、何してるの? 本、読んでる?」

 暇をもてあましていたバーバラの元に、格好の獲物がやってきた。


「シオリちゃん、丁度いいところに!」

 逃がさないぞと言わんばかりに、彼女のその手をがっしと握り締めた。

「いいこと、しない?」



 シオリと遊ぶために、アイザックの妻サラまで呼び寄せて(もれなくケイトもついてくる)、

バーバラはにんまりと笑った。

「いや~! 最高! かわいいっ、似合うわ!」

 妙齢の親父のごとく、にやにや眺め回して、バーバラは満足げに何度も頷いた。 


 目の前には、着せ替え人形と化したシオリがくるりと回った。

「そうかな?」

 まんざらでもなさそうな様子のシオリは、照れて頬を染めている。


「うん、とってもいい。ね、サラ」

「ええ。とってもかわいらしいし、よく似合っているわ。シオリちゃん」


 シオリが着ているのは、サラがもっと若いころ着ていた服だ。鮮やかな黄色の、美しいドレスだ。

 同系色の糸で細かな花の刺繍が施されている。


 バーバラでなくても、かわいいを連呼しても仕方がない。

 そう思わせるほど、ドレスはシオリの快活な雰囲気に似合っていた。

 髪の毛は、少しコテで巻いて短い髪をふわっと柔らかく見せていて、これまたかわいらしい。


「カイルがどんな反応するのか、みて見たいわねぇ~」

 思わずそうこぼすとシオリが後ずさった。

「カイルに!? うそ、絶対ヤだ」


 過剰反応と言えるぐらいのその反応に、バーバラは首を傾げた。

 カイルだったら、かわいいとさらりと言いそうにも思うのだが。それの何が嫌なのだろう。ほめられたら普通は嬉しいものではないだろうか。

「なぜ、そうなるのかしらねぇ~。いいじゃない。きっと褒めてくれると思うわよ」

 バーバラがそういえば、サラもケイトも力強く同意した。


「シオリちゃん。カイル様は、正直な御方です。褒めないはずがありません」

「だ、だから、それがイやなの! 恥ずかしいじゃん! そんでもって、寒いし」

 寒い発言が理解できなかったバーバラとサラ(小さなケイトもだ)は顔を見合わせた。


「「寒い?」」 

「そう! 歯が浮きそうなこと言われたら、鳥肌立っちゃうし、逃げたくなるもん。

カイルには、そんな言葉言われたくない」

「え~と……。それ、本気で言っているの? シオリちゃん」

 力強く頷いたシオリに、バーバラは深いため息をついた。


 彼にも自覚症状がないらしいとはいえ、カイルに同情を禁じえない。

 間違いなくシオリのとこを気に入っているのに、かわいいと褒めたらきっと逃げられてしまう。


「「前途多難ね」」

 サラと同時に呟いてしまい、二人は顔を見合わせて吹き出した。


お久しぶりです。


短編を書いてみました。バーバラ視点のお話です。現在、暇を持て余している彼女が何をしているか…です。

拍手のお礼として書いたものをのせてみました。

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